2025.10.27
コラム

腰椎椎間板ヘルニアの初期症状と受診の目安｜原因や治療法も解説

  • 「腰が重い」
  • 「足にしびれがある」

そんなつらい症状に悩んでいませんか？単なる腰痛ではなく「腰椎椎間板ヘルニア」の可能性があります。腰椎椎間板ヘルニアは加齢だけでなく、デスクワークなどの姿勢の悪さが原因で誰にでも発症する病気です。放置すると歩行困難や排尿障害などの深刻な後遺症につながることもあります。

この記事では、腰椎椎間板ヘルニアの初期症状を見分ける方法や日常生活に潜む原因、治療法までを詳しく解説します。正しい知識を持つことで、早めの対応ができ、つらい痛みを繰り返さない体づくりにつながります。

当院では、腰椎椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修：川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴： 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野：脊椎・脊髄外科

資格：
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

腰椎椎間板ヘルニアの主な初期症状

腰椎椎間板ヘルニアの代表的な初期症状は、以下のとおりです。

  • お尻や足まで広がる痛み・しびれ(坐骨神経痛)
  • 感覚が鈍くなる・力が入りにくい(感覚麻痺・筋力低下)
  • 前かがみや咳・くしゃみで悪化する腰痛

お尻や足まで広がる痛み・しびれ(坐骨神経痛)

腰椎椎間板ヘルニアは、腰だけでなくお尻や足に広がる痛みやしびれが特徴です。「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」と呼ばれ、多くの方が悩まされます。背骨の中のクッションである椎間板から飛び出したヘルニアが、神経の根元を圧迫します。圧迫された神経は、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先へと伸びています。

症状は左右どちらか片側の足に現れます。初めは「お尻が少し張る」「太ももの裏がだるい」などの軽い症状が多いです。進行すると電気が走るような鋭い痛みや、しびれに変化します。坐骨神経痛の症状として、以下が挙げられます。

  • 長時間の座位で痛い
  • お尻から足への放散痛がある
  • 歩行時に足が痛む
  • 足裏の違和感がある

腰の痛みだけでなく足にも症状が出ている場合は、早めに専門医へ相談しましょう。

腰椎椎間板ヘルニアによって足の付け根や下肢に痛みが出るケースも多く見られます。以下の記事では、足の付け根が痛む原因や治療法、日常生活での対処法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニアで足の付け根が痛む！原因や治療法、対処法を解説

感覚が鈍くなる・力が入りにくい(感覚麻痺・筋力低下)

椎間板による神経への圧迫が強くなると、痛みやしびれだけでなく、感覚麻痺や筋力低下の症状が現れる場合があります。神経には、熱さや触れた感覚を脳に伝える「感覚神経」と、脳からの指令を筋肉に伝え体を動かす「運動神経」があります。ヘルニアによる圧迫が深刻化すると、感覚神経や運動神経の働きが鈍くなります。

感覚麻痺と筋力低下の症状は、以下のとおりです。

サインの種類 症状
感覚麻痺のサイン ・左右の足を触ってみて、感覚に明らかな違いがある
・お風呂のお湯の熱さを感じにくい、または熱く感じすぎる
・足にケガをしても気づきにくい
筋力低下のサイン ・スリッパやサンダルが、意図せず脱げる
・何もない平らな場所で、以前よりつまずきやすい
・階段を上る際、足が重く感じて上がりにくい

症状を放置すると改善しにくくなる可能性もあるため、気づいた時点で整形外科を受診してください。

前かがみや咳・くしゃみで悪化する腰痛

背中を丸める「前かがみの姿勢」をとると、症状が悪化しやすいです。前かがみになると背骨の前方が縮み、椎間板が後ろへ強く押し出され、飛び出したヘルニアが神経を刺激し、痛みが強くなります。咳やくしゃみ、重い物を持ち上げるときに力を入れる動作にも注意が必要です。咳やくしゃみなどの動作は、腹圧が急激に上昇します。

意識して背筋をスッと伸ばした姿勢をとると、椎間板への圧力が和らぎ、症状が軽減する傾向があります。

すぐに受診が必要な症状

神経の圧迫が強い場合は、緊急の対応が必要な場合があります。すぐに受診が必要な症状は、以下のとおりです。

  • 下肢の筋力低下
  • 排便・排尿障害

下肢の筋力低下

足のしびれや感覚の鈍さに加え、明らかに足の筋力が低下した場合は、注意が必要です。筋肉を動かす指令を出す運動神経が、ヘルニアによって強く圧迫され、深刻なダメージを受けている可能性があります。以下の症状がある場合は、受診をおすすめします。

  • つま先立ちができない、または不安定になる
  • かかとで歩くことができない
  • 階段をスムーズに上り下りできない
  • 歩くときに足が上がらず、地面を引きずるように歩く
  • スリッパが頻繁に脱げる

筋力低下の症状がある場合、神経の機能が失われる前に、圧迫を取り除く治療が必要になることがあります。整形外科を受診し、専門医の診察を受けてください。

排便・排尿障害

腰椎椎間板ヘルニアの症状の中で、緊急性が高いのが「排便・排尿障害」です。排尿や排便をコントロールする重要な神経の束である「馬尾(ばび)神経」が、ヘルニアによって圧迫されることが原因です。排便や排尿障害が現れると、緊急手術が必要になる可能性があります。

馬尾神経は一度深刻なダメージを受けると、回復が難しいことが多いです。治療が遅れると、しびれや麻痺、排泄の障害が後遺症として残る可能性もあります。以下の症状が出現した際は、緊急を要する可能性があります。

症状の種類 症状
排尿の異常 ・尿意を感じにくい
・お腹に力を入れないと尿が出にくい
・残尿感がある
尿失禁 自分の意思とは関係なく尿が漏れる
排便の異常 ・便意を感じにくい
・便秘がひどい
便失禁 自分の意思とは関係なく便が漏れる
会陰部の感覚異常 ・尻の周りや股間(サドルが当たる部分)の感覚がない
・しびれる

排尿や排便の症状が現れた場合は放置せず、救急外来のある病院を受診してください。

腰椎椎間板ヘルニアは、症状の進行度によって対処法が大きく異なります。以下の記事では、症状レベル別の特徴や治療法について、医師の視点から詳しく解説しています
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴！治療法も解説

腰椎椎間板ヘルニアの3つの原因

腰椎椎間板ヘルニアの主な原因として、以下の3つを解説します。

  • 加齢
  • 悪い姿勢による椎間板への継続的な負担
  • 重労働による急な腰への負荷

加齢

腰椎椎間板ヘルニアの基本的な原因の一つが加齢です。背骨の間でクッションの役割を担う椎間板は、若い頃はみずみずしく弾力性に富んでいますが、年齢とともに水分が失われます。水分が減って硬くなった椎間板は、クッション機能が低下し、日常のささいな衝撃や負担にも耐えられなくなります。

椎間板の外壁である「線維輪」に亀裂が入りやすくなり、内部の「髄核」というゼリー状の組織が外へ飛び出します。第4腰椎と第5腰椎の間、および第5腰椎と仙骨の間がヘルニアの好発部位で、全体の約9割がこの部位に発生するという報告もあります。喫煙は椎間板の栄養状態を悪化させ、劣化を早める要因となるため注意が必要です。

悪い姿勢による椎間板への継続的な負担

姿勢の悪さも椎間板ヘルニアの原因の一つです。長時間同じ姿勢でいることが多い現代の生活は、腰に大きな負担をかけ続けます。デスクワークやスマホ操作で前かがみになると、負担は増大します。研究では、同じような負荷が椎間板にかかり続けることで、椎間板の壁である線維輪が徐々に傷つき、進行性の損傷を引き起こすことが示されています。

静かなダメージの蓄積が、ヘルニアという形で現れることがあります。

重労働による急な腰への負荷

加齢や悪い姿勢によって椎間板が弱っているところに、急激な強い力が加わることもヘルニアの原因です。「ぎっくり腰」などの急な痛みからヘルニアが見つかるケースがあります。以下の動作が椎間板に強い圧力をかけます。

  • 重い荷物を持ち上げる
  • 急に体をひねる
  • 咳やくしゃみ
  • 転倒やスポーツでの衝突

正しい体の使い方を意識することが、ヘルニア予防において大切です。

腰椎椎間板ヘルニアの治療法

腰椎椎間板ヘルニアの治療法には、以下の4つが挙げられます。

  • 薬物療法
  • ブロック注射
  • リハビリテーション
  • 手術療法

薬物療法

つらい痛みやしびれを和らげ、日常生活を楽に過ごすために薬物療法が選択されます。症状の種類や強さに合わせて、以下の薬を使用します。

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)：痛みや炎症を引き起こす物質の働きを抑える
  • 筋弛緩薬：筋肉の緊張をほぐし、血行を改善する
  • 神経障害性疼痛治療薬：しびれや痛みを緩和する
  • ビタミンB12製剤：傷ついた末梢神経の働きを助け、しびれの改善を促す

薬物療法は、つらい症状の緩和に効果が期待できます。痛みの原因である炎症反応は、体がヘルニアを治そうとする大切な働きの一部でもあります。薬の種類や量を自己判断で変えることは避け、必ず医師の指示に従って服用しましょう。

ブロック注射

飲み薬だけでは痛みがなかなか治まらない場合や、夜も眠れないほど痛みが強い場合には「ブロック注射」という治療法があります。痛みの原因となる神経のすぐ近くに、局所麻酔薬や炎症を抑えるステロイド薬を直接注射する方法です。

ブロック注射は、痛みを伝える神経に直接作用することで、痛みの信号を遮断し、痛みの軽減につながります。痛みの悪循環を断ち切る働きや、神経の周囲で起こる強い炎症を鎮めることで、痛みの軽減につなげる効果も期待できます。

リハビリテーション

リハビリテーションは、痛みを和らげるだけでなく、腰椎椎間板ヘルニアの根本的な原因にアプローチし、再発しにくい体を作るための治療です。痛みが少し落ち着いた段階で、専門家の指導のもとで開始します。リハビリテーションの主な内容は以下のとおりです。

区分 内容 目的・効果
物理療法 ・特殊な機器で腰をゆっくり引っ張る「牽引療法」
・体を温めて血行を良くする「温熱療法」		 痛みや筋肉のこわばりを和らげる
運動療法(ストレッチ) 硬くなったお尻や太ももの裏の筋肉を優しく伸ばす 腰への負担を減らす
運動療法(筋力トレーニング) 腹筋や背筋など体幹を鍛える 背骨を安定させ、腰への負担を軽減する
運動療法(動作指導) 日常生活での正しい姿勢や物の持ち上げ方を学ぶ 腰に負担をかける癖を改善し、症状の悪化を防ぐ

理学療法士などの専門家が、体の状態に合わせた適切なプログラムを作成しサポートします。

リハビリとあわせて、コルセットの正しい使用も腰への負担軽減に効果が期待できます。以下の記事では、椎間板ヘルニアに対するコルセットの効果や、正しい装着方法・選び方について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアにコルセットの効果はある？正しい装着法と選び方を徹底解説

手術療法

「排便・排尿障害」などの症状が現れた場合は、神経へのダメージが深刻なサインであり、緊急で手術が必要になることもあります。手術は、神経を圧迫している椎間板の飛び出した部分を取り除く「ヘルニア摘出術」が一般的とされています。近年では、カメラを使った内視鏡手術など、体への負担が少ない方法も広く行われています。

まとめ

軽い腰痛や足のしびれも、放置すると悪化する可能性があります。「足に力が入らない」「排尿や排便の感覚がおかしい」などの症状は、後遺症につながる危険なサインです。ヘルニアの治療は、保存療法から開始し、手術をせずに改善される場合が多いです。症状を感じたら自己判断で我慢せず、専門医に相談してください。

つらい症状を一人で抱え込まず、不安を感じたら整形外科を受診し、体の状態に合った適切な治療を選択しましょう。

当院の受診をご希望の方は、まずはお電話にてご予約ください。詳しいアクセス方法は、当院の公式サイトをご覧ください。
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