椎間板ヘルニアの代表的な初期症状と病院を受診する目安
腰や足に痛みやしびれを感じていませんか?もしかしたら、椎間板ヘルニアの初期症状かもしれません。椎間板ヘルニアの80%以上は腰に発生すると言われています。腰椎(腰部)に最も多く発生し、次いで頚椎(首部)に多いことが国際的な研究でも報告されています。初期症状は軽く、見過ごしてしまうことも多いですが、放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
椎間板ヘルニアとは、背骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで、腰痛、足の痛みやしびれ、筋力低下などの症状を引き起こす病気です。この記事では、椎間板ヘルニアの代表的な初期症状と、病院を受診するべき5つのサインについて詳しく解説します。
早期発見・早期治療が重要ですので、ご自身の症状と照らし合わせ、少しでも気になる点があれば、医療機関への相談を検討してみてください。
当院では、頚椎椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアの初期症状
椎間板ヘルニアの初期症状は以下のとおりです。
- 腰の痛み:前かがみで悪化、安静時にも痛み
- 下肢の痛みやしびれ:片側性、坐骨神経痛
- 足の筋力低下:つまずきやすい、歩行困難
- 排尿・排便障害:頻尿、便秘、失禁
- 症状の進行:慢性化、神経症状の悪化
腰の痛み:前かがみで悪化、安静時にも痛み
椎間板ヘルニアの最も一般的な初期症状は腰痛です。椎間板ヘルニアになると、前かがみの姿勢で椎間板への圧力が増加し、飛び出した部分が神経をさらに圧迫するため、痛みが強くなります。炎症や神経の刺激が原因で、安静時にも鈍い痛みが続く場合があります。
ある研究にもありますが、椎間板ヘルニアによる痛みは、しばしば灼熱感や刺すような鋭い痛みを伴い、下肢に放散することが特徴的です。咳やくしゃみでも腹圧が上がり、椎間板への負担が増すため、痛みが悪化することがあります。
痛みの種類は、鈍痛や鋭い痛み、電気が走るような痛みなどさまざまで、腰回りからお尻にかけてなど、痛む場所も人それぞれです。朝起きたとき、長時間同じ姿勢を続けた後、夜間など、痛みの時間帯にも特徴があります。
下肢の痛みやしびれ:片側性、坐骨神経痛
下肢の痛みやしびれは、飛び出した椎間板が坐骨神経(腰から足先まで伸びる人体で最も太い神経)を圧迫することで引き起こされます。坐骨神経が圧迫されると、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先まで、神経の走行に沿って痛みやしびれが生じます。多くの場合、片側のみに症状が現れます。
飛び出した椎間板が神経の片側だけを圧迫するためです。生じる痛みやしびれは「坐骨神経痛」と呼ばれ、鋭い痛み、焼けるような痛みなど、さまざまな形で現れます。長時間歩いた後、座っているとき、夜間など、症状が現れる時間帯も人によって異なります。
足の筋力低下:つまずきやすい、歩行困難
足の筋力低下は、神経が圧迫されて、筋肉への信号伝達がうまくいかなくなってしまうことが原因です。神経の圧迫がさらに進むことで、足の筋力が低下する場合があります。足の指や足首、膝などの筋力が弱くなり、つま先が上がりにくくなります。足の筋力低下によって、以下のような状態になる場合があります。
- つまずきやすくなる
- スリッパが脱げやすくなる
- 歩行が不安定になる
- 長距離歩けなくなる
上記の症状は、日常生活にも大きな影響を与え、靴が履きにくくなったり、階段の上り下りが難しくなったりすることもあります。
排尿・排便障害:頻尿、便秘、失禁
重症の場合、排尿や排便に障害が出ることがあります。排尿・排便障害は、飛び出した椎間板が、排尿・排便をコントロールする神経を圧迫するために起こります。頻尿や残尿感、便秘、便失禁などの症状が出る場合があり、日常生活に深刻な影響を及ぼします。
これらの症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。緊急性の高い状態であり、放置すると取り返しのつかない事態になる可能性もあります。
症状の進行:慢性化、神経症状の悪化
椎間板ヘルニアの症状が悪化すると、筋力低下やつまずき、排尿・排便障害などが現れ、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。下肢のしびれや痛みが慢性化すると、夜も眠れず、仕事や家事に集中できなくなる場合も考えられます。
軽度の症状でも、放置せずに医療機関を受診し、適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
病院を受診する目安
病院を受診する目安として、以下の3つの場合を解説します。
- 安静にしていても痛みやしびれが続く場合
- 日常生活に支障が出始めた場合
- 痛みが徐々に広がっている場合
安静にしていても痛みやしびれが続く場合
椎間板ヘルニアが進行すると、安静時でも痛みやしびれが続くようになります。飛び出した椎間板が神経を常に圧迫しているためです。特に、夜間や朝方に痛みが強くなる場合は要注意です。炎症物質が蓄積し、神経への刺激が増大することが原因と考えられます。
痛みの種類は、鋭い痛みや鈍い痛み、焼け付くような痛みなどさまざまです。しびれも、ピリピリとした感覚やジンジンとした感覚、感覚が鈍くなるなど、多様な症状があります。1週間以上、いずれかの症状が続く場合は、椎間板ヘルニアの可能性が高いため、整形外科への受診をおすすめします。
椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
日常生活に支障が出始めた場合
椎間板ヘルニアの初期症状は軽度である場合が多いですが、進行すると日常生活に支障をきたすような症状が現れます。長時間座っていることが難しい、立っているのが辛い、靴下が履きにくい、階段の上り下りが困難になる、などの症状です。
仕事や家事、趣味など、今までできていたことができなくなることで、身体的だけでなく精神的な負担も大きくなってしまいます。日常生活に支障が出始めた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を開始することが大切です。
痛みが徐々に広がっている場合
最初は腰の痛みだけだったのが、次第にお尻や太もも、ふくらはぎ、足先などに痛みが広がっていく場合は、椎間板ヘルニアの進行が疑われます。痛みの範囲が広がるだけでなく、痛みの種類も変化することがあります。鈍い痛みから鋭い痛みへと変化したり、しびれを伴ったりすることもあります。
痛みが広がっているということは、神経への圧迫が強くなっているサインです。放置すると、さらに症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があるため、早めの受診をおすすめします。
椎間板ヘルニアの診断と治療法
椎間板ヘルニアの診断と治療法として、以下の内容を解説します。
- 画像診断:MRI、X線検査
- 保存療法:薬物療法、リハビリテーション、コルセット
- 手術療法:椎間板切除術、椎間固定術(インプラント手術)
- 治療の選択:症状の程度、患者さんの状態
- 再発予防:姿勢改善、運動療法
画像診断:MRI、X線検査
椎間板ヘルニアの診断に最も有用な画像検査はMRI検査です。MRI検査では、強力な磁場と電波を用いて、脊椎の断面画像を鮮明に映し出します。椎間板の突出の程度や、神経がどのくらい圧迫されているかを詳細に確認できます。ヘルニアの大きさや位置だけでなく、神経根や脊髄の炎症の有無も確認できます。
X線検査は、骨の異常や変形などを確認するために用いられます。椎間板ヘルニア自体はX線検査では直接的には写りませんが、骨棘(こつきょく)の形成や椎間腔の狭小化などから、間接的にヘルニアの存在を示唆する所見が得られる場合があります。
保存療法:薬物療法、リハビリテーション、コルセット
保存療法は、日常生活への影響を最小限に抑えながら、痛みやしびれなどの症状を和らげることを目的としています。薬物療法では、痛みや炎症を抑えるための鎮痛薬や消炎鎮痛薬、神経の興奮を抑える薬などが使用されます。薬の種類や服用方法は、患者さんの症状や状態に合わせて調整されます。
リハビリテーションは、ストレッチや筋力トレーニング、マッサージなどを通して、腰や背中の筋肉を強化し、柔軟性を高めることで、椎間板への負担を軽減します。理学療法士の指導のもと、適切な運動プログラムを作成し、実施することが重要です。
コルセットは、腰部を固定することで、椎間板への負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。コルセットの種類や装着時間は、医師の指示に従うことが大切です。これらの保存療法は、多くの場合、組み合わせて行います。薬物療法で痛みをコントロールしながら、リハビリテーションで身体機能を改善していくといった方法が一般的です。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説
手術療法:椎間板切除術、椎間固定術
保存療法を数週間〜数か月継続しても症状が改善しない場合や、神経麻痺などの重篤な症状が現れた場合には、手術療法が検討されます。
椎間板切除術は、飛び出した椎間板の一部を切除し、神経への圧迫を取り除く手術です。顕微鏡や内視鏡を用いた低侵襲手術を行う場合もあり、体への負担を軽減しながら治療します。
椎間固定術は、インプラントで腰椎を固定する手術です。不安定な椎間や損傷した椎間板に対し、インプラントを用いて腰椎を安定させることを目的としています。
治療の選択:症状の程度、患者さんの状態
椎間板ヘルニアの治療法は、患者さんの症状の程度や年齢、全身状態、生活スタイルなどを考慮して、個別に決定されます。初期段階で症状が軽い場合は、保存療法から開始するのが一般的です。痛みが強い場合や、神経麻痺などの症状がある場合は、早期に手術療法が検討されることもあります。
治療方針は、医師と患者さんが十分に話し合い、納得したうえで決定することが重要です。治療期間についても、症状や治療法によって大きく異なりますので、医師から詳しい説明を受けるようにしましょう。
再発予防:姿勢改善、運動療法
椎間板ヘルニアは再発しやすい疾患です。再発を防ぐためには、日常生活での姿勢や運動習慣を見直すことが重要です。正しい姿勢を維持することで、腰への負担を軽減し、椎間板へのストレスを最小限に抑えることができます。立っているときは背筋を伸ばし、座っているときは深く腰掛け、足を床にしっかりとつけるように心がけましょう。
適度な運動は、腰周りの筋肉を強化し、椎間板を支える力を高める効果があります。ウォーキングや水泳、ヨガ、ピラティスなど、腰に負担をかけすぎない運動を継続的に行うことが大切です。急激な動作や無理な姿勢は避け、自分の体力に合った運動を選びましょう。
日常生活における注意点や運動療法については、医師や理学療法士から適切な指導を受けるようにしましょう。
姫路市「大室整形外科」で行う椎間板ヘルニア治療
姫路市にある大室整形外科で行う椎間板ヘルニア治療について、以下の内容を解説します。
- 保存療法を重視
- 経験豊富な脊椎専門チームによる手術
- 1人ひとりに寄り添う
大室整形外科には、あなたの痛みや不安に寄り添い、親身になって治療にあたる専門医がいますので、安心してご相談ください。
保存療法を重視
大室整形外科では、患者さんの腰の健康を第一に考え、保存療法を重視した治療を行っています。多くの患者さんにとって、保存療法で痛みの軽減、生活の質の向上といった効果が期待できます。保存療法は、体に負担が少ない治療法ですが、効果が現れるまでに時間がかかる場合があります。
症状によっては手術が必要になるケースもあります。当院では、患者さん一人ひとりの状態を丁寧に診察し、年齢や全身状態、合併症の有無などを考慮したうえで、最適な治療法をご提案いたします。
経験豊富な脊椎専門チームによる手術
経手術以外の方法で治療が難しい場合は、出来る限り負担の小さい手術(低侵襲手術)で治療しております。内視鏡や顕微鏡、ナビゲーションシステム、神経モニタリングシステムなど最新機器を用いた低侵襲手術で体の負担が少なく、短い入院期間で治療が可能です。脊椎、脊髄専門医、指導医の資格を持つ医師(大室理事長、中野院長、川口医師)が責任を持って手術を行います。さらに当院所属の総合内科とも相談し、患者さん一人ひとりの年齢や、全身状態、合併症の有無などを考慮した上で、最適な治療法をチームでご提案いたします。
一人ひとりに寄り添う
大室整形外科では、患者さん一人ひとりの症状や生活習慣、ご希望に合わせたオーダーメイドの治療を提供しています。患者さんが安心して治療に専念できるよう、丁寧な説明とわかりやすい情報提供を心がけています。当院では、患者さんの早期回復と豊かな生活をサポートするために、以下の取り組みを行っています。
- チーム医療
- 丁寧なカウンセリング
- 生活指導
- 社会保障制度の活用支援
当院は「もし、患者さまが自分の家族だったら私は何をすべきか。」という理念のもと、質の高い医療サービスを提供することに尽力しています。椎間板ヘルニアでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
>>当院について
まとめ
椎間板ヘルニアの初期症状は腰痛だけでなく、足にしびれや痛み、筋力低下、排尿・排便障害など、多岐にわたります。いずれの症状も、日常生活に支障をきたすだけでなく、放置すると慢性化し、重症化する可能性があります。以下の症状がある場合は、椎間板ヘルニアの可能性があります。
- 安静にしていても痛みやしびれが続く
- 足の感覚が鈍る・力が入らない
- 排尿・排便に違和感がある
- 日常生活に支障が出始めた
- 痛みが徐々に広がっている
少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに早めに整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。早期発見・早期治療によって、症状の悪化を防ぎ、快適な日常生活を取り戻すことができます。
椎間板ヘルニアは腰だけでなく、首(頚椎)にも起こることがあり、首や肩の痛み、腕のしびれなどが現れる場合は注意が必要です。以下の記事では、頚椎椎間板ヘルニアの特徴や原因、具体的な症状と治療法について詳しく解説しています。
>>【首や肩の痛みは要注意】頚椎椎間板ヘルニアの症状・原因・治療法を解説
参考文献
- 一般社団法人日本臨床整形外科学会:腰椎椎間板ヘルニア
- Alexander M. Dydyk, Ruben Ngnitewe Massa, Fassil B. Mesfin. Disc Herniation. StatPearls, 2022.