コラム

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の関係性!症状の違いと効果が期待できる治療法

腰や足に痛みやしびれがある場合、椎間板ヘルニアが原因で坐骨神経痛を発症している可能性があります。20〜40代では両疾患の併発が多く、日常生活に支障をきたすこともあります。この記事では両疾患の関係と症状の違い、痛みやしびれの軽減が期待される治療法を解説します。ご自身の症状と照らし合わせながらご覧ください。

最近の研究では、保存療法に特定の併用療法を加えると手術率が低下し、費用対効果も向上する可能性が報告されています。本記事を参考に、原因やメカニズムを理解し、ご自身に合う治療を選択しましょう。

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の関係

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の関係について、以下の内容を解説します。

  • 椎間板ヘルニアが坐骨神経痛を引き起こすメカニズム
  • 椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の特徴
  • 坐骨神経痛を引き起こすその他の疾患

椎間板ヘルニアが坐骨神経痛を引き起こすメカニズム

椎間板ヘルニアにより飛び出した椎間板の一部が坐骨神経を圧迫することで、坐骨神経痛が生じます。坐骨神経は人体で最も太く長い神経で、腰から足先まで広がり、運動と知覚を担っています。坐骨神経が圧迫されると、臀部から太もも裏、ふくらはぎ、足先にかけて痛みやしびれが広がるのが特徴です。

踏ん張りがきかず、力が入りにくいと感じることもあります。神経の圧迫は、椎間板の変性によって起こる「椎間板ヘルニア」が原因です。背骨は多数の「椎骨」と呼ばれる骨が積み重なって構成されており、その間にある「椎間板」はクッションの役割を担っています。

椎間板は、硬い外殻である「線維輪」と、ゼリー状の中心部である「髄核」から構成されています。加齢や長時間のデスクワーク、激しい運動などで線維輪に亀裂が入ると、髄核が外に飛び出すことがあり、これが椎間板ヘルニアです。飛び出した髄核が近くの坐骨神経に接触・圧迫することで、坐骨神経痛の症状が引き起こされます。

以下の記事では、こうした椎間板ヘルニアが本当に「一生治らない」のかどうか、完治までの道のりや症状改善の可能性について、医学的な視点から詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアは一生治らない?完治までの道のりと症状改善の可能性を解説

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の特徴

椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛には、次の特徴があります。

  • 痛み・しびれは片側の下肢に出ることが多い
  • 腰を反らす動作で痛みが増す傾向がある
  • くしゃみや咳など、腹圧が上昇する動作で痛みが増強する場合がある
  • 長時間座っていることで痛みが悪化しやすい
  • 下肢の筋力低下が起こることがある
  • 痛みやしびれに加え、ピリピリとした感覚を伴うことがある

症状の強さや範囲は、ヘルニアの位置・大きさ、神経圧迫の程度によって大きく異なります。症状が軽い場合もあれば、日常生活に支障が出るほど重症化するケースもあります。

坐骨神経痛を引き起こすその他の疾患

坐骨神経痛は椎間板ヘルニア以外にも、次の疾患で生じることがあります。

  • 腰部脊柱管狭窄症:脊柱管が狭くなり神経を圧迫する
  • 梨状筋症候群:臀部深層の梨状筋が坐骨神経を圧迫する
  • 腰椎すべり症:腰椎が前後にずれ神経を刺激する

まれなケースですが、神経近くの腫瘍が原因になって圧迫することもあります。原因を特定するためには、医師の診察と画像検査が不可欠です。自己判断せず、医療機関で適切な診断と治療を受けるようにしてください。

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の症状

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の主な症状を解説します。

椎間板ヘルニアの主な症状

ヘルニアの部位や大きさや神経圧迫の程度で異なりますが、下記の順で進行することが一般的です。

  1. 初期
  2. 神経を圧迫し始めた段階
  3. 圧迫が強い段階

腰部や臀部に鈍い痛みが現れるのが初期症状で、前かがみ姿勢や長時間座位で悪化する傾向があります。神経が圧迫されると腰痛に加え、臀部から足先にかけて片側性の痛みやしびれ、電撃痛が出現します。圧迫が強まると下肢の筋力低下や感覚麻痺が起こります。

つま先立ちやかかと歩行が困難になり、足背や足底の感覚も鈍くなります。以下の記事では、こうした椎間板ヘルニアの初期症状にどのような兆候があるのか、また、どのタイミングで病院を受診すべきかの目安について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの代表的な初期症状と病院を受診する目安

坐骨神経痛の主な症状

坐骨神経痛では、鋭い痛みや電気が走るようなしびれが、お尻や太もも裏、ふくらはぎ、足先にかけて現れます。特に長時間の座位やくしゃみ、咳などの動作で痛みが強くなることがあり、歩行や立ち上がりが困難になることもあります。

足に力が入りにくくなったり、感覚が鈍くなったりするなど、日常生活への影響が大きい症状もみられます。

重症化のサインと注意すべき症状

椎間板ヘルニアや坐骨神経痛が進行すると、日常生活に深刻な影響を及ぼします。

  • 痛みやしびれが増し、歩行が困難になる
  • 排尿・排便のコントロールが難しくなる

上記の症状が出たら、速やかに医療機関を受診する必要があります。特に両下肢の脱力や膀胱・直腸障害を伴う場合は、緊急度の高い「馬尾症候群」が疑われます。馬尾症候群は手術適応になる場合が多いため、早急な対応が重要です。

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の診断

腰や足の痛み・しびれは日常生活を大きく妨げます。椎間板ヘルニアが原因で坐骨神経痛の症状が出ている可能性もあります。椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の診断について、以下の2つを解説します。

  • 診断方法
  • 鑑別診断の重要性

診断方法

画像検査には、X線やCT、MRIを用います。X線は骨配列を確認できますが椎間板は写りません。CTは骨構造や脊柱管狭窄の評価に有用で、MRIは椎間板の状態を詳しく映し出せるため、診断に不可欠です。

最近の研究では、機械的診断・治療(MDT)と経椎間孔硬膜外ステロイド注射(TESIs)の併用により、手術に至る症例が減少し、費用対効果も向上する可能性が報告されています。

鑑別診断の重要性

坐骨神経痛は、椎間板ヘルニア以外の原因でも発症します。腰部脊柱管狭窄症、梨状筋症候群、腫瘍などが代表的な例です。他の疾患と椎間板ヘルニアを見分けるには、詳細な問診や神経学的診察、画像検査が欠かせません。疾患によって治療法が異なるため、正確な診断が不可欠です。

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治療法

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治療法は以下のとおりです。

  • 保存療法
  • 手術療法
  • 最新の治療法(ヘルニコア注入療法)

保存療法

保存療法は、手術を行わずに薬物や注射、物理療法、リハビリテーションなどで症状の改善を目指す方法です。各治療の特徴は以下のとおりです。

  • 薬物療法:症状に応じて適切な薬剤を処方する
  • 注射療法(神経ブロック):局所麻酔薬やステロイド薬を注射し、痛みの伝達を抑え症状緩和を目指す
  • 物理療法:温熱療法や牽引療法、電気治療などを用い痛みの軽減と血流改善、筋肉の緊張緩和を図る
  • 装具療法:コルセットで腰椎を安定させ、負担を軽減する
  • リハビリテーション:ストレッチや体幹・下肢筋の強化で腰椎への負担を減らして再発を予防する

保存療法は、椎間板ヘルニアや坐骨神経痛の初期治療として最初に用いられることが多いです。医師に相談したうえで、治療を行いましょう。

手術療法

保存療法で改善がみられない、または症状が重い場合には手術を検討します。主な適応は以下のとおりです。

  • 保存療法を6〜12週間、継続しても効果がない
  • 著明な筋力低下や麻痺がみられる
  • 排尿・排便障害を伴う
  • 耐え難い痛みが続き、日常生活に重大な支障をきたす

手術方法には従来の椎間板摘出術(LOVE法)や、内視鏡を用いたMED法PELD法などがあります。手術は、ヘルニアによって圧迫されている神経を解放することを目的としています。近年では、低侵襲手術の普及により、入院期間の短縮や早期の社会復帰が実現しています。

治療選択の基準

治療法は、症状の重さや生活への影響度、患者さんの年齢や健康状態などを総合して決まります。まず保存療法(薬物・リハビリなど)を行い、効果が乏しい場合や症状が悪化した場合に手術を検討します。排尿障害や下肢筋力低下などの神経症状を伴う場合は、早期の外科的治療が推奨されます。

軽度〜中等度なら、薬物療法や理学療法、神経ブロックなどの保存的アプローチを優先します。最近では、日常生活への影響を抑える目的で、内視鏡などの低侵襲手術を選択するケースも増加しています。治療は生活スタイルや価値観を踏まえ、医師と十分に相談して決めることが大切です。

介入のタイミングや程度を見極めることが、症状の改善と生活の質の向上につながります。

最新の治療法

近年、椎間板ヘルニアの治療として、ヘルニコア(コンドリアーゼ)注入療法が注目されています。酵素を椎間板に注入する治療法です。適応や効果については、担当医にご相談ください。

ヘルニコア注入療法レーザー治療は、従来の手術療法に比べ、身体への負担が少ないという特徴があります。治療の詳細については、医師にご相談ください。

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の予防

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛を予防するためのセルフケアは、以下のとおりです。

  • 予防のための運動
  • 日常生活での注意点

予防のための運動

椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の予防には、適度な運動が重要です。ウォーキングや水中歩行などの有酸素運動は、血行を促進し筋肉の柔軟性を高めます。ストレッチは、腰部や臀部の筋肉の緊張緩和や柔軟性向上に役立つとされています。継続することで効果が期待される場合があります。

筋力トレーニングで体幹や下肢を強化すると、腰椎への負担が減り、姿勢が安定する可能性があります。

日常生活での注意点

日常生活では、正しい姿勢を保つことが重要です。座る際に深く腰掛けて骨盤を立てるように意識しましょう。同じ姿勢を続けないよう適度に休憩を取ることが重要です。重い物を持ち上げる際は、腰を曲げずに膝を曲げて持ち上げ、中腰の作業はできるだけ避けましょう。必要に応じてコルセットを使用することも有効です。

禁煙は椎間板の血流を保ち、健康維持に役立ちます。適正体重の維持は腰椎への負担軽減に寄与するとされています。十分な睡眠は組織の修復を促します。ストレスを溜め込まないよう心身を整えることも大切です。

まとめ

腰や足の痛み、しびれを感じたら、自己判断せずに医療機関で経験豊富な医師による診断を受けることが大切です。椎間板ヘルニアと坐骨神経痛は、適切な治療で症状の軽減が期待される場合があります。医師と相談し、症状や生活スタイルに合った治療を選びましょう。

正しい姿勢や無理のない運動習慣などを続けることは、再発予防につながります。症状でお悩みの方は、医師へご相談ください。

当院では「もし、患者さまが自分の家族だったら私は何をすべきか。」という理念のもと、質の高い医療サービスを提供することに尽力しています。椎間板ヘルニアでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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参考文献

Mutubuki EN, van Helvoirt H, van Dongen JM, et al.Effectiveness and cost-effectiveness of mechanical diagnosis and treatment combined with transforaminal epidural steroid injections for patients on a waiting list for surgery for a chronic lumbar herniated disc: a randomized controlled trial and economic evaluation.The spine journal : official journal of the North American Spine Society,2025,25,7,p.1309-1321