【椎間板ヘルニア】激痛で歩けないときの緊急対処法と受診目安
腰の激痛で歩けない、そんな想像を絶する苦しみを経験したことはありますか?椎間板ヘルニアは、背骨のクッションである椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで、耐え難い痛みやしびれを引き起こします。
この記事では、椎間板ヘルニアで激痛が走り、歩けないときの緊急対処法3選をご紹介します。すぐに実践できる冷却法や、コルセット・タオルを使った応急処置を解説します。緊急の医療処置が必要な危険な症状についても詳しく説明しますので、ご自身の状況と照らし合わせて、適切に行動できるようにしましょう。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアによる激痛で歩けないときの緊急対処法
椎間板ヘルニアで激痛が走り歩けないときの緊急対処法は以下のとおりです。
- 安静にして炎症を抑える
- コルセット・タオルで腰をサポートする
安静にして炎症を抑える
何よりもまず大切なのは、安静にすることです。痛みを感じたら、すぐに楽な姿勢で横になりましょう。椎間板ヘルニアによる痛みは、神経の炎症によって引き起こされます。安静にすることで、炎症の悪化を防ぎ、自然治癒力を高めることができます。横になる際は、膝を軽く曲げると腰への負担を軽減できます。
痛みを感じている部分にクッションや枕などを当てて支えるのも効果が期待できます。安静にする期間は、痛みの程度によって異なります。痛みが強い場合は数日間安静を保ちましょう。軽度の痛みであれば、数時間~半日程度で回復する場合もあります。痛みの状態をよく観察し、無理に動かないようにしましょう。
コルセット・タオルで腰をサポートする
コルセットやタオルを使って腰をサポートすることも、痛みを軽減するのに役立ちます。コルセットは、薬局やドラッグストアなどで購入できます。コルセットを装着することで腰を安定させ、椎間板への負担を軽減できます。コルセットがない場合は、タオルを巻いて代用することも可能です。
タオルを巻くときは、きつく締めすぎないように注意し、適度な締め付けで腰をサポートするようにしましょう。一時的な痛みの軽減には有効ですが、根本的な治療にはなりません。椎間板ヘルニアが疑われる場合は、整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
自己判断で治療を遅らせると、症状が悪化したり、慢性的な痛みに悩まされたりする可能性があります。緊急対処法はあくまで応急処置です。痛みが続く場合は、医療機関を受診し、専門医による適切な診断と治療を受けるようにしてください。
椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
すぐに受診すべき危険な症状
すぐに受診すべき危険な症状は以下のとおりです。
- 排尿障害・足の力が入らない場合
- 痛みが24時間以上続く・強まる場合
- しびれが左右対称または広範囲に及ぶ場合
- 安静にしていても痛みが強くなる場合
- 発熱や倦怠感を伴う場合(感染性の可能性)
自己判断は危険ですので、少しでも異変を感じたら、迷わず専門医に相談しましょう。
排尿障害・足の力が入らない場合
排尿障害とは、尿が出にくい、尿が出ない、尿が漏れてしまう症状が当てはまります。排尿障害や足の力が入らない、足がしびれて感覚がない場合は、緊急の医療処置が必要となる「馬尾症候群」の危険性があります。
馬尾症候群とは、膀胱や肛門、足の運動や感覚を司る神経の束「馬尾神経」が圧迫されることで引き起こされる深刻な神経障害です。通常、神経は脳からの指令を体の各部に伝え、体の各部からの情報を脳に伝える役割を担っています。馬尾神経が圧迫されると、情報伝達が阻害され、さまざまな症状が現れます。
具体的には、排尿・排便の障害や足の麻痺、性機能障害などが挙げられます。馬尾症候群は放置すると後遺症が残る可能性があり、緊急手術が必要なケースもあります。症状が現れたら一刻も早く医療機関を受診し、適切な処置を受けることが重要です。
痛みが24時間以上続く・強まる場合
痛みが24時間以上続く、または徐々に強まっている場合は、医療機関への受診をおすすめします。椎間板ヘルニアは自然に治癒することもありますが、痛みが長引く場合は炎症が悪化している場合や、神経が強く圧迫されている可能性があります。
初期段階では、炎症による痛みが主体ですが、炎症が長引くと神経へのダメージが蓄積し、慢性的な痛みへと移行するリスクがあります。神経の圧迫が強まると、しびれや麻痺などの神経症状が現れることもあります。適切な治療を受けることで、痛みを早期に軽減し、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
医療機関では、痛みの原因や程度を詳しく調べ、患者さんの状態に合わせた適切な治療法を選択します。
しびれが左右対称または広範囲に及ぶ場合
しびれが左右対称、または足やおしり、太ももなど広範囲に及ぶ場合は、脊髄や馬尾神経が圧迫されている可能性があります。脊髄は、脳と体の各部をつなぐ神経の太い束で、運動や感覚の情報伝達を担っています。しびれは、脊髄や馬尾神経の圧迫を示唆する重要なサインです。
早急に医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。MRI検査などで神経の圧迫部位や程度を正確に診断し、適切な治療方針を決定します。
安静にしていても痛みが強くなる場合
安静にしていても痛みが強くなる場合は、炎症が進行している、あるいは神経の圧迫が強まっている可能性が高いです。安静にしているにもかかわらず、痛みが強くなる場合は、すぐに病院を受診しましょう。炎症が悪化している、あるいは神経の圧迫が強まっているサインかもしれません。
放置すると、慢性的な痛みに悩まされる可能性もあるため、早期の受診と適切な治療が重要です。
発熱や倦怠感を伴う場合(感染性の可能性)
発熱や倦怠感を伴う場合は、椎間板ヘルニア以外の病気が隠れている可能性があります。椎間板炎などの感染症も考えられます。椎間板炎は、細菌感染などによって椎間板に炎症が起こる病気です。椎間板ヘルニアと同様に、腰痛や背部痛などの症状が現れますが、発熱や倦怠感などの全身症状を伴う点が特徴です。
自己判断せずに、医療機関を受診して原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。感染症が疑われる場合は、血液検査や画像検査などを行い、原因を特定します。治療には、抗菌薬の投与や、症状に応じて消炎鎮痛剤の使用、安静などが行われます。
椎間板ヘルニアの予防と再発防止策
椎間板ヘルニアの予防と再発防止策として、以下の内容を解説します。
- 日常生活での予防策
- ストレッチやエクササイズによる予防
- 再発を防ぐための生活習慣の改善
- なりやすい人の特徴と共通点
日常生活での予防策
日常生活では、以下の点に注意することで椎間板ヘルニアの予防につながります。
- 正しい姿勢を保つ
- 重いものを持ち上げるときは注意する
- 長時間の同じ姿勢を避ける
- 体を冷やさない
立っているときも座っているときも、背筋を伸ばし、良い姿勢を意識しましょう。猫背のような前かがみの姿勢は、腰椎に負担がかかりやすく、椎間板への圧力を高め、ヘルニアのリスクを高めます。耳、肩、腰、膝、くるぶしが一直線になるように意識し、顎を引いて、お腹に軽く力を入れるように心がけましょう。
座っているときは、浅く座らず、深く腰掛けて背もたれに寄りかかるようにしましょう。重いものを持ち上げるときは、膝を曲げて腰を落とし、背中をまっすぐにして持ち上げるようにしましょう。腰だけで持ち上げると、椎間板に瞬間的に大きな負担がかかり、ヘルニアを引き起こす可能性があります。
重い荷物を持つときは、リュックサックのように両肩で均等に重さを支えるようにし、片側だけに負担がかからないようにしましょう。荷物を片手で持つ場合は、こまめに持ち手を変えるように心がけてください。デスクワークなどで長時間同じ姿勢でいる場合は、30分~1時間ごとに休憩を取りましょう。
軽いストレッチや体操をする、立ち上がって歩くなどして体を動かすことが大切です。同じ姿勢を長時間続けると、特定の筋肉や椎間板に負担が集中し、ヘルニアのリスクを高めます。くしゃみや咳をするときは、お腹に力を入れて、腰への負担を軽減しましょう。
不意のくしゃみや咳で急に腹圧がかかると、椎間板に大きな圧力が加わり、ヘルニアのリスクを高める可能性があります。体が冷えると、血行が悪くなり、筋肉が硬くなってしまいます。腰を温めることで、筋肉の緊張を和らげて柔軟性が上がり、椎間板への負担を軽減できます。
ストレッチやエクササイズによる予防
ストレッチやエクササイズは、腰回りの筋肉を鍛え、椎間板への負担を軽減するのに役立ちます。ウォーキングや水泳など、腰に負担の少ない有酸素運動を続けることが大切です。筋力トレーニングでは、腹筋や背筋をバランス良く鍛えることが重要です。ストレッチで体を柔らかく保つことも、椎間板ヘルニアの予防に効果的です。
おすすめのストレッチは以下のとおりです。
- 太ももの裏側の筋肉のストレッチ
- 腸腰筋のストレッチ
- 背筋のストレッチ
太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)を伸ばすことで、骨盤の歪みを整え、腰への負担を軽減できます。ハムストリングスの柔軟性が低いと、骨盤が後傾しやすく、腰椎のカーブが崩れ、椎間板への負担が増大する可能性があります。股関節の前面にある筋肉(腸腰筋)を伸ばすことで、姿勢の改善に役立ちます。
腸腰筋が硬いと、骨盤が前傾しやすく、腰椎のカーブが過剰になり、椎間板への負担が増大する可能性があります。背中の筋肉を伸ばすことで、腰の柔軟性を高めます。背筋の柔軟性が低いと、腰椎の動きが悪くなり、椎間板への負担が増大する可能性があります。
整形外科で理学療法士に指導してもらうと、より効果的で安全なストレッチやエクササイズ方法を学ぶことができます。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説
再発を防ぐための生活習慣の改善
椎間板ヘルニアの再発を防ぐには、日常生活の改善が重要です。文献でも、反復手術による骨の広範囲な除去は、脊椎不安定性を高め、固定術が必要となる可能性があると指摘されています。以下の生活習慣に注意しましょう。
- 禁煙
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- 体重管理
- 質の高い睡眠
ニコチンは血管を収縮させ、椎間板への血流を阻害し、椎間板の変性を促進する可能性があります。栄養バランスの良い食事を摂ることで、椎間板の健康を維持できます。特に、骨や軟骨の形成に必要なカルシウムやビタミンDを積極的に摂取しましょう。
適度な運動は、腰回りの筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減します。ウォーキングや水泳など、腰に負担の少ない運動を習慣にしましょう。肥満は腰への負担を増大させるため、適正体重を維持することが大切です。体重が増加すると、椎間板にかかる負荷が増大し、ヘルニアのリスクが高まります。
睡眠不足は、体の回復力を低下させ、痛みを悪化させる可能性があります。十分な睡眠時間を確保し、質の高い睡眠を心がけましょう。
なりやすい人の特徴と共通点
椎間板ヘルニアになりやすい人には、以下の特徴があります。
- 加齢
- 遺伝
- 激しい運動や重労働
- 長時間のデスクワークや運転
- 喫煙
- 肥満
加齢とともに椎間板の水分が減少し、弾力性が失われやすいです。家族に椎間板ヘルニアの人がいる場合、遺伝的に発症リスクが高くなる可能性があります。重いものを持ち上げる作業は、腰に大きな負担をかけ、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。
上記の特徴に当てはまる人は、特に椎間板ヘルニアの予防に気を配る必要があります。日頃から正しい姿勢を意識し、適度な運動を行い、バランスの良い食事を摂るなど、生活習慣の改善を心がけましょう。
姫路市「大室整形外科」の特徴
大室整形外科の特徴として、以下の3つを解説します。
- 豊富な治療実績を持つ専門医による診断
- 保存療法と手術療法の適切な選択
- 一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療
豊富な治療実績を持つ専門医による診断
大室整形外科には、整形外科専門医が在籍し、脊椎疾患の豊富な治療経験を持っています。腰痛の原因は実にさまざまですが、その中でも椎間板ヘルニアは、腰椎の神経を圧迫することで激しい痛みやしびれを引き起こす疾患です。医学的には「腰部神経根痛」と呼ばれることもあります。
腰痛の原因はヘルニア以外にも、腰椎椎間関節症や腰部脊柱管狭窄症、筋筋膜性腰痛など、多岐にわたります。それぞれの疾患によって、痛みの性質や現れ方が異なるため、自己判断は禁物です。
大室整形外科では、患者さんの症状や生活スタイル、ご希望などを詳しく伺い、身体診察や画像検査(レントゲン、MRIなど)を組み合わせて、正確な診断を行います。常に最新の知見にもとづいた治療を提供できるよう努めています。
保存療法と手術療法の適切な選択
大室整形外科では、保存療法を第一に考え、患者さんの状態に合わせて最適な治療法を選択します。保存療法は、手術を行わずに薬物療法や理学療法、運動療法、装具療法など、さまざまな方法を組み合わせて症状の改善を図ります。
消炎鎮痛剤の内服や湿布、神経ブロック注射、コルセットの着用、運動療法などが挙げられます。保存療法は、体への負担が少なく、日常生活への影響も最小限に抑えられるというメリットがあります。個人差はありますが、多くの場合、保存療法で症状が改善します。効果がない場合や症状が重い場合は、手術療法を検討します。
手術療法には、内視鏡を用いた低侵襲手術や、従来の開窓手術など、さまざまな方法があります。それぞれのメリット・デメリットを患者さんと一緒に考え、最善の方法を選択します。手術が必要な場合でも、患者さんの不安を軽減するために、手術の内容や術後のリハビリテーションについて丁寧に説明します。
保存療法と手術療法のどちらを選択する場合でも、患者さんの状態を正確に把握し、治療方針を決定します。治療期間や費用についても事前に説明し、納得いただいたうえで治療を進めていきます。ヘルニアの状態や神経症状の程度、患者さんの年齢や全身状態、生活背景などを総合的に判断し、最適な治療法を選択することが重要です。
一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療
大室整形外科では、すべての患者さんに対してオーダーメイドの治療プランを作成します。患者さんの年齢や症状、生活スタイル、仕事内容などを考慮し、日常生活への影響を最小限に抑えながら、効果的な治療を提供することを目指しています。デスクワークが多い方には、正しい姿勢の指導やストレッチ方法の指導を行います。
スポーツをしている方には、競技復帰に向けたリハビリテーションプログラムを作成します。スポーツの種類やレベル、けがの状態に合わせて、段階的に運動負荷を上げていくことで、安全に競技復帰を目指します。再発予防にも力を入れており、日常生活で気をつけるべき点や自宅でできるエクササイズなどもアドバイスします。
患者さんとのコミュニケーションを大切にし、疑問や不安があればいつでも相談できる環境を整えています。患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療を提供することで、早期の回復と快適な日常生活の獲得をサポートします。
あわせて、治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介
まとめ
椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛を感じたら、まずは安静にし、患部を冷やし、腰をサポートしましょう。痛みが続く、強まる、しびれが広範囲に及ぶ、排尿障害がある、安静にしても痛みが引かない、発熱や倦怠感を伴うといった場合は、すぐに医療機関を受診してください。
適切な診断と治療を受けることで、日常生活への影響を最小限に抑えられます。再発防止のためにも、日常生活での姿勢や動作、生活習慣に気を配り、腰への負担を軽減することが大切です。ヘルニアの予防や再発防止として、以下の対策を行いましょう。
- 正しい姿勢を保つ
- 重いものを持ち上げるときに注意する
- 長時間の同じ姿勢を避ける
- 体を冷やさない
- 適度な運動をする
- 禁煙する
- バランスの良い食事を摂る
- 適正体重を維持する
- 質の高い睡眠を確保する
ご自身の体と向き合い、健康な毎日を送るために、少しでも情報が役立てば幸いです。
症状の程度によって治療の選択肢やアプローチも異なるため、自分がどのレベルに該当するのかを知っておくことも重要です。以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に分類し、それぞれに合った治療法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴!治療法も解説
参考文献
Gerald Musa, Rossi E C Barrientos, Serik K Makirov, Gennady E Chmutin, Gennady I Antonov, Alexander V Kim, Olzhas Otarov. Repeat discectomy for recurrent same level disc herniation: A literature review of the past 5 years. Surg Neurol Int, 2023, 14, p.100