コラム

椎間板ヘルニアはレントゲンでわかる?診断方法と検査の限界について

腰や首の痛みやしびれは、椎間板ヘルニアのサインの可能性があります。椎間板ヘルニアの診断にはレントゲン検査が用いられますが、レントゲンだけではヘルニアの確定診断はできません。骨の状態は確認できても、椎間板自体は写りません。

この記事では、レントゲン検査の限界やMRI検査、CT検査など、椎間板ヘルニアの診断方法について詳しく解説します。正しい知識を身につけ、不安を解消するためにも、ぜひ記事を読み進めてみてください。

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアの診断方法とレントゲンの限界

椎間板ヘルニアの検査方法と、検査で何がわかるのかについて、以下の4つを解説します。

  • レントゲンでわかること・わからないこと
  • MRI検査でわかること
  • CT検査でわかること
  • その他の検査方法(髄液検査、筋電図など)

レントゲンでわかること・わからないこと

レントゲンは、骨の状態を詳しく確認する検査です。背骨の配列や、骨と骨の間の隙間が狭くなっていないかなどがわかります。椎間板ヘルニアの場合、飛び出した椎間板によって骨と骨の間の隙間が狭くなります。レントゲンで隙間の変化を確認することにより、椎間板ヘルニアの可能性を見極めます。

しかし、レントゲンで椎間板は写りません。椎間板は軟骨でできているため、レントゲンのX線は透過してしまいます。レントゲン検査だけでは、椎間板ヘルニアと診断することはできません。骨と骨の間の隙間が狭くなっていても、必ずしも椎間板ヘルニアが原因とは限りません。

加齢に伴って椎間板の水分が減少して縮み、骨と骨の間が狭くなることもよくあります。レントゲンの所見だけで、椎間板ヘルニアと判断するのは危険です。レントゲン検査で骨に異常がない場合でも、ヘルニアの可能性は残るため注意が必要です。

MRI検査でわかること

MRI検査では、強力な磁石と電波を使って体の内部を詳細に調べることができます。レントゲンでは見えなかった、椎間板や神経の状態をはっきりと映し出します。MRI検査により、ヘルニアの有無や神経がどれくらい圧迫されているかなどを正確に診断できます。

MRI検査では、椎間板から飛び出した髄核(ずいかく)という椎間板の中心部分や、神経根の圧迫の様子まで確認できます。神経根とは、脊髄から枝分かれして、体の各部位につながる神経のことです。ヘルニアによって神経根が圧迫されると、痛みやしびれなどの症状が現れます。

MRI検査では、ヘルニアの状態を詳細に把握できるため、適切な治療方針を決定するうえで大切な情報となります。腰痛のない人の76%に椎間板ヘルニアが認められたという研究結果もあるように、画像所見と症状は必ずしも一致するとは限りません。

腰痛全体の約15~45%はファセット関節症候群によるものと言われています。神経根の圧迫症状ではなく、関節の変性による症状が出る場合もあります。

CT検査でわかること

CT検査では、X線を使って体の輪切り状の画像を作り、骨や臓器の状態を調べます。MRI検査ほど詳細な情報は得られませんが、骨の状態を詳しく確認できる点はメリットです。CT検査では、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげの有無を確認できます。

骨棘は、骨の変形によって生じる突起物で、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすことがあります。MRI検査が受けられない方や、骨の状態をより詳しく調べたい場合にCT検査が行われます。

その他の検査方法(髄液検査、筋電図など)

椎間板ヘルニアの診断には、MRI検査やCT検査以外にも、以下の2つの検査方法があります。

  • 髄液検査
  • 筋電図検査

髄液検査は、脳や脊髄の周りを流れる髄液を採取して調べる検査です。炎症や感染症などが疑われる場合に行われます。髄液とは、脳や脊髄を保護する役割を持つ液体です。髄液検査では、髄液中の細胞数やタンパク質の量などを測定し、炎症や感染の有無を調べます。

筋電図検査は、筋肉や神経の電気的な活動を測定し、神経の損傷の程度を調べる検査です。神経に電気刺激を与え、筋肉の反応を測定します。神経が損傷していると、筋肉の反応が弱くなったり遅くなったりします。

髄液検査や筋電図検査は、MRI検査やCT検査である程度診断がついた後、さらに詳しい情報が必要な場合に追加で行います。

椎間板ヘルニアの主な症状5つ

椎間板ヘルニアの症状について、以下の5つを解説します。

  • 腰痛
  • 坐骨神経痛
  • 下肢のしびれ
  • 筋力低下
  • 排尿障害

腰痛

椎間板ヘルニアの最も一般的な症状です。腰に鈍い痛みや激しい痛み、動作に伴う痛みなど、痛みの種類もさまざまです。くしゃみや咳といった腹圧のかかる動作で痛みが悪化することも特徴的です。健康な状態では、腹圧のかかる動作で腰に痛みが出ることはありません。

坐骨神経痛

椎間板ヘルニアによって、坐骨神経が圧迫されます。坐骨神経の圧迫により、お尻から太ももの裏やふくらはぎ、足先にかけて、痛みやしびれが現れます。電気が走るような鋭い痛みや焼けるような痛みが現れるのが特徴です。

下肢のしびれ

多くの場合、片側の足にしびれが現れます。しびれの程度は、軽いものから、感覚がなくなるほど重度のものまでさまざまです。靴下の履き口の締め付け感や虫が這っているような感覚、冷たい、熱いなどの温度感覚の異常を訴える方もいます。

筋力低下

椎間板ヘルニアは、筋力の低下につながることもあります。神経が圧迫されることで、足に力が入りにくくなったり、歩行が困難になったりすることがあります。つま先立ちやかかと歩きが難しくなり、進行すると足を引きずって歩くようになる可能性もあります。

排尿障害

ヘルニアによって膀胱や直腸を支配する神経が圧迫されることにより、頻尿や残尿感などの排尿障害が現れることもあります。重症の場合、排尿が困難になったり、尿失禁が起こったりすることもあります。排尿障害の症状が現れた場合は、緊急手術が必要な場合があるため速やかに医療機関を受診しましょう

椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法

椎間板ヘルニアの主な原因3つ

椎間板ヘルニアが発症する主な原因について、以下の3つを解説します。

  • 悪い姿勢
  • 日常生活での負担のかかる動作
  • 加齢による椎間板の老化

悪い姿勢

猫背や長時間同じ姿勢でいると、椎間板に大きな負担をかけヘルニアの原因となります。デスクワークや車の運転など、長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り姿勢を変えるように心がけましょう。理想的な姿勢は、耳、肩、腰、膝、くるぶしが一直線に並ぶ状態です。

日常生活での負担のかかる動作

重い物を持ち上げたり、急に腰をひねったりする動作は、椎間板に瞬間的に大きな力が加わり、損傷する可能性があります。重い物を持ち上げるときは、膝を曲げて腰を落とすようにし、腰に負担がかからないように注意しましょう。スポーツで急に体をひねる動作も、椎間板への負担が大きいため注意が必要です。

加齢による椎間板の老化

年齢を重ねると、椎間板の水分が減少し弾力性が失われます。年齢を重ねるにつれて、椎間板は乾燥してもろくなり、亀裂が生じやすくなります。若い頃に比べて椎間板が損傷しやすくなり、ヘルニアを発症するリスクが高まります。

加齢による椎間板の老化を完全に防ぐことはできませんが、適度な運動やストレッチなどで健康を維持することは可能です。

椎間板ヘルニアの保存療法の種類と効果

椎間板ヘルニアの保存療法について、以下の4つを解説します。

  • 薬物療法
  • 神経ブロック
  • 物理療法
  • 運動療法

薬物療法

痛みや炎症を抑える薬を服用します。具体的には、以下の3つです。

  • 消炎鎮痛剤:ロキソプロフェンナトリウムやインドメタシンなど
  • 筋弛緩剤(筋肉の緊張を和らげる):エペリゾン塩酸塩
  • 神経障害性疼痛治療薬(神経の働きを調整する):プレガバリン

薬物療法は、痛みや炎症を軽減する効果が期待できますが、根本的な原因を解決するものではなく対症療法としての役割があります。

神経ブロック

痛みやしびれの原因となっている神経に直接、局所麻酔薬やステロイド薬を注射します。硬膜外ブロックや神経根ブロックなど、さまざまな種類があり、炎症を抑え、痛みを軽減する効果が期待できます。神経ブロックは、痛みの悪循環を断ち切る効果が期待でき、他の治療の効果を高める目的でも使用される治療法です。

腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ治療は、年齢が若いほど早期改善に効果が期待できるという研究結果もあります。

物理療法

物理療法には、温熱療法や牽引療法、電気刺激療法、マッサージなどがあります。血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。物理療法は、体への負担が少なく、リラックス効果も期待できるため、多くの患者さんに用いられています。

運動療法

ストレッチや筋力トレーニングなど、症状に合わせた適切な運動を行うことで、体幹を強化し、再発予防にもつながります。運動療法は、自分のペースで進めることができ、長期的な効果も期待できます。

手術療法の種類と適応

保存療法で効果が見られない場合や症状が重い場合、日常生活に大きな支障がある場合などは手術療法が検討されます。手術療法について、以下の2つを解説します。

  • 椎間板ヘルニア摘出手術(Love法)
  • 経皮的内視鏡的腰椎椎間板ヘルニア摘出術(MED)

椎間板ヘルニア摘出手術(Love法)

椎間板ヘルニア摘出手術は、全身麻酔を用いて、皮膚を切開し、顕微鏡で確認しながら神経を圧迫している椎間板の一部を取り除く手術です。入院期間は1~2週間程度で、術後の痛みや合併症のリスクも比較的低いです。

経皮的内視鏡的腰椎椎間板ヘルニア摘出術(MED)

経皮的内視鏡的腰椎椎間板ヘルニア摘出術は、小さな切開部から内視鏡を挿入し、ヘルニアを摘出する手術です。体への負担が少なく、入院期間も短いというメリットがあります。傷が小さいため、術後の痛みが少なく、回復も早い傾向があります。

椎間板ヘルニアの日常生活での注意点

椎間板ヘルニアの再発を防ぎ、快適な日常生活を送るための注意点として、以下の4つを解説します。

  • 正しい姿勢
  • 適切な睡眠
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事

正しい姿勢

デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢を続けると、腰に負担がかかります。1時間に1回程度は立ち上がって体を動かしたり、ストレッチをしたりするなど、こまめな休憩を挟むようにしましょう。同じ姿勢を長時間続けることで、筋肉が緊張し、血行が悪くなり、腰痛を引き起こす可能性があります。

背中を丸めた姿勢や前かがみの状態は、椎間板に大きな圧力がかかるため意識して避けましょう。重い物を持ち上げる際は、膝を曲げて腰を落とすようにし、背中をまっすぐ保ちます。急な動作や無理な姿勢での作業は避け、腰をひねる動作もなるべく控えましょう。

負荷のかかる動作は、椎間板に大きな負担をかけ、ヘルニアの再発リスクを高めます。買い物や荷物の持ち運びの際もできるだけリュックやキャリーカートを活用し、負担を分散させる工夫をしましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説

適切な睡眠

睡眠不足は、体の回復力を低下させ、痛みを悪化させる可能性があります。質の良い睡眠を十分に取るように心がけましょう。快適な睡眠環境を整え、リラックスして眠ることで、体の回復を促進できます。寝具の硬さも腰への負担に影響するため、自分の体に合ったマットレスや枕を選びましょう。

適度な運動

ウォーキングや水泳など、腰に負担がかかりにくい運動を適度に行いましょう。激しい運動は控えるようにしてください。適度な運動は、筋肉を強化し、腰痛の予防につながります。運動を継続することで、腰回りの筋肉の柔軟性が高まり、再発リスクの軽減も期待できます。

バランスの良い食事

栄養バランスの良い食事を摂ることで、健康な体を維持し、椎間板への負担を軽減が期待できます。偏った食事は、栄養不足を引き起こし、体の機能を低下させる可能性があります。カルシウムやビタミンD、たんぱく質を意識的に摂取し、骨や筋肉の健康を保ちましょう。

まとめ

椎間板ヘルニアの検査方法には、レントゲン検査やMRI検査、CT検査があります。レントゲン検査は骨の状態を把握するのに役立ちますが、椎間板は写らないため、ヘルニアの確定診断にはMRI検査が不可欠です。MRI検査では椎間板の状態や神経の圧迫具合まで詳細に確認できます。

椎間板ヘルニアの治療には、保存療法や手術療法があり、痛みや症状によって医師と相談しながら適切な治療方法を選びましょう。椎間板ヘルニアを再発させないためにも、正しい姿勢や適切な睡眠、バランスの良い食事を意識しましょう。腰や首の痛みやしびれを感じたら、不安を抱えずに、まずは専門医に相談してみてください。

手術に至らないケースや、手術後の回復をスムーズにするためには、日常生活の過ごし方も重要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアの治療法全般と、回復をサポートする生活習慣について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介

参考文献