椎間板ヘルニアの手術が必要なタイミングは?判断基準と治療法を徹底解説
腰の痛みやしびれは、椎間板ヘルニアの症状かもしれません。椎間板ヘルニアは、適切な治療法を選択することで改善し、日常生活を取り戻せる可能性があります。この記事では、椎間板ヘルニアの手術について、以下の内容を解説します。
- 椎間板ヘルニアの手術が必要な4つのケース
- 椎間板ヘルニアの手術方法
- 椎間板ヘルニア手術のデメリットとリスク
- 椎間板ヘルニア手術後の流れと注意点
この記事を読み、手術が必要なケースや手術後の流れなどを知ることで、手術への不安を解消し、適切な治療を選択できる可能性があります。自身の症状と照らし合わせて、気になる症状がある場合は医療機関を受診してください。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアの手術が必要な4つのケース
椎間板ヘルニアの治療は、薬の服用やリハビリテーションで症状を和らげる「保存療法」から始めるのが一般的です。症状や経過によっては、手術が検討される場合もあります。手術が必要となる以下のケースについて、解説します。
- 保存療法で効果がない場合
- 排尿・排便障害などの重篤な症状が現れた場合
- 強い痛みやしびれで日常生活に支障がある場合
- 神経症状の悪化が見られる場合
保存療法で効果がない場合
保存療法を6〜12週間継続しても、痛みやしびれなどの症状が改善しない場合は、手術を検討する可能性があります。保存療法には、以下の方法があります。
- 安静:腰に負担をかけないようにして、痛みが強いときは休む
- 薬物療法:痛み止めや神経の炎症を抑える薬を服用する
- 理学療法:ストレッチや筋力トレーニングを行う
- ブロック注射:神経の近くに薬を注射して痛みを和らげる
医師は、症状の程度や治療の経過、生活スタイルを考慮して、治療法を判断します。医師とよく相談し、手術を含めた治療法を検討することが大切です。
排尿・排便障害などの重篤な症状が現れた場合
排尿や排便に問題が生じる場合は、緊急手術が必要となるケースがあります。以下の症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 尿や便が出にくい
- 尿が漏れる
- 残尿感がある
椎間板ヘルニアにより馬尾神経(ばびしんけい)が圧迫され続けると、後遺症が出る可能性があります。排尿・排便のコントロールが難しくなったり、下肢の麻痺やしびれが残ったりすることがあるため、早期発見と早期治療が大切です。
強い痛みやしびれで日常生活に支障がある場合
強い痛みやしびれで日常生活に支障がある場合は、手術で症状が改善する可能性があります。改善の程度には、個人差があります。仕事や睡眠に支障が出たり、症状による精神的なストレスを感じたりする場合は、医師への相談をおすすめします。
神経症状の悪化が見られる場合
筋力低下や歩行障害、感覚の異常(しびれや感覚の鈍化)などの症状がある場合は、症状の進行を防ぐために手術が検討されます。椎間板ヘルニアで圧迫されている神経の状態が悪化すると、つま先が上がりにくくなったり、足がもつれたりする場合があります。
重症化すると、歩行の困難や、寝たきりになる可能性もあります。症状を放置せず、適切な治療を受けてください。
椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
椎間板ヘルニアの手術方法
椎間板ヘルニアの手術は、飛び出した椎間板の一部、または全部を取り除き、神経への圧迫を軽減することで、痛みやしびれの改善を図ります。椎間板ヘルニアの具体的な手術方法や選択の基準について、以下の内容を解説します。
- 内視鏡下手術(MED法):体に負担が少ない低侵襲手術
- 顕微鏡下手術:より精密な手術が必要な場合に最適
- 腰椎固定術(PLIF、XLIF):再手術例やすべり症など腰椎の変形を伴う場合
- 手術の選択基準
内視鏡下手術(MED法):体に負担が少ない低侵襲手術
内視鏡下手術(MED法)は、1cm程度の小さな傷口から内視鏡と専用器具を挿入してヘルニアを取り除く方法です。皮膚や筋肉へのダメージを最小限に抑えられるため、身体への負担や術後の痛みの軽減が期待できます。高齢の方や合併症のある方でも、比較的安全に手術を受けられます。
内視鏡手術は、従来の開腹手術に比べて出血量が少なく、入院期間の短縮も期待できます。入院期間は数日程度が目安で多くは一泊二日で、早期の社会復帰を目指せます。
顕微鏡下手術:より精密な手術が必要な場合に最適
顕微鏡下手術は、手術用の顕微鏡で患部を拡大して確認しながら行う方法です。切開範囲は約3~5cmで、内視鏡下手術よりやや広いですが、より広い視野を確保できます。複雑な形状のヘルニアや神経への圧迫が強い場合でも、高い精度で対応できる手術方法です。入院期間は数日程度です。
腰椎固定術(PLIF、XLIF)
腰椎固定術とは、腰の骨(腰椎)が不安定になっていたり、ずれてしまっている場合に行う手術です。インプラントと呼ばれる医療用の器具(ネジやスペーサー)を使って、腰椎をしっかりと固定します。
腰椎椎間板ヘルニアが再発したケースでは、神経のまわりに癒着(組織がくっついてしまうこと)が起こっていることが多く、神経を傷つけるリスクが高くなります。安全にヘルニアを取り除くためには、通常よりも骨を大きく削る必要がありますが、固定術を併用することで、腰の安定性を保ちながら安全に手術を行うことができます。
また、「腰椎すべり症」や腰のぐらつき(不安定性)が強い方では、ヘルニアを取っただけでは腰の痛みが残る場合があります。このようなケースでも、腰椎固定術が有効です。入院期間の目安は数日から1週間ほどです。
以下の記事では、椎間板ヘルニア手術にかかる費用の相場や、保険が適用される条件、自己負担額の目安などについて詳しく解説しています。手術を検討している方にとって、事前に知っておくべきポイントを整理していますので、ぜひ参考にしてください。
>>椎間板ヘルニア手術の費用相場は?保険適用の条件や自己負担額を解説
手術の選択基準
椎間板ヘルニアの手術方法は、ヘルニアの状態や症状、年齢、生活スタイルなどを総合的に考慮して決定します。文献によると、小児の椎間板ヘルニアは外傷などが原因で起こることが多いです。保存治療で改善しない場合は、手術を行うことで短期的に良好な効果が得られ、合併症や後遺症が出る可能性は低いことが示されています。
最適な手術方法は、医師と十分に相談したうえで決定します。メリットやデメリットを理解し、納得したうえで手術を受けることが重要です。手術に不安がある場合や複数の医師の意見を聞きたい場合は、セカンドオピニオンを求めることも有効な手段です。医師と話し合い、最適な治療法を選択しましょう。
椎間板ヘルニア手術のデメリットとリスク
椎間板ヘルニアの手術を受けるかどうかを判断する前に、以下のデメリットやリスクを理解しておくことが重要です。
- 再発や症状改善の限界
- 合併症(感染、神経損傷など)の可能性
再発や症状改善の限界
椎間板ヘルニアの手術後も、痛みやしびれなどの症状が完全には消えず、残ってしまう場合があります。手術後しばらく時間が経ってから、再発してしまう場合もあります。症状の改善の程度や回復のスピードには、個人差があります。
合併症(感染、神経損傷など)の可能性
椎間板ヘルニアの手術による合併症のリスクは、ゼロではありません。以下の合併症が起こる可能性があります。
- 傷口の感染
- 神経の損傷
- 出血
- 血栓症
- 硬膜損傷
- 髄液漏れ
合併症の発生リスクを最小限にするため、衛生管理を徹底して行っている医療機関を選択することも大切です。以下の記事では、椎間板ヘルニア手術に伴う代表的なリスクや合併症の内容、さらに手術の失敗を防ぐために知っておきたいポイントについて詳しく解説しています。手術に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
>>椎間板ヘルニア手術のリスクとは?合併症と失敗を避けるポイント
椎間板ヘルニア手術後の流れと注意点
椎間板ヘルニアの手術を受けた後について、以下の内容を解説します。
- 手術後のリハビリテーション
- 日常生活での注意点
- 職場復帰の時期
- 長期的な予後
手術後に始まるリハビリテーションや日常生活での注意点などを理解し、よりスムーズな回復を目指しましょう。
手術後のリハビリテーション
リハビリテーションは、手術後できるだけ早く開始することが重要です。リハビリテーションを行うことで、手術による身体への負担を軽減し、早期に社会復帰することが期待できます。リハビリテーションの主な目的は、痛みを軽減し、筋力を回復させて日常生活動作をスムーズに行えるようにすることです。理学療法士の指導のもと、以下の内容を組み合わせて行います。
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- 歩行訓練
以下の記事では、椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛に襲われた際の応急処置や、すぐに受診すべき症状の見極めポイントについて詳しく解説しています。
>>【椎間板ヘルニア】激痛で歩けないときの緊急対処法と受診目安
日常生活での注意点
手術後は、再発予防のために、以下の表のポイントに注意してください。
日常生活の注意点 | 具体的な方法 |
重いものを避ける | 荷物はリュックサックなどを活用し、両肩で均等に重さを支える |
無理な姿勢を避ける | 腰をひねる動作、前かがみの動作は極力控え、どうしても必要な場合はゆっくりと行う |
長時間同じ姿勢を続けない | 1時間ごとに立ち上がり、軽いストレッチや軽い歩行を行う |
正しい姿勢を保つ | ・背筋を伸ばし、お腹に軽く力を入れる ・顎を引いて目線をまっすぐにする ・椅子に座るときは、浅く腰掛けず、背もたれに寄りかかるようにする ・足を組むのは避ける |
適度な運動をする | ウォーキングや水泳など、腰に負担がかかりにくい運動を継続する |
日々の習慣が体への負担を大きく左右します。無理のない範囲で生活習慣を見直し、予防と体力維持に努めましょう。
職場復帰の時期
一般的な職場復帰の時期は、手術後2~12か月頃になるケースが多いです。仕事内容や回復状況で異なるため、以下の表を参考にしてください。
仕事内容 | 職場復帰の目安 |
デスクワーク | 術後2〜4週間 |
軽作業 | 術後4〜6週間 |
重労働 | 術後3か月以上 |
職場復帰後は、無理をせず、徐々に仕事量を増やしていくことが大切です。必要に応じて、こまめに休憩したり、重いものを運ばないようにしたりするなど、会社と職場環境の調整を相談してください。
長期的な予後
手術後に椎間板ヘルニアが再発するリスクは、ゼロではありません。再発を防ぐために、以下の表の内容を実践しましょう。
再発予防 | 具体的な方法 |
日常生活の注意点を守る | ・重いものを持ち上げない ・無理な姿勢を避ける ・長時間の座位や立位を避ける |
定期的な診察を受ける | 3か月〜半年に1回程度、医師の診察を受ける |
運動療法を行う | 腰痛体操やウォーキングや水泳などを行い、腰周りの筋肉を強化する |
体重管理をする | 適正体重を維持することで、腰への負担を軽減する |
適切なケアを継続することで、再発のリスクを軽減し、健康な生活を送ることが期待できます。気になることや不安なことがあれば、医師に相談してください。
まとめ
保存療法で症状が改善されない場合や、排尿・排便障害などの重篤な症状がある場合などに、手術が検討されます。手術方法は、内視鏡下手術(MED法)や顕微鏡下手術、腰椎固定術(PLIF、XLIF)などがあり、それぞれにメリットやデメリットがあります。医師とよく相談し、自身の状態に合った手術方法を選びましょう。
手術には再発や合併症などのリスクも伴います。再発のリスクを軽減するために、リハビリテーションを行ったり、適切なケアを継続したりすることが大切です。気になる症状がある場合は、医療機関へ相談してください。
治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介
参考文献
Elise Loubeyre, Louis-Marie Terrier, Gabrielle Cognacq, Mourad Aggad, Patrick Francois, Thierry Odent, Aymeric Amelot.Surgical management of herniated intervertebral disc in children.Neurochirurgie,2024,70,6,p.101593