整形外科手術を受ける上での心構え 〜内科的視点から①
安心・安全な手術を受けるために
シリーズ 1
大室整形外科では “「歩く」ことで人生を味わい深いものに” をテーマに診療に当たっています。
では 「歩く」こと はどうしてそんなにも
重要なのでしょうか。
歩くスピードと寿命の関係
2011年に発表された「Gait Speed and Survival in Older Adult」という論文によると、
“歩くスピードが速いほど寿命が長い”ことが明らかになりました。
これは、1986-2000年に集められた65歳以上の34,485人を対象にした
9つの観察研究を統合した結果、得られた知見です。
引用・掲載:アメリカの科学雑誌『The Journal of the American Association』
Studenski S, Perera S, Patel K, et al. Gait Speed and Survival in Older Adults. JAMA. 2011;305(1):50–58. doi:10.1001/jama.2010.1923
では、逆に歩きにくくなると
どのようになるのでしょうか。
ロコモと介護の必要性や生活習慣病
人間が 立つ、歩く、作業する といった、広い意味での運動のために必要な身体の仕組み全体を
運動器 といいます。
運動器は 骨・関節・筋肉・神経 などで成り立っていますが、
これらの組織の障害によって、立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態を
ロコモ(=ロコモティブシンドローム)と呼びます。
参考:日本整形外科学会 ロコモ Online https://locomo-joa.jp/locomo/
転倒、骨折や関節などの病気でロコモが進行すると、
- 将来介護が必要になるリスクが高くなります。
また、歩く能力が低下すると内科的には筋肉量や活動量が低下し、
- 肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の発症や悪化につながっていきます。
歩くというのは実は 非常に複雑な行為で、
筋肉、神経系、呼吸、循環器系など 多くの臓器を使用しています。
そのため、歩くと 心肺機能が向上し、体重を維持し、リラックス効果があり、
骨密度を高めるなどいろいろな効用があるとされています。
ロコモの原因となる運動器の病気
- 骨: 骨粗鬆症、骨折
- 関節軟骨・椎間板: 変形性関節症、変形性脊椎症
- 脊椎と神経: 脊柱管狭窄症
参考:日本整形外科学会 ロコモ Online https://locomo-joa.jp/locomo/
大室整形外科では上記の疾患に対し、
リハビリテーション、投薬、
そして
必要な患者さんには手術を行っています。
しびれや痛みをどうにかしたい。歩けるようになりたい。など
患者さん一人一人が違った思いで手術を決断されるとは思いますが、
手術は症状の改善だけでなく、上記のように ロコモを進行させないなどの長期的な効果
をもたらすという点においても非常に重要です。
今後の連載では、内科疾患 と 整形手術 の関係や、
内科医が院内で行っている 手術が安全に行われるために気を付けていること を
みなさんに解説していきます。