腰椎すべり症でやってはいけないこと!悪化を防ぐ対策や生活のポイント
腰椎すべり症による、つらい腰痛や足のしびれに悩んでいませんか?良かれと思って続けている運動や日常の習慣が、実は症状を深刻化させている危険性があります。
この記事では、腰椎すべり症の方が絶対にやってはいけない「5つの危険な動作」を徹底解説します。症状を和らげる日常生活のポイントや専門医と進める治療の選択肢まで、具体的な対策を提案します。痛みとうまく付き合っていくための正しい知識を身につけ、つらい症状の悪化を防ぐ第一歩を踏み出しましょう。
当院では、腰椎すべり症をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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腰椎すべり症を悪化させる5つの危険な動作
腰椎すべり症を悪化させる5つの危険な動作は以下のとおりです。
- 腰を急にひねる・強く反らす動き
- 前かがみでの重量物の持ち上げ
- 自己判断による腰への強いマッサージ
- 長時間の同一姿勢(デスクワーク・車の運転)
腰を急にひねる・強く反らす動き
腰を急にひねったり、大きく反らしたりする動きは、腰椎すべり症の方が避けたい動作の一つです。不安定な椎骨にひねる力が加わると、骨と骨がハサミのようにずれる「せん断力」という力が働き、骨のズレをさらに大きくする危険性があります。
腰を強く反らすと、神経の通り道である「脊柱管(せきちゅうかん)」が狭くなります。脊柱管が狭くなると、神経が強く圧迫され、急激に痛みやしびれが悪化するため注意が必要です。体をひねったり反らせたりするときは、腰だけを動かすのはやめましょう。足から体全体を一つの塊として、ゆっくりと動かすことを意識してください。
以下の記事では、腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状や、痛み・しびれが起こる原因、治療の選択肢などを詳しく解説しています。
>>腰部脊柱管狭窄症の症状とは?痛くなる原因やしびれの特徴、治療法まで解説
前かがみでの重量物の持ち上げ
前かがみの姿勢で重い物を持ち上げる動作は、腰に大きな負担をかける代表的な行為です。腰を曲げたまま物を持ち上げると「てこの原理」が働くため、持ち上げる重量の数倍の力が腰にかかります。腰に強い圧力がかかることで、神経が圧迫され、痛みが助長される危険性があります。
目安として、5kg以上の物を持つことは、できるだけ避けましょう。重い荷物は小分けにしたり、台車を使ったりするなどの工夫が大切です。腰だけで物を持ち上げず、膝の力を使って体全体で持ち上げることも重要です。
自己判断による腰への強いマッサージ
腰が痛いと、痛い部分を強く押したり、揉んだりする方もいます。しかし、腰椎すべり症の場合、腰のマッサージは痛みを増強させる要因になる場合があり、注意が必要です。腰椎すべり症の痛みの原因は、骨のズレによって神経が圧迫されているためです。痛い場所を力任せに刺激しても、問題は解決しません。
不安定になっている腰椎に外部から強い圧力をかけると、痛みがさらに悪化する可能性があります。痛みがつらいときは、温かいお風呂にゆっくり浸かって血行を良くしたり、カイロなどで優しく腰を温めたりするほうが安全です。体を冷やさないようにすると、痛みの緩和につながります。
根本的な痛みの治療は、必ず医師や理学療法士に相談し、専門家による適切な治療やケアを受けてください。
以下の記事では、腰椎すべり症の主な原因や、年代によって異なるリスク、治療法の選択肢をわかりやすく解説しています。
>>腰椎すべり症の原因と特徴!年代別リスクと治療法を解説
長時間の同一姿勢(デスクワーク・車の運転)
デスクワークや長距離の運転など、長時間同じ姿勢でいることも、腰にじわじわとダメージを与え、症状を悪化させる原因です。座っている姿勢は、正しく立っているときよりも、腰椎にかかる負担が大きくなる場合があります。特に、ソファにだらしなく座ったり、椅子に浅く腰掛けたりする姿勢は禁物です。
同じ姿勢をとり続けると、腰回りの筋肉が硬くなり、血行も悪くなります。結果、腰椎を支えるインナーマッスルがうまく働かなくなり、背骨の安定性が低下してしまうのです。背骨の安定性が低下すると、少し体を動かしただけでも、痛みやしびれが出やすくなります。
日常生活では、こまめに休憩を取り、同じ姿勢を続けないようにしましょう。腰と椅子の背もたれの間にクッションを挟むのもおすすめです。腰の負担が強い行動を避け、生活習慣を見直すことが、腰椎すべり症の悪化を防ぎ、症状とうまく付き合っていくための基本です。
症状を和らげる日常生活の4つのポイント
症状を和らげる日常生活の4つのポイントを、以下の項目に沿って解説します。
- 腰に負担の少ない起床時・洗顔時の工夫
- 楽な寝姿勢と自分に合った寝具の選び方
- コルセットの正しい装着方法
- 体幹を安定させる筋力トレーニング
腰に負担の少ない起床時・洗顔時の工夫
一日の始まりである朝は、腰にとって特に注意が必要な時間帯です。寝ている間に固まった体を急に動かすと、腰にズキッとした痛みが走りやすくなります。起床時の工夫として、いきなり上体を起こす起き上がり方はやめましょう。腰椎に強い圧力がかかり、骨のズレを助長する危険性があります。
洗顔時の顔を洗うときの中腰姿勢は、腰に大きな負担をかけます。棒立ちのまま腰だけを曲げるのは、最も避けたい姿勢です。洗顔時は軽く膝を曲げて、洗面台に手をついて体重を支えましょう。小さな工夫の習慣化により、朝のつらい痛みを予防できます。
楽な寝姿勢と自分に合った寝具の選び方
睡眠は、心と体を回復させるための大切な時間ですが、寝ている間の姿勢が悪いと、腰の痛みを悪化させることがあります。横向きで寝るのは、腰への負担が小さい姿勢です。膝の間にクッションを挟むと、骨盤がさらに安定します。仰向けで寝る場合は、膝の下に丸めたタオルケットやクッションを入れましょう。
うつ伏せ寝は腰が反りやすくなるため、できるだけ避けてください。体に合わない寝具は、一晩中、腰に負担をかけ続けることになります。特にマットレスの硬さは、症状に大きく影響します。体がまっすぐな姿勢を保てて、楽に寝返りが打てる硬さを選びましょう。
コルセットの正しい装着方法
コルセットは、不安定な腰椎を外側からしっかりと支え、痛みを和らげてくれる心強い味方です。使い方を間違えると効果が半減したり、かえって筋力を低下させたりする恐れがあるため、正しい装着方法を守ることが大切です。
コルセットをずっと着けていると、体を支える筋肉が「仕事をしなくていいんだ」と勘違いして弱ってしまいます。適切な使用時間を守りましょう。コルセットをきつく締めすぎると、血行不良の原因になります。コルセットとお腹の間に、手のひらがすっと入る程度が適切な強さです。
コルセットにはさまざまな種類があります。自己判断で購入せず、必ず医師や理学療法士に相談し、ご自身の症状や体格に合ったものを選んでもらいましょう。
体幹を安定させる筋力トレーニング
体幹トレーニングは、腰椎すべり症の症状を根本から改善し、再発を防ぐための最も重要な鍵となります。急に激しい腹筋運動や腰をひねるトレーニングを行うのは危険です。症状を悪化させるリスクがあるため、まずは腰の負担が小さいトレーニングから始めましょう。
ドローインは腰に負担がかからない代表的な体幹トレーニングです。仰向けに寝て、両膝を90度くらいに立てたら、息を吐きながらおへそを背骨に引き寄せるイメージでお腹をへこませます。深層部にある「腹横筋」を鍛えられます。
ブリッジもおすすめのトレーニングです。ドローインと同じように、仰向けに寝て、両膝を90度くらいに立てた姿勢から始めます。お尻をゆっくりと持ち上げ、肩から膝までが一直線になるようにします。腰を反らせないように注意してください。
最初は痛みを感じない範囲で、正しいフォームを意識することが大切です。まずは専門家の指導のもとで正しい方法を学び、無理なく続けましょう。水中ウォーキングなど、腰に負担の少ない有酸素運動を取り入れるのもおすすめです。
腰椎すべり症の3つの治療法
腰椎すべり症の3つの治療法は以下のとおりです。
- 薬物療法
- リハビリテーション
- 手術療法
薬物療法
薬物療法は、つらい痛みやしびれを和らげるための治療です。薬物療法だけでは、腰椎すべり症を根本的に治すことはできません。痛みをコントロールして、リハビリテーションなど次の治療に取り組むための土台を作る方法です。主に使われる薬には、以下の種類があります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みや炎症を抑えるお薬
- 筋弛緩薬(きんしかんやく):緊張してしまった筋肉をほぐすお薬
- 神経障害性疼痛治療薬:神経の圧迫による痛みを緩和させるお薬
- 神経ブロック注射:痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬などを直接注射する方法
薬を適切に使い、痛みの悪循環を断ち切ることが、リハビリテーションへスムーズに進む重要な鍵になります。
リハビリテーション
リハビリテーションは、症状の根本的な原因にアプローチする大切なステップです。理学療法士などの専門家が、患者さん一人ひとりの体の状態を詳しく評価し、最適なプログラムを提案します。ただ闇雲に体を動かすのではなく、科学的な根拠にもとづいた治療を行います。
リハビリテーションは「運動療法」「物理療法」「日常生活指導」の3つの方法を用いた治療です。運動療法では、硬くなった筋肉を伸ばしたり、インナーマッスルを鍛えたりします。物理療法は、温熱療法などで腰周りの血行を促進し、筋肉の緊張をほぐす方法です。日常生活指導では、腰に負担のかからない体の使い方や正しい姿勢を学びます。
リハビリテーションは、すぐに効果が現れるものではありません。根気強く続けることで、腰を支える本当の力を養い、痛みが出にくい体を作ることが可能です。
手術療法
薬物療法やリハビリテーションを数か月続けても症状が改善しない場合などは、手術療法が検討されます。手術療法では、症状の根本原因を取り除き、生活の質(QOL)を大きく改善できる可能性があります。手術療法は薬やリハビリなどの保存療法に比べて、痛みや機能障害の改善に高い効果が期待できる場合があります。
最近では、体への負担が少ない「低侵襲(ていしんしゅう)手術」も進歩しています。OLIFやXLIFといった低侵襲な固定術が用いられることが増えてきています。また内視鏡を使った手術は、従来の大きく切開する手術に比べて傷が小さく済む方法です。入院期間が短くなる傾向にある一方、他の手術に比べて合併症が起こる可能性が高いという報告もあります。すべりが強かったり不安定性がある場合には術後に症状が再燃する場合もあり、手術方法について脊椎専門医に相談することが重要です。
手術がご自身の症状にとって本当に最善の選択なのかを、専門医と十分に話し合って見極めることが大切です。自分の痛みの強さや困っている症状を医師に伝えて、納得できる治療法を相談しましょう。
以下の記事では、腰椎すべり症に対して手術が必要と判断される具体的な基準や、考えられる治療の選択肢などを詳しく解説しています。手術を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
>>腰椎すべり症は手術すべきか?判断基準と治療の選択肢を医師が解説
まとめ
腰椎すべり症を悪化させないために、体を急にひねる動作や同じ姿勢を長時間続けることなどを避けましょう。良かれと思った行動が、実は症状を悪化させていることもあります。正しい姿勢やコルセットの適切な使用方法などを意識し、腰の負担が小さい生活を心がけることが重要です。
つらい痛みやしびれを我慢せず、専門医へ相談することが改善への一番の近道です。薬やリハビリ、手術など、今のあなたに合った治療法が見つかる可能性があります。一人で悩まず、専門家と一緒に快適な毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
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参考文献
Hao Jia, Zhuo Zhang, Jianpu Qin, Lipei Bao, Jun Ao, Hu Qian.Management for degenerative lumbar spondylolisthesis: a network meta-analysis and systematic review basing on randomized controlled trials.Int J Surg,2024,110,5,p.3050-3059