椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション材である椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで、腰や足に痛みやしびれなどの症状を引き起こす病気です。中腰での荷物の持ち上げや、デスクワークでの長時間の前かがみ、激しいスポーツなどは、椎間板に大きな負担をかけている可能性があります。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、腰痛は男女ともに多く見られる症状であり、椎間板ヘルニアが原因となっているケースも少なくないと考えられます。本記事では、椎間板ヘルニアを悪化させる7つのNG行動と、症状を和らげ、再発を防ぐための対策を詳しく解説します。
椎間板ヘルニアの痛みやしびれを少しでも和らげ、快適な生活を送るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選
椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選は以下のとおりです。
- 重い物を持ち上げる
- 長時間の前かがみ姿勢を続ける
- 激しい運動やスポーツをする
- 喫煙する
- 不適切なマッサージを受ける
- 体を冷やす
- 痛みを我慢する
重い物を持ち上げる
重い物を持ち上げることは、椎間板に大きな負担をかけ、ヘルニアを悪化させる可能性があります。特に、中腰の姿勢で重い物を持ち上げると、腰椎への負担がさらに増大します。椎間板への圧力を高め、飛び出した部分が神経をさらに圧迫する原因となるためです。
5kg以上の物を持つ場合は、膝を曲げて持ち上げるようにし、腰への負担を軽減することが大切です。どうしても重い物を持ち上げなければならない場合は、誰かに手伝ってもらうようにしましょう。
長時間の前かがみ姿勢を続ける
デスクワークやスマートフォンの操作など、長時間の前かがみの姿勢を続けることも、椎間板ヘルニアの悪化につながります。前かがみの姿勢は、椎間板への負担を増加させるだけでなく、背骨のS字カーブを崩し、姿勢が悪化する原因にもなります。
正しい姿勢を保つためには、骨盤を立てて座り、背筋を伸ばすことが重要です。30分ごとに立ち上がって軽いストレッチをしたり、背もたれのある椅子を使用したりするなど、こまめな休憩と姿勢の改善を心がけましょう。
激しい運動やスポーツをする
椎間板ヘルニアを発症しているときは、激しい運動やスポーツは控えましょう。ジャンプやランニング、激しいひねりを伴うスポーツは、椎間板に大きな衝撃を与え、症状を悪化させるリスクがあります。特に、テニスやゴルフ、バスケットボールなどは、腰への負担が大きいため注意が必要です。
椎間板ヘルニアの症状がある場合は、医師に相談の上、適切な運動を選択するようにしましょう。ウォーキングや水泳など、腰への負担が少ない運動から始めるのがおすすめです。
喫煙する
喫煙は、椎間板への血流を阻害し、組織の修復を遅らせる可能性があります。ニコチンが血管を収縮させる作用を持つためです。椎間板への酸素供給が不足し、変性を促進、ヘルニアを悪化させる可能性があります。禁煙は、椎間板ヘルニアの改善だけでなく、全身の健康にも良い影響を与えます。
不適切なマッサージを受ける
強いマッサージや、専門知識を持たない施術者によるマッサージは、椎間板ヘルニアの症状を悪化させるリスクが考えられます。マッサージによって、炎症が悪化し、神経がさらに圧迫されるリスクがあるためです。国家資格を持った施術者を選び、自分の症状を詳しく伝え、適切な施術を受けることが大切です。
体を冷やす
体を冷やすと、血行が悪くなり、筋肉が緊張しやすくなる傾向があります。筋肉が緊張すると、腰への負担が増え、椎間板ヘルニアの痛みやしびれを悪化させる可能性があります。冬場は暖かい服装を心がけ、冷房の効きすぎにも注意しましょう。入浴や温湿布などで体を温めることも効果的です。
痛みを我慢する
椎間板ヘルニアの痛みを我慢し続けると、症状が悪化し慢性化する恐れがあります。痛みが強い場合は、我慢せずに早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。痛みを和らげる方法や、日常生活での注意点など、医師に相談しましょう。
適切な治療と日常生活での注意によって、椎間板ヘルニアの症状は改善し、再発を予防することができます。「歩けないほどの激痛」がある場合は、迷わず緊急対応が必要になることもあります。
以下の記事では、椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛に襲われた際の応急処置や、すぐに受診すべき症状の見極めポイントについて詳しく解説しています。
>>【椎間板ヘルニア】激痛で歩けないときの緊急対処法と受診目安
椎間板ヘルニアを悪化させないための対策5選
椎間板ヘルニアを悪化させないための対策5選を紹介します。
- 適度な運動をする(ウォーキング、水泳など)
- ストレッチで体を柔軟にする
- 正しい姿勢を保つ
- 睡眠の質を高める
- 禁煙して椎間板への血流を改善する
適度な運動をする(ウォーキング、水泳など)
適度な運動は、椎間板ヘルニアの予防と症状緩和に役立つ可能性があります。特にウォーキングや水泳などの有酸素運動は、腰や背骨周りの筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減する効果が期待できます。
ウォーキングは、1日30分程度、自分のペースで歩くことを習慣づけてみましょう。特別な道具も必要なく、手軽に始めることができます。水泳は、浮力によって腰への負担が軽減されるため、痛みがある方でも比較的安全に行うことができます。クロールや背泳ぎなど、自分に合った泳ぎ方で無理なく体を動かすことが大切です。
ジャンプやランニングなどの激しい運動や、テニスやゴルフなどの腰をひねる動作を伴うスポーツは、椎間板に大きな負担をかけるため、避けるべきです。文献によると、前屈姿勢や手作業による累積的な職業的腰椎負荷がリスク因子として挙げられています。
運動の種類を選ぶ際には、ご自身の体の状態を考慮し、専門医に相談しながら適切な運動を選択することが重要です。
ストレッチで体を柔軟にする
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果が期待できます。硬くなった筋肉をほぐすことで、椎間板への負担を軽減し、痛みを和らげることができます。特に、太ももの裏側(ハムストリングス)、お尻の筋肉(大臀筋)、股関節周りの筋肉を伸ばすストレッチが有効と考えられています。
太ももの裏側やお尻、股関節周りの筋肉は腰椎の安定性に関わっており、柔軟性を高めることで腰への負担を軽減できる可能性があります。姿勢を維持するうえでも重要な役割を果たしており、筋肉が硬くなると腰への負担が増加し、椎間板ヘルニアの悪化につながる可能性があります。
ストレッチを行う際は、呼吸を止めずに、ゆっくりと時間をかけて行うことが大切です。痛みを感じる場合は無理をせず、中止するようにしてください。毎日継続して行うことで、柔軟性が徐々に高まり、効果を実感できるようになります。
ストレッチは、正しい方法で行うことが大切です。間違ったやり方は逆に症状を悪化させる恐れがあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説
正しい姿勢を保つ
正しい姿勢を保つことは、椎間板への負担を軽減し、ヘルニアの悪化を防ぐうえで重要です。猫背や前かがみの姿勢は、腰椎に大きな負担をかけ、椎間板への圧力を高め、ヘルニアを悪化させる可能性があります。
正しい姿勢を保つためには、立っているときは、耳、肩、腰、膝、くるぶしが一直線になるように意識しましょう。座っているときは、背筋を伸ばし、浅く腰掛けずに深く座り、足を床につけるようにしてください。
睡眠の質を高める
質の高い睡眠は、体の回復を促し、椎間板ヘルニアの症状緩和にもつながります。睡眠不足は体の疲労を蓄積させ、痛みを悪化させる原因となるため、十分な睡眠時間を確保することが大切です。
一般的に成人は7~8時間の睡眠が必要と言われています。睡眠の質を高めるためには、寝る前のカフェイン摂取を控えたり、リラックスできる環境を整えたりするなど、生活習慣を見直してみましょう。
自分に合った寝具を選ぶことも重要です。適切な硬さのマットレスや枕を使用することで、体に負担をかけずに快適な睡眠をとることができます。
禁煙して椎間板への血流を改善する
喫煙は、椎間板ヘルニアのリスクを高める大きな要因の一つです。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、椎間板への血流を阻害します。血流が悪くなると、椎間板への酸素や栄養の供給が不足し、椎間板の変性を促進させる可能性があります。
一部の研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて椎間板ヘルニアのリスクが高まる可能性が示されています。禁煙することで、椎間板への血流が改善され、椎間板の修復を促す効果が期待できます。
喫煙は骨粗鬆症のリスクを高めることも知られており、骨粗鬆症は椎間板ヘルニアの悪化につながる可能性があります。禁煙は、椎間板ヘルニアだけでなく、全身の健康にも良い影響を与えるため、積極的に取り組むようにしましょう。
椎間板ヘルニアの症状緩和と再発予防のためのケア4選
椎間板ヘルニアの症状緩和と再発予防のためのケアについて、以下の4つを解説します。
- 痛み止めや湿布薬を使用する
- 温熱療法や冷却療法を試す
- 専門医の指導を受ける
- セルフケアの方法を学ぶ
痛み止めや湿布薬を使用する
激しい痛みやしびれに悩まされている場合は、医師の指導のもと、痛み止めや湿布薬を用いることで一時的に症状が緩和される場合があります。痛み止めには、内服薬(錠剤、カプセル)、座薬、注射などさまざまな種類があり、それぞれ作用時間や効果の強さが異なります。
湿布薬にも、冷湿布と温湿布があります。冷湿布は炎症を抑え、痛みを軽減する効果があり、急性期の強い痛みや熱感がある場合に適しています。温湿布は血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があり、慢性的な痛みや冷えを感じる場合に有効とされています。
市販薬も利用できますが、自己判断で長期間使用すると、副作用のリスクや症状の悪化、根本原因の改善の遅れにつながる可能性があります。必ず医療機関を受診し、医師の指導のもとで適切な薬を使用することが大切です。
温熱療法や冷却療法を試す
温熱療法と冷却療法は、どちらも椎間板ヘルニアの症状緩和に効果が期待できる方法です。温熱療法は、患部を温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する効果が期待できます。ホットパックや蒸しタオル、温浴などが手軽に利用できます。
冷却療法は、炎症を抑え、痛みや腫れを軽減する効果が期待できます。保冷剤や冷湿布を用いるのが一般的です。温熱療法と冷却療法は、症状や時期によって使い分けることが重要です。急性期で炎症が強い場合は冷却療法、慢性期で血行不良や筋肉の緊張が強い場合は温熱療法が適しています。
1回につき15~20分程度を目安に行い、温めすぎや冷やしすぎには注意しましょう。皮膚の感覚が鈍っている場合は、特に注意が必要です。ご自身の症状に合った方法を選択し、必要に応じて医師や理学療法士に相談することをおすすめします。
専門医の指導を受ける
椎間板ヘルニアの治療は、自己判断で行わず、必ず専門医の指導を受けることが重要です。整形外科や脊椎クリニックなど専門医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。問診や診察、画像検査(レントゲンやMRI、CTなど)を通して、ヘルニアの程度や神経への圧迫の程度を正確に診断します。
専門医による治療には、薬物療法や理学療法、神経ブロック注射、手術など、さまざまな方法があります。医師は、患者さんの症状や病状、年齢、全身状態などを総合的に判断し、最適な治療法を提案します。日常生活における注意点や再発予防のためのアドバイスも受けられるため、安心して治療に取り組むことができます。
セルフケアの方法を学ぶ
専門医による治療と並行して、セルフケアの実践も、椎間板ヘルニアの症状緩和と再発予防に重要です。セルフケアには、正しい姿勢を保つ、適度な運動を行う、ストレッチをする、体重管理をするなど、日常生活の中でできることがあります。過剰な体重は腰への負担を増大させるため、適正体重を維持することも大切です。
セルフケアを継続的に行うことで、症状の改善だけでなく、再発予防にもつながります。医師や理学療法士から指導を受け、ご自身の状態に合ったセルフケアの方法を身につけ、日常生活に取り入れていきましょう。
まとめ
椎間板ヘルニアは、日常生活の何気ない動作で悪化してしまう可能性があります。重いものを持ち上げない、長時間の前かがみを避ける、激しい運動をしないなど、注意すべき点が多くあります。喫煙や不適切なマッサージも症状を悪化させる可能性があります。
正しい知識を持って適切なケアを行うことで、症状を和らげ、快適な生活を送ることは可能です。以下の行動をすることにより、椎間板ヘルニアの予防と改善に効果を期待できます。
- 適度な運動やストレッチ
- 正しい姿勢を保つこと
- 質の高い睡眠
- 禁煙
自己判断で治療を行うのではなく、医師の指示に従って適切な治療を受けるようにしましょう。日常生活でのセルフケアも重要です。本記事を参考に、椎間板ヘルニアを悪化させないよう、適切なケアを心がけ、健康な毎日を送りましょう。
あわせて、治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介
参考文献
- Cesar A Hincapié, Daniela Kroismayr, Léonie Hofstetter, Astrid Kurmann, Carol Cancelliere, Y Raja Rampersaud, Eleanor Boyle, George A Tomlinson, Alejandro R Jadad, Jan Hartvigsen, Pierre Côté, J David Cassidy.Incidence of and risk factors for lumbar disc herniation with radiculopathy in adults: a systematic review.Eur Spine J,2025,34,1,p.263-294
- Weimin Huang, Ying Qian, Kai Zheng, Lili Yu, Xiuchun Yu. Is smoking a risk factor for lumbar disc herniation?. Eur Spine J, 2016, 25(1), p.168-176
- 厚生労働省 2023(令和5年) 国民生活基礎調査の概況厚生労働省