腰脚に痛みやしびれがある人は、椎間板ヘルニアの可能性があります。椎間板ヘルニアは、椎間板組織の一部が飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす病気です。長時間のパソコン作業や車の運転、重い荷物の持ち運びなど、日常生活の行動が、椎間板ヘルニアのリスクを高める場合があります。

この記事では、椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴や、効果的な予防方法、症状が悪化した場合の治療法などを解説します。自分の症状をチェックし、できる予防策を学び、健康的な毎日を送りましょう。

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴5選

椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴は以下のとおりです。

• デスクワーク中心の生活である
• 長時間運転をする
• 重い荷物を頻繁に持つ
• 猫背気味である
• 運動不足である

デスクワーク中心の生活である

長時間のデスクワークは、椎間板ヘルニアのリスクを高める要因の一つです。座る姿勢では上半身の体重が椎間板に集中しやすく、腰に負担がかかりやすいです。長時間のデスクワークは、腰や背中の筋肉が衰え、姿勢が悪くなる傾向があります。姿勢が悪くなると、椎間板への負担が増す可能性があります。

デスクワークは、1時間に1回は歩いたり、軽いストレッチをしたりする休憩が重要です。椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、パソコンモニターは目線の高さに合わせるなど、正しい姿勢を意識することが大切です。

長時間運転をする

長時間運転は、椎間板ヘルニアのリスクを高めやすいです。運転中は、路面からの振動や同じ姿勢を長時間続けるため、腰に負担をかけやすいです。長距離トラックの運転手やタクシー運転手は、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。

長時間運転をする際は、こまめな休憩が大切です。1～2時間に1回は車を降りて、軽いストレッチや散歩をして体を動かしましょう。運転中は、シートに深く腰掛け、背もたれを少し後ろに傾け、ハンドルとペダルの操作ができる位置に調整するなど、正しい姿勢を保つことが大切です。

重い荷物を頻繁に持つ

重い荷物を持ち上げる際に、腰に負担がかかるため、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。中腰の姿勢で重い荷物を持ち上げると、椎間板への負担が増す可能性があります。肉体労働に従事する人は、注意が必要です。重い荷物を持ち上げる際は、脚の筋肉を使って持ち上げる姿勢を意識することが重要です。

膝を曲げて腰を落とし、背中をまっすぐに保ち、荷物を体に近づけて持ち上げましょう。重い荷物を運ぶ際は、台車の使用も有効です。持ち上げる前に、荷物の重さや運ぶ高さを確認し、安全に作業できるか判断しましょう。

猫背気味である

猫背気味の姿勢は、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。猫背は、背中が丸まり、腰が前かがみになるため、椎間板に圧力をかけ、変形を促進する原因につながります。長時間の悪い姿勢は、徐々に変性を進行させるため、若年層でも発症リスクを高める可能性があります。

日頃から正しい姿勢を意識しましょう。デスクワークやスマートフォンの使用中は、定期的に姿勢をチェックし、背筋を伸ばすことを心がけます。壁に背中をつけて立つ練習や、肩甲骨を寄せるストレッチも効果的です。

運動不足である

運動不足は、腹筋や背筋などの体幹の筋肉が衰え、姿勢が悪くなるため椎間板ヘルニアのリスクを高めます。運動不足は、椎間板への栄養供給を低下させ、椎間板の変性を促進する可能性があります。

ウォーキングや水泳、自転車など、腰に負担の少ない運動を習慣的に行うことが大切です。効果に個人差はありますが、毎日30分程度のウォーキングを目標にする、週に2～3回、20～30分程度を設定するなど、無理のない範囲の継続を目指しましょう。

椎間板ヘルニアの予防法5選

椎間板ヘルニアの予防法として以下の5つを解説します。

• 適度な運動
• ストレッチ
• 禁煙
• 体重管理
• デスクワークの工夫

椎間板ヘルニアの正しい知識にもとづいた予防策を実践することで、発症リスクの低下に期待できます。

適度な運動

適度な運動は、椎間板ヘルニアの予防に効果的です。有酸素運動は、体幹の筋肉を鍛え、姿勢を維持するのに役立ちます。運動不足や腰痛がある方は、以下の種類と特徴から自分に適した運動を取り入れましょう。

• ウォーキング：腰回りの筋肉強化や椎間板への負担軽減
• 水泳：浮力で腰への負担が軽減、腰痛持ちの方に適した運動
• 自転車：腰への負担が少なく、下半身の筋力強化に効果的

軽い運動から始め、徐々に強度や時間を増やしましょう。過度な運動は、逆効果になる場合があるため、ご自身の体力に合わせた無理のない範囲で行うことが重要です。

ストレッチ

ストレッチは、椎間板ヘルニアの予防に効果的です。体を柔らかくすることで、筋肉の緊張を和らげ、椎間板への負担軽減を図れます。ストレッチは、毎日継続することが大切です。ストレッチは、反動をつけたり、急激に動かしたりせず、深呼吸をしながらゆっくりとした動作で行います。

痛みを感じる場合は、無理せず中止してください。入浴後に行うと、効果的に筋肉を伸ばしやすくなります。

禁煙

喫煙は、椎間板の健康に悪影響を与える可能性があります。詳細な数値については、複数の研究で結果が異なりますが、喫煙者は非喫煙者と比べ、椎間板ヘルニアのリスクを高める可能性があるという報告があります。椎間板への血流を阻害し、栄養不足につながり、椎間板の変性が促進するリスクがあります。

禁煙は、椎間板への血流を改善し、健康な状態を保つために重要です。喫煙習慣のある方は、禁煙外来などを利用し、医師の指導のもと禁煙に取り組むことをおすすめします。

体重管理

体重が増加すると、腰椎への負担が大きくなり、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。内臓脂肪の蓄積は、炎症を引き起こす物質を産生し、椎間板の変性を促進する可能性があります。適正体重を維持できれば、腰への負担軽減が期待でき、ヘルニアの予防に役立つ可能性があります。

食生活の改善や適度な運動を心がけ、体重管理を行いましょう。

デスクワークの工夫

デスクワーク中心の生活を送る方は、定期的に体を動かす習慣を身につけましょう。1時間に1回程度は立ち上がり、腰の負担軽減をしてください。椅子に座るときは、背もたれの角度を約95°に調整し、腰にクッションを挟むなど、正しい姿勢を意識しましょう。

パソコン作業を行う際は、モニターの位置を正面に向け、キーボードとマウスの位置も、操作しやすい位置に配置することが大切です。スタンディングデスクの導入も、腰への負担軽減に効果的です。

椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選｜悪化させない方法

椎間板ヘルニアの治療法4選

椎間板ヘルニアの主な治療法は、以下の4つです。

• 薬物療法
• 理学療法
• 手術療法
• 装具療法

薬物療法

薬物療法は、主に痛みや炎症を抑えることを目的として行います。椎間板ヘルニアの痛みは、神経根の炎症や圧迫によって引き起こされている可能性があります。炎症や神経への刺激を鎮めるために、使用される薬は以下のとおりです。

• 非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)：炎症と痛みを軽減する
• 筋弛緩薬：筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する
• 神経障害性疼痛治療薬：しびれや神経痛などの神経障害性の痛みを和らげる
• ビタミンB12製剤：神経の働きを維持する
• 貼り薬や塗り薬：局所的に痛みを軽減する

非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、痛みや腫れが強い初期段階に処方されますが、胃腸障害などの副作用が現れる可能性があるため、医師の判断が必要です。筋弛緩薬は、筋肉の緊張を緩和することで、痛みを和らげますが、眠気やふらつきなどの副作用が現れる場合があるため、運転に注意が必要です。

神経障害性疼痛治療薬は、椎間板ヘルニアによるしびれや痛みなどの神経障害性疼痛に作用して緩和を図ります。神経障害性疼痛薬は、眠気やめまいなどの副作用に注意が必要です。

ビタミンB12製剤は、神経の働きを維持するために必要な栄養素であり、神経障害性疼痛の改善の可能性があります。貼り薬や塗り薬は、消炎鎮痛成分が配合されたものが多く、局所的に作用するため、全身性の副作用が少ない傾向があります。

薬物療法は、それぞれ作用機序や効果、副作用などが異なるため、医師の指示に従って正しく服用することが重要です。複数の薬を併用する場合があり、副作用が現れた場合は、医師に相談しましょう。

理学療法

理学療法は、体の機能回復や痛みの軽減を目的とした治療法です。椎間板ヘルニアの理学療法は、患者さんの状態に合わせて、以下の方法を組み合わせて行います。

• 運動療法：筋肉を強化し、関節の柔軟性を高める
• 牽引療法：牽引装置を用いて、椎間板の圧力を軽減する
• 温熱療法：患部を温めて血行を促進させる
• 電気刺激療法：電気を用いて、痛みの軽減や筋力低下の予防をする

運動療法は、ストレッチや筋力トレーニングなど、患者さんの状態に合わせた運動プログラムを作成します。体幹を鍛えると、姿勢の維持や腰への負担軽減に効果的です。

牽引療法は、椎間板にかかる圧力を軽減することで、痛みの緩和や神経の圧迫の改善が期待できます。症状によっては悪化させる可能性もあるため、医師の判断が必要です。

温熱療法は、温罨法やホットパックなどを用いて患部を温め、血行を促進する治療法です。筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する効果があります。

電気刺激療法は、低周波や高周波の電気を用いて、筋肉を刺激する治療法です。痛みの軽減や筋力低下の予防に期待できます。理学療法は、継続して行うことが重要です。治療効果を高めるためには、自宅でも自主トレーニングを行いましょう。

手術療法

保存療法で効果が見られない場合や、症状が重い場合には手術療法を検討します。手術が検討される症状は、以下のとおりです。

• 激しい痛みやしびれが続く
• 排尿・排便障害がある
• 筋力低下が進行し歩行困難がある
• 日常生活に支障が出ている

膀胱直腸障害は、神経が重度に圧迫されている可能性があり、医師が緊急で評価する必要があります。手術は、後方椎間板切除術や椎間固定術、経皮的椎間板療法など、さまざまな種類があります。患者さんの状態やヘルニアの部位、症状の程度に応じて最適な手術方法を選択します。

以下の記事では、椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛に襲われた際の応急処置や、すぐに受診すべき症状の見極めポイントについて詳しく解説しています。
>>【椎間板ヘルニア】激痛で歩けないときの緊急対処法と受診目安

装具療法

装具療法は、コルセットを装着することで、患部を固定し安静を保つ治療法です。痛みが強い時期や、手術後のリハビリテーション期間などに用いられます。コルセットは、腰椎への負担軽減や姿勢の安定化を目的として使用される場合があります。装具療法は、他の治療法と組み合わせる場合が多いです。

医師の指示に従って、適切な装具を選択し、正しく装着することが重要です。コルセットの装着時間は、症状や活動レベルによって異なりますが、長時間装着し続けると、筋肉が弱る可能性があるため、医師の指示に従いましょう。

まとめ

椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴は、以下のとおりです。

• デスクワーク中心の生活である
• 長時間運転をする
• 重い荷物を頻繁に持つ
• 猫背気味である
• 運動不足である

日常生活の行動が椎間板ヘルニアのリスクを高める要因となります。日頃から正しい姿勢を意識し、適度な運動やストレッチを心がけることで、椎間板への負担を軽減し、ヘルニア予防につながります。

椎間板ヘルニアの症状が現れた場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。症状に合わせた適切な治療を受けることで、痛みやしびれの改善が期待でき、日常生活への早期復帰を目指せます。治療後も再発予防に努め、健康的な毎日を送りましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法｜症状を和らげるポイントも解説

参考文献

Weimin Huang, Ying Qian, Kai Zheng, Lili Yu, Xiuchun Yu.Is smoking a risk factor for lumbar disc herniation?.Eur Spine J,2016,25,1,p.168-176