コラム

若い人の椎間板ヘルニアの原因とは?20代でもなる理由と予防法

かつて中高年に多いとされた椎間板ヘルニアは、近年では20代を含む若い世代にも増加傾向です。長時間のデスクワークやスマートフォンの多用によって姿勢が悪化し、筋力が低下しやすい生活環境が一因です。喫煙や肥満、遺伝的な体質もリスクを高める要因といわれています。

椎間板ヘルニアは放置すると、腰や首の痛みや脚のしびれなどが日常生活に影響を与える可能性があります。この記事では、若い人が椎間板ヘルニアになる6つの主な原因や日常生活でできる予防法について解説します。正しい知識を身につけ、日常生活での予防に役立ててください。

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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若い人でもかかる!椎間板ヘルニアの主な原因6つ

若い人が椎間板ヘルニアになる主な原因について、以下の6つを解説します。

  • デスクワークで長時間同じ姿勢
  • 猫背や前かがみの悪い姿勢
  • 運動不足による筋力低下
  • 喫煙による血流悪化
  • 肥満による腰椎への負担
  • 遺伝的要因や体質

デスクワークで長時間同じ姿勢

デスクワークで長時間同じ姿勢を続けると、腰や首に負担がかかり、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。パソコン作業中に前傾姿勢や猫背になると、椎間板にかかる圧力が増します。一定の姿勢を長時間保つと特定の部位に負荷が集中し、椎間板が変形して神経を圧迫することがあります。髄核が突出し、圧迫の原因となる場合もあります。

猫背や前かがみの悪い姿勢

猫背や前かがみの姿勢は、椎間板ヘルニアの主な原因の一つです。背骨は本来S字カーブを描いて体重を分散していますが、猫背になるとカーブが崩れ、椎間板への負担が増加します。研究では、前かがみ姿勢が腰椎への圧力を高める可能性が指摘されています。

長時間の前かがみの姿勢を続けると、腰椎への負荷が通常の数倍にもなると言われています。

運動不足による筋力低下

運動不足になると、腹筋や背筋などの体幹を支える筋肉が弱くなり、腰椎への負担が増します。筋肉は骨や関節を支え、姿勢を維持する役割があります。体幹の筋力が低下すると姿勢が崩れて、椎間板への圧力が増して椎間板ヘルニアのリスクが高くなります。筋力に個人差はありますが、一般的に若い女性では筋力低下が起きやすく、運動不足の影響を受けやすいとされています。

喫煙による血流悪化

喫煙は、椎間板ヘルニアを含むさまざまな健康問題を引き起こす原因となります。ニコチンには血管を収縮させる作用があり、血流が悪化します。椎間板は血液から栄養と酸素を得ており、血流の悪化によって修復機能が低下し、変形しやすくなります。栄養が不足すると椎間板は弾力を失い、壊れやすくなるため、喫煙習慣のある方は特に注意が必要です。

肥満による腰椎への負担

肥満も椎間板ヘルニアの重要なリスク要因の一つです。体重が増えると腰椎への負担が増し、椎間板への圧力が高まります。腹部の脂肪が多いと、姿勢が崩れやすくなり、椎間板への負担も大きくなります。体重の増加は腰椎への負担を増やす要因とされており、少量でも影響があるため、適正体重の維持が重要です。

遺伝的要因や体質

椎間板ヘルニアは、遺伝的な体質の影響を受ける場合があります。家族に椎間板ヘルニアの既往者がいると、同様の構造的特性を持つ可能性があり、発症リスクが高まります。生まれつきの骨格や体質も、椎間板ヘルニアの発症リスクに影響を与える可能性があります。遺伝的要因は変えられませんが、生活習慣を見直すことでリスクを軽減することは可能です。

反復椎間板摘出術における硬膜損傷のリスクは2〜15%と報告されており、予防の重要性が示されています。

初期症状と進行時のサイン

椎間板ヘルニアの初期症状と進行時に見られるサインは以下のとおりです。

  • 腰や首の痛み・違和感
  • 脚やお尻の痛みやしびれ
  • 排尿・排便障害が出た場合は早急に受診

腰や首の痛み・違和感

椎間板ヘルニアの初期症状で多いのが、腰や首の痛みや違和感です。最初は「腰が重い」「首がだるい」といった軽度の不調から始まることが多く、安静で軽快することもあるため見過ごされがちです。進行すると痛みが強くなり、長時間続くようになります。

腰椎椎間板ヘルニアでは、前かがみや重い物を持つ動作で痛みが強くなる傾向があり、鈍痛や重だるさを伴います。頚椎椎間板ヘルニアでは、首の後ろや肩甲骨周辺の痛みやこりがみられ、首の動きで悪化することがあります。

痛みは、椅子に座った姿勢や就寝中などの特定の姿勢で悪化しやすく、くしゃみや咳などの動作で誘発されることもあります。初期の段階では安静にすることで症状が改善する場合もありますが、再発を繰り返すと慢性化する可能性があります。慢性化すると、日常生活に大きな支障をきたすため、早めの対応が重要です。

脚やお尻の痛みやしびれ

椎間板ヘルニアが進行すると、突出または脱出した椎間板が神経を圧迫し、脚やお尻に痛みやしびれが現れることがあります。「坐骨神経痛」と呼ばれ、お尻から太ももの後ろ側やふくらはぎ、足先にかけて症状が広がります。

痛みの種類は、鋭い痛みや電気が走るような痛み、焼けつくような痛みなどさまざまで、しびれや感覚異常、筋力低下を伴うこともあります。軽度の場合は違和感程度にとどまりますが、重度になると歩行困難になることもあります。

まれに仙腸関節炎に似た症状を示すことがあり、診断が難しい場合もあります。自己判断は避け、早期に医療機関を受診することが大切です。

以下の記事では、椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛に襲われた際の応急処置や、すぐに受診すべき症状の見極めポイントについて詳しく解説しています。
>>【椎間板ヘルニア】激痛で歩けないときの緊急対処法と受診目安

排尿・排便障害が出た場合は早急に受診

椎間板ヘルニアがさらに進行し、馬尾神経(脊髄の下端から伸びる神経の束)が圧迫されると、以下のような排尿や排便に関する重篤な症状が現れることがあります。

  • 尿が出にくい
  • 残尿感がある
  • 便秘になる
  • 肛門周囲のしびれや感覚麻痺

症状は、膀胱や直腸の機能に深刻な影響を与える可能性があるため、重症のサインとされます。発見次第、すぐに医療機関を受診してください。治療法には、以下の方法があります。

  • 保存療法:薬物療法や理学療法、神経ブロックなど
  • 手術療法:後方椎間板切除術や椎間固定術、経皮的椎間板療法など

治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介

椎間板ヘルニアを防ぐための予防法

椎間板ヘルニアを防ぐための予防法について、以下の内容を解説します。

  • 姿勢を正しく保つ(座り方・立ち方・デスク環境)
  • ストレッチで腰回りや背中の柔軟性を高める
  • 腹筋・背筋を鍛えて体幹を安定させる
  • 定期的な軽い運動を継続する
  • 禁煙・体重管理を心がける

姿勢を正しく保つ(座り方・立ち方・デスク環境)

正しい姿勢を保つためには、座り方や立ち方に注意を払うことが大切です。座る際は椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、骨盤を立てる意識を持ちましょう。顎を引き、視線をやや上に向けることで猫背を防ぎます。立つときは耳や肩、腰、くるぶしが一直線になるよう意識し、足裏全体で体重を支えるようにしましょう。

デスクと椅子の高さを調整し、モニターは目の高さにし、キーボードやマウスは肘が90度になる位置に置くと負担が軽減されます。1時間に1回は立ち上がり、軽く体を動かすことも効果的です。

ストレッチで腰回りや背中の柔軟性を高める

ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することで椎間板の栄養供給を助けます。硬くなった筋肉は椎間板への負担を増加させるため、日常的に行うことが大切です。

腰のストレッチには、膝を抱えて胸に引き寄せる運動や腰回し運動などがあります。背中のストレッチには、四つ這いの姿勢で背中を丸めたり反らせたりする「猫のポーズ」や、立って両腕を上に伸ばし体を左右に倒すストレッチなどがあります。

1回につき10〜15回、1日2〜3セットを目安に行いましょう。痛みを感じた場合は無理せず、できる範囲で行うことが重要です。

腹筋・背筋を鍛えて体幹を安定させる

体幹の筋肉は姿勢を維持し、腰椎の安定に貢献します。筋力が不足すると姿勢が崩れ、椎間板への負担が増します。以下のトレーニングは、体幹を強化するために役立ちます。

  • プランク
  • バックエクステンション
  • クランチ

プランクは、うつ伏せになり肘とつま先を床につけた状態で、体を一直線にキープするトレーニングです。バックエクステンションは、うつ伏せになり両手を頭の後ろで組んだ状態で、上半身を反らせるトレーニングです。クランチは、仰向けになり膝を立てた状態で、上半身を起こすトレーニングです。

週に2〜3回を目安に、短時間から始めて徐々に時間や回数を増やしましょう。

定期的な軽い運動を継続する

適度な運動は、筋肉を強化し血行を促進する効果があり、椎間板ヘルニアの予防につながります。以下の有酸素運動は筋力の維持と血行促進に役立ちます。

  • ウォーキング
  • 水泳
  • サイクリング

ウォーキングは1日30分程度を週3〜4回、水泳は週1〜2回、サイクリングは週2〜3回が目安です。無理のない範囲で継続し、痛みを感じたら中止して安静にしましょう。

禁煙・体重管理を心がける

喫煙は、血管を収縮させ、血流を悪化させるため、椎間板への栄養供給を阻害し、椎間板の変性を促進すると言われています。肥満は腰椎への負担を増大させ、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。禁煙や適正体重の維持は、椎間板への負荷軽減に寄与するとされています。

禁煙外来や補助薬の活用、バランスの良い食事と適度な運動による体重管理を心がけましょう。生活習慣の見直しは、椎間板ヘルニアだけでなく、全身の健康維持にもつながります。日頃から継続的に取り組むことが重要です。

まとめ

椎間板ヘルニアは、近年では20代の若い世代にも増加しています。長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用、運動不足によって姿勢が悪化すると、椎間板にかかる負担が大きくなり、発症リスクが高まります。家族にヘルニアの既往者がいる場合は、特に注意が必要です。予防のために心がけたい習慣は、以下のとおりです。

  • 正しい姿勢を保つ
  • 適度な運動を継続する
  • ストレッチを取り入れる
  • 体幹の筋力を強化する
  • 禁煙と体重管理を意識する

生活習慣を少しずつ見直すことで、椎間板ヘルニアのリスクを軽減することが期待できます。無理のない範囲でできることから始め、将来の健康を守る第一歩を踏み出しましょう。

椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法

参考文献