コラム

朝起きると腰が痛いのは病気のサイン?考えられる原因と治療法を解説

  • 「朝、腰の痛みで目が覚める」
  • 「日中は平気なのに、なぜか起き抜けだけがつらい」

このような悩みを抱える方は多いです。症状を放置したままにしてしまうと、病気のサインを見逃すことにつながります。朝起きたときの痛みは、放置すると歩行に支障をきたす椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症、内臓の病気が隠れている可能性もあります。

この記事では、朝起きると腰が痛い場合の原因を、寝具の問題から注意すべき病気までわかりやすく解説します。今日からできるセルフケアや専門的な治療法を確認し、痛みの正体と、快適な朝を迎えるためのヒントになれば幸いです。

当院では、椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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朝起きたときに腰が痛くなる理由

朝起きたときに腰が痛くなる理由は、大きく分けて「生活習慣や環境によるもの」と「病気が原因のもの」です。生活習慣や環境要因では、合わない寝具や不自然な寝姿勢、筋肉の緊張、血行不良などが代表的です。長時間同じ姿勢で眠ることで腰回りの筋肉がこわばり、起床時に痛みを感じやすくなります。

ストレスや疲労の蓄積も筋肉の硬直や炎症を引き起こす要因です。病気が原因の場合は、変形性腰椎症や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、腎臓や婦人科系の内臓疾患が関係していることもあります。神経圧迫や炎症により、朝方の痛みが強く出る傾向があります。

数日経っても改善しない、しびれや発熱を伴う場合は早めの受診をおすすめします。

生活習慣や環境が原因の場合

生活習慣や環境が原因の場合の理由として、以下の2つを解説します。

  • 寝具や寝姿勢の問題
  • 筋肉の緊張や血行不良

寝具や寝姿勢の問題

毎日使っているマットレスや枕が、腰へ大きな負担をかけていることがあります。ご自身の体に合わないマットレスは、朝の腰痛を引き起こす代表的な原因の一つです。理想的な寝姿勢は、立っているときと同じように背骨がなだらかなS字カーブを保てる状態です。

マットレスに横になったとき、腰とマットレスの間に手のひら1枚分のすき間ができるくらいが目安とされています。寝返りは、同じ場所に体重がかかり続けるのを防ぎ、体の血行を促すための重要な生理現象です。マットレスが体に合わないと、自然な寝返りが妨げられてしまいます。

寝返りの回数が減ると、長時間同じ姿勢でいることになり、筋肉が固まって朝の痛みの原因となる場合があります。うつ伏せで寝る癖がある方も、腰が反った状態になりやすいため注意が必要です。

筋肉の緊張や血行不良

日中は痛みが和らぐのに、朝だけ痛みが強い場合があります。寝ている間の筋肉の緊張や血行不良が関係している可能性があります。睡眠中は起きているときと比べて、長時間同じ姿勢でいることが多いです。腰まわりの筋肉は同じ状態を保とうとして緊張し、だんだんと硬くなってしまいます。

硬くなった筋肉は、中を通っている血管を圧迫するため、血行が悪くなります。血行が悪くなると、次の状態に陥ります。

  • 筋肉に溜まった疲労物質がスムーズに流れなくなる
  • 筋肉を回復させるための酸素や栄養が十分に届きにくくなる

筋肉が酸欠状態になり、痛みやこわばりを引き起こしやすくなります。「冷え」も血行不良を悪化させる大きな要因です。寝ている間に体が冷えると、血管が収縮して血流が滞り、筋肉の緊張も強まります。夏場の冷房が効いた部屋や、冬の寒い寝室は注意が必要です。

睡眠中の「長時間の同じ姿勢」と「冷え」が重なることで、筋肉の緊張と血行不良を招き、朝のつらい痛みにつながります。

受診が必要な危険サイン

受診が必要な危険サインは、以下の症状がある場合です。

  • 強い腰痛が数日以上続く
  • 下半身のしびれや力が入りにくい感覚がある
  • 歩行が困難になる・転びやすくなる
  • 発熱・体重減少・食欲不振を伴う腰痛
  • 排尿・排便のコントロールが難しくなる
  • 安静にしていても痛みが増していく

以上の症状は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腎臓疾患、感染症などの可能性があり、放置すると症状が悪化する危険があります。自己判断せず早めに整形外科や内科の受診をおすすめします。

病気が原因の場合

朝起きると腰が痛いのは、病気の可能性も考えられます。可能性のある病気として、以下の3つを解説します。

  • 変形性腰椎症
  • 神経圧迫(椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症など)
  • 内臓疾患・ストレスなど

変形性腰椎症

年齢を重ねると、体を支える背骨にも変化が生じます。長年、体を支え続けてきた背骨や周りの組織が変化することで、朝の腰痛が引き起こされることがあります。代表的な病気が「変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう)」です。

加齢などによって背骨(腰椎)の間でクッションの役割をしている椎間板がすり減ったり、骨の変形によりトゲのような突起(骨棘:こつきょく)ができたりする病気です。骨の変形が起こると、動きがスムーズでなくなり、神経が刺激されて痛みやこわばりを引き起こします。

長時間動かさなかった後や、朝起きて動き出すときに、腰のこわばりや強い痛みを感じるのが特徴です。骨がもろくなる「骨粗しょう症」が原因で、寝ている間のわずかな動作で背骨が潰れてしまう「圧迫骨折」を起こしている可能性も考えられます。

「もう年だから」と諦めずに、痛みが続く場合は一度専門医に相談することが大切です。

神経圧迫(椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症など)

腰痛だけでなく、お尻や足にしびれや痛みを感じる場合は、背骨の中を通る神経が圧迫されている可能性があります。朝の腰痛の原因として、特に注意したいのが次の2つの病気です。

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

腰椎椎間板ヘルニアは、背骨のクッションである椎間板の中身が、外に飛び出して神経を圧迫する病気です。若い世代にも起こりやすく、朝起き上がるときなど、腰に力が入る動作で椎間板への圧力が高まり、強い痛みやしびれが出ることがあります。

腰部脊柱管狭窄症は、加齢などが原因で、神経の通り道である「脊柱管」が狭くなり、神経が圧迫される病気です。朝の動き始めに痛みを感じるほか「少し歩くと足が痛くなり、少し休むとまた歩けるようになる」という間欠性跛行(かんけつせいはこう)が現れます。

以下の記事では、椎間板ヘルニアで歩行困難になるほどの激痛が出た際の応急処置や、緊急受診の目安を詳しく解説しています。
>>【椎間板ヘルニア】激痛で歩けないときの緊急対処法と受診目安

内臓疾患・ストレスなど

朝の腰痛の原因は、内臓の病気や精神的ストレスが身体症状として腰痛を引き起こすことがあります。注意が必要なのは、次の特徴を持つ痛みです。

  • 安静にしていても痛みが軽くならない
  • 楽な姿勢を探しても痛みがおさまらない
  • 夜中に痛みで目が覚めてしまう
  • 痛みがどんどん強くなっている

上記の痛みは、内臓の病気の可能性があります。関連が考えられる病気と腰痛以外の主な症状の例は、次のとおりです。

  • 腎臓・尿路の病気:発熱・血尿・脇腹の痛み・残尿感
  • 膵臓の病気:みぞおちや背中の激しい痛み・吐き気・黄疸
  • 婦人科系の病気:生理痛・不正出血・下腹部の痛み
  • がんの骨転移:体重が急に減った・全身のだるさ

ストレス」も腰痛の大きな原因になります。強いストレスを感じ続けると、自律神経のバランスが乱れ、全身の筋肉が緊張します。筋肉の緊張は血行不良を招き、腰痛を悪化させ、脳が痛みを感じやすくさせることもあります。

症状を和らげるセルフケア

症状を和らげるセルフケアを、以下の4つ紹介します。

  • 腰に負担をかけない起き上がり方
  • 起床後・就寝前に行うストレッチ
  • 寝具選びのポイント
  • 血行を促す生活習慣

腰に負担をかけない起き上がり方

寝ている状態から急に起き上がるのはやめましょう。朝は筋肉や関節が固まっている時間帯です。急な力が加わると、腰に大きな負担がかかり、ぎっくり腰(急性腰痛症)の原因になる可能性があります。ヘルニアの持病がある方は、椎間板への圧力を高めてしまいます。

体を守るためには、ゆっくりとした動作を心がけることが大切です。以下の「腰にやさしい起き上がり方の手順」を毎朝の習慣にすることをおすすめします。

  1. ひざを立てる:仰向けの状態で両ひざを軽く立てる
  2. 横向きになる:起き上がりたい方向へ体全体をゆっくり横向きにする
  3. 腕の力で起きる:腕の力を使ってゆっくりと上体を起こす
  4. 最後に頭を上げる:頭が最後に上がるように意識する
  5. 一度座ってから立つ:ベッドの端に座り両足を床につけてから立ち上がる

この起き上がり方は、腰の筋肉に余計な力を使わせないための方法です。実践することで、朝の痛みを予防するのに役立つ可能性があります。

起床後・就寝前に行うストレッチ

ストレッチは、寝ている間に固まった筋肉をほぐして血行を良くするために、効果が期待できます。起床後と就寝前に行うことで、朝の痛みを和らげ、質の良い睡眠をサポートします。

起床後におすすめの膝抱えストレッチは、布団の中でできる簡単なストレッチです。睡眠中に緊張した腰まわりの筋肉をリセットします。膝抱えストレッチの手順は、以下のとおりです。

  1. 仰向けに寝たまま両ひざをゆっくりと曲げる
  2. 両手でひざを優しく抱え、息を吐きながらゆっくりと胸の方へ引き寄せる
  3. 腰からお尻にかけての筋肉が気持ちよく伸びているのを感じながら、20〜30秒キープする
  4. ゆっくりと元の姿勢に戻す

上記の手順を2〜3回繰り返しましょう。

就寝前におすすめのお尻のストレッチは、腰とお尻の筋肉をリラックスさせ、血行を促します。お尻のストレッチの手順は、以下のとおりです。

  1. 仰向けになり、片方のひざを曲げる
  2. もう片方の足首を、曲げたひざの上に乗せ、数字の「4」の形を作る
  3. ひざを曲げている方の太ももの裏を両手で持ち、息を吐きながらゆっくり胸に引き寄せる
  4. お尻の筋肉(大殿筋)が伸びるのを感じながら、20〜30秒キープし、反対側も同様に行う

ストレッチの注意点は、無理はしないこと、ゆっくり行うこと、呼吸をとめないことが大切です。ご自身のペースで行いましょう。

ストレッチは、正しい方法で行うことが大切です。間違ったやり方は逆に症状を悪化させる恐れがあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点を詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説

寝具選びのポイント

毎日使う寝具、特にマットレスは腰の健康に直接影響します。マットレス選びのチェックポイントは以下の3つです。

  • 硬さは適切か
  • 寝返りが打ちやすいか
  • 枕の高さは合っているか

腰痛対策において、毎日使うマットレス選びは重要です。柔らかすぎると腰が沈み込み、背骨が「く」の字に曲がり不自然な姿勢になり、筋肉の緊張や腰痛の原因になります。硬すぎるマットレスでは腰が浮いてしまい、背中やお尻だけに負担が集中し、血行不良や痛みを招きます。

仰向けに寝たとき、腰とマットレスの間に手のひら1枚が入る程度の硬さを選びましょう。適切な硬さのマットレスの使用で、自然なS字カーブを保てます。寝返りが打ちやすい適度な反発力があるかどうかも大切です。寝返りは同じ部分に圧がかかるのを防ぎ、腰への負担を軽減します。

枕の高さが合っていないと首から背骨のバランスが崩れ、腰痛につながることもあります。

血行を促す生活習慣

腰まわりの血行不良は、筋肉を硬くし痛みを引き起こす疲労物質を溜め込む原因になります。日頃から体を温めて血行を促す生活習慣を心がけることが、朝の腰痛予防には欠かせません。代表的な生活習慣を、以下の表にまとめました。

習慣 ポイント 詳細
湯船に浸かる 全身の血行促進・睡眠改善 38〜40℃のぬるめのお湯に15分、就寝1〜2時間前に入浴する
適度な運動 筋肉の柔軟性・血流改善 ・ウォーキングや軽いジョギングを「1日10分歩く」目標から始める
体を冷やさない 冷えは血行不良の原因 腹巻き・カイロ・上着・ひざ掛けで体温を調整する
同じ姿勢を避ける 筋肉のこわばり防止 1時間に1回は立ち上がり、伸びや軽い歩行で姿勢を変える

どの習慣も、難しいことを一度に取り入れる必要はありません。まずは「湯船に浸かる」「1時間に1回伸びをする」など、取り入れやすいものから始めて継続していくことが大切です。

整形外科で行う検査・治療

整形外科で行う検査・治療として以下の3つを解説します。

  • 痛みの原因を特定する検査(レントゲン・MRI)
  • 保存療法(薬物療法・ブロック注射・リハビリテーション)
  • 手術療法(低侵襲手術など)

痛みの原因を特定する検査(レントゲン・MRI)

朝の腰痛の原因を正確に突き止めるため、いつから、どんなときに、どのように痛むのかを問診します。体を動かしながら痛みの場所や動きの制限を確認します。問診と診察が、痛みの原因を探るための重要な手がかりです。必要に応じて画像検査を行い、体の中の状態を詳しく見ていきます。

レントゲン(X線)検査は、骨の状態を調べるための、基本的な検査です。背骨の並びや形、骨と骨のすき間が狭くなっていないかなどを確認します。骨の変形や、気づかないうちに起きた圧迫骨折などを見つけることができます。

研究により、レントゲン写真での骨の変形と、患者さんが感じている痛みの強さは、必ずしも一致しないことが報告されています。「レントゲンでは異常なし」と言われても、痛みの原因が他にある場合もあります。

MRI検査は、磁気と電波を使って、体の断面を詳しく撮影する検査です。レントゲンでは確認できない組織(神経・椎間板・筋肉やじん帯)を映し出すことができます。「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」の診断には、MRI検査が欠かせません。検査結果を総合的に判断し、痛みを特定することが、適切な治療への第一歩となります。

保存療法(薬物療法・ブロック注射・リハビリテーション)

多くの場合、体への負担が少ない「保存療法」から始めます。手術をせずに、痛みやしびれを和らげ、日常生活を取り戻すことを目指す治療法です。薬物療法は、痛みの強さや種類に合わせて、薬を使います。炎症を抑えて痛みを和らげる消炎鎮痛薬(飲み薬や湿布薬)が中心です。

神経が原因のしびれや痛みには、神経の過敏な興奮を抑えるお薬を使うこともあります。ブロック注射は、痛みの原因となっている神経の周りや関節(椎間関節など)に、局所麻酔薬などを直接注射する治療法です。強い痛みを和らげる「治療」としての効果が期待できます。

どこが痛みの本当の原因なのかを特定する「診断」の役割もあります。注射で痛みが楽になれば、その部位が痛みの発生源であると確信できます。リハビリテーション(理学療法)は、理学療法士がマンツーマンで運動やストレッチの指導を行います。

薬や注射のように痛みを直接抑えるのとは違い、痛みの根本原因にアプローチし、再発しにくい体を作るための治療です。リハビリテーションの主な内容は、以下のとおりです。

種類 主な内容 期待できる効果
運動療法 ・ストレッチで硬くなった筋肉をほぐす
・体幹トレーニングで背骨を支える筋肉を強化
筋力を鍛えて「天然のコルセット」を作り、腰の安定性を高める
物理療法 ・温熱療法で体を温め血行を促進
・電気刺激で筋肉の緊張を緩和
痛みの軽減・回復のサポート

手術療法(低侵襲手術など)

以下の症状がある場合には、手術療法を検討します。

  • 保存療法を3か月ほど続けても症状が良くならない
  • 足の麻痺がだんだん進んでいく
  • 歩ける距離が短くなってきた
  • 尿や便が出にくいといった危険なサインがある

患者さんの体への負担をできるだけ少なくする「低侵襲手術」があります。代表的なものが、内視鏡(カメラ)を使った手術です。低侵襲手術には、以下のメリットがあります。

  • 傷が小さい
  • 筋肉へのダメージが少ない
  • 早く社会復帰できる

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、多くの腰の病気が低侵襲手術の対象となります。

どの治療法が適切かは、患者さんの症状やライフスタイルによって異なります。手術が必要と判断された場合でも、必要性や方法を丁寧に説明し、ご納得いただいたうえで治療を進めていきますので、ご安心ください。

当院の受診をご希望の方は、まずはお電話にてご予約ください。詳しいアクセス方法は、当院の公式サイトをご覧ください。
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まとめ

朝起きると腰が痛い原因は、生活習慣や寝具の問題から、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気まで多岐にわたります。紹介したストレッチや体を温める習慣など、ご自身でできるケアから試してみてください。

セルフケアを続けても痛みが改善しない場合や、お尻や足にしびれを感じるなどの症状がある場合は、自己判断しないでください。「たかが腰痛」と軽視せず、整形外科で原因を正しく突き止め、適切な治療を受けることが、快適な朝を取り戻す近道です。一人で悩まず、ぜひ専門家にご相談ください。

以下の記事では、椎間板ヘルニアを引き起こしやすい生活習慣や体の特徴を詳しく解説しています。予防のために見直したいポイントも紹介しているので、再発や悪化を防ぎたい方はぜひご覧ください。
>>椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴とは?リスクを高める要因と予防法を解説

参考文献