コラム

椎間板ヘルニアにおすすめの筋トレメニュー|症状改善に期待できる運動と避けるべき動作

腰や脚の痛みやしびれ、もしかして椎間板ヘルニアかもと、不安を抱えていませんか?椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで、耐え難い痛みを引き起こします。手術が必要になるケースは比較的少ないですが、症状や重症度により治療方針はさまざまです。

この記事では、椎間板ヘルニアのメカニズムや症状改善に効果が期待できる筋トレメニュー、悪化させてしまうNG動作について、詳しく解説します。つらい痛みから解放され、快適な日常生活を取り戻すためにも、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

当院では、頚椎椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアとは椎間板が突出し神経を圧迫する状態

椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間にあるクッション材「椎間板」の一部が飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす疾患です。飛び出した椎間板の部分を「ヘルニア」と呼びます。

私たちの背骨は、たくさんの骨(椎骨)が積み重なってできており、それぞれの椎骨の間には、衝撃を吸収するクッションの役割を果たす椎間板が存在します。椎間板は、外側を硬い線維輪(せんいりん)、内側を柔らかいゼリー状の髄核という構造です。

椎間板ヘルニアは、線維輪が何らかの原因で損傷し、内部の髄核が飛び出すことで発症します。飛び出した髄核が近くの神経を圧迫することで、現れる症状は、腰痛や脚の痛み、しびれなどです。椎間板ヘルニアは、体のどの部分の椎間板に発生するかによって、以下の3つに分類されます。

椎間板ヘルニアの種類 部位 主な症状 特徴
頸椎椎間板ヘルニア 首(C1〜C7) ・首、肩、腕のしびれ
・手の動き低下
・手先の細かい作業がしにくい
・進行すると下半身症状も出る
胸椎椎間板ヘルニア 背中(T1〜T12) ・下肢筋力低下
・足のしびれ

・歩行障害
・排尿排便障害
初期は無症状か軽い痛みで発見が遅れることもある
腰椎椎間板ヘルニア 腰(L4/L5とL5/S1) ・腰痛
・足のしびれ
・坐骨神経痛
・排尿排便障害
・最も多く発症するタイプ
・重症化すると馬尾症候群を発症する

症状の程度によって治療の選択肢やアプローチも異なるため、自分がどのレベルに該当するのかを知っておくことが重要です。以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に分類し、それぞれに合った治療法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴!治療法も解説

椎間板ヘルニアの改善が期待できる運動

椎間板ヘルニアの改善が期待できる運動について、以下の5つを紹介します。

  • ドローイン:体幹の安定性を高める
  • バードドッグ:脊柱を支える筋肉を鍛える
  • ヒップリフト:臀筋を強化し、姿勢を改善する
  • サイドプランク:体幹の側部を強化する
  • ウォーキング:全身の血流を促進し、回復を促す

ドローイン:体幹の安定性を高める

ドローインは、お腹をへこませることで、体幹の奥にある腹横筋(ふくおうきん)という筋肉を鍛える運動です。腹横筋を鍛えることで、腰への負担を軽減し、姿勢が安定することで、日常生活動作が楽になります。近年の研究でも、運動療法が、機能回復と痛みの緩和に効果が期待できると示されました。

ドローインは、他の運動より比較的簡単に行えるため、体力に自信がない方や高齢の方にもおすすめです。腰痛予防や姿勢改善、ぽっこりお腹の解消などに効果が期待できます。ドローインの手順は、以下のとおりです。

  1. 仰向けに寝て膝を立てる
  2. 息を吐きながらお腹をゆっくりとへこませる
  3. 10秒間キープする
  4. 10回繰り返す

お腹を薄くするイメージで行うことがポイントです。

バードドッグ:脊柱を支える筋肉を鍛える

バードドッグは、四つん這いの姿勢から、片方の腕と反対側の脚を同時に伸ばす運動です。バランスをとることで、体幹や背中の筋肉、脊柱起立筋、多裂筋といった脊柱を支える筋肉が鍛えられ、脊柱の安定性を高めます。バードドッグは、体幹の安定性だけでなく、バランス感覚の向上にも効果が期待できます。

バランス感覚が向上すると、転倒予防にもつながります。高齢者の転倒は骨折や寝たきりなどのリスクを高めるため、バードドッグのバランス感覚を鍛える運動は、健康寿命の延伸にも貢献すると考えられています。バードドッグの手順は、以下のとおりです。

  1. 四つん這いになる
  2. 片方の腕と反対側の脚を床と平行になるように伸ばす
  3. 5秒間キープし、ゆっくりと元の姿勢に戻す
  4. 左右交互に5回ずつ、3セット行う

腰を反らさずに、骨盤を水平に保つことが大切です。

ヒップリフト:臀筋を強化し、姿勢を改善する

ヒップリフトはお尻を持ち上げることで、お尻の筋肉である大臀筋を鍛える運動です。大臀筋を鍛えることで、腰への負担を軽減し、正しい姿勢を保ちやすくなります。大臀筋が弱化すると、骨盤が後傾しやすくなり、腰椎の湾曲が減少します。

腰椎の湾曲の減少は、椎間板にかかる負担が増大し、腰痛や椎間板ヘルニアのリスクが高まる要因の一つです。ヒップリフトは大臀筋の筋力強化に効果が期待できるため、椎間板ヘルニアの予防・改善に役立ちます。ヒップリフトの手順は、以下のとおりです。

  1. 仰向けに寝て膝を立てる
  2. お尻を持ち上げる
  3. 10回を3セット行う

腰ではなく、お尻の筋肉を意識することが重要です。

サイドプランク:体幹の側部を強化する

サイドプランクは、横向きに体を支えることで、体幹の側面の筋肉や腹斜筋、腰方形筋を鍛える運動です。体幹の側部を強化することで、体の横揺れを防ぎ、バランス能力が向上します。サイドプランクは体幹の側部の筋肉を鍛えるだけでなく、肩関節の安定性向上も期待できます。

肩関節は日常動作に不可欠な、体幹と腕をつなぐ関節です。肩関節の安定性を高めることは、日常生活の質の向上にもつながります。サイドプランクの手順は、以下のとおりです。

  1. 横向きに寝る
  2. 片方の肘と足で体を支える
  3. 体を一直線に保つ
  4. 10~20秒キープする
  5. 左右交互に3セット行う

ウォーキング:全身の血流を促進し、回復を促す

ウォーキングは、全身の血流を促進し、筋肉や神経の回復を促す効果があります。適度な運動は、ストレス軽減にもつながります。ウォーキングは、有酸素運動であるため、心肺機能の向上にも効果が期待できます。心肺機能が向上すると、全身の持久力が向上し、疲れにくくなります。

血流が促進されることで、全身の細胞に酸素や栄養が効率的に運ばれ、新陳代謝が活発になります。ウォーキングを行う際は、20~30分を目安に、無理のないペースで行いましょう。適切な靴を履き、正しい姿勢で歩くことが大切です。痛みやしびれが強い場合は、無理せず中止してください。

椎間板ヘルニアで避けるべき4つの動作

椎間板ヘルニアは、適度な運動で改善が期待できますが、逆に症状を悪化させてしまうこともあります。椎間板ヘルニアで避けるべき動作について、以下の4つを解説します。

  • 脊柱の屈曲と回旋を伴う運動
  • 高負荷のスクワットやデッドリフト
  • ジャンプやランニングなど腰に衝撃がかかる運動
  • 痛みやしびれを増悪させるストレッチ

脊柱の屈曲と回旋を伴う運動

脊柱の屈曲とは、前かがみになる動き、回旋とは体をねじる動きのことです。脊柱の屈曲と回旋を同時に行うと椎間板への負担が大きくなり、ヘルニアを悪化させる可能性があります。前かがみになったり、体をねじったりする動作は、すでに損傷している部分の悪化や、新たな損傷を引き起こす可能性が高まります。

床の上で体を起こす腹筋運動やダンベルを持って体をねじるツイスト運動などは、脊柱に大きな負担がかかるため注意が必要です。椎間板ヘルニアの治療中は、腹筋運動やツイスト運動は避け、脊柱への負担が少ない運動を選びましょう。

脊柱への負担が少ない運動としては、水中ウォーキングや水中エアロビクスなど、浮力によって腰への負担を軽減できるものが挙げられます。

高負荷のスクワットやデッドリフト

スクワットやデッドリフトは、重いバーベルを持ち上げる筋力トレーニングです。高負荷の筋力トレーニングを行うと、腹圧が急激に上昇し、腰椎への圧迫も強くなります。腰椎への圧迫は、椎間板への負担を増大させ、ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。

腰椎L4/L5とL5/S1は、椎間板ヘルニアが発生しやすい部位であり、負担は最小限に抑えることが必要です。高負荷のスクワットやデッドリフトは、大きな負担をかけるため、椎間板ヘルニアの患者さんには推奨されません。椎間板ヘルニアの場合は、高負荷の筋トレは避け、無理のない範囲での運動を心がけましょう。

軽い負荷でのスクワットや、自重トレーニングなどが代替案として考えられます。重要なのは、自身の状態に合わせて適切な運動を選択することです。

ジャンプやランニングなど腰に衝撃がかかる運動

ジャンプやランニングなどの運動は、着地時に足への衝撃が大きく、衝撃は腰にも伝わります。衝撃が椎間板に直接伝わることで、炎症が悪化したり、さらなる損傷を引き起こしたりする可能性があります。

トランポリンやバーピー、縄跳びなどのジャンプを繰り返す運動は、椎間板への負担が大きいため避けましょう。椎間板ヘルニアの症状がある場合は、ウォーキングや水中ウォーキング、自転車など、足腰への負担が少ない運動が適切です。

痛みやしびれを増悪させるストレッチ

ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進する効果が期待でき、一般的には健康に良い影響を与えます。しかし、痛みやしびれを増悪させるストレッチは逆効果です。ストレッチ中に痛みやしびれを感じた場合は、すぐに中止しましょう。無理にストレッチを続けると、症状が悪化する可能性があります。

前屈や後屈、捻転などのストレッチは、椎間板に負担がかかりやすいため、注意が必要です。整形外科医や理学療法士に相談し、適切なストレッチ方法を指導してもらいましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説

椎間板ヘルニア改善のためのポイント

椎間板ヘルニアの改善のためのポイントについて、以下の4つを解説します。

  • 体重を減らす
  • 同じ姿勢を続けない
  • 硬めのマットレスを使う
  • 医師の診察を受ける

体重を減らす

過剰な体重は、腰椎への負担を増大させ、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる要因です。体重が増加すると、椎間板にかかる圧力が高まり、線維輪の損傷や髄核の突出を促進する可能性があります。BMI(体格指数)が25以上の方は、特に体重管理に気を配りましょう。BMIは、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で計算できます。

体重を減らすためには、バランスの良い食事と適度な運動が不可欠です。食事面では、野菜や果物、良質なたんぱく質を積極的に摂取し、脂肪や糖質の過剰摂取を控えましょう。運動は、ウォーキングや水泳など、腰への負担が少ない有酸素運動がおすすめです。

無理な食事制限や過度な運動は、かえって体に負担をかけるため、避けましょう。目標としては、3か月で現状の体重から5%の減量が目安です。

同じ姿勢を続けない

長時間同じ姿勢を続けると、筋肉の緊張や血行不良を引き起こし、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。デスクワークや車の運転など、長時間座り続ける場合は、こまめな休憩と姿勢の変更を意識しましょう。45分に1回は立ち上がり、軽いストレッチや軽い歩行を行うことが理想的です。

座っている際には、背筋を伸ばし、骨盤を立てるように意識することで、腰への負担を軽減できます。足を組む癖がある方は、骨盤の歪みにつながるため、意識的に足を組まないようにしましょう。椅子に座る際は、深く腰掛け、背もたれを利用することで、腰への負担を軽減できます。

スタンディングデスクの導入やクッションやタオルなどを利用して、腰をサポートするのも効果が期待できます。

硬めのマットレスを使う

睡眠中は、長時間同じ姿勢を保つため、寝具選びも椎間板ヘルニアの改善に大きく影響します。柔らかすぎるマットレスは、腰が沈み込み、椎間板への負担が増加するため適切ではありません。硬すぎるマットレスは、体圧が一部に集中しやすくなり、痛みや不快感を引き起こす可能性があります。

椎間板ヘルニアの方には、一般的に中程度の硬さのマットレスが推奨されます。中程度の硬さのマットレスは、体圧を分散させ、脊椎の自然な湾曲を維持するのに役立つためです。マットレスの硬さは、個人の体型や好みに合わせて調整する必要があります。

自分に合ったマットレスを見つけるためには、実際に寝転んでみて、腰への負担や寝心地を確認することが重要です。血行促進の観点から、寝返りがしやすいマットレスを選ぶことも重要です。

医師の診察を受ける

椎間板ヘルニアの症状が続く場合は、自己判断で対処せず、速やかに医療機関を受診しましょう。3か月以上症状が改善しない場合や排尿・排便障害、下肢の麻痺などの症状が現れた場合は、緊急の治療が必要となる可能性があります。

医療機関では、医師が問診や身体診察、画像検査(レントゲン、MRIなど)などを行い、症状の原因や重症度を正確に診断します。診断結果にもとづいて、薬物療法や理学療法、手術療法など、適切な治療法が選択されます。早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。

まとめ

椎間板ヘルニアは、椎間板が神経を圧迫することで、腰や足に痛みやしびれを引き起こす疾患です。改善には、ドローインやバードドッグ、ヒップリフト、サイドプランク、ウォーキングなどの運動に効果が期待できます。脊柱の屈曲と回旋を伴う運動や、高負荷のスクワット、ジャンプの運動は症状を悪化させるため避けましょう。

日常では、体重管理や長時間同じ姿勢を避けること、適切なマットレス選びも大切です。症状が続く場合は、自己判断せず、医療機関を受診しましょう。専門家による適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、快適な日常生活を送ることができます。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法

参考文献

Shaojie Du, Zeyu Cui, Shurui Peng, Jieyu Wu, Jinhai Xu, Wen Mo, Jie Ye.Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.Front Med (Lausanne),2025,12,,p.1531637