コラム

胸椎椎間板ヘルニアの初期症状とは?早期発見のポイントや治療法、予防法を解説

内科や循環器科で検査を受け「異常なし」と言われたものの、背中や胸に原因不明の痛みが続いて不安を感じていませんか?痛みの原因は「胸椎椎間板ヘルニア」が関係している可能性があります。胸椎椎間板ヘルニアは、椎間板ヘルニア全体の中でも発生率が0.1〜5%とまれなため、見過ごされやすいのが特徴です。

適切に対処せず放置すると、足のしびれや歩行困難などの重篤な症状につながることもあります。この記事では、胸椎椎間板ヘルニアの初期症状や、心臓疾患・帯状疱疹など間違えやすい疾患との違いについて解説します。ご自身の症状と照らし合わせながら、早期発見と適切な対応のための参考にしてください。

当院では、胸椎椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴: 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野:脊椎・脊髄外科

資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

胸椎椎間板ヘルニアの主な初期症状5つ

胸椎椎間板ヘルニアに見られる主な5つの初期症状について解説します。

  • 背中や胸に広がる帯状の痛み(肋間神経痛)
  • 足のしびれや脱力感・歩きにくさ
  • 感覚が鈍くなる・触ってもわかりにくい感覚異常
  • 排尿・排便のコントロールが難しい(膀胱直腸障害)
  • 倦怠感や疲労感が続く(全身症状)

背中や胸に広がる帯状の痛み(肋間神経痛)

肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)」は、胸椎椎間板ヘルニアの初期症状としてよくみられ、背中から胸、脇腹にかけて帯状に広がる痛みが特徴です。痛みは、背骨の椎間板から横方向に飛び出した髄核(ずいかく)が、肋骨に沿って走る肋間神経を圧迫することで生じます。神経の圧迫が原因となり、以下の特徴的な症状が現れます。

  • 体の片側だけに痛みが出る
  • チクチク、ピリピリとした刺すような痛みを感じる
  • 深呼吸や咳、くしゃみ、体をひねる動作で痛みが強くなる
  • 痛みが背中(特に肩甲骨の間)や胸、脇腹、みぞおちなどに広がる

症状が続く場合は、背骨に原因がある可能性があります。

足のしびれや脱力感・歩きにくさ

胸椎には、脳と下半身をつなぐ「脊髄(せきずい)」が通っています。胸椎椎間板ヘルニアによって脊髄が圧迫されると、足にしびれや脱力感などの症状が現れることがあります。初期は軽い違和感程度のこともあり、見過ごされやすいのが特徴です。足に現れる主な症状は以下のとおりです。

  • しびれ
  • 脱力感
  • 歩きにくさ(歩行障害)
  • 階段昇降での不安

足の裏がジンジンするしびれや、膝が突然カクンと折れる脱力感、足がもつれてうまく歩けない歩行障害などが現れます。階段では、手すりが必要になることもあります。

感覚が鈍くなる・触ってもわかりにくい感覚異常

触られた感覚が鈍くなる「感覚異常」も、胸椎椎間板ヘルニアの症状の一つです。「知覚鈍麻(ちかくどんま)」と呼ばれ、脊髄が圧迫されることで皮膚からの感覚情報が脳にうまく伝わらなくなるために生じます。感覚異常は、神経伝達の障害によって生じる知覚の変化で、部位や程度によってさまざまな現れ方をします。

次のような感覚の変化には注意が必要です。

  • 腹部や胸、足などを触っても感覚が鈍い
  • 足を触られたときの感覚や温度の感じ方に左右差がある
  • 皮膚の感覚がぼんやりして、膜が張ったように感じる
  • 衣服が触れても感覚がわかりにくい

症状は、医師による診察で初めて発見されることも多く、自覚しにくいのが特徴です。

排尿・排便のコントロールが難しい(膀胱直腸障害)

ヘルニアによる脊髄の圧迫が進行すると、排尿や排便をコントロールする神経にまで影響が及び「膀胱直腸障害」と呼ばれる状態になる可能性があります。主な症状は、以下のとおりです。

  • 尿意を感じにくい
  • 排尿しづらい(排尿困難)
  • 尿が漏れる(尿失禁)
  • 便意を感じにくい
  • 便が漏れる(便失禁)

上記の症状は日常生活に大きな影響を与えるだけでなく、神経が深刻なダメージを受けている可能性を示しています。

倦怠感や疲労感が続く(全身症状)

倦怠感や疲労感が長引くケースもあります。神経の圧迫による痛みや不調が続くことで、体全体にストレスがかかり、慢性的な疲労感につながる可能性があります。倦怠感はさまざまな疾患に共通する一般的な症状のため、他の症状とあわせて総合的に判断することが大切です。日常的な疲れとは異なり、十分に休息をとっても回復しにくいのが特徴です。

「体がだるい」「寝ても疲れが取れない」などの状態が続く場合は、胸椎椎間板ヘルニアの可能性も含めて医療機関に相談することが大切です。

間違えやすい他の病気(心臓疾患・帯状疱疹など)との違い

胸椎椎間板ヘルニアの症状は、他の病気と似ているため、診断が難しい場合があります。近年の研究では、胸椎椎間板ヘルニアの発症例は、以前よりも多いことがわかってきました。胸椎椎間板ヘルニアは、症状に特有なものが少なく、筋肉や関節の痛みと間違われることも多いとされています。以下に主な違いをまとめました。

病名 主な症状の特徴 胸椎椎間板ヘルニアとの違い
胸椎椎間板ヘルニア ・背中から胸へ広がる痛み
・体をひねる、咳やくしゃみで痛みが強まる
・足のしびれや感覚の鈍さを伴うことがある
・体の動きと痛みが連動しやすい
・皮膚に異常はない
心臓の病気
(狭心症、心筋梗塞など)
・胸の圧迫感や息苦しさ、冷や汗を伴う
・体の動きに関係なく痛みが起こる
・左肩や腕に痛みが広がることがある
・命に関わるため検査が必要
帯状疱疹 ピリピリ、チクチクした痛みの後に、体の片側に発疹や水ぶくれが出る 皮膚症状が現れる
内臓の病気
(胆石症、すい炎など)
・みぞおちや右脇腹の痛み
・脂っこい食事の後に悪化することがある
・発熱や吐き気を伴うことがある
体の動きで痛みが変わることは少ない

症状だけでは見分けがつきにくいため、まずは命に関わる心臓の病気を確認し、異常がなければ背骨が原因の可能性も考えて整形外科を受診しましょう。

胸椎椎間板ヘルニアの治療選択肢

胸椎椎間板ヘルニアの代表的な治療法を紹介します。

  • 薬物療法
  • 理学療法
  • ブロック注射
  • 外科的手術

薬物療法

薬物療法は、症状をやわらげることを目的とした保存療法の一つです。ヘルニアによる痛みや神経の炎症を抑え、日常生活への影響を軽減することが期待されます。主に、以下の薬が症状に応じて用いられます。

  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
  • 筋弛緩薬(きんしかんやく)
  • 神経障害性疼痛治療薬

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、一般に「痛み止め」と呼ばれ、炎症や痛みの原因となる物質の働きを抑えることで、背中や胸の痛みを緩和します。筋弛緩薬は、筋肉の緊張を和らげることで、痛みやこわばりの軽減が期待できます。神経障害性疼痛治療薬は、神経の圧迫によって起こる「ジンジン」「ビリビリ」といった神経由来のしびれや痛みに対して使用されます。

理学療法

理学療法は、薬物療法と並行して行われることが多い保存療法の一つです。痛みの緩和だけでなく、身体機能の回復や再発予防を目的とし、根本的な改善を目指す治療法です。国家資格を持つ理学療法士が、一人ひとりの状態や症状に合わせて計画的に治療を進めます。

運動療法は、以下のアプローチが行われます。

  • ストレッチ:硬くなった背中や胸の筋肉を伸ばし、柔軟性を高めて椎間板への負担を減らす
  • 筋力トレーニング:腹部や背中の筋肉(体幹)を鍛えることで、背骨を支える力を強化する

専門家の指導のもとで安全に治療を進めることが、回復につながります。

ブロック注射

薬を飲んでもリハビリを続けても痛みがなかなか引かない場合に検討されるのが「ブロック注射」です。痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬などを注射し、神経の興奮を抑える治療法です。ブロック注射には、主に以下の特徴があります。

  • 強い痛みをすばやく抑える
  • 痛みの悪循環を断ち切る
  • 診断の助けになる
  • リハビリを進めやすくなる

ブロック注射は、痛みの信号を遮断することで即効性のある鎮痛効果が期待できます。痛みが軽減すれば、原因となる神経を特定しやすくなり、診断やリハビリを進めるうえで役立ちます。

外科的手術

保存療法を一定期間続けても改善が見られない場合や、重い神経症状が出ている場合には、手術が検討されます。手術を検討する主な症状は、以下のとおりです。

  • 足の筋力低下が進み、歩くのが難しくなった
  • 日常生活に支障が出るほどの激しい痛みが続く
  • 排尿・排便の障害(膀胱直腸障害)が現れた

これらの症状は、神経が深刻なダメージを受けているサインであり、迅速な対応が求められます。近年では、内視鏡や顕微鏡を用いた「低侵襲手術」が主流となっています。数センチの小さな切開で行うため、術後の痛みが少なく、入院期間も短縮され、早期の社会復帰が期待できます。手術が必要かどうかは、MRIなどの画像検査結果と症状を総合的に評価して判断されます。

再発を防ぐためのポイント4つ

再発を防ぐための4つのポイントを解説します。

  • 背骨に負担をかけないように姿勢を正しく保つ
  • デスクワークや運転中にこまめに休憩を取る
  • 体幹を鍛える運動を行う
  • 食生活を見直し、体重増加を防ぐ

背骨に負担をかけないように姿勢を正しく保つ

再発予防の基本は「正しい姿勢」です。「猫背」は胸椎に強い圧力をかけやすく、症状を悪化させるリスクがあります。日常のさまざまな場面で、背骨にやさしい姿勢を意識することが予防に役立ちます。立ち姿勢は、壁にかかと、お尻、背中、後頭部をつけて立ったときに、壁と腰の間に手のひら1枚分のすき間ができるのが理想です。

あごを軽く引いて、頭のてっぺんから一本の糸で真上に吊られているようなイメージを持つと、自然と背筋が伸びます。座り姿勢でのポイントは、以下のとおりです。

  • 深く腰掛けて骨盤を立てる
  • 足の裏全体を床につけ、膝の角度は90度になるよう椅子の高さを調整する
  • パソコン画面が目線より少し下に来るようにモニターの高さを調整する

重い物を持ち上げるときは、体に荷物を引き寄せ、腰を落としてから持ち上げましょう。

デスクワークや運転中にこまめに休憩を取る

デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢を続けることは、背骨に負担をかけます。椎間板や筋肉に負荷がかかり続けると、血流が悪化し、症状の悪化や再発の原因にもなりかねません。意識的に体を動かして筋肉や背骨をリフレッシュさせることが大切です。

休憩の目安としては、30分に一度は姿勢を変え、1時間ごとに立ち上がって軽く体を動かすようにしましょう。立ち上がって少し歩く、両手を組んで上に伸びをする、肩をゆっくり回すなどの軽い動きを取り入れると効果が期待できます。遠くの景色を見るなどして目を休めることも、首や背中の緊張緩和につながります。

長距離運転の際は、サービスエリアなどでこまめに休憩を取り、車外に出て体を動かすようにしましょう。

椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7つ|悪化させない方法

体幹を鍛える運動を行う

背骨を安定させるためには、周囲の「体幹」の筋肉を意識的に使うことが大切です。体幹とは、腹部や背中の深部にある筋肉の総称で、背骨を支える役割があります。体幹がしっかりしていると背骨のぐらつきが抑えられ、椎間板にかかる負担を軽減できます。

自宅で簡単にできる「キャット&カウ」と呼ばれる背骨をほぐすストレッチは、以下の流れで行います。

  1. 肩の真下に手、股関節の真下に膝を置くように四つ這いになる
  2. 息を吐きながら、おへそをのぞき込むように背中を丸める(猫のポーズ)
  3. 息を吸いながら、背中を反らせて顔を上げ、天井を見る(牛のポーズ)
  4. 呼吸に合わせて、5〜10回繰り返す

背骨の柔軟性を高め、緊張を和らげる効果が期待できます。ストレッチに加え、ウォーキングやプールでの歩行も、全身の筋肉をバランス良く使えるためおすすめです。どのような運動が適しているか不安な場合は、自己判断せず、医師や理学療法士に相談しましょう。

食生活を見直し、体重増加を防ぐ

体重管理は、椎間板ヘルニアの再発予防に欠かせません。腹部に脂肪がつくと重心が前にずれ、背骨への負荷が大きくなります。無理な食事制限ではなく、栄養バランスの良い食生活を心がけましょう。食事管理のポイントは、次の3つです。

  • バランスの良い食事を心がける
  • 骨や筋肉の材料となる栄養素(タンパク質・カルシウム・ビタミンD)を摂る
  • 食べすぎや間食に注意する

主食(ご飯など)や主菜(肉や魚、卵など)、副菜(野菜やきのこ類など)を組み合わせた食事が理想です。タンパク質(肉や魚、卵、大豆製品など)は筋肉をつくり、カルシウム(牛乳やヨーグルト、小魚、青菜など)は骨を強くします。ビタミンD(魚、きのこ類)は、カルシウムの吸収を助け、日光を浴びることでも生成されます。

脂肪分の多い食事やお菓子、ジュースは控え、よく噛んでゆっくり食べることで食べすぎを防ぎましょう。食事を見直し、適正体重を維持することが、背骨への負担軽減と再発予防につながります。

以下の記事では、椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛に襲われた際の応急処置や、すぐに受診すべき症状の見極めポイントについて詳しく解説しています。
>>【椎間板ヘルニア】激痛で歩けないときの緊急対処法と受診目安

まとめ

背中や胸の痛み、足のしびれなどの症状は、他の病気と間違われやすく、見過ごされがちです。しかし、胸椎椎間板ヘルニアの初期サインの可能性もあります。治療は、薬やリハビリなどの保存療法が中心で、日常生活における姿勢や運動の工夫が再発予防につながります。

自分の体の変化に気づき、一人で抱え込まないことが大切です。原因不明の痛みや気になる症状が続く場合は、自己判断せず、早めに専門の医療機関に相談しましょう。

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