椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢のコツ!楽になる体勢と座り方
最近、腰に痛みを感じていませんか。つらい腰の痛みの原因の一つに、椎間板ヘルニアがあります。椎間板ヘルニアとは、背骨の椎間板が神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす病気です。椎間板ヘルニアの痛みは、姿勢によって和らぐ可能性があるため、正しい姿勢を意識することが重要です。
この記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢のコツを、日常生活の動作別に解説します。腰の痛みを軽減する方法だけでなく、痛みを悪化させるNG動作、日常生活で改善が期待できる方法も紹介します。楽になる体勢と座り方を実践し、椎間板ヘルニアの痛みの軽減を目指しましょう。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢のポイント
椎間板ヘルニアの痛みを和らげる姿勢のポイントは以下のとおりです。
- 腰椎を軽く曲げる
- 体重を分散する
- 同じ姿勢を長時間続けない
腰椎を軽く曲げる
腰椎を軽く曲げ、軽い前弯(ぜんわん)を保つ姿勢を意識しましょう。前弯の姿勢は背骨が前方に湾曲している状態であり、椎間板にかかる圧力を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。腰椎を軽く曲げることで、椎間板の中心にある髄核(ずいかく)にかかる圧力が分散され、神経への圧迫が軽減されるのです。
逆に、猫背のように背中を丸めすぎたり、腰を反ったりすると、椎間板への負担が増加し、痛みが強くなる可能性があります。座っている際は、背もたれを利用して腰を支え、立っている際は、壁に背中を軽くつけて自分の姿勢を確認しましょう。
体重を分散する
足の裏全体をつけるなど接地面を広くすることで、体重を分散させましょう。長時間同じ姿勢を続け、体重が特定の部位に集中すると、椎間板への負担が大きくなり、痛みが増す可能性があります。ヒールを履く機会がある方は、体重が特定の部位に集中しやすくなります。椎間板ヘルニアの方は、高すぎるヒールを履かないようにしましょう。
長時間座り続けるなど同じ姿勢を続ける場合は、立ち上がって歩いたり、軽いストレッチをしましょう。体重の集中を防ぎ、椎間板への負担を減らすことが期待できます。
同じ姿勢を長時間続けない
同じ姿勢を長時間続けると、特定の筋肉や関節に負担がかかり、椎間板への圧力が高まり、痛みが増す原因となります。長時間の同じ姿勢は、特定の筋肉の緊張を招くため、血行不良の要因です。血行不良が起こると、筋肉や関節への酸素供給が不足し、疲労物質が蓄積され、痛みが発生しやすくなります。
姿勢を変える、軽い運動やストレッチをするなどの工夫で、筋肉の緊張をほぐして血行を促進し、椎間板への負担を軽減できます。同じ姿勢での作業が続く場合にも、こまめな休憩と軽い運動を心がけ、椎間板ヘルニアの痛みを管理しましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説
椎間板ヘルニアの痛みが楽になる姿勢
椎間板ヘルニアの痛みが楽になる姿勢について、以下の内容を解説します。
- 座るとき:背もたれに背中全体を預けた姿勢
- 立つとき:お腹に力を入れた姿勢
- 寝るとき:仰向け・横向き
座るとき:背もたれに背中全体を預けた姿勢
座るときは、背もたれのある椅子を選び、背中全体を背もたれに預けるように座りましょう。より良い姿勢を保つためには、腰椎の自然なS字カーブを維持することも重要です。背もたれと腰の間に隙間ができる場合は、クッションやタオルなどを挟むと、腰への負担が軽減され、楽な姿勢を保つことができます。
椅子の高さは、足の裏全体が床につく程度に調整します。足が床に届かない場合は、足台を使いましょう。膝の角度を90度くらいにして、太ももの裏側が椅子に軽くつく程度にすると、楽な姿勢になります。
立つとき:お腹に力を入れた姿勢
立つときは、お腹に軽く力を入れて、背筋を伸ばすように意識しましょう。かかと重心ではなく、足の裏全体に均等に体重をかけると、より良い姿勢になります。長時間立っている場合は、片足を少し前に出して交互に体重をかけたり、低い台に片足を乗せたりすることで、腰への負担を軽減できます。
デスクワークなどで長時間座り続ける場合は、定期的に休憩を取るようにしましょう。休憩時間には席から立って、散歩など体を動かす習慣を身につけることが大切です。
寝るとき:仰向け・横向き
寝るときは、仰向け・横向きがおすすめです。仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションや枕などを置いて、膝を軽く曲げると、腰の負担を軽減できます。腰椎の前弯を維持し、椎間板内圧を下げる効果が期待できます。横向きで寝る場合は、両膝を軽く曲げ、抱き枕を抱えると体の歪みを防ぎ、楽な姿勢を保てます。
頸椎から腰椎までの自然なカーブを維持することも重要です。頸部の姿勢が腰部の負担にも影響する可能性があるため、枕の高さを調整して頸椎の自然なカーブを保ちましょう。
仰向けや横向きの姿勢で就寝すると、椎間板への負担を軽減し、神経根の牽引を防ぐ効果も期待できます。就寝のときの姿勢は、睡眠の質にも影響を与えるため、自分に合った姿勢を見つけて、良質な睡眠を目指しましょう。
椎間板ヘルニアを悪化させるNG動作
椎間板ヘルニアを悪化させるNG動作は以下のとおりです。
- 前かがみの姿勢
- 重い物を持ち上げる動作
- 激しいくしゃみ
- 腰を反らせる・回転させる動作
前かがみの姿勢
前かがみの姿勢は、椎間板への負担を増大させ、痛みを悪化させやすい姿勢です。前かがみになると、腰椎にかかる圧力が高まり、椎間板内部の髄核というゼリー状の組織が後方へ押し出されやすくなります。髄核が神経を圧迫することで、痛みやしびれといった症状が現れます。
1970年の研究では、前かがみの姿勢は椎間板の内圧を上昇させると示されています。内圧が上昇すると、椎間板を潰したような状態になるため、椎間板の水分が抜けやすくなります。椎間板の水分の減少は、椎間板の弾力性を低下させ、よりヘルニアを悪化させる要因です。
重い物を持ち上げる動作
重い物を持ち上げる動作も、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる原因の一つです。特に、中腰の姿勢で重い物を持ち上げると、腰に瞬間的に大きな負担がかかり、椎間板への圧力が急激に増加します。結果、髄核が飛び出しやすくなり、痛みやしびれなどの症状が悪化しやすくなります。
正しく重い物を持ち上げるためには、最初に両足を肩幅程度に開きます。次に、膝を曲げ、背中をまっすぐに保ち、腕の力ではなく足の力を使って持ち上げましょう。足の力を使って持ち上げることで、腰への負担を最小限にできます。
激しいくしゃみ
激しいくしゃみも、椎間板ヘルニアの痛みを悪化させる要因です。くしゃみをすると、腹圧が急激に上昇し、圧力が腰椎にも伝達され、椎間板への負担が増大し、髄核の突出を誘発しやすくなります。くしゃみは生理現象であるため、完全に我慢することは難しいです。
くしゃみをするときは、壁やテーブルなどに手をついて体を支える、軽く膝を曲げるといった工夫で、腰への負担を軽減できます。
腰を反らせる・回転させる動作
腰を反らせる・回転させる動作も、椎間板ヘルニアを悪化させます。腰を反らせる動作は、椎間板の後方部分に大きな負担がかかり、髄核が飛び出す可能性があります。腰を回転させる動作は、椎間板をねじる力となり、損傷を悪化させる可能性があります。
腰を反らせる・回転させる動作は、日常生活で無意識に行っている場合が多いです。急に腰をひねったり、反ったりする動作を避け、常に負担を軽減する意識を持ちましょう。
椎間板ヘルニアの改善が期待できるポイント
椎間板ヘルニアの改善が期待できるポイントは以下のとおりです。
- 体重を減らす
- 十分な睡眠を確保する
- ストレスを管理する
- 禁煙する
- 定期的に受診する
体重を減らす
体重を減らすことは、腰への負担を軽減するために欠かせません。体重が減ると、膝や股関節への負担の軽減が期待できるため、腰の痛みを和らげる可能性があります。体重の減少は、腰の負担軽減だけでなく、心臓や血管の負荷も下げるため、生活習慣病の予防にも重要です。
ウォーキングや水泳などの腰に負担の少ない運動は、カロリー消費だけでなく、筋力強化にも役立ちます。特に、腹筋群(お腹周りの筋肉)を鍛えることで、腰を支える力が強くなり、椎間板への負担を軽減できます。内圧が上がりやすい前かがみの姿勢を避け、前弯の姿勢を保つためにも腹筋群は重要です。
肥満の方はBMIを25以下にすると椎間板への負担が減り、症状の改善が期待できます。BMIは、[体重(kg)][身長(m)×身長(m)]で計算できるため、一度確認してみましょう。
十分な睡眠を確保する
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、体の修復機能が働くため、十分な睡眠の確保は、椎間板ヘルニアの改善にとって重要です。睡眠不足は、体の回復力を低下させ、免疫力や集中力の低下にもつながります。慢性的な睡眠不足は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めることも知られています。
質の高い睡眠には、規則正しい生活習慣を心がけることが重要です。寝る前にカフェインを摂らない、寝室を暗く静かに保つ、毎日同じ時間に寝起きするなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。寝具にも気を配り、自分に合った硬さのマットレスを選ぶことで、腰への負担を軽減し、快適な睡眠が期待できます。
ストレスを管理する
日常生活でストレスを溜め込まないよう、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。ストレスを長期間放置すると、自律神経の乱れから交感神経が優位になり、筋肉が緊張しやすくなります。筋肉が緊張することで血行が悪化し、椎間板への酸素や栄養の供給が滞り、痛みが悪化しやすくなってしまいます。
ストレス解消法は軽い運動や読書、音楽鑑賞、友人や家族との会話などがあります。自分がリラックスできる方法を見つけ、定期的に行いましょう。
禁煙する
禁煙もヘルニアの改善に欠かせない要素です。喫煙は血管を収縮させ、血行を悪化させます。血流が悪化すると、椎間板への栄養供給が阻害され、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。喫煙は、骨密度を低下させる作用もあるため、椎間板ヘルニアだけでなく、骨粗鬆症のリスクも高めます。
禁煙は、椎間板ヘルニアの改善だけでなく、さまざまな病気の予防にもつながります。禁煙が難しい場合は、医師や専門機関に相談してみましょう。禁煙補助薬やカウンセリングなど、さまざまなサポートを受けることができます。
定期的に受診する
椎間板ヘルニアは、自然に治癒することもありますが、症状が悪化する場合もあります。痛みが引かない、悪化する場合には、医療機関への受診が必要です。医師に日常生活での姿勢や運動についてアドバイスをもらうことで、再発予防にもつながります。
ヘルニアが治ったと感じる場合でも、定期的に受診することで、症状の変化を早期に発見し、適切な治療を受けられます。近年では、ディープラーニングを用いた椎間板ヘルニアの画像診断に関する研究も行われており、より高精度な診断が期待できます。
治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介
まとめ
椎間板ヘルニアの痛みを和らげるには、正しい姿勢と日常生活の工夫が大切です。座るときは背もたれに背中全体を預け、立つときはお腹に力を入れて背筋を伸ばしましょう。寝るときは仰向けか横向きがおすすめです。長時間同じ姿勢を続けない、重い物を持つときは膝を曲げるなどの動作にも気を配りましょう。
体重管理や十分な睡眠、ストレス管理、禁煙、定期的な受診も、椎間板ヘルニアの改善につながります。快適な毎日を送れるように、少しずつ生活に取り入れてみてください。
椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
参考文献
- 奥島平八郎.腰部椎間板内圧に関する研究.Arch. Jap.hir.,1970,39,1-2,p.45-57
- Silva WM, Cazella SC, Rech RS. Deep learning algorithms to assist in imaging diagnosis in individuals with disc herniation or spondylolisthesis: A scoping review. Int J Med Inform, 2025, 201, p.105933