術前の禁煙のメリット 〜内科的視点から⑤
安心・安全な手術を受けるために
シリーズ 5
安心・安全な手術を受けるために シリーズ 5回目は、術前の禁煙のメリットについてお話しします。
Q:喫煙が手術に与える影響を教えてください。
-
A:喫煙者は、術後合併症発症頻度 (全重症合併症,創部関連,感染症,呼吸器,神経学的,集中治療室への入室) が非喫煙者よりも1.32〜2.15倍ほど高くなります。
参照:National Library of Medicine Preoperative smoking status and postoperative complications: a systematic review and meta-analysis
喫煙率の推移
国民健康・栄養調査によると、喫煙率は 男性27.1%、女性7.6%、男女計16.7%(2019年)でした。
男性では、1995年以降20歳~60歳代で減少傾向で、
女性では、2004年以降全体としてゆるやかな減少傾向で、20歳~40歳代では近年減少傾向にあるものの、50歳代では増加傾向にあります。
引用・参考:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス
喫煙による健康への影響
喫煙による健康への影響については、
【 長期間の喫煙 】で、
-閉塞性肺障害
-粘液腺毛運動の低下
-分泌物増加
-肺でのマクロファージ(外敵を排除する細胞)の機能低下 が起こる
-慢性喫煙者の15%に 慢性閉塞性肺疾患(COPD) が合併する
※ COPDでは肺の機能が低下し、大量のたんが発生したり少しの歩行などで息切れを起こします。
進行すると在宅酸素吸入が手放せなくなります。
【 タバコの煙に含まれるニコチン 】により、
-気道分泌物の増加
-気管支の収縮 が起こる
-心拍数、血圧も増加させる
【 タバコの煙に含まれる一酸化炭素 】は
-組織での酸素利用を妨げる
【 喫煙により動脈硬化が進行 】すると、
-心筋梗塞
-狭心症
-脳卒中や末梢血管の閉塞 などの発症頻度が増加する
などが挙げられますが、手術を受けられる患者さんにとってどのような影響を与えるのでしょうか?
喫煙が手術、麻酔管理へ与える影響
- ①喫煙者では術中喀痰量が増加し、気管支痙攣、喉頭痙攣、無気肺や頻脈などが増加
また、術後は呼吸器感染症リスクが増加 - ②一方で喫煙者は術後、嘔気、嘔吐の頻度が低下する側面もあり
これらを鑑み、
大室整形外科では、術前・入院期間中の禁煙をお願いしています。
また、整形外科的疾患で腰痛や関節痛があるため問診だけで正確な評価ができないこともありますが、
大室整形外科では、術前内科診察を行い、どの程度 歩けるか、階段が登れるか をもとに、
呼吸困難分類 にあてはめ、かかりつけ医での呼吸器機能検査が必要か も判断しています。
Fletcher-Hugh-Jones分類 | |
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1度 | 同年齢の健常人とほとんど同様の労作ができ、 歩行、階段昇降も健常人並みにできる |
2度 | 同年齢の健常人とほとんど同様の労作ができるが、 坂、階段の昇降が健常人並みにできない |
3度 | 平地でさえ健常人並みに歩けないが、 自分のペースでなら1マイル(1.6km)以上歩ける |
4度 | 休みながらでなければ、50ヤード(46m)も歩けない |
5度 | 会話、着物の着脱にも息切れを感じる 息切れのため外出できない |
適切な禁煙期間とその効果
入院期間中は必ず禁煙が必要です。
より安全な手術につなげるために、より早く健康に家に帰るために、
大室整形外科では、さらに術前からの禁煙をおすすめしています。
理想的には術前の禁煙期間は4週間ですが、禁煙2日でもニコチンによる循環器系への影響は
軽減できることが分かっています。
患者さんの中には、禁煙に高いハ