手術後の嘔気嘔吐(PONV)について 〜内科的視点から⑦
安心・安全な手術を受けるために
シリーズ 7
大室整形外科では、手術後の嘔気嘔吐(PONV)の治療に、2021年10月より使用可能となった薬剤 オンダンセトロン を導入しました。
Q:PONVとは?
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A:手術後24時間以内の嘔気、嘔吐のことであり、PONVと略します。
場合によっては24時間以上続き、食事やリハビリの開始の延期、
誤嚥性肺炎の増加などにつながる恐れがあります。
欧米と違い日本では長く制吐剤のPONVの予防投与の保険適応がありませんでした。
欧米ではかなり以前からPONVの予防と治療の両方に使用されてきたオンダンセトロンですが、
この度ようやく日本でPONVの治療のみに使用が認められるようになりました。
PONVは術後の疼痛と並んで、患者さんにとっての患者体験・手術体験に大きな影響を与えます。
術後の疼痛や嘔気が強いとトラウマになることもあり、
今後の病気への考え方、付き合い方に影響を及ぼすことも出てきます。
そこで、大室整形外科では患者さん一人ひとりの危険因子を見極めながら、
必要な患者さんには新規薬剤を導入することでPONVを減らし、
より良い術後の改善を目指します。
※ 疼痛(とうつう):身体に何らかの異常や異変が生じているときに感じる痛み
PONVは予防なしでは 全身麻酔後患者さんの30%、
高リスク患者さんでは最大80%の頻度で発生
PONVが起きる仕組み
手術関連の薬剤が様々な経路を通って嘔吐中枢に働きかける、薬剤誘発性の嘔吐の一種
と考えられています。
危険因子
● 患者要因(成人)
成人患者さんで以下のいずれかに該当する場合は、PONVが起きる要因となります。
①女性、②非喫煙者、③過去にPONVまたは乗り物酔い経験、④手術後に鎮痛目的のオピオイド(麻薬)の使用、⑤年齢:50歳未満
● 麻酔要因
また、麻酔によってもPONVが起きる可能性があります。
全身麻酔、揮発性麻酔薬、揮発性麻酔薬による長時間手術、ハイリスク患者に対する笑気の使用、手術後のオピオイド(麻薬)使用
当院患者さんは上記の患者側危険因子を1つ以上もつ方が多く、
今後PONVを経験した患者さんには迅速にオンダンセトロンを
投与して症状の軽減に努める予定です。
オンダンセトロンとは?
- ①予防薬としてはPONVの発生頻度を25%程度低下させる効果があります。
- ②治療薬としてはPONVを経験した患者さんの約40-60%に有効でした。
- ③副作用:海外の治験では頭痛、倦怠感、便秘が多くの患者さんに見られましたが、日本の治験ではいずれも1%未満の頻度でした。そのため、基本的には安全な薬剤です。
参照 : UpToDate
参照 : 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議 公知申請への該当性に係る報告書
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