椎間板ヘルニア手術の費用相場は?保険適用の条件や自己負担額を解説
腰痛や足のしびれを我慢していませんか?椎間板ヘルニアが痛みの原因かもしれません。椎間板ヘルニアの治療には、薬の服用やリハビリテーションによる保存療法と、手術療法があります。この記事では、椎間板ヘルニアの手術療法について、以下の内容を解説します。
- 椎間板ヘルニア手術の主な種類
- 椎間板ヘルニア手術の費用相場と自己負担額
- 椎間板ヘルニア手術にかかるその他の費用
記事を読むことで、椎間板ヘルニアの手術の特徴や費用を理解できます。手術に関する不安を解消し、治療法を選択する際にご活用ください。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
>>診察のご案内について
椎間板ヘルニア手術の主な種類
椎間板ヘルニアの手術は、症状やライフスタイルなどを総合的に判断して、最適な方法が決められます。代表的な以下の4つの手術方法について、解説します。
- 内視鏡手術(MED法、FED法)の特徴
- 顕微鏡下手術の特徴
- 従来型の開放手術の特徴
内視鏡手術(MED法、FED法)の特徴
内視鏡手術は、お腹や背中を小さく切開し、内視鏡を使って行う手術です。手術の傷口が小さいため、体への負担が比較的少なく、入院期間は数日〜1週間程度です。内視鏡手術には、以下の2種類の方法があります。
- MED法(内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)
- FED法(内視鏡下脊椎手術)
MED法は、背中から内視鏡を挿入してヘルニアを取り除く方法です。腰周りの筋肉へのダメージや術後の痛みが少ないのが特徴です。FED法は、ヘルニアの位置に合わせて背中や横から内視鏡を挿入してヘルニアを取り除く方法です。神経を圧迫している骨も削れるため、広範囲のヘルニアに対応できます。
2011〜2014年に、TELD(内視鏡を使ってヘルニアを取り除く手術)とMD(顕微鏡を使ってヘルニアを取り除く手術)を比較する研究が行われました。その結果、TELDは出血量が少なく、入院期間や仕事復帰までの期間が短くなる傾向があると報告されています。
顕微鏡下手術の特徴
顕微鏡下手術は、手術用顕微鏡を用いて患部を拡大視しながら行う手術です。肉眼では見えない細かい部分まで確認できるため、より精密な手術ができます。従来の開放手術に比べて切開が小さいため、傷口も小さく、術後の痛みも軽減されます。入院期間は1~2週間程度です。
従来型の開放手術の特徴
従来型の開放手術は、背中を大きく切開して行う手術です。手術の視野が広いため、複雑なヘルニアにも対応できます。同時に骨を削ったり、インプラントで固定したりする場合もあります。入院期間は2~4週間程度です。近年では、内視鏡手術や顕微鏡下手術の普及で、従来型の開放手術は減少傾向にあります。
手術方法にはメリットやデメリットがあり、最適な手術方法は異なります。医師とよく相談し、自身の状況にあった手術方法を選択することが重要です。
以下の記事では、どのような症状や経過で手術を検討すべきか、その判断基準や治療法の選び方について詳しく解説しています。手術のタイミングに迷っている方は、ぜひご覧ください。
>>椎間板ヘルニアの手術が必要なタイミングは?判断基準と治療法を徹底解説
椎間板ヘルニア手術の費用相場と自己負担額
椎間板ヘルニアの手術費用は、手術方法や入院期間、病院で異なります。費用相場や自己負担額について、以下の内容を解説します。
- 手術方法別の費用相場の目安
- 自己負担額の計算例(保険適用ありの場合)
- 自己負担額の目安(保険適用なしの場合)
手術方法別の費用相場の目安
椎間板ヘルニアの手術の費用相場と健康保険適用有無は、以下の表のとおりです。
手術方法 | 費用相場(目安) | 健康保険 |
内視鏡下手術(MED/FED) | 25〜30万円 | 適用 |
顕微鏡下手術 | 22〜27.5万円 | 適用 |
従来の開放手術 | 20〜80万円 | 適用 |
費用相場は目安のため、病院や症状で変動する可能性があります。検査費や投薬費、入院費などを含めた総額は、受診する医療機関に確認してください。
自己負担額の計算例(保険適用ありの場合)
健康保険が適用される手術の場合、一般的に自己負担額は医療費の3割です。内視鏡下手術の費用が30万円の場合、自己負担額は9万円(30万円×0.3)です。高額療養費制度を利用すると、負担額を抑えられる可能性があります。
高額療養費制度は、一定期間内に支払った医療費の合計が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が払い戻される公的制度です。自己負担額の限度額は、年齢や所得区分で異なり、70歳未満で一般的な収入の場合、ひと月あたり8〜15万円程度です。制度の詳細は、加入している健康保険組合にお問い合わせください。
メリットとデメリットを理解したうえで、医師と相談して治療法を選択することが大切です。手術を検討する際には、費用面だけでなく、合併症や再発のリスクについても理解しておくことも重要です。以下の記事では、椎間板ヘルニア手術における代表的なリスクや、失敗を避けるために知っておくべきポイントについて解説しています。
>>椎間板ヘルニア手術のリスクとは?合併症と失敗を避けるポイント
椎間板ヘルニア手術にかかるその他の費用
椎間板ヘルニアの手術を受ける場合、入院費や検査費、その他諸費用なども発生します。費用は、手術を受ける病院の規模や設備、症状で変動します。手術にかかるその他の費用について、以下の内容を解説します。
- 入院費・通院費などの追加費用
- オプション治療・特殊材料の費用
- 費用を抑えるためのポイント
入院費・通院費などの追加費用
入院が必要な手術の場合、手術費用とは別に入院費が発生します。入院費には、一般的に以下が含まれます。
- 室料(個室か大部屋か)
- 検査費
- 食事代
- 投薬費
個室の室料は、大部屋よりも高額になる傾向です。検査費は、ヘルニアの状態を正確に把握し、適切な手術方法を選択するためのMRIやCT、レントゲン、血液検査などの費用です。食事代は、病院が提供する食事の内容や回数で変動します。投薬費は、手術前後に処方される薬の費用です。
通院費は、手術前の診察や手術後のリハビリテーションなどで通院する際に発生する費用です。公共交通機関を利用する場合の交通費や、自家用車で通院する場合の駐車料金を考慮に入れておく必要があります。費用の目安は、以下の表のとおりです。
費用項目 | 費用の目安 |
入院費(1泊あたり) | 7,000~20,000円 |
MRI検査 | 10,000~20,000円 |
CT検査 | 8,000~15,000円 |
レントゲン検査 | 2,000~5,000円 |
血液検査 | 2,000~5,000円 |
オプション治療・特殊材料の費用
椎間板ヘルニアの手術では、標準的な治療に加えて、以下のオプション治療や特殊材料を使用する場合があります。
- 神経の再生を促す薬剤の使用
- 傷跡を最小限にする特殊な縫合糸の使用
- 手術中の出血を減らす特殊な機器の使用
- 特殊なインプラントの使用(人工椎間板や固定器具など)
オプション治療は、患者さんの状態や希望に応じて選択できますが、健康保険適用外となる場合があるため、費用が高額になる可能性があります。
費用を抑えるためのポイント
手術の費用を抑えるには、健康保険が適用される手術を選ぶことや、医療費控除制度・高額療養費制度の活用が有効です。医療費控除制度を利用すると、確定申告時に医療費の一部が所得控除の対象となり、税負担を軽減できます。自身や家族のために支払った医療費が、国が定めた条件を満たしている場合に適用されます。
高額療養費制度の申請方法は、以下の流れで行います。
- 自治体や加入している健康保険組合から申請書類を取り寄せる
- 申請書類と添付資料(医療費の領収書や本人確認書類など)を提出する
- 申請内容の審査が行われる
- 審査に通過すると自己負担限度額を超えた分が払い戻される
事前に限度額適用認定証を取得し、医療機関の窓口で提示すると、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめられます。
まとめ
椎間板ヘルニアの手術費用は、手術方法や入院期間、病院で異なります。健康保険が適用される手術の場合、一般的に自己負担額は医療費の3割です。健康保険適用外の手術の場合、費用が高額になる傾向がありますが、体への負担が少なかったり、入院期間が短くなったりするケースもあります。
メリットとデメリットを理解したうえで、医師と相談して治療法を選択することが大切です。手術自体の費用以外にも、入院費や通院費などの追加費用がかかる可能性があります。費用を抑えるために、高額療養費制度や医療費控除などの公的制度の活用も検討してください。
治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介
参考文献
Sajjad Saghebdoust, Farshid Khadivar, Mehran Ekrami, Mohammad Ali Abouei Mehrizi, Amir Valinezhad Lajimi, Mohammad Reza Rouhbakhsh Zahmatkesh, Neda Pak, Morteza Faghih Jouibari, Seyed Shahab Ghazi Mirsaeed, Mohammad Reza Boustani.Transforaminal Endoscopic Lumbar Diskectomy versus Open Microdiskectomy for Symptomatic Lumbar Disk Herniation: A Comparative Cohort Study on Costs and Long-Term Outcomes.J Neurol Surg A Cent Eur Neurosurg,2024,85,6,p.561-569