整形外科手術と深部静脈血栓症 〜内科的視点から⑧
安心・安全な手術を受けるために
シリーズ 8
安心・安全な手術を受けるために シリーズ 8回目は、手術後に起こる可能性のある合併症について、
テーマに取り上げます。
Q:知っておくべき、整形外科の手術後に起こりやすい
内科的な合併症はありますか?
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A:整形外科の手術(特に股関節や膝の人工関節置換術)後や
肥満の患者さんには足の深部静脈血栓症や肺塞栓症が起きやすい
ことが分かっています。
肺塞栓症とは?
エコノミークラス症候性という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
食事や水分を十分に取らない状態で、車や飛行機などの狭い座席に長時間座っていて
足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。
その結果、血の固まり(血栓)が足ででき(深部静脈血栓症)、血管の中を流れ、
肺に詰まって肺塞栓症などを誘発する恐れがあることを指します。
参照:厚生労働省ホームページ 「エコノミークラス症候群予防のために」
同じように股関節や膝の人工関節置換術後は、手術の影響や術後の安静のために
足の静脈の流れが悪くなったり、絶食の影響で脱水になったりして
同じように血栓ができやすくなるのです。
ただし、低侵襲手術の発達、術後の早期離床(手術翌日から)への取り組み、術後の抗凝固薬の使用で、
20年前より深部静脈血栓症や肺塞栓症になる確率は格段に低下しています。
最近の報告では、抗凝固薬を内服し予防をおこなった場合の症状を伴う下肢の深部静脈血栓症と
肺塞栓症のそれぞれの発症率は1%台前半と0.5%程度です。
上記のような血栓形成の予防策に加えて、早期発見、診断のために
大室整形外科では超音波部門の立ち上げに向けて活動中です。
リスクの高い患者さんには手術後に下肢の超音波検査を提案させていただく機会も増えてくる
かとは思いますが、ご協力をお願いいたします。
<左写真> 引用: wikipedia「深部静脈血栓症」
以下、詳しく知りたい方にリスク因子、予防法、発症時の対応を記載していますのでご参照ください。
● 血栓症のリスク因子
- ・深部静脈血栓症になったことがある
- ・股関節や膝の手術
- ・86歳以上の高齢者
- ・BMI29以上の肥満
- ・長期臥床
- ・足に麻痺のある患者
- ・先天的な凝固異常症
- ・悪性腫瘍、抗がん剤治療中 など
予防法
深部静脈血栓症に関してリハビリで最も有効な方法は早期離床、早期歩行を開始することです。
当院では手術翌日から可能な限り離床、歩行開始を行なっています。
また、弾性ストッキングの着用や股関節や膝の人工関節術置換後の患者さんには
深部静脈血栓症予防のために抗凝固薬剤の内服を行なって頂いています。
深部静脈血栓症発症時の対応
足から塞栓が飛び肺に飛んでいないか評価(診察、血液検査、超音波検査、CT等)を行い、
緊急で治療な必要な場合は循環器内科、心臓外科のある総合病院へ責任を持って搬送いたします。
逆に病状が落ち着いている場合は当院内科で抗凝固薬を内服し治療をおこなっていきます。
参照書籍:日本整形外科学会 症候性静脈血栓塞栓症予防ガイドライン(2017)
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