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抗凝固薬、抗血小板薬内服と整形外科手術 〜内科的視点から④

安心・安全な手術を受けるために
シリーズ 4

安心・安全な手術を受けるために シリーズ 4回目は、整形外科手術と服薬について、
患者さんからよくある質問をテーマに取り上げます。

2021-12-21 一部更新

Q:血をサラサラにする薬剤を飲んでいますが、整形外科の手術は受けられますか?

  • A:抗凝固薬、抗血小板薬を開始した時期や原因疾患から、手術の延期が必要か否か判断します。

    手術が可能であれば、手術に合わせ内服薬の中止の期間を設けます。

・脳梗塞後、心臓の冠動脈にステントが入っている
・弁膜症で機械弁が入っている
・不整脈(心房細動)

などの理由で 抗凝固薬や抗血小板薬を内服中 の方はたくさんおられますが、
手術が必要な患者さんの場合、抗凝固薬、抗血小板薬を中止しないと
術中、術後の出血量が多くなります。

一般的な出血リスクは

  • ・手の手術,肩・膝の関節鏡,軽度の脊椎手術低リスク
  • ・人工肩関節手術,主要な脊椎手術,膝手術(前十字靭帯,骨切り術),足の手術中リスク
  • ・主要な人工関節手術(股関節,膝関節),主要な外傷手術(骨盤,長骨),高齢者の近位大腿骨骨折手術高リスク

参照:「2020年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版」 冠動脈疾患患者における抗血栓療法

大室整形外科では、できるだけ出血量を減らすために
手術時間の短縮や侵襲性の低い術式、デバイス
を選択するように心がけています。

一方、必要以上に長くこれらの薬剤を中止すると、
脳梗塞の再発、冠動脈ステントの閉塞、静脈や動脈内に血栓ができる等の
問題が発生する可能性が高くなります。

これらの問題が出来るだけ発生しないよう、以下の対策を行なっています。

1. 術前に患者さんの血栓症リスクを把握

  • ①問診から 基礎疾患(糖尿病, 高血圧, 高脂血症, 不正脈等)、過去の脳梗塞, 心筋梗塞歴, ステントや機械弁, 深部静脈血栓症歴の確認を行う
  • ②全ての 内服薬 を把握する
  • ③血圧測定、心電図、血液検査による 凝固系(血の固まりやすさを測定)検査 を行う
  • ④上肢と下肢血圧差の測定による、下肢動脈閉塞の有無をスクリーニング する
  • ⑤内科医 による診察を行う
  • ⑥主治医と診療情報を共有する
  • ⑦出血と血栓症リスクのある患者さんへ 事前説明 を行う
  • ⑧追加検査 が必要な場合は、他院へ紹介し検査を受けていただいています

2. 手術前の休薬期間の説明

内服している抗凝固薬、抗血小板薬の多くは 1日-7日程度の中止が必要であるため、
検査や入院前に患者さんへ個別に説明し、休薬のご協力をお願いしています。

ただし、脳梗塞後や冠動脈ステント留置後で血栓症リスクが相応に高い場合
当院では低侵襲の手術を心掛けていることもあり、
一部抗血小板薬は継続しながら手術を行うこともよくあります。

また心房細動などの不整脈があり、血栓症リスクが非常に高い場合は、3日程度早めに入院して、
手術の直前まで 抗凝固薬療法(速やかに効果が消失する抗凝固薬による橋渡し療法)を
行う場合があります。

3. 薬剤の再開

術後は 止血 が確認され次第、速やかに 抗凝固薬、抗血小板薬の内服を再開 します。

手術について不安に思われることがありましたら いつでも内科にご相談ください。
※ お近くのスタッフにお声がけください。