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肥満と整形外科手術 〜内科的視点から⑨

安心・安全な手術を受けるために
シリーズ 9

安心・安全な手術を受けるために シリーズ 9回目は、多くの方が気になる肥満と整形外科手術についてテーマに取り上げます。

Q:太っていると手術に何か影響がありますか?

  • A:整形外科で手術を受けられる患者さんにおいては、関節痛や腰痛、下肢の痺れなどが理由で運動不足となり、肥満となっている患者さんが多くみられます。

    また、体重のため股関節や膝関節に負担がかかり、それによる疼痛で
    さらに運動量が低下するという悪循環に入っていることも多いです。

肥満になると手術を受ける上でどんな危険性があるのでしょうか。

肥満に合併しやすい糖尿病、高血圧、高脂血症については、シリーズの各記事をご参照ください。
糖尿病と整形外科手術
高血圧と整形外科手術
抗凝固薬、抗血小板薬内服と整形外科手術

● 肥満による周術期のリスク

  • ① 挿管困難
  • ② 術中、術後無気肺
  • ③ 肥満低換気症候群、閉塞性睡眠時無呼吸
  • ④ 深部静脈血栓症、肺塞栓症

① 挿管困難

巨大舌などにより、痩せ型の患者さんの約4倍、挿管困難となる研究があります。
ビデオ喉頭鏡等の補助器具の使用等対策が取られます。

参照:J Anesth 33, 96–102 (2019)

② 術中、術後の無気肺、低換気

肺に呼吸に関わらないデットスペース(無気肺)が生じやすく肺機能が低下します。
また、肺炎の合併率も高くなります。

対策として術前後の呼吸器リハビリテーション(訓練器具を使った深呼吸の練習)早期離床、手術中のしっかりした酸素投与体位の工夫が挙げられます。
適切な術後疼痛コントロールも大事となります。

参照:Morihiro Katsura et al. Cochrane Database Syst Rev.2015.

③ 肥満低換気症候群、閉塞性睡眠時無呼吸

肥満により喉の周辺の組織に脂肪が貯まり、気道が圧迫され、閉塞することにより起こります。
また、腹部の脂肪により肺が下から圧迫され、十分に膨らませることができないためでもあります。

対策としては夜間の持続陽圧呼吸療法の適応となることもあります。

参照:循環器領域における睡眠呼吸障害の診断•治療に関するガイドライン

④ 深部静脈血栓症、肺塞栓症

内科シリーズの「整形外科と深部静脈血栓症」をご参照ください。

整形外科手術と深部静脈血栓症

上記のリスクや合併症に共通する対策

  • 減量が必要です。

運動ができない場合には

  • 食事量を減らすことが薦められます。

運動ができない理由が整形外科疾患による疼痛である場合は
手術後に疼痛が緩和され、リハビリ回数や運動量増加による減量効果も期待されます。

手術について不安に思われることがありましたら いつでも内科にご相談ください。
※ お近くのスタッフにお声がけください。