「腰痛で寝ると痛いけど、立つと楽」な症状は対策できる!原因やすぐにできる対策
夜、布団に入って横になると腰がズキズキ痛むのに、朝になって立ち上がると不思議と楽になる。そんな経験はありませんか?
その痛みは、あなたの体が発している重要なサインの可能性があります。単なる腰痛と軽視していると、症状が悪化してしまう場合も考えられます。
痛みの背景には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気から、日中の姿勢の癖など、さまざまな原因が隠されています。原因が1つではないからこそ、ご自身の状況に合った正しい対処法を知ることが大切です。
この記事では「寝ると痛い・立つと楽」の腰痛の正体をわかりやすく解説します。その日から試せるセルフケアや寝具の選び方もご紹介します。つらい夜の痛みから解放され、朝までぐっすり眠るための参考にしましょう。
当院では、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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「寝ると痛い・立つと楽」な腰痛の主な原因
「寝ると痛い・立つと楽」な腰痛の主な原因として、以下の4つが考えられます。
- 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症
- 筋肉の緊張や骨盤の歪み・姿勢の問題
- 炎症性腰痛
- 合わない寝具による身体への負担
椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症
「寝ると痛い」症状の背景には、背骨にあるクッション(椎間板)や神経が関係していることがあります。代表的な病気が「椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」であり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 椎間板ヘルニア:椎間板の中身が外に飛び出し、神経を圧迫する
- 腰部脊柱管狭窄症:背骨のトンネル(脊柱管)が狭くなり、神経を圧迫する
椎間板は加齢で水分が減り硬くなる(椎間板変性)ため、傷つきやすくなりヘルニアのリスクが高まります。また、仰向けで足を伸ばす姿勢は神経の圧迫が強まりやすく、立ち上がると背骨が自然なカーブに戻り痛みが和らぐことがあります。足のしびれや広がる痛みを伴う場合は要注意です。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの基本的な原因や症状、整形外科で行われる治療法の流れについて、ポイントをわかりやすく解説しています。
>>椎間板ヘルニアとは?原因・症状・治療法を解説
筋肉の緊張や骨盤の歪み・姿勢の問題
夜間に感じる腰の不調は、筋肉の緊張や骨盤の前傾姿勢、いわゆる「反り腰」が関係している場合があります。長時間のデスクワークなどで同じ姿勢を続けると、腰まわりの筋肉がこわばり、血流が滞ることで不快感や痛みを感じやすくなることがあります。
特に反り腰は、仰向けで寝た際に腰が浮いて筋肉がリラックスしにくくなり、睡眠中も負担がかかりやすくなる可能性があります。ご自身で簡単にチェックする方法として、以下の手順があります。
- 壁にかかと、お尻、背中をつけて立つ
- 腰と壁のすき間に手を入れる
- 手のひらがスッと入る程度なら正常、こぶしが入る隙間があると、反り腰の可能性あり
このような状態では、仰向けで寝ると腰に負担がかかりやすいです。一方、立ち姿勢では骨盤が自然な位置に戻ることで、筋肉の緊張が緩和され、痛みが軽減されると感じる方もいます。
炎症性腰痛
夜間や安静時に腰痛が悪化する場合、炎症性腰痛の可能性があります。一般的な腰痛とは異なり、体の免疫反応によって関節に炎症が起こることで生じるタイプの腰痛です。代表的な疾患に「強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)」があり、背骨や骨盤の関節に慢性的な炎症が起きることで痛みが現れます。
炎症性腰痛の特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 安静時に痛む:特に夜間や明け方に痛みが強くなる
- 運動で軽減する:朝のこわばりが、動くうちに楽になる
- 痛みが長く続く:徐々に始まり、3か月以上慢性的に続いている
炎症性腰痛の多くは40歳以下で発症するとされています。これらの症状は、一般的な腰痛と区別がつきにくく、見過ごされがちです。放置すると関節の動きが制限される可能性があるため、注意が必要です。
複数の項目に当てはまる場合は、自己判断で済ませずに、整形外科、特に脊椎を専門とする医師への相談をおすすめします。
合わない寝具による身体への負担
合わない寝具、特にマットレスの硬さは、腰痛の一因となることがあります。毎晩6〜8時間ほど体を預ける寝具が、体に合っていないと、寝ている間に腰へ余計な負担がかかります。そのため、血行不良や筋肉の緊張を引き起こします。
マットレスの「柔らかすぎ」「硬すぎ」は、以下のような問題を招く可能性があります。
マットレスの状態 | 体への影響 | 詳細 |
柔らかすぎる | 腰の沈み込みで不自然な姿勢に | ・お尻など体の重い部分が深く沈み「く」の字に曲がった状態に ・寝返りが打ちにくく、血行が滞りやすくなる |
硬すぎる | 腰が浮いて筋肉が休まらない | ・腰が支えられず、肩甲骨とお尻だけで体を支える形へ ・筋肉が緊張しやすく、反り腰の方には負担が大きい場合も |
理想的なマットレスは、横から見たときに背骨の自然なS字カーブが保たれるものです。立ったときの姿勢をそのまま横にしたような状態を保てる寝具が、体への負担を減らすとされています。起床時に体が痛い、夜中に何度も目が覚める、マットレスの腰の部分がへこんでいる、などのサインがあれば、寝具を見直しましょう。
夜間の腰痛を和らげるセルフケア
夜間の腰痛を和らげるセルフケアとして、以下の4つを解説します。
- 腰の負担を減らす寝姿勢(膝下クッション・横向き・抱き枕)
- 寝る前の簡単ストレッチ
- 体圧分散型マットレス・枕
- 市販の湿布・痛み止め
ご自身の体をいたわる時間として、ぜひ試してみてください。
腰の負担を減らす寝姿勢(膝下クッション・横向き・抱き枕)
寝姿勢は腰痛に大きく影響します。特に「寝ると痛く、立つと楽」な方は要注意です。仰向けで寝る場合、膝下にクッションを入れると骨盤の傾きが緩和され、腰の反りが軽減します。
横向きで寝る場合は、抱き枕や膝の間のクッションを使うと体のねじれを防ぎ、骨盤を安定させることができます。痛みが出にくい向きを選び、自分にとって楽な姿勢を見つけることが大切です。
寝る前の簡単ストレッチ
日中の活動やデスクワークで、腰まわりの筋肉は知らず知らずに硬くなっています。寝る前に筋肉をほぐしてあげることが、夜の痛みの予防につながります。血行が良くなり、心も体もリラックスして、スムーズに眠りにつけます。
寝る前の5分でできるおすすめストレッチを2つ解説します。膝抱えストレッチ(腰の筋肉を伸ばす)の方法は以下の流れです。
- 仰向けに寝て、両方の膝を立てる
- 息を吐きながら、両手で膝をゆっくりと胸の方へ引き寄せる
- 腰からお尻にかけて、じわっと伸びるのを感じる
- この状態で、深い呼吸をしながら20〜30秒キープする
お尻のストレッチ(お尻の奥の筋肉を伸ばす)は以下の手順で行います。
- 仰向けに寝て、右膝を立てる
- 左足のくるぶしを、右膝の上に乗せて、数字の「4」の形を作る
- 右足の太ももの裏を両手で持ち、ゆっくり胸の方へ引き寄せる
- 左のお尻が伸びるのを感じながら、20〜30秒キープする
- 反対側の足も同じように行う
ぬるめのお風呂(38〜40℃)にゆっくり浸かるのもおすすめです。体が芯から温まり、筋肉の緊張がほぐれて血行が良くなります。
体圧分散型マットレス・枕
体圧分散型のマットレスは、腰など一部に負担が集中しないよう体重を全体に分散し、寝ている間のストレスを軽減します。枕も重要で、高さが合わないと首や肩に力が入り、結果的に腰にも影響することがあります。首の自然なカーブに合った枕を選ぶことが大切です。
専門店で試したり、相談したりしながら、自分に合った寝具を選びましょう。
市販の湿布・痛み止め
強い痛みがつらいとき、市販の湿布薬や痛み止めは一時的な対処として役立ちます。ただし、痛みの「原因」を治すものではなく、あくまで症状を緩和するための対症療法です。
湿布の選び方は次のとおりです。
- 冷湿布:冷感で炎症を抑える(患部が熱っぽい・急に痛くなったとき)
- 温湿布:血行を促し、筋肉をほぐす(慢性的なこわばりや鈍い痛みに)
迷った場合は、心地よく感じる方を選んでも問題ありません。痛みが続く場合は、自己判断で薬を使い続けず、専門の医療機関を受診してください。
痛みが続く場合の診断・治療
痛みが続く場合の診断・治療について、以下の3つを解説しています。
- 精密検査で原因を特定(レントゲン・MRI)
- 保存療法
- 手術療法
精密検査で原因を特定(レントゲン・MRI)
腰痛の適切な対処には、まず原因を正確に把握することが重要です。整形外科では、問診や診察に加えて、必要に応じて以下の検査が行われます。
- レントゲン(X線)検査:骨の変形や骨折、背骨の並びを確認する基本的な検査
- MRI検査:椎間板や神経など軟部組織を詳しく映し出す検査
腰椎すべり症や変形性腰椎症などの骨の異常はレントゲンで確認されることが多いです。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの神経や椎間板に関わる疾患はMRIでの評価が重要です。症状だけでは原因の特定が難しい場合もあるため、これらの検査を通じて正確に診断し、適切な治療方針を立てていきます。
保存療法
検査で腰痛の原因がわかっても、多くの場合すぐに手術を行うわけではありません。まずは、体への負担が少ない「保存療法」から治療を始めるのが一般的です。保存療法とは、手術以外の方法で症状の改善を目指す治療法です。代表的な方法は以下のとおりです。
治療法 | 内容 |
リハビリテーション(理学療法) | 理学療法士の指導でストレッチや筋力トレーニングを行い、体の使い方を見直す |
薬物療法 | 痛みや炎症を抑える薬(NSAIDs)、筋弛緩薬、神経性疼痛治療薬などを使い分ける |
ブロック注射 | 神経の近くに麻酔薬を注射し、痛みを一時的に和らげてリハビリを進めやすくする |
症状や原因に応じて、これらの治療を組み合わせながら進めていきます。いずれも、痛みの根本改善や再発予防を目指す大切なアプローチです。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説
手術療法
保存療法で改善がみられず、足の麻痺や排尿・排便障害などがある場合は、手術を検討します。手術は最終的な選択肢の一つであり、必要性を慎重に判断し、十分に話し合ったうえで方針を決めます。
近年は、筋肉への負担が少なく回復も早い「低侵襲手術」が主流で、内視鏡を用いた手術などが行われています。また、現時点でエビデンスがしっかり確立したものではありませんが、自己血液や細胞を活用した再生医療の研究も進んでおり、今後の新たな選択肢となる可能性があります。
まとめ
「腰痛で寝ると痛いけど、立つと楽」という、不思議な腰痛の原因は、以下のようにさまざまな要因が考えられます。
- 反り腰などの姿勢の問題
- 筋肉の緊張
- 合わない寝具
- 椎間板ヘルニア
まずは、寝るときの姿勢を工夫したり、寝る前の簡単なストレッチを試したりと、ご自身でできる対策から始めてみてください。セルフケアを続けても痛みが改善しない場合や、足にしびれが出るような場合は、放置せず、早めに受診しましょう。
痛みの裏に隠れた本当の原因を突き止めることが、快適な眠りを取り戻す一番の近道です。一人で悩まず、整形外科などの専門家に相談しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が避けるべき行動を7つに絞って解説しています。日常生活でうっかりやってしまいがちな動作が、悪化の原因になっているかもしれません。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
参考文献
van Os WK, Alvarez-Jimenez R, Cohen SP, Stojanovic MP, Ruiz-Lopez R, Van Zundert J, Kallewaard JW. Discogenic Low Back Pain. Pain Pract, 2025, 25(7), p.e70062.