コラム

右肩の痛みは病気のサイン?原因や症状、対処法を解説

ズキッとする右肩の痛み「何か悪い病気のサインだったらどうしよう」と不安に感じていませんか。多くの人が「四十肩かな?」と考えがちですが、自己判断は危険です。右肩の痛みの原因は多岐にわたります。肩関節の問題はもちろん、首の神経トラブル、肝臓や肺といった内臓の病気が「関連痛」として肩に現れることもあります。

痛みの裏に、思わぬ原因が隠れているケースは決して少なくありません。この記事では、右肩の痛みを引き起こす代表的な原因から、ご自身でできる症状チェックリスト、今すぐ試せる対処法までを詳しく解説します。つらい痛みの本当の理由を突き止め、適切なケアを始めるための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。

当院では、肩の痛みや首の痛みをはじめとした違和感に対して、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴: 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野:脊椎・脊髄外科

資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

右肩の痛みの原因となる主な病気5つ

右肩の痛みの原因となる主な病気は、以下の5つです。

  • 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)
  • 腱板断裂・石灰沈着性腱板炎
  • 頸椎症や頸椎椎間板ヘルニア
  • 内臓の病気が関連するケース
  • ストレスによる心因性の痛み

痛みの原因によって対処法も大きく変わってきます。自己判断で放置せず、まずはどんな病気の可能性があるのかを知ることが大切です。

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)

四十肩・五十肩は、40〜50代の方に多く見られる肩の痛みの代表格です。正式な病名は「肩関節周囲炎」と言います。年齢とともに肩関節を取り巻く組織に炎症が起きることで発症します。症状は、急性期、慢性期、回復期と時期によって変化します。

急性期は、炎症が最も強い時期で「ズキッ」とした鋭い痛みを感じます。夜中に痛みが強くなる「夜間痛」が特徴です。寝返りをうつたびに目が覚めてしまうほど、つらいことも多いです。慢性期は、激しい痛みは少し落ち着きますが、肩の動きが悪くなる「拘縮(こうしゅく)」が主な症状です。

回復期は、徐々に痛みが和らぎ、動かせる範囲も少しずつ広がっていきます。回復期に適切なリハビリを行うことが、後遺症を残さないために重要です。四十肩・五十肩は時間をかけて変化するのが特徴です。

腱板断裂・石灰沈着性腱板炎

「腕が上がらない」という症状が特に強い場合、腱板(肩の重要な筋肉の腱)の病気が考えられます。腱板とは、肩の関節を安定させる腱のことで、腱が切れてしまうのが腱板断裂です。腱板断裂の診断にはMRI検査が役立つとされています。

多くの研究をまとめた報告によると、MRI検査は腱板が完全に切れているかを評価するうえで、信頼性の高い方法とわかっています。石灰沈着性腱板炎は、腱の中に石灰がたまる病気です。

いずれの病気も、強い痛みや動きの制限がある場合は、早めに整形外科を受診しましょう。

頸椎症や頸椎椎間板ヘルニア

右肩の痛みは、肩ではなく「首」が原因のことも多いです。背骨の首の部分を「頸椎(けいつい)」と呼びます。頸椎が変形したり、骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出したりすると「頸椎椎間板ヘルニア」と診断されます。飛び出した椎間板が神経を圧迫すると、肩や腕に痛みやしびれが出ます。

以下の症状がある場合は、首が原因の可能性があります。

  • 肩だけでなく、首筋や肩甲骨、腕や指先まで痛んだりしびれたりする
  • 上を向くなど、首を特定の方向に動かすと痛みが強まる
  • 咳やくしゃみをすると、肩や腕に痛みが響く
  • 腕に力が入りにくい、お箸が使いにくい、ボタンがかけにくい

単なる肩こりだと思ってマッサージをしても改善しない場合は、首の問題を疑いましょう。しびれや力の入りにくさは、神経が傷ついているサインですので、放置せずに専門医に相談することが重要です。

以下の記事では、左側の首が痛い原因や考えられる病気、放置によるリスクと対処法について解説しています。
>>左側の首が痛い原因を医師が解説!放置すると危険な理由と対処法

内臓の病気が関連するケース

頻度は高くありませんが、右肩の痛みが内臓の病気のサインとして現れることがあり「関連痛(かんれんつう)」といいます。内臓の異常を伝える神経と、肩の痛みを感じる神経が脳で勘違いすることで起こります。右肩の痛みと関連が深いのは、肝臓や胆のう、肺などの病気です。

胆石症や胆のう炎は、胆のうに石ができたり、炎症が起きたりする病気です。みぞおちの痛みに加え、右肩や右の肩甲骨あたりに痛みが出ることがあります。脂っこい食事の後に症状が出やすいのが特徴です。肝炎、肝臓がんにより、肝臓が腫れるなどの異常が起きると、横隔膜を刺激し、右肩に痛みを感じることがあります。

肺がんや肺炎は、肩や腕への神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす可能性があります。内臓の病気は肩の痛みだけでなく、他の症状を伴うことがほとんどです。肩を動かしても痛みが変わらないのに、安静にしていても痛む場合は注意が必要です。

ストレスによる心因性の痛み

検査をしても肩や首に明らかな異常が見つからないのに、痛みが続く場合、精神的なストレスが原因の「心因性」の痛みの可能性があります。ストレスが痛みを引き起こす仕組みは以下のとおりです。

  1. 筋肉が固くなる:ストレスにより自律神経が乱れ、常に肩周りの筋肉がこわばる
  2. 血の流れが悪くなる:筋肉が緊張すると血管が圧迫され、血流が悪くなる
  3. 脳が痛みを感じやすくなる:長引くストレスは、脳が痛みを感じる仕組み自体が過敏になる

痛みの治療には、イブプロフェンなどの薬剤が使われることもありますが、根本的な原因であるストレスへの対処も同時に行うことが重要です。十分な休息やリラックスできる時間、適度な運動などを心がけることが、痛みを改善する大切な一歩です。

右肩の痛みに現れる主な症状

右肩の痛みに現れる主な症状は以下のとおりです。

  • 動かすと強い痛みを感じる
  • 腕や手にしびれや力が入らなくなる
  • 夜間や安静時にも痛みで眠れなくなる

動かすと強い痛みを感じる

腕を上げたり、後ろに回したりしたときにだけ強い痛みを感じる場合、肩の関節や、周りにある筋肉、腱に問題が起きているサインの可能性があります。日常生活の何気ない動作で「ズキッ」とした痛みが走るため、生活の質が大きく下がってしまうことも多いです。以下の動作で症状がある場合、注意が必要です。

  • 洗濯物を干す、棚の上の物を取ろうと腕を上げる
  • 服を着たり脱いだりする
  • 髪をとかしたり、洗ったりする
  • 背中のファスナーを上げる、エプロンの紐を後ろで結ぶ

どの動きで、どのように痛むのかを把握することが、原因を特定する手がかりになります。

腕や手にしびれや力が入らなくなる

「ジンジン」「ピリピリ」としびれたり、手に力が入りにくくなったりする場合、原因は「首」にある可能性が高いです。首の骨(頸椎)の間から出ている神経が、何らかの原因で圧迫されることで、神経が支配している肩や腕、手先に症状が現れます。以下の症状がある場合は、首が原因の可能性があります。

  • 腕から指先にかけて、電気が走るようなしびれがある
  • ペットボトルのキャップが開けにくい
  • お箸がうまく使えず、食べ物を落としてしまう
  • シャツのボタンをかけるなど、指先の細かい作業が難しい
  • 首を後ろに反らすと、肩や腕に痛みが響く
  • 咳やくしゃみをすると痛みが強まる

症状を引き起こす代表的な病気が「頸椎症」や「頸椎椎間板ヘルニア」です。単なる肩こりと自己判断せず、神経が傷ついているサインだと捉えることが重要です。一つでも当てはまる症状があれば、放置せずに整形外科を受診しましょう。

症状が出てしまったときにどのように痛みを和らげればよいか、具体的な方法を知っておくと安心です。以下の記事では、頸椎椎間板ヘルニアによる痛みを和らげる方法や、効果が期待できる対処法と注意点について解説しています。
>>頸椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法!効果が期待できる対処法と注意点

夜間や安静時にも痛みで眠れなくなる

夜間や安静時でじっとしていても痛むのは、肩関節の内部で強い炎症が起きている可能性があります。寝ている姿勢によって肩関節内の圧力が変化したり、日中の活動で生じた炎症物質がたまりやすくなったりするため、痛みが強まります。夜間痛は、以下の病気の急性期によく見られます。

  • 四十肩・五十肩
  • 石灰沈着性腱板炎
  • 腱板断裂

痛みの管理は、治療において重要です。研究によると、イブプロフェンなどの薬剤は、より強い痛み止めの必要性を減らし、術後1週間程度の痛みを軽くする可能性が示唆されています。どのような治療が適切かは、患者さん一人ひとりの状態によって大きく異なります。

確立された決まった治療法はなく、医師がそれぞれの状態に合わせて治療計画を立てることが大切です。眠れないほどの強い痛みは、心身ともに消耗させてしまいます。我慢せずに専門医に相談し、適切に痛みをコントロールしていきましょう。

自分でできる症状チェックリスト

右肩の痛みが気になるとき、まずはご自身の症状を正しく知ることが解決への第一歩です。痛みの特徴と考えられる原因は、以下のとおりです。

症状の特徴 痛みのタイプ 考えられる原因 緊急度
ズキズキと脈打つ痛み 炎症性 四十肩・五十肩、石灰沈着
腕のしびれ・脱力 神経性 頸椎症・ヘルニア
夜間の強い痛み 炎症性 腱板断裂、急性炎症
安静時も変わらない痛み 内臓由来 肝臓・肺・胆のうの病気 最高

チェックした内容をメモして診察を受けると、より的確な診断につながります。自己判断で放置せず、お気軽に姫路市の大室整形外科にご相談ください
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病院で行う検査

病院で行う以下の検査について解説します。

  • レントゲン検査
  • MRI検査
  • 超音波(エコー)検査

レントゲン検査

レントゲン検査は、X線という光を使って体の中を撮影する検査です。整形外科では、診断の基本となる検査です。短時間で撮影が終わり、体への負担が少ないのも特徴の一つです。レントゲン検査でわかることは、以下のとおりです。

  • 骨折や脱臼
  • 骨の変形
  • 石灰の沈着
  • 関節の隙間

レントゲンは、筋肉や腱、神経といった柔らかい組織は写し出すことができません。MRI検査などと組み合わせて、総合的に診断することが重要です。

MRI検査

MRI検査は、強力な磁石と電波の力で体の内部を詳しく見る検査です。体を輪切りにしたような、さまざまな角度からの断面図を撮影できます。筋肉や腱、神経などの状態がわかるのが特徴です。腱板断裂の正確な診断や、筋肉や靭帯、首の骨の異常の把握などがわかるとされています。

検査には30分ほど時間がかかりますが、放射線を使わないので被ばくの心配はありません。

超音波(エコー)検査

超音波(エコー)検査は、音波を使って体の中をリアルタイムで見る検査です。診察室ですぐに肩の状態を確認できるのが大きなメリットです。超音波検査の最大の特徴は、肩を「動かしながら」観察できる点です。動かしながら検査することで、痛みの原因となっている場所をピンポイントで特定しやすくなります。

超音波検査の特徴は以下のとおりです。

  • 腱板断裂や炎症の評価
  • 関節に水が溜まっているか
  • 注射のガイド役

体に負担が少ないため、治療の効果が出ているかなどを定期的に確認するのにも適しているとされています。

右肩の痛みを和らげる対処法

右肩の痛みを和らげる対処法を、以下のとおり解説します。

  • 今すぐできる応急処置|安静・アイシング・湿布
  • 痛みの再発を防ぐストレッチ
  • 生活習慣の改善

今すぐできる応急処置|安静・アイシング・湿布

急な右肩の痛みに対して、まず試せる応急処置があります。応急処置で大切なことは、無理をせず、肩を休ませることです。痛みを引き起こす動作を避け、肩への負担を減らすことが第一です。重い物を持ったり、腕を高く上げたりする動きは控えましょう。

アイシング(冷やす)は、急に痛くなった直後や、肩が熱を持っている、ズキズキと脈打つように痛む場合に有効とされます。炎症が起きている場所を冷やすことで、痛みや腫れを抑える効果が期待できます。氷のうなどをタオルで包み、1回15〜20分を目安に患部に当ててください

痛みが強く、日常生活に支障が出ている場合は、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効な場合があります。薬を使用する際は用法・用量を守り、胃腸の不快感などがあれば中止してください

痛みの再発を防ぐストレッチ

激しい痛みが少し落ち着いてきたら、肩周りを優しく動かすことが大切です。硬くなった筋肉の柔軟性を取り戻し、血行を良くすることで、痛みの再発予防につながります。自宅でできる簡単なストレッチとして、振り子運動(コッドマン体操)や壁を使った腕上げ運動などがあります。振り子運動の方法は以下のとおりです。

  1. 痛くない方の手でテーブルなどに手をつき、体を安定させる
  2. 少しお辞儀をするように前かがみになり、痛い方の腕の力を抜いてだらりと下げる
  3. 腕の重みを利用して、前後、左右、円を描くように小さくゆっくりと揺らす

壁を使った腕上げ運動は、以下の方法で行います。

  1. 壁に向かって立ち、痛い方の腕の指先を壁につける
  2. 指を壁の上で歩かせるようにして、少しずつ腕を上げていく
  3. 痛みを感じない、気持ちよく伸びる高さまで来たら、その位置で10秒ほど止める
  4. その後、ゆっくりと腕を下ろす

治療だけでなく日常生活や仕事との両立をどのように図るかも大切です。頸椎椎間板ヘルニアでは、症状や治療法によって休養が必要になる期間や復職のタイミングが異なります。以下の記事では、頸椎椎間板ヘルニアと仕事の関係、手術後に休む期間の目安や復帰のポイントについて詳しく解説しています。
>>頸椎椎間板ヘルニアで仕事は休める?手術後の休む期間や職場復帰のタイミングを解説

生活習慣の改善

右肩の痛みを根本から見直し、再発を防ぐには、日々の生活習慣が重要です。モニターやスマホを見るときは、背筋を伸ばして顎を軽く引き、できるだけ目線の高さに近づけるようにしましょう体を冷やさないことも重要で、冷えは筋肉を硬くし、血行を悪くする原因です。

ウォーキングなどの適度な全身運動を続けることで血流が促進され、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。セルフケアを試しても右肩の痛みが一向に良くならない場合は、自己判断を続けず、整形外科の専門医にご相談ください。

当院(大室整形外科 脊椎・関節クリニック)は、脊椎センター・人工関節センターの2つを軸にしたクリニックです。腰や関節の痛み、リハビリなどでお悩みの方へ、専門医が丁寧に相談に応じます。JR姫路駅からは無料送迎バスを利用できますので、お気軽にご来院ください。
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まとめ

右肩の痛みは、四十肩・五十肩のように肩そのものに原因がある場合だけでなく、首の不調や内臓の病気が隠れているサインの可能性もあります。セルフケアで様子を見ることも大切ですが、自己判断で放置してしまうと、症状が悪化する恐れもあります。

「腕が上がらない」「夜も眠れない」「しびれがある」などのつらい症状が続く場合は、我慢せずに専門医へ相談することが大切です。一人で悩まず、専門家の診断を受けて、痛みのない快適な毎日を取り戻しましょう。

当院の受診をご希望の方は、まずはお電話にてご予約ください。

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