椎間板ヘルニアにコルセットの効果はある?正しい装着法と選び方を徹底解説
椎間板ヘルニアによる腰や足の痛み、しびれなどの症状は、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。椎間板ヘルニアの症状を和らげる方法の一つがコルセットです。椎間板ヘルニアは、コルセットを正しく使うことで症状の改善が期待できる場合があります。
この記事では、コルセットの適切な使い方や装着方法、選び方のポイントについて解説します。コルセット以外の治療法についても紹介し、特徴を説明します。ご自身に合った方法を見つけて、痛みを和らげ、快適な生活を取り戻しましょう。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアでコルセットを活用する効果
コルセットを活用することで期待される効果は以下のとおりです。
- 急性期の強い痛みを抑える
- 重いものの持ち上げをサポートする
- 手術後の可動域を制限する
- 弱った腹筋を補助する
急性期の強い痛みを抑える
ぎっくり腰など、突然腰に激痛が走る急性期の椎間板ヘルニアの場合、コルセットを使うことで痛みが和らぐとされています。コルセットで腰回りを固定することで、患部への負担を軽減し、炎症の悪化を防ぐ効果が期待できます。安静にできない状況では、コルセットの装着で動作が楽になる可能性があります。
コルセットには、柔らかい布製や、プラスチックや金属の支柱が入った硬いものなど、さまざまな種類があります。痛みが強いときは、硬いコルセットでしっかりと固定することで、痛みの軽減が期待できます。
重いものの持ち上げをサポートする
コルセットは腰部をサポートし、重いものを持ち上げる際の負担を軽減します。コルセットの着用で腹圧を高め、腰への負担を分散する効果が期待されます。コルセットはあくまで補助的な役割です。中腰ではなく膝を曲げて持ち上げたり、身体をねじらないようにしたりなど、腰への負担を減らす工夫が大切です。
手術後の可動域を制限する
コルセットによる腰の動きの制限は、手術部位への負担を軽減し、治癒を促進する効果が期待できます。椎間板ヘルニアの手術後、患部を安静に保つために、コルセットを装着することがあります。コルセット装着は、手術後の痛みを和らげる効果も期待できます。
弱った腹筋を補助する
コルセットは、弱まった腹筋の代わりに腰部を支え、負担を軽減する効果が期待されます。妊娠中や産後、加齢などによって腹筋が弱まると、腰への負担が増加し、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。コルセットを装着することで正しい姿勢を維持し、腰痛予防にもつながります。
妊娠後期や産後の方は、ホルモンの影響で靭帯(じんたい)が緩みやすい状態です。コルセットを使うと、腰への負担軽減が期待できます。コルセットを使用した腹筋のサポートは、一時的な対処法です。長期的な視点で腰の健康を維持するために、腹筋を鍛えるトレーニングを行いましょう。
コルセットを正しく装着するポイント
コルセットを正しく装着するためのポイントは以下のとおりです。
- 締め付けすぎない
- 装着時間を守る
- 肌に直接コルセットをつけない
- 就寝時はコルセットを外す
- コルセットへの過度な依存に注意する
コルセットの正しい装着によって、本来の効果を発揮することが期待できます。
締め付けすぎない
コルセットを過度に締め付けると、腹圧が上昇し、腰への負担を増大させる可能性があります。適切な締め付け具合は、座った状態で指2本が入る程度の余裕がある状態です。コルセットの締め付け具合を調整する際は、深呼吸をしましょう。息苦しさを感じない程度が適切な締め付けです。
装着時間を守る
コルセットの装着時間は、医師の指導のもと、痛みが強い急性期では1日に8~10時間程度の装着が一般的な目安です。痛みが軽減してきたら、徐々に装着時間を短縮しましょう。コルセットの長期的な使用は、体幹筋の萎縮(筋肉がやせ細ること)を招き、腰痛の悪化につながる可能性があります。
コルセットに頼りきりにならず、腰周りの筋肉を鍛える運動やストレッチなどを並行して行いましょう。
肌に直接コルセットをつけない
コルセットは、必ず下着や薄いシャツなどの上から装着してください。コルセットを直接肌に装着すると、摩擦によって皮膚が炎症を起こし、かぶれや発疹などの皮膚トラブルを引き起こす可能性があります。汗をかきやすい夏場や運動後などは、皮膚トラブルのリスクが高まります。
コルセットを外した際は、皮膚を清潔に保ちましょう。コルセットの締め付けで血行不良になり、皮膚への酸素供給が不足し、皮膚の状態が悪化する可能性も懸念されます。
就寝時はコルセットを外す
就寝時はコルセットを外してください。コルセットを装着した状態で寝ると、身体の動きが制限され、自然な寝返りが困難になります。睡眠の質が低下し、疲労回復を妨げる可能性があります。コルセットによる締め付けは、血行不良を招き、身体の回復を遅らせる可能性も懸念されます。ただし、腰椎固定術後では就寝時もコルセット装着が必要なことがありますので医師の指示に従うようにしましょう。
就寝時はコルセットを外し、身体をリラックスさせて、質の高い睡眠を確保しましょう。
コルセットへの過度な依存に注意する
コルセットを長期間装着し続けると、腹筋や背筋など体幹の筋力が低下する可能性があります。筋力が低下すると、腰痛が悪化する場合もあります。コルセットは、正しい期間と方法で使用することが大切です。コルセットを装着中も、医師や理学療法士の指導のもと、体幹トレーニングを行うことで、筋力低下を防ぐことが期待できます。
体幹トレーニングは、インナーマッスルと呼ばれる深層筋(身体の奥深くにある筋肉)を鍛えることで、腰への負担を軽減する効果が期待できます。
コルセットを選ぶコツ
自分に合うコルセットを選ぶコツは以下のとおりです。
- 試着をする
- 医師・理学療法士のサポートを受ける
試着をする
コルセットを選ぶ際は、実際に試着することが大切です。窮屈すぎたり、緩すぎたりすると、コルセットの効果が発揮されない可能性があります。コルセットを選ぶポイントは、以下のとおりです。
ポイント | 内容 |
サイズ | ウエストと骨盤の周囲を測定し、指2本入る余裕が目安 |
支柱の硬さ | 急性期は硬性(プラスチックや金属)、落ち着いたら軟性(布製など動きやすいタイプ)を選択 |
幅 | 身長150cm未満は幅20cm、150cm以上は幅24cmが目安 |
通気性 | 通気性が良いメッシュ素材がおすすめ |
価格 | 幅広い価格帯があり、医師の指示があれば保険適応も可能 |
医師・理学療法士のサポートを受ける
コルセットを選ぶ際は、医師や理学療法士に相談することが重要です。コルセットは症状や体格、生活スタイルに応じて適切なものが異なります。専門家のアドバイスを受けることで、症状を改善し、再発の予防が期待できます。コルセットだけでなく、運動療法や薬物療法など、他の治療法との組み合わせについても相談できる場合があります。
椎間板ヘルニアの治療は、コルセットのみに頼るのではなく、多角的なアプローチが重要です。医師や理学療法士と相談しながら、自分に合った治療計画を立てましょう。
コルセット以外の椎間板ヘルニアの治療法
コルセット以外の代表的な治療法は、以下のとおりです。
- 薬物療法
- リハビリテーション
- 神経ブロック注射
- 手術療法
薬物療法
薬物療法は、椎間板ヘルニアに伴う痛みやしびれなどの症状を軽減することが目的です。内服薬や外用薬、注射薬などさまざまな種類があり、患者さんの症状に合わせて医師が適切な薬剤を選択します。薬剤の種類と特徴は以下のとおりです。
薬剤の種類 | 効果 | 特徴 |
消炎鎮痛剤 | 炎症を抑え痛みを緩和 | 痛みや炎症が強い時期に使用 |
筋弛緩薬 | 筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減 | 筋肉が緊張し、痛みを増強させている場合に使用 |
神経障害性疼痛治療薬 | 神経の炎症や興奮を抑え、しびれや神経痛を緩和 | 神経が圧迫されて、しびれや神経痛が出ている場合に使用 |
ステロイド薬 | 炎症を抑制 | 重度の炎症や他の薬が効かない場合に使用 |
自己判断で薬の服用を中止したり、量を変更したりすることは危険です。必ず医師の指示に従って服用してください。
リハビリテーション
リハビリテーションは、身体機能を回復させ、日常生活動作を改善する治療法です。椎間板ヘルニアのリハビリテーションは、さまざまな方法が行われます。リハビリテーションの治療法や効果は以下のとおりです。
治療法 | 内容 | 目的や効果 |
運動療法 | 正しい姿勢や身体の使い方を学び、ストレッチや筋力トレーニングを実施 | 腰椎の安定化、椎間板への負担軽減、筋肉の柔軟性向上、痛みやしびれの緩和 |
物理療法 | 温熱療法、電気刺激療法、牽引(けんいん)療法など機器を用いて治療 | 痛みの軽減、血行促進、筋肉の緩和、腰痛の改善 |
椎間板ヘルニアに対する牽引(けんいん)療法の臨床効果を調査した研究では、牽引療法と運動療法を比較した結果を発表しました。牽引治療は、運動療法に比べて腰や足の痛みを和らげる効果が高いとされています。
症状の程度によって治療の選択肢やアプローチも異なるため、自分がどのレベルに該当するのかを知っておくことが重要です。以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に分類し、それぞれに合った治療法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴!治療法も解説
神経ブロック注射
神経ブロック注射は、痛みの原因となる神経に直接薬剤を注射する治療法です。痛みを伝える神経の働きを抑え、痛みを軽減する効果が期待されます。神経ブロック注射の種類は以下のとおりです。
- 硬膜外ブロック注射:脊髄を覆う硬膜の外側に薬剤を注射する方法
- 神経根ブロック注射:脊髄から出ている神経根元に薬剤を注入する方法
薬剤の種類や注射する部位は、患者さんの症状や痛みの原因に応じて医師が判断します。神経ブロック注射は、比較的効果が早く現れる傾向ですが、持続期間は限られています。痛みが強い場合や、他の治療法で効果がない場合に検討されます。神経ブロック注射は、痛みの原因を特定する目的で用いられる場合もあります。
手術療法
手術療法は、保存療法では改善が難しい重度の椎間板ヘルニアに対して、根本的な治療を目指す方法です。排尿や排便障害が出現したり、神経麻痺が進行したりする際は、手術が必要な場合もあります。手術療法の種類は以下のとおりです。
- 椎間板摘出術:飛び出した椎間板の一部を取り除く手術
- 内視鏡手術:内視鏡を使用し、小さな傷口から椎間板を切除する手術
- 人工椎間板置換術:損傷した椎間板を人工椎間板へ置き換える手術
どの手術方法を選択するかは、患者さんの症状や年齢、全身状態などを考慮して決定します。手術療法は、症状の改善が期待できますが、身体への負担も大きいため、慎重に検討する必要があります。医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解したうえで、手術を受けるかどうかを判断しましょう。
手術を受ける際には治療効果だけでなく、費用面の確認も欠かせません。術式による費用の違いや、保険適用の条件、自己負担額の目安を事前に把握しておくことにより、安心して治療に臨むことができます。以下の記事では、椎間板ヘルニア手術の費用相場や保険適用の条件、自己負担額について解説しています。
>>椎間板ヘルニア手術の費用相場は?保険適用の条件や自己負担額を解説
まとめ
コルセットはさまざまな種類があり、正しい装着方法や選び方が重要です。コルセットは、痛みの緩和や動作の補助、筋肉のサポートへの効果が期待できます。コルセット選びは、医師や理学療法士に相談したうえで、実際に試着してサイズや硬さ、幅、通気性、価格などを確認しましょう。
コルセット以外にも、さまざまな治療法があります。自分に合った治療法を選択するために、医師とよく相談し、快適な日常生活を取り戻しましょう。
椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
参考文献
Wenxian Wang, Feibing Long, Xinshun Wu, Shanhuan Li, Ji Lin. Clinical Efficacy of Mechanical Traction as Physical Therapy for Lumbar Disc Herniation: A Meta-Analysis. Computational and Mathematical Methods in Medicine, 2022, 2022, 5670303, p.5670303