コラム

椎間板ヘルニアの薬物療法を解説!痛み止めの種類と効果が期待できる使い方

腰の痛みや足のしびれなど、 日常生活に支障をきたすほどの痛みに悩まされている方はいませんか。椎間板ヘルニアは、デスクワーク中心の現代社会では、誰もが罹患するリスクを抱えています。 つらい痛みを和らげ、快適な生活を取り戻すために、適切な薬物療法が重要とされています。

この記事では、椎間板ヘルニアの薬物療法に用いられる薬の種類や使用方法、副作用、他の治療法との組み合わせについて解説します。適切な薬を使用し、痛みを我慢せずに、快適な生活を送りましょう。

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアに使われる主な薬の種類

椎間板ヘルニアで使用される薬は以下のとおりです。

  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
  • アセトアミノフェン
  • オピオイド系鎮痛薬
  • 神経障害性疼痛治療薬
  • 筋弛緩薬

椎間板ヘルニアの薬物療法は、痛みの原因を取り除く治療ではなく、痛みや炎症などの症状をコントロールするための対症療法です。薬にはそれぞれ異なる作用機序や副作用があるため、ご自身の症状や体質に合った薬の選択が重要です。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、炎症と痛みを抑える効果が期待されています。NSAIDsの代表的な薬は以下のとおりです。

  • ロキソニン
  • ボルタレン
  • セレコックス

NSAIDsは、胃腸障害や腎機能障害などの副作用が生じる可能性もあるため、医師の指示に従って適切な量を服用することが重要です。胃が弱い方には、胃薬を併用して処方されることもあります。

アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは、炎症を抑える作用はほとんどありませんが、痛みや熱を下げる効果があるとされています。アセトアミノフェンはカロナールという名前で知られており、市販薬のタイレノールAの主成分でもあります。

NSAIDsで胃腸障害、腎機能障害などの副作用が心配な方や高齢の方、妊娠中や授乳中の方でも比較的安心して服用できます。アセトアミノフェンを大量に服用すると肝臓に負担がかかることがあるため、医師の指示を守って服用することが重要です。他の薬と併用する場合は、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

オピオイド系鎮痛薬

オピオイド系鎮痛薬は、痛みを伝える神経の働きを抑える作用があります。NSAIDsやアセトアミノフェンでは効果が不十分な強い痛みに対して使用されます。オピオイド系鎮痛薬の代表的な薬は、以下のとおりです。

  • トラマドール
  • トラムセット
  • ノルスパンテープ

眠気やめまい、吐き気、便秘などの副作用が現れる場合があるため、自動車の運転など、危険を伴う作業は避ける必要があります。長期間使用すると薬物依存が生じる可能性もあり、医師の指示に従って慎重に服用することが重要です。

神経障害性疼痛治療薬

神経障害性疼痛治療薬は、神経が傷ついたり圧迫されたりすることで起こる痛みやしびれを和らげる薬です。神経障害性疼痛治療薬の代表的な薬は、以下のとおりです。

  • プレガバリン(リリカ)
  • ミロガバリン(タリージェ)

椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、電気が走るような痛みやしびれ、焼けるような痛みなどが起こることがあります。神経障害性疼痛治療薬は、神経障害による痛みを和らげる効果が期待できます。副作用として、めまいや眠気が起こる可能性があります。

筋弛緩薬

筋弛緩薬は、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する薬です。筋弛緩薬の代表的な薬は以下のとおりです。

  • ミオナール
  • テルネリン
  • リンラキサー

椎間板ヘルニアになると、周囲の筋肉が緊張し、痛みが悪化することがあります。筋肉が緊張する原因は、痛みを感じると周辺の筋肉が反射的に収縮し、患部を保護しようと働くためです。筋肉の緊張が過剰になると、血行が悪くなり、痛みが増強する可能性があります。

筋弛緩薬の副作用として、眠気やめまいが起こる可能性があるため、自動車の運転などは注意が必要です。

椎間板ヘルニアにおける薬物療法の基本

椎間板ヘルニアにおける薬物療法の基本について、以下を解説します。

  • 症状に合わせた薬の選び方
  • 市販薬と処方薬の違い
  • 妊娠中や授乳中の薬の服用
  • 薬の飲み合わせの注意点

症状に合わせた薬の選び方

椎間板ヘルニアの症状に合わせた薬の選択と特徴については、以下のとおりです。

症状 使用される薬の種類 代表的な薬剤例 作用・特徴
急に激しい痛み NSAIDs ロキソニン、ボルタレン 炎症や痛みを抑え、比較的早く効果が現れる
神経由来のしびれやピリピリした痛み 神経障害性疼痛治療薬 プレガバリン、ミロガバリン 神経が原因の電気が走るような痛みやしびれを和らげる
筋肉の硬さや緊張が強い場合 筋弛緩薬 ミオナール、テルネリン 筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する

薬の種類によって効果や副作用が異なるため、必ず医師の診察を受け、ご自身の症状に合った薬を処方してもらいましょう。

市販薬と処方薬の違い

市販薬は病院で処方される薬よりも成分量が少ないため、効果が弱い場合があります。ドラッグストアなどで手軽に買える市販薬の中には、ロキソニンSやタイレノールなどがあります。一時的な痛みの緩和に役立つ可能性がありますが、市販薬での自己治療は、痛みの根本原因への対処を遅らせる場合があります。

椎間板ヘルニアの痛みは自然に治ることもありますが、痛みが強かったり長引いたりする場合は、必ず整形外科を受診しましょう。

妊娠中や授乳中の薬の服用

妊娠中や授乳中は、胎児や乳児への影響を考慮し、服用できる薬の種類が限られます。市販薬も含め、すべての薬の服用について、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。母乳を通して薬の成分が乳児に移行する可能性があるため、自己判断での服用は避けてください

薬の飲み合わせの注意点

複数の薬を同時に服用する場合、薬同士の相互作用で効果が弱くなったり、副作用が強くなったりする可能性があります。特定の痛み止めと胃薬を一緒に飲むと、痛み止めの効果が弱まることがあります。一部の薬はグレープフルーツジュースと一緒に飲むと、薬の効果が強く出すぎる場合があります。

常用している薬がある場合は、必ず医師に伝えましょう。市販薬を服用する際も、他の薬との飲み合わせに注意が必要です。薬剤師に相談するか、添付文書をよく読んで確認しましょう。

薬以外との併用で治療効果が期待できる方法

薬物療法と併用されることの多い治療法について、以下を解説します。

  • 理学療法(リハビリ)との併用
  • 注射療法との併用
  • 手術療法との併用
  • 生活習慣の改善で薬の効果を高める

理学療法(リハビリ)との併用

理学療法(リハビリ)は、身体の機能を回復させ、痛みを和らげる治療法です。椎間板ヘルニアは、腰や背骨周りの筋肉が弱くなっていたり、姿勢が悪くなっていたりすることが痛みの原因となる場合が多いです。理学療法では、ストレッチや筋力トレーニングなどを行い、腰への負担を軽減できる可能性があります

理学療法は、痛みや症状に応じて行われるため、ご自身の状態に合った適切な治療を受けられる可能性があります。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説

注射療法との併用

注射療法は、薬を直接患部に注射し、痛みや炎症を抑える治療法です。大きく分けて、ブロック注射と硬膜外ステロイド注射(ESI)があります。ブロック注射と硬膜外ステロイド注射の効果は以下のとおりです。

治療法 効果
ブロック注射 痛みの原因になる神経に直接薬を注射し、痛みを遮断する
硬膜外ステロイド注射 神経近くにステロイドを注射し、炎症による痛みや腫れを抑える

経椎間孔への硬膜外ステロイド注射は、3か月後の疼痛軽減に有効であるという研究結果あります。注射療法は、薬物療法だけでは十分な効果が得られない場合に併用される場合があります。身体機能の改善や手術回避の効果は明確ではないため、医師と十分に相談し、治療方針を決定することが大切です

手術療法との併用

手術療法と薬物療法の併用は、手術後の痛みをコントロールし、早期回復が期待できます。手術療法には、ヘルニアを切除したり、神経の圧迫を解消したりするなど、さまざまな方法があります。手術療法を行うタイミングは、患者さんの症状や状態によって異なります。

医師は、患者さんの症状や日常生活への影響、画像検査の結果などを総合的に判断し、手術の必要性と適切なタイミングを決定します。

生活習慣の改善で薬の効果を高める

薬物療法や他の治療法の効果を高めるために、生活習慣の改善も重要です。生活習慣を改善する方法は、以下のとおりです。

項目 内容
正しい姿勢 座るときは背筋を伸ばし骨盤を立て、立つときはお腹に力を入れる
適度な運動 ウォーキングや水泳など腰への負担が少ない運動で筋力を強化する
バランスの良い食事 カルシウムやタンパク質を意識し、栄養バランスを整える
質の高い睡眠 睡眠不足を避け、毎日同じ時間に寝起きする

生活習慣の改善は、椎間板ヘルニアの再発予防にもつながります。

以下の記事では、椎間板ヘルニアが完治するのかどうか、長期的な症状の見通しや改善の可能性について詳しく解説しています。将来への不安を軽減したい方は参考になる内容です。
>>椎間板ヘルニアは一生治らない?完治までの道のりと症状改善の可能性を解説

まとめ

椎間板ヘルニアの痛みを緩和するために、症状に合わせた薬物療法が重要です。NSAIDsや神経障害性疼痛治療薬、筋弛緩薬などを正しく使い分けることで、痛みやしびれの緩和が期待できます。理学療法や注射療法、生活習慣の改善を組み合わせることで、薬の効果をより引き出せる可能性もあります。

自己判断で薬を服用せず、医師と相談しながら適切な治療を受けることが大切です。適切な薬を使用し、痛みを我慢せずに快適な生活を送りましょう。

治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介

参考文献

Kazi Z Hassan, Andrew L Sherman. Epidural Steroids. StatPearls [Internet], 2025