腰椎椎間板ヘルニアで足の付け根が痛む！原因や治療法、対処法を解説

「歩き始めや椅子から立つときに足の付け根が痛む」と悩みを抱えていませんか？その症状は、腰椎椎間板ヘルニアが原因の可能性があります。腰痛がない場合でも、椎間板ヘルニアが神経を圧迫して離れた部位に痛みやしびれを生じることがあるため注意が必要です。

研究では、腰痛と下肢症状(足の痛みやしびれ)の症状がある患者さんのうち、約80%でヘルニアが見つかったと報告されています。この記事では、痛みの原因、セルフチェック法、病院での診断・治療の流れと自宅でできる対処法をわかりやすく解説します。痛みの原因を知り、症状改善に向けた一歩を踏み出しましょう。

当院では、腰椎椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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腰椎椎間板ヘルニアで足の付け根が痛む原因

腰椎椎間板ヘルニアが、足の付け根の痛みを引き起こす原因は以下の3つです。

• 椎間板が飛び出し神経を圧迫している
• 動作や姿勢によって神経への圧迫が強まる
• 炎症によって神経が過敏になっている

椎間板が飛び出し神経を圧迫している

椎間板ヘルニアの主な痛みの原因は、変形した椎間板が脊髄神経を物理的に圧迫することです。腰から足にかけてしびれや痛みが生じる直接的な要因になります。椎間板が本来の位置から飛び出して隣接する神経に接触・圧迫することで発生します。主な症状は以下のとおりです。

• 足の付け根や太ももの裏に走るような痛み
• ふくらはぎのしびれ
• 足先の感覚鈍麻
• 坐骨神経経路に沿った放散痛

症状は神経の興奮や関連痛によって現れます。腰に明確な自覚症状がなくても、腰椎の異常が足の痛みとして感じられることが特徴です。

椎間板ヘルニアによる神経圧迫は、坐骨神経痛として現れることもあります。以下の記事では、坐骨神経痛の主な症状や原因、治療法、セルフケアとして有効なストレッチについて詳しく解説しています。
>>坐骨神経痛とはどんな症状？原因や治療法、ストレッチ法も解説

動作や姿勢によって神経への圧力が強まる

日常の動作で腰椎に負担が蓄積すると、椎間板の圧力が高まり、症状が悪化することがあります。座る姿勢や前かがみは椎間板への負荷を増やしやすいです。以下のような場面で腰への負担が増える傾向があります。

• 朝の洗顔や靴下を履く動作
• 掃除や料理など前傾姿勢の作業
• 長時間のデスクワークや車の運転

動作を完全に避けることは難しいため、負担を軽減する工夫が重要です。具体的には、膝を曲げてしゃがむことや物を身体に近づけて持つこと、腰当てクッションを使うことなどが効果が期待できます。工夫で椎間板への圧力を減らし、痛みの悪化を防げる可能性があります。症状が続く場合は医療機関や理学療法士に相談してください。

炎症によって神経が過敏になっている

腰椎椎間板ヘルニアでは、椎間板内部の組織が外へ漏れ出し、周囲で炎症が生じることがあります。炎症が起こると神経が過敏になり、通常より痛みを強く感じやすくなります。炎症性の痛みは安静時に生じたり、広い範囲に広がったりする特徴があります。炎症の可能性を示す症状は以下のとおりです。

• 夜中に痛みで目が覚める
• 安静時も痛む
• 痛む部位が日によって変わる
• 天候や気圧の変化で痛みが強まる

症状が続く場合は、消炎鎮痛薬の使用や適度な冷却、安静することが大切です。慢性化を防ぐために血流を促す軽い運動も推奨しています。強い痛みや歩行障害、感覚障害が出る場合は速やかに医療機関を受診してください。

以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に整理し、それぞれに合った治療法について解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴！治療法も解説

変形性股関節症など他の病気との見分け方

足の付け根の痛みは腰椎椎間板ヘルニアだけでなく変形性股関節症が原因の可能性もあります。腰椎椎間板ヘルニアと変形性股関節症の代表的な特徴は、以下を参考にしてください。

疾患名	腰椎椎間板ヘルニア	変形性股関節症
主な痛みの部位	お尻から足の付け根、太ももなどの神経に沿って響くように痛むことがある。	足の付け根(股関節)が中心で、お尻や太ももに痛みが広がることがある
痛みが強くなる動き	・前にかがむ ・咳やくしゃみをする ・長時間座っている	・歩き始めの一歩目 ・立ち上がるとき ・階段の上り下り
その他の特徴	・足にしびれや麻痺がある ・背筋を伸ばすと楽になる	・靴下が履きづらい ・足の爪が切りづらい ・股関節の動きが悪い

腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の神経が圧迫されることで起こり、咳やくしゃみで腹圧が上がると痛みが増し、鋭い痛みや足のしびれが特徴です。変形性股関節症は股関節の軟骨がすり減ることが原因で、動き始めに痛みが出やすく、股関節の可動域が制限される特徴があります。

特徴は重なることも多く、正確な診断には専門的な検査が必要です。痛みが続き、歩行に支障がある場合は、整形外科を受診し確定診断を受けてください。

腰椎椎間板ヘルニアの治療法

治療は身体への負担が少ない保存療法から開始するのが基本です。主な治療法は以下の4つです。

• 薬物療法
• ブロック注射
• リハビリテーション
• 手術療法

薬物療法

薬物療法は痛みをコントロールし、日常生活を少しでも快適に過ごせるようにする治療法です。症状に応じて、複数の薬を使い分けたり組み合わせたりします。代表的な薬は以下のとおりです。

薬剤名	特徴
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)	・炎症を抑えて痛みを緩和する ・飲み薬や貼り薬、塗り薬がある
神経障害性疼痛治療薬	・過敏になった神経の興奮を鎮める ・電気が走るような痛みやしびれに効果が期待できる
筋弛緩薬	・痛みによる筋肉の緊張をほぐす ・筋肉がリラックスし血行が改善し、痛みを緩和する
ビタミンB12製剤	神経の働きをサポートし、圧迫で傷ついた神経の修復を助ける

薬は医師の指示通りに使用することが重要です。症状が改善したからといって自己判断で中止せず、気になることがあれば医師や薬剤師に相談してください。

ブロック注射

ブロック注射は、痛みの原因となる神経の近くに麻酔薬や炎症を抑える薬を直接注入する治療法です。飲み薬だけで痛みが十分にコントロールできない場合や、眠れないほど痛みが強い場合に選択肢になります。以下のような目的でブロック注射を行います。

• 強い痛みを速やかに抑える
• 痛みの悪循環を断ち切る
• リハビリテーションをスムーズに進める

ブロック注射は痛みの信号が脳に伝わるのを直接ブロックするため、内服薬より早く効果を実感しやすいです。注射で痛みが和らぐと筋肉の不随意な緊張がほぐれ、血流が改善して痛みが増す悪循環を断ち切れます。痛みで運動が難しい場合でも、注射で症状を軽減することで理学療法などのリハビリテーションを進めやすくなります。

ブロック注射には種類があり、腰椎椎間板ヘルニアの部位や症状に合わせて最適な方法を選びます。効果の持続時間には個人差がありますが、痛みの悪循環を断ち切るきっかけとして効果が期待できる治療法の一つです。

リハビリテーション

リハビリテーションは再発しにくい身体を作る根本療法です。痛みの原因にアプローチして、背骨を支える筋力と柔軟性を高めることを目指します。研究ではさまざまな保存療法を組み合わせることが、治療効果の向上につながると報告されています。リハビリテーションの主な内容は以下のとおりです。

• 運動療法
• 物理療法
• 日常生活指導

運動療法は理学療法士の指導のもとで行います。ストレッチで硬くなった筋肉をのばし、インナーマッスルを鍛えるトレーニングを実施します。身体の柔軟性が改善し、腰を支える支持力が高まるのが特徴です。

日常生活指導では座り方・立ち方や物の持ち上げ方など、腰に負担をかけない動作を指導します。生活動作を改善することで痛みの原因を減らし、再発予防につなげることが期待できます。

リハビリテーションは理学療法士など専門家が身体の状態を評価し、個々に最適なプログラムを作成します。自己判断で無理な運動をすると症状を悪化させることがあるため、必ず専門家の指導のもとで進めてください。

手術療法

ほとんどの腰椎椎間板ヘルニアは保存療法で改善することが多いです。以下の場合は手術を検討します。

• 保存療法を3か月ほど続けても、痛みやしびれが改善しない
• 痛みが強く歩行や日常生活に支障がある
• 足の力が入りにくい、感覚が鈍いなどの麻痺症状がある
• 排尿・排便障害がある(馬尾症候群の疑い)

該当する症状があれば速やかに専門医に連絡してください。排尿や排便の異常は緊急手術が必要になる可能性がある危険なサインです。研究では、腰痛に加えて足のしびれや痛みがある患者さんで腰椎椎間板ヘルニアの割合が高く、手術に至る割合も相対的に高いと報告されています。

近年は内視鏡を用いた低侵襲手術が普及しています。小さな切開創からカメラを挿入してヘルニアを除去する方法で、筋肉の切開が小さく術後の痛みや入院期間が短い点がメリットです。合併症や再発のリスクはゼロではないため、手術の適応や方法は専門医と相談して決めましょう。

日常生活でできる対処法・セルフケア

薬やリハビリテーションに加え、セルフケアを組み合わせることが痛みの緩和につながります。再発を防ぐための3つの対処法・セルフケアは以下のとおりです。

• 腰に負担をかけない姿勢・動作
• 痛みを軽減する生活習慣
• 腰の負担を軽減する寝具・環境づくり

腰に負担をかけない姿勢・動作

立位より座位で椎間板にかかる圧力が高くなるため、座る姿勢は腰に大きな負担をかけます。正しい座り方については、以下のポイントを意識して負担を減らしましょう。

• 深く腰掛けて背もたれを使う
• 骨盤を立てることを意識する
• 足の裏全体を床につける
• 膝の角度は90度を意識する

お尻を背もたれに密着させて深く座ると、背骨のS字カーブが保ちやすくなり、椎間板の前方に圧力が集中しにくくなります。背もたれと腰の間にクッションや丸めたタオルを入れると骨盤が後ろに倒れるのを防げます。かかとが浮く場合は、足元に台を置くと姿勢が安定します。

足を組む癖は骨盤のゆがみを招き腰への負担を増やすため、避けるのが望ましいです。股関節と膝の高さが同じか膝がやや低いと、太ももの裏の緊張が和らぎ、骨盤の安定につながります。同じ姿勢を続けると筋肉が硬くなるため、1時間に一度は立ち上がり、軽く歩くか伸びをして身体をリセットしましょう。

正しい姿勢を意識しても、腰痛の出方には「寝ると痛いが立つと楽になる」などの特徴的なケースがあります。こうした症状には原因があり、対処法を知ることが予防や改善につながります。

以下の記事では、その原因とすぐに取り入れられる対策を詳しく解説しています。
>>「腰痛で寝ると痛いけど、立つと楽」な症状は対策できる！原因やすぐにできる対策

痛みを軽減する生活習慣

料理や立ち仕事など立位で過ごす時間が長い場合も、腰への配慮が必要です。姿勢が悪いと重力が直接腰にのしかかり、痛みを招くことがあります。背骨の自然なS字カーブを保ち、体幹で身体を支えることを意識しましょう。腰に負担が少ない立ち方のポイントは以下のとおりです。

• 背骨のS字カーブを保つ
• お腹に軽く力を入れる
• 片足に体重をかけない

壁を背にして立ったときに後頭部・肩甲骨・お尻・かかとが自然に触れる姿勢を目安にすると、S字カーブを保ちやすくなります。無理に胸を張ると腰が反りすぎるため、軽くあごを引く程度に留めましょう。

おへその下あたりに軽く力を入れて腹部の深い筋肉(インナーマッスル)を使うと、腰椎が安定します。力を入れすぎず自然な力感を保つのが大切です。

片足に体重をかけて立つ癖は骨盤の傾きにつながり、腰へ余計な負担がかかります。両足に均等に体重を乗せることを心がけましょう。症状が強い場合は自己判断で無理をせず、整形外科や理学療法士に相談してください。

腰の負担を軽減する寝具・環境づくり

睡眠時の姿勢が悪いと、無意識のうちに腰に負担がかかり、朝起きたときに痛みが強くなることがあります。寝具や寝方を工夫して、腰をしっかり休ませてあげましょう。

仰向けで寝る場合は、腰への負担が最も少ないとされています。膝の下にクッションや丸めたタオルを入れ、膝を軽く曲げると、腰と股関節をつなぐ筋肉の緊張が和らぎ、腰の反りが緩やかになります。腰回りの筋肉がリラックスし、椎間板への圧力も減らすことができます。

横向きで寝る場合は、痛みやしびれがある方を上にして寝るのが基本です。背中を軽く丸め、膝を曲げると楽になります。両膝の間にクッションや抱き枕を挟むと、上の足の重みで骨盤が前にねじれるのを防ぎ、腰椎への負担を軽減できます。

うつ伏せで寝ることは腰を大きく反らせる姿勢になりやすく、ヘルニアの症状を悪化させる可能性があるため、できるだけ避けましょう。

足の付け根の痛み以外に注意すべき症状(下肢のしびれ・麻痺)

腰椎椎間板ヘルニアでは、痛みだけでなく神経の圧迫が強まることで、下肢のしびれや麻痺などの症状が現れることがあります。神経の働きが低下しているサインであり、放置すると後遺症のリスクが高まるため、早期発見が重要です。

ご自身の状態を確認するために、以下のチェックリストを参考にしてください。

症状	特徴
力の入りにくさ (筋力低下)	・足首や足の指を自分の力で上に反らすのが難しい ・歩いているとスリッパが意図せず脱げる ・階段を上るとき、足が上がりにくい ・片足でつま先立ちができない
感覚の異常 (知覚障害)	・太ももやすねの皮膚を触っても感覚が鈍い ・お尻の周りや内ももの感覚が普段と異なる
排尿・排便の異常 (膀胱直腸障害)	・尿意を感じにくく、排尿が困難 ・自分の意思に関係なく尿や便が漏れる ・便意を感じにくくなる

排尿・排便の異常は「馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)」と呼ばれ、緊急対応が必要な危険な状態です。放置すると、足の力が戻りにくくなったり、しびれが残ったりする後遺症につながる可能性があります。1つでも当てはまる場合は、できるだけ早く専門の医療機関を受診しましょう。

まとめ

腰から離れた場所に痛みやしびれが出る場合、腰の神経が圧迫されている腰椎椎間板ヘルニアの症状の可能性があります。足の力の入りにくさや感覚の異常、排尿・排便のトラブルは、後遺症につながる可能性がある危険なサインであり、注意が必要です。

自己判断で痛みを我慢せず、整形外科などの専門医に相談することが、症状改善への大切な第一歩です。治療は薬やリハビリテーションを中心に行い、日常生活での工夫も改善の助けになります。正確な診断を受けたうえで、あなたに合った治療法を選び、無理なく症状の改善を目指しましょう。

当院(大室整形外科 脊椎・関節クリニック)では、腰や関節の痛みがある方へ、専門医が丁寧に相談に応じます。長引く痛みやしびれを諦める前に、まずは一度、専門の医師に相談してみませんか。
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参考文献

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• Christian Sturm, Jörg Schiller, Christoph Egen, Alexander Ranker, Christina Lemhöfer, Andrea Bökel.Conservative therapy for lumbar disc herniation.Orthopadie (Heidelb),2024,53,12,p.918-927