腰痛の治療法とは?症状の種類や原因、受診の目安を解説
腰痛は、成人の約8割が経験すると言われる身近な症状ですが、自己判断で放置していませんか?
腰痛には筋肉の疲れだけでなく、神経の圧迫や内臓の病気といった危険なサインが隠れている可能性もあります。突然の激痛から長引く鈍い痛み、しびれを伴うものまで、原因や症状は人それぞれで対処法も異なります。
この記事では、あなたの腰痛がなぜ起きているのか、原因を症状別に解説します。ご自身の状態を正しく理解し、適切な治療法を見つけていきましょう。
当院では、腰痛をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
腰痛の症状の種類
腰痛の症状の種類は、以下のとおりです。
- ぎっくり腰(急性腰痛)
- 慢性腰痛
- しびれ・麻痺を伴う腰痛
- 発熱・内臓症状を伴う腰痛
ぎっくり腰(急性腰痛)
ぎっくり腰は、急に腰に激しい痛みが起こる「急性腰痛」の代表です。重い物を持ち上げた瞬間やくしゃみをしただけでも発症することがあります。腰の筋肉や骨と骨をつなぐ靭帯が傷ついてしまうことで起こります。ぎっくり腰の主な症状は以下のとおりです。
- 動くことができないほどの激しい痛み
- 腰が固まったようになり、特定の姿勢から動かせない
- 寝返りをうったり、起き上がったりするのがつらい
ぎっくり腰になった直後は、患部で炎症が起きている可能性があります。無理に動かしたり、温めたりするのは避けましょう。横向きに寝て膝を曲げるなど、ご自身が楽だと感じる姿勢で安静にすることが重要です。痛みが強い場合や数日経っても痛みが改善しない場合は、早めに整形外科へご相談ください。
慢性腰痛
痛みが3か月以上にわたって続く場合を「慢性腰痛」と呼び、鈍い痛みが続くのが特徴です。長時間同じ姿勢でいると痛みが強くなったり、朝起きたときに腰がこわばっていたりすることもあります。
原因は、筋肉の衰えや血行不良、長年の姿勢の癖、背骨の変形など多岐にわたります。ストレスなどの心理的な要因が痛みを長引かせることもあります。
最近の研究では、慢性的な腰痛が脳の働きに影響を与える可能性が指摘されています。痛みが長く続くと、体を動かす指令を出す脳の部分が過剰に働いてしまい、神経が機能しにくくなります。体のバランスを保つ能力が低下し、姿勢が不安定になる可能性があります。
しびれ・麻痺を伴う腰痛
腰の痛みに加えて、お尻や足にしびれや力の入りにくさ(麻痺)を感じる場合は、注意が必要です。考えられる主な病気は、以下のとおりです。
- 腰椎椎間板ヘルニア:背骨のクッションである椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫する病気
- 腰部脊柱管狭窄症:加齢などが原因で、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される病気
腰の痛みだけでなく、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけてしびれや、坐骨神経痛が出ることがあります。「足に力が入りにくい」といった症状がある場合は、自己判断せずに、必ず専門の医療機関を受診してください。
以下の記事では、腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状や、痛み・しびれが起こる原因、治療の選択肢などを詳しく解説しています。
>>腰部脊柱管狭窄症の症状とは?痛くなる原因やしびれの特徴、治療法まで解説
発熱・内臓症状を伴う腰痛
腰痛には、腰の骨や筋肉が原因ではない可能性もあります。以下の症状が腰痛と同時にみられる場合は注意が必要です。
- 38度以上の発熱がある
- じっとしていても痛みが楽にならず、夜中にひどくなる
- お腹に強い痛みがある
- 尿が出づらく、血が混じる
- 胸のあたりも痛む
- 急に体重が減ってきた
腎臓や尿管の結石・感染症、すい臓や十二指腸の病気などが原因で、腰に痛みが出ている可能性もあります。女性の場合は、婦人科系の病気の可能性もあるので、注意が必要です。
まれですが、背骨の感染症やがんが背骨に転移している場合も考えられます。いつもの腰痛とは違うと感じたら、迷わず医師に相談しましょう。
腰痛の主な原因
腰痛の主な原因は、以下のとおりです。
- 筋肉・関節の問題
- 椎間板のトラブル
- 神経の圧迫
- 内臓疾患による腰痛
筋肉・関節の問題
腰痛の原因として多いのが、腰を支える筋肉や関節への負担です。背骨は多くの筋肉で支えられていますが、筋肉が硬くなると痛みを感じるようになります。筋肉が硬くなる原因は、長時間の同じ姿勢や猫背、反り腰、無意識に足を組む癖、運動不足などです。
筋肉が硬くなり血行が悪くなると、腰が重いといった症状が現れます。日頃から正しい姿勢を心がけ、適度な運動で筋肉をほぐすことが重要です。
椎間板のトラブル
骨と骨の間には、椎間板という軟骨があります。椎間板に問題が起きると、腰痛の原因となります。代表的な病気が「腰椎椎間板ヘルニア」です。加齢や腰への強い負担により椎間板が傷つき、中の組織が外に飛び出して神経を圧迫します。
背骨の骨が前後にずれてしまう「腰椎すべり症」も腰痛の原因です。腰椎分離症から進行する場合が多く、背骨が不安定になることで腰の痛みや足のしびれが現れます。
以下の記事では、腰椎すべり症の主な原因や、年代によって異なるリスク、治療法の選択肢をわかりやすく解説しています。
>>腰椎すべり症の原因と特徴!年代別リスクと治療法を解説
神経の圧迫
腰の痛みに加えて、足にしびれや痛みを感じる場合は、腰の神経が圧迫されている可能性があります。原因として多いのが「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」です。
脊柱管とは、背骨の中にある神経が通る管です。加齢などが原因で脊柱管が狭くなると、中の神経が圧迫されます。脊柱管狭窄症の代表的な症状として、坐骨神経痛があります。坐骨神経痛を伴う腰の痛みは、日常生活に大きな影響を与えるため、症状が現れたら、できるだけ早く医療機関に相談しましょう。
内臓疾患による腰痛
すべての腰痛が、骨や筋肉が原因ではありません。内臓の病気が原因で腰に痛みを感じる「関連痛」という場合もあります。
内臓の病気が原因である腰痛は、じっとしていても痛みが楽にならない、夜中に痛みで目が覚めるなどの特徴があります。腰痛を引き起こす可能性のある内臓の病気は以下の表のとおりです。
| 分類 | 考えられる病気 |
| 腎臓・尿路の病気 | ・腎盂腎炎(じんうじんえん) ・尿路結石 |
| 消化器の病気 | ・膵炎(すいえん) ・十二指腸潰瘍 |
| 婦人科の病気 | ・子宮内膜症 ・子宮筋腫 ・卵巣の病気 |
| 大血管の病気 | ・腹部大動脈瘤 ・大動脈解離 |
| その他 | がんの骨への転移など |
見逃さずに、適切な診療科にかかることが大切です。
腰痛の治療法
腰痛の治療法は、以下のとおりです。
- 薬物療法・ブロック注射
- リハビリ療法
- 手術療法
薬物療法・ブロック注射
薬物療法とブロック注射は、腰痛の痛みを抑えるための基本的な保存療法です。強い痛みを和らげ、日常生活を送りやすくすることを目的に行われます。まずは、腰痛治療で用いられる主な薬物療法を整理します。腰痛に使われる薬の種類は次のとおりです。
| 区分 | 薬の種類 | 主な作用・特徴 |
| 内服薬 | NSAIDs | 炎症や痛みの原因物質を抑え、痛みや腫れを和らげる |
| 内服薬 | 筋弛緩薬 | 筋肉の緊張をほぐし、血行を促進する |
| 内服薬 | 神経障害性疼痛治療薬 | 神経由来のしびれや痛みに用いられる |
| 外用薬 | 湿布・塗り薬 | 痛む部位に直接作用させる |
痛みが強い場合には、ブロック注射が選択されることもあります。これは、痛みの原因となる神経の近くに薬を注射し、痛みの伝達を遮断する治療です。代表的な種類は以下のとおりです。
| ブロック注射の種類 | 特徴 |
| 硬膜外ブロック | 神経を包む硬膜の外側に薬を注入する |
| 神経根ブロック | 圧迫されている神経の根元を狙って注射する |
これらは痛みを一時的に抑える治療であり、再発予防にはリハビリを併用することが重要です。
リハビリ療法
リハビリ療法は、薬で痛みを制御しながら、痛みの根本的な原因にアプローチする治療です。理学療法士が、体の状態に合わせて最適なプログラムを計画します。
- 運動療法:体幹の筋力強化トレーニング、ストレッチ
- 物理療法:電気や温かいパック、腰をゆっくり引っ張る牽引
- 日常生活の指導:腰に優しい生活習慣の指導
通院が難しい人のために、ビデオ通話などを利用してご自宅で専門家の指導が受けられる「遠隔リハビリテーション」も選択肢の一つです。慢性的な腰痛に対して、効果は従来の通院によるリハビリと大きな差はないと報告されています。
手術療法
保存療法を3か月ほど続けても症状が改善しない場合、手術療法を検討しましょう。手術を行うかどうかは、症状や生活への影響を総合的に判断して決定します。代表的な手術方法は、以下のとおりです。
| 手術方法 | 対象となる主な病気 |
| 内視鏡下椎間板摘出術 | 腰椎椎間板ヘルニア |
| 脊椎除圧術 | 腰部脊柱管狭窄症 |
| 脊椎固定術 | 腰椎すべり症 |
手術が必要と判断された場合は、効果とリスクについて医師と話し合い、治療法を選択することが大切です。
腰椎椎間板ヘルニアは、症状の進行度によって対処法が大きく異なります。以下の記事では、症状レベル別の特徴や治療法について、医師の視点から詳しく解説しています
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴!治療法も解説
腰痛で受診すべきタイミング
ほとんどの腰痛は、しばらく安静にすることで自然と和らいでいきます。しかし、緊急で受診を検討すべき危険な腰痛や長期間、痛みが続く場合の受診すべきタイミングを解説します。
緊急で受診を検討すべき「危険な腰痛」
受診を検討すべき腰痛の特徴は、以下のとおりです。
- お尻から足にかけて、しびれや力が入らない感じがある
- おしっこが出にくい、漏れてしまうなどトイレの悩みがある
- 夜中に痛みで目が覚める
- 原因不明の熱が出たり、体重が減ったりしている
- 転んだり、事故後に、急に腰が痛くなった
- 時間とともに痛みが強くなっている
足の麻痺や、おしっこや便が出にくくなる「排尿・排便障害」は注意が必要です。「馬尾症候群」と呼ばれ、背骨の中の重要な神経の束が強く圧迫されている緊急事態のサインです。対応が遅れると、後遺症が残る可能性もあるため、すぐに医療機関に相談してください。
痛みが長引く腰痛
痛みが続くと、無意識に体をかばうことで姿勢が崩れ、別の場所に新たな痛みが出る可能性があります。痛みが長引く場合の受診すべきタイミングは、以下のとおりです。
- 痛みが2週間以上続いている
- 痛みが強くなっている
- 痛む範囲が広がっている
- 良くなったり悪くなったりを繰り返している
痛みの原因を正確に診断し、治療を早く始めることが大切です。我慢せず、お気軽にご相談ください。
腰痛再発予防のポイント
腰痛は痛みが落ち着いても、日常生活の中で同じ負担を繰り返すと再発しやすい症状です。再発を防ぐためには、体の使い方や生活習慣を見直すことが欠かせません。腰痛予防のために意識したいポイントを紹介します。
腰痛改善ストレッチ
腰痛の再発予防の一つとして、ストレッチがあります。ストレッチで筋肉の柔軟性を取り戻し、血行を良くすることが重要です。お風呂上がりなど、体が温まっているときに行うとより効果が期待できます。ストレッチを行う際の注意点は、以下のとおりです。
- 痛みを感じるほど強く伸ばさない
- 呼吸は止めない
- 反動をつけない
お尻や太ももの裏の筋肉は腰と関係しているため、重点的にストレッチして、痛みを引き起こす物質を溜めないようにしましょう。
腰に負担をかけない姿勢や動作のコツ
日常生活での姿勢や動作は、腰痛予防の効果が期待できる対策の一つです。人間の背骨は、横から見ると緩やかなS字カーブを描いており、衝撃を吸収するバネの役割を果たしています。自然なカーブを保つことが、腰への負担を最小限にする姿勢です。
腰に負担をかけない立ち方として、あごを軽く引き、お腹をへこませてお尻を少し締めることが大切です。座り方のポイントは、椅子に深く腰かけ、足の裏全体が床につき、膝の角度を90度にすることです。長時間同じ姿勢でいることは、腰の筋肉を緊張させ血行を悪くするため、腰痛の原因となります。
最近の研究では、座る時間と立つ時間を交互に設けることが、腰痛の改善に効果が期待できると報告されています。30分に一度は立ち上がり、少し歩いたり軽く伸びたりする習慣をつけることから始めましょう。
生活習慣(運動・食事・睡眠)の見直し
腰痛の再発予防には、ストレッチや姿勢の改善だけでなく、生活習慣全体を見直し、体の中から健康な状態を作ることが重要です。運動では、体幹の筋肉を鍛えられるウォーキングや水中ウォーキングが推奨されます。継続することで、体幹が鍛えられ、腰を支えてくれるようになります。
食事では、骨と筋肉を作ることが腰痛対策になります。意識して取るべき栄養素は以下のとおりです。
- カルシウム:骨を丈夫にする
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助ける
- たんぱく質:筋肉の材料
睡眠では、十分な睡眠を心がけましょう。体に合わない寝具は腰痛を悪化させる原因になるため、自然に寝返りの打てる寝具にしましょう。
まとめ
腰痛には、筋肉の疲れから神経の圧迫、内臓の病気までさまざまな原因があります。足のしびれや麻痺、原因不明の発熱などを伴う場合は、自己判断せずに、医療機関を受診してください。
「いつものことだから」と我慢せず、痛みが長引く場合も専門家へ相談することが大切です。原因に合った適切な治療と、日々のセルフケアを組み合わせることで、つらい痛みは改善できる可能性があります。
当院の受診をご希望の方は、まずはお電話にてご予約ください。詳しいアクセス方法は、当院の公式サイトをご覧ください。
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参考文献
- Tu Y, Jung M, Gollub RL, Napadow V, Gerber J, Ortiz A, Lang C, Mawla I, Shen W, Chan ST, Wasan AD, Edwards RR, Kaptchuk TJ, Rosen B, Kong J. Abnormal medial prefrontal cortex functional connectivity and its association with clinical symptoms in chronic low back pain. Pain, 2019, 160, 6, p.1308-1318
- Jenny Sivertsson, Ninni Sernert, Kristina Åhlund. Exercise-based telerehabilitation in chronic low back pain – a scoping review. BMC Musculoskelet Disord, 2024, 25巻, 1号, p.948
- Smith MD, Vicenzino B, Brown WJ, Gilson ND, Gane EM, Johnston V.Symptom characteristics in office workers using standing workstations: A cross-sectional study.Braz J Phys Ther,2022,26,2,p.100393

