コラム

膝が痛いのは椎間板ヘルニアが原因?放置すると危険な症状と改善方法

レントゲンでは異常なし、マッサージをしてもすぐにぶり返す原因不明の膝の痛みに、お悩みではありませんか。繰り返す膝の痛みの原因は、椎間板ヘルニアの可能性があります。60歳以降の膝の痛みでは、椎間板ヘルニアを発症している可能性があります。

この記事では、腰のヘルニアが膝の痛みを引き起こす仕組みや放置すると危険な症状、改善方法などを詳しく解説します。膝の痛みの原因が椎間板ヘルニアの影響であるのか、原因の一つである可能性として参考にしてください。

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴: 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野:脊椎・脊髄外科

資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

椎間板ヘルニアで膝が痛む仕組み

膝の痛みの原因が必ずしも膝にあるとは限りません。60歳以降の膝の痛みは、椎間板ヘルニアが関係している症例が報告されています。椎間板ヘルニアは、加齢や腰への負担で椎間板が変形し飛び出した状態です。飛び出した神経が圧迫されることで、関係している体の部位に痛みやしびれが生じます。

お尻から足先までの神経を支配しているのが、坐骨神経で太ももの前から膝前面にかけての神経を支配しているのが大腿神経です。大腿神経がある腰の3番目と4番目の間で、ヘルニアが生じると膝周囲に痛みやしびれが伴う大腿神経痛が出現する可能性があります。長引く膝の痛みや違和感がある場合は、膝に問題が無くても、MRIなどの画像診断を含めた診断が必要です。腰のヘルニアの場所によって、膝の前面(大腿神経由来)が痛む場合と、膝の外側や裏側(坐骨神経由来)が痛む場合があります。

ヘルニアと変形性膝関節症の違い

膝を起こす原因の一つに変形性膝関節症があります。変形性膝関節症は、膝関節の軟骨が加齢などによってすり減ることで、痛みが生じる病気です。椎間板ヘルニアとは、痛みや原因、症状が異なります。椎間板ヘルニアと変形性股関節症との違いは、以下の表を参考にしてください。

比較項目 椎間板ヘルニア 変形性膝関節症
原因 腰の神経の圧迫 膝関節の軟骨のすり減り
痛みの場所 ・膝の外側や裏側
・ひざ下
・膝の内側
・膝の前面側
痛みの特徴 ・しびれ
・鋭い痛み
・動き始めや立ち上がりのとき
・歩き続けると痛みが強くなる
・安静にすると和らぐ
伴う症状 ・腰痛
・お尻の痛み
・足の指に力が入りにくいお
・膝の腫れ
・熱感
・水がたまる
・O脚変形
医師の診察 ・膝蓋腱反射
・太ももの筋力確認
・感覚検査
・膝関節の可動域範囲の確認
・膝関節の腫れ
・膝関節の変形
・歩き方

正確な診断には、問診や診察、必要に応じてMRIなどの詳しい検査が必要です。膝の痛みでお悩みの方は、自己判断せず整形外科の専門医にご相談ください。

椎間板ヘルニアによる痛みがある場合は、症状を和らげるための対処法を知っておくことも大切です。以下の記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法や、家庭でできる応急処置について解説しています。
>>椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法|家庭でできる応急処置も紹介

椎間板ヘルニアが原因で起こる膝の症状

椎間板ヘルニアが進行すると、痛み以外の症状が現れる可能性があります。以下の症状について、解説します。

  • 筋力低下
  • 感覚麻痺
  • 排尿・排便障害(馬尾症候群)

筋力低下

足に力が入りにくい感覚は、筋力低下を発症している可能性があります。椎間板ヘルニアで神経圧迫が生じると、筋肉を動かす神経の伝達が妨げられます。神経伝達の妨げは、痛みをかばうことで筋肉の衰えにつながる可能性があります。太ももの大腿四頭筋やハムストリングスの筋肉が衰えると、膝関節の支えが弱まり歩行に影響します。

以下の変化は、筋力低下が起きている可能性があります。

  • 階段を下りるときに、膝が不安定に感じる
  • 平らな場所でつまずく
  • スリッパが脱げやすい
  • 片足立ちで靴下を履くのが難しい

筋力低下の進行は、日常生活に影響します。筋力低下は一度進行すると、回復に時間がかかる場合が多いため、早期発見・治療が大切です。

感覚麻痺

椎間板ヘルニアでは、圧迫される神経の部位によって、しびれや感覚の異常が膝の周囲から足にかけて現れることがあります。感覚の異常には、ピリピリ・焼けるように感じるなどの「しびれ(感覚の過敏)」と触っても感覚が鈍い「感覚低下」に分けられます。

感覚が鈍るとケガや靴擦れによる痛みや、ストーブの火傷にも気づきにくいため日常生活でのトラブルに注意が必要です。感覚の異常は、神経損傷が進行している可能性があります。症状や異変を感じている部分を正確に医師に伝えることが、適切な診断と治療に役立ちます。

排尿・排便障害(馬尾症候群)

排尿・排泄障害は、椎間板ヘルニアの症状の中で緊急性が高い状態です。馬尾神経は、排尿・排便を調節する役割を担っています。馬尾神経が麻痺すると、尿や便が出せなくなったり、漏れたりします。治療が遅れると後遺症が残る可能性があるため、体の変化を注意深く見守り、早期に適切な処置を検討することが大切です

排尿・排便障害には、主に以下の変化を感じやすいです。

  • 尿が出ない、または出にくい
  • 残尿感がある
  • 尿意や便意がないのに、失禁する
  • お尻周りの感覚がない
  • 会陰部の感覚が麻痺している

上記の症状が現れた場合は、検査で状態を確認したうえで手術も検討されます。治療が遅れるほど回復も遅れるため、早期に受診しましょう。椎間板ヘルニアでは日常生活の行動が症状を悪化させることもあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアで避けたほうがよい行動や生活上の注意点について解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7つ|悪化させない方法

椎間板ヘルニアによる膝の痛みの対処方法

一般的に、患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせ、複数の治療法を組み合わせることが推奨されています。具体的な4つの治療法を解説します。

  • 薬物療法
  • ブロック注射
  • 理学療法
  • 手術療法

薬物療法

薬物療法は、つらい痛みをコントロールするための基本治療です。痛みの原因である炎症を抑えたり、過敏になった神経を落ち着かせたりする薬を使います。痛みが和らぐと、気持ちも前向きになり、リハビリなど次の治療ステップへ進みやすくなります。主に使われる薬には、以下の種類があります。

薬の種類 主な働き
非ステロイド性抗炎症薬 ・痛み止め
・炎症を鎮める
神経障害性疼痛治療薬 ・鋭い痛みの緩和
・しびれの緩和
筋弛緩薬 ・筋肉の緊張緩和
・血行促進
・痛みの軽減
ビタミンB12製剤 神経の修復

複数の薬を組み合わせて使用する場合がありますが、効果には個人差があり、担当医の判断で処方されます。薬の効果は個人差があるため、医師と相談のうえで、ご自身に合った薬を見つけていきましょう。

ブロック注射

ブロック注射は、飲み薬だけで痛みが十分にコントロールできない場合や、日常生活に影響する際に検討します。原因部位の神経近くに、直接薬を投与する治療法です。ブロック注射のメリットは、短時間で効果を実感しやすくなることです。痛みによる筋緊張を和らげる効果も期待できます。

痛みが強い時期にブロック注射を行うことで、つらい症状の緩和が図れ、根本的な治療である理学療法に取り組めるようになります。

理学療法

理学療法は、薬や注射と並行して行われる治療です。痛みを抑えるだけでなく、痛みが再発しにくい体作りを目的としています。理学療法の内容は、運動療法、物理療法、日常生活指導の3つです。

運動療法は、腰の骨を支えるために腹筋や背筋などの体幹を鍛えます。ピラティス運動は、機能改善に役立つ可能性が報告されており、硬くなったお尻や太ももの筋肉を柔らかくすることも大切です。物理療法は、ホットパックで体を温めたり、特殊な電気を流したりすることで、血流改善と筋肉の緊張をほぐす役割が期待できます。

日常生活指導は、正しい姿勢の保ち方や、物を持ち上げるときの体の使い方など、日常生活での注意点を学びます。理学療法の有効性を感じるには時間はかかりますが、根本的な改善を目指す効果が期待できる手段の一つです。

手術療法

手術療法は、治療を継続しても改善されない場合に検討します。以下の場合には、手術療法を検討する必要があります。

  • 保存療法を続けても改善しない
  • 麻痺が明らかに進行している
  • 排尿・排便障害(馬尾症候群)がある

手術の目的は、椎間板ヘルニアが生じている椎間板を取り除き、神経への圧迫を改善することです。最近では、内視鏡カメラを使用し、体への負担が少ない手術が主流です。内視鏡カメラによる手術は、傷跡が小さく、入院期間も短くなりやすいです。

手術は最終的な選択肢ですが、症状によっては有効な治療手段の一つになります。ご自身に最適な治療法は、医師とよく相談し納得したうえで選んでいくことが大切です。

手術を検討する際には、合併症や再発などのリスクについても理解しておくことが重要です。以下の記事では、椎間板ヘルニア手術のリスクや合併症、失敗を避けるためのポイントを解説しています。
>>椎間板ヘルニア手術のリスクとは?合併症と失敗を避けるポイント

まとめ

原因不明の長引く膝の痛みには、椎間板ヘルニアが生じている可能性があります。椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、膝の痛みやしびれに影響します。椎間板ヘルニアを放置すると、足の筋力低下や感覚麻痺など、日常生活に支障をきたす危険性があります。

原因を正しく診断できれば、薬や理学療法などの適切な治療による症状改善が期待できます。年齢のせいだと諦めずに、整形外科の受診を検討してください。膝の痛みの原因を多角的に調べて、適切な治療で快適な生活を送りましょう。

当院は、脊椎センター・人工関節センターの2つを軸にしたクリニックです。腰や関節の痛み、リハビリなどでお悩みの方へ、専門医が丁寧に相談に応じます。JR姫路駅からは無料送迎バスを利用できますので、お気軽にご来院ください。
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