椎間板ヘルニアは再発するの?前兆や悪化する原因、注意すべき生活習慣を解説
手術や治療で一度は楽になった椎間板ヘルニア。「最近また腰が重い」「足にしびれを感じる」と、不安を抱えていませんか?
実は、椎間板ヘルニアは再発することがあり、その原因の多くは姿勢の悪さや運動不足など、普段の生活習慣の中に潜んでいるのです。ある研究では、手術後の再発率は約64%にも上ると言われており、他人事ではありません。
この記事では、再発の前兆サインや悪化の原因、再発リスクを減らす生活習慣のポイントをわかりやすく解説します。腰に負担をかけている行動を見直し、今からできるケアを取り入れて痛みを繰り返さない腰を取り戻すヒントを得ましょう。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
椎間板ヘルニア再発時の前兆
椎間板ヘルニアの再発は、最初は小さな違和感として現れることが多いです。痛みが強くなる前に気づくことで、悪化を防げる可能性があります。再発時に現れやすい「腰の重だるさ」と「足のしびれ」について解説します。
腰の重だるさ
腰の重だるさは、椎間板ヘルニア再発の初期サインの一つです。「なんとなく腰が重い」「長く座っていると腰が固まる」などの鈍い不快感として現れることが多いです。椎間板は背骨のクッションの役割を担っています。
ヘルニアで傷ついた「線維輪(せんいりん)」が完全に回復していない場合、少しの動作や姿勢の乱れが再び炎症を引き起こすことがあります。その小さな炎症が、重だるさとして感じられるのです。以下のようなサインには注意が必要です。
- 朝起き上がるときに腰が固まったように感じる
- 長時間座ってから立つと腰が伸びにくい
- 前かがみの姿勢がつらく感じる
- 常に腰に張りや違和感がある
まだ大丈夫と思いがちな軽い症状ですが、再発の前触れである可能性があります。違和感が数日続く場合は、無理をせず早めに整形外科を受診しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの基本的な原因や症状、整形外科で行われる治療法の流れについて、ポイントをわかりやすく解説しています。
>>椎間板ヘルニアとは?原因・症状・治療法を解説
足のしびれ
足のしびれも、椎間板ヘルニア再発を疑う重要なサインです。椎間板から飛び出した組織が坐骨神経を圧迫したり、その周囲で炎症を起こすことで、しびれや電気が走るような痛みが生じます。症状の出方には特徴があり、主にお尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけて片側に現れることが多いです。
しびれの感覚は、ピリピリ、ジンジン、電気が走るような痛み、皮膚の感覚が鈍い感じなど、人によって異なります。長時間座っているときや前かがみの姿勢、咳やくしゃみをしたときに強くなるのが典型的な特徴です。こうした症状は、一般的に「坐骨神経痛」と呼ばれる状態です。
このようなしびれが続く場合は、神経への圧迫が進行している可能性があるため、放置せずに整形外科など専門医の診察を受けることが大切です。次の症状がある場合は、神経圧迫が強い可能性が高く、すぐ受診が必要です。
| 危険なサイン | 目安 |
| 足に力が入らない | ・スリッパが脱げやすい ・歩行が不安定 |
| つま先立ち/かかと立ちができない | 片足での保持が難しい |
| つまずきが増える | 意図せず足が引っかかる |
| 排尿の異常 | ・出にくい ・漏れる |
放置すると後遺症につながる可能性があります。しびれが続く、または上記の危険サインがあれば、我慢せず専門医を受診しましょう。
椎間板ヘルニアを悪化させる5つの原因
椎間板ヘルニアの再発や悪化には、日常生活の中の何気ない習慣や動作が深く関係しています。腰への負担を増やしてしまう代表的な原因は以下の5つです。
- 姿勢の悪さ
- 運動不足
- 喫煙
- 肥満
- 加齢
姿勢の悪さ
姿勢の悪さは、椎間板ヘルニアを悪化させる最も身近な原因の一つです。前かがみや猫背の姿勢は椎間板の内圧を高め、神経を圧迫しやすくなります。普段の何気ない動作の中にも、腰に大きな負担をかけている姿勢が隠れています。
以下のような腰に負担をかけやすい代表的な姿勢は見直しましょう。
- デスクワーク:パソコン画面をのぞき込むように猫背になっている
- スマホ操作:長時間うつむいたまま、首や腰が丸まっている
- 家事・育児:中腰で掃除や抱っこを繰り返している
- リラックスタイム:ソファに浅く腰掛け、背中を丸めて寄りかかっている
このような姿勢は、立っている時の約1.4倍の負荷を腰にかけると言われています。長時間同じ姿勢を続けることで筋肉がこわばり、血行が悪化して椎間板の回復を妨げることもあります。
姿勢の癖は自分では気づきにくいものです。まずは鏡の前で立ち姿や座り姿をチェックして「まっすぐ・骨盤を立てる」意識を持つことから始めましょう。
運動不足
運動不足も、椎間板ヘルニアを悪化させる要因です。痛みを恐れて安静にしすぎると、腰を支える体幹の筋肉(腹横筋・多裂筋など)が衰え、背骨を安定させる力が弱まります。これにより、椎間板への負担が直接的に増え、再発や慢性化のリスクが高まります。
体を動かさないことで筋肉が硬くなり、血流も悪化します。椎間板は血管を持たないため、周囲の組織から栄養を受け取っていますが、血行が悪くなると供給が滞り、回復が遅れやすくなります。腰を守るためには、痛みのない範囲で軽いストレッチやウォーキングなどを続けることが大切です。
「動かすこと=治すことの第一歩」と考え、無理のない範囲で少しずつ体を動かす習慣を取り戻しましょう。
喫煙
タバコは、腰の健康を静かにむしばむ「見えないリスク」の一つです。喫煙によって血管が収縮し、椎間板の周囲にある細い血管の血流が悪化すると、椎間板に酸素や栄養が届きにくくなります。結果、クッションのような役割を果たす椎間板の水分が失われ、弾力が落ちてもろくなる「変性」が進行しやすくなるのです。
タバコに含まれる有害物質はコラーゲンの生成を妨げるため、一度傷ついた椎間板が修復されにくくなります。複数の研究でも、喫煙者は非喫煙者に比べて椎間板ヘルニアの再発リスクが約1.7倍高いことが報告されています。
たとえ少量でも、喫煙は腰の回復を遅らせる原因になります。再発を防ぎたいなら「禁煙を始めること」自体が治療の一部と考えてみてください。椎間板を守り、痛みの再発を遠ざける一歩になります。
肥満
肥満は、椎間板ヘルニアの再発や悪化を招く代表的なリスク要因です。体重が増えると、その分だけ背骨や椎間板に常に大きな圧力がかかるため、腰への負担が蓄積していきます。研究でも、BMI(体格指数)が高い人ほど再発リスクが高いと報告されています。
お腹周りに脂肪がつく「内臓脂肪型肥満」に注意が必要であり、以下のポイントを理解しておくことが大切です。
- 姿勢への影響:お腹が前に出ることで重心がずれ、腰を反らせる「反り腰」姿勢になりやすく、椎間板への圧力が増す
- 炎症の促進:脂肪細胞が炎症物質を分泌し、腰まわりの痛みを悪化させやすい体内環境をつくる
- 筋力低下との関係:体重増加により活動量が減ることで、体幹の筋力も弱まりやすくなる
適正体重を維持することは、椎間板への負担を減らす基本的な予防策です。減量は腰を守る治療の一環と考え、無理のない範囲で体重管理を意識しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴をわかりやすく解説しています。再発や悪化を防ぎたい方はぜひご覧ください。
>>椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴とは?リスクを高める要因と予防法を解説
加齢
年齢を重ねることは、誰にも避けられない自然な変化です。若い頃の椎間板は約80%が水分で構成され、弾力性に富んだクッションのような役割を果たしています。20歳を過ぎたあたりから徐々に水分が減少し、硬くもろい状態へと変化していきます。
研究では、年齢の上昇や椎間板変性の進行が再発リスクを高める要因であると報告されています。変性した椎間板は衝撃を吸収しにくく、日常の何気ない動作や負荷でも亀裂が入りやすくなり、内部の髄核が再び飛び出してしまうことがあります。
姿勢の改善・適度な運動・禁煙・体重管理などの生活習慣を整えることで、椎間板への負担を軽減し、加齢の影響を抑えることは可能です。年齢に応じた「腰をいたわる習慣」を意識することが、再発を防ぐ第一歩になります。
再発リスクを下げるための生活習慣4つのポイント
椎間板ヘルニアの再発を防ぐ鍵は、日常生活の中で「腰に優しい習慣」を積み重ねることにあります。再発リスクを下げ、健康な腰を保つために実践できるポイントは、以下の4つです。
- 体重管理を行う
- 正しい姿勢を意識する
- インナーマッスルを鍛える
- ストレッチで体を柔軟にする
体重管理を行う
体重管理は、椎間板ヘルニアの再発を防ぐうえで欠かせません。腰の椎間板には、立っているだけでも体重の約1.5倍の圧力がかかると言われています。体重が1kg増えるごとに椎間板には1.5kg分の負担が加わり、日々の生活の中でその重みが積み重なっていくのです。これが、再発の大きな引き金となります。
体重の目安となるのがBMI(体格指数)=体重(kg) ÷ 身長(m)²です。一般的にBMIが25以上は肥満とされ、腰への負担が増す状態です。まずは健康的とされるBMI22前後を目指すことを目標にしましょう。厳しい食事制限や激しい運動は必要ありません。バランスの良い食事や、腰に優しい運動を習慣にすることが大切です。
タンパク質・カルシウム・ビタミンDをしっかり摂り、甘いお菓子やジュースを控えるだけでも十分効果があります。運動は、水中ウォーキングや軽いウォーキングなど、無理のない方法から始めるのがおすすめです。
正しい姿勢を意識する
正しい姿勢を保つことは、椎間板への負担を減らし、再発を防ぐための効果が期待できる方法の一つです。前かがみの姿勢は椎間板内部の圧力を急激に高め、座って前かがむと立っているときの2倍以上の負担がかかるとも言われています。日常の動作を少し意識するだけで、腰を守る力が大きく変わります。
場面に応じた姿勢について、以下の表を参考にしてみてください。
| 場面 | 椎間板を守る良い姿勢 | 椎間板を痛める悪い姿勢 |
| 座っているとき | ・椅子に深く腰掛け、骨盤を立てて座る ・背もたれに背中をつけて体重を預ける ・膝の角度を90度に保ち、足裏全体を床につける |
・浅く腰掛けて背中を丸める(仙骨座り) ・足を組む ・床にあぐらや横座りをする |
| 立っているとき | ・耳、肩、骨盤、くるぶしが一直線になる ・お腹に軽く力を入れ、頭のてっぺんから糸で吊られるイメージを持つ |
・片足に体重をかけて立つ ・お腹を突き出した反り腰の姿勢 |
| 物を持ち上げるとき | ・荷物に体を近づけ、膝を曲げて腰を落とす ・お腹に力を入れ、足の力で立ち上がる |
・膝を伸ばしたまま腰だけを曲げる ・体から遠い位置の物を持ち上げる |
姿勢の悪いクセは、毎日の積み重ねで腰に負担をかけ続けます。今日から1つずつ意識を変えることで、将来の腰の健康を守る確かな一歩になります。
インナーマッスルを鍛える
インナーマッスルは、椎間板ヘルニアの再発を防ぐ体の土台です。お腹や背中の奥にある腹横筋(ふくおうきん)や多裂筋(たれつきん)は、背骨を支える天然のコルセットのような役割を果たしています。これらの筋肉がしっかり働くことで、椎間板への衝撃を和らげ、再発を防ぎやすい安定した姿勢を保つことができます。
運動不足でインナーマッスルが弱ると、背骨が不安定になり、わずかな動作でも椎間板に負担が集中してしまいます。痛みが落ち着いたら、以下の流れでインナーマッスルトレーニングを実施してみましょう。
- 仰向けに寝て両膝を90度に曲げる
- 鼻から息を吸いながらお腹を膨らませる
- 口からゆっくり吐きながらおへそを床に押し付けるようにお腹をへこませる
- そのまま10〜30秒キープして5回繰り返す
呼吸を止めずに行うのがポイントです。痛みを感じた場合は中止し、無理のない範囲で少しずつ続けることが大切です。
ストレッチで体を柔軟にする
ストレッチで体の柔軟性を保つことは、椎間板ヘルニアの再発予防に欠かせません。お尻や太ももの裏の筋肉が硬くなると、骨盤や股関節の動きが悪くなり、腰椎が過剰に動くようになります。この動きすぎが椎間板への負担を増やし、再発の原因となるのです。
ストレッチで筋肉をほぐし、腰周りのバランスを整えることが、椎間板を守る鍵になります。体が温まっているお風呂上がりに行うと、より効果が期待できます。お尻のストレッチは以下の手順で行います。
- 椅子に座り、片方の足首を反対側の膝の上に乗せる
- 背筋をまっすぐに伸ばしたまま、体をゆっくり前に倒す
- お尻の筋肉が気持ちよく伸びる位置で20〜30秒キープ
- 反対側も同じように行う
太もも裏(ハムストリング)のストレッチは以下の流れで行いましょう。
- 椅子に浅く座り、片足を前に伸ばしてかかとを床につける
- 背中を丸めず、股関節から体をゆっくり前に倒す
- 太ももの裏が「痛気持ちいい」と感じるところで20〜30秒キープ
- 反対側も同じように行う
反動をつけず、呼吸を止めずに行うのがポイントです。痛みを感じるほど強く伸ばすのは逆効果なので、心地よい範囲で行いましょう。
以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアにおける症状のレベル別の違いや、それぞれに適した治療法について詳しく解説しています。症状の進行度を知ることで、より適切な対処につながります。
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴!治療法も解説
まとめ
椎間板ヘルニアは、一度治ったように感じても、生活習慣の積み重ねによって再発することがある病気です。猫背などの悪い姿勢や運動不足、体重の増加、喫煙などの習慣は、知らないうちに椎間板へ負担をかけています。再発を防ぐためのポイントは、日常の中で「腰に優しい習慣」を続けることです。
正しい姿勢を意識する、軽いストレッチを取り入れる、体重を管理するなど、小さな行動の積み重ねが、腰を守る確かな一歩になります。腰の重だるさや足のしびれなどの違和感があれば、我慢せず早めに専門医へ相談しましょう。
当院(大室整形外科 脊椎・関節クリニック)では、腰や関節の痛みがある方へ、専門医が丁寧に相談に応じます。長引く痛みやしびれを諦める前に、まずは一度、専門の医師に相談してみませんか。
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参考文献
- Lei F, Yanfang L, Shangxing W, Weihao Y, Wei L, Jing T. Spinal Fusion Versus Repeat Discectomy for Recurrent Lumbar Disc Herniation: A Systematic Review and Meta-Analysis. World Neurosurg, 2023, 173, 126‑135.e5
- Yang J, Liu R, Miao Y, Nian L, Meng X. Risk Factors for Recurrence After Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy: A Meta-Analysis. World Neurosurg, 2023, 172, 88‑93
