椎間板ヘルニア手術後の生活で注意すべきポイント|回復を早める過ごし方を解説
椎間板ヘルニアの手術後の過ごし方が、痛みやしびれの軽減、再発防止に影響する可能性があります。海外で行われた研究では、腰椎椎間板ヘルニアの患者さんが手術を受けるタイミングで、手術後の痛みの変化を調査しています。症状が出てから12か月以内に手術した場合、脚の痛みが軽減する可能性が高いことが示されました。
この記事では、回復を早めるための術後生活のポイントについて、下記の内容を解説します。
- 椎間板ヘルニア手術後の回復期
- 椎間板ヘルニア手術後の痛みを和らげる日常生活のポイント
- 椎間板ヘルニア手術後によくある質問
記事を読むことで、手術後の不安や疑問を解消し、より良い生活を送るためにご活用ください。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニア手術後の回復期
回復期とは、手術後に体が回復するまでの期間を指します。痛みやしびれが少しずつ良くなり、リハビリをしながら徐々に日常生活や仕事に戻っていく時期です。椎間板ヘルニア手術後の回復期の生活について、以下の期間別にポイントを解説します。
- 手術直後〜1日:入院中の注意点
- 2日後~数日:自宅療養のポイント
- 数日以降:社会復帰に向けたリハビリ
手術直後〜1日:入院中の注意点
手術直後は、入院して安静と経過観察を行う期間です。傷口の痛みや患部の腫れ、違和感などが残っている可能性があるため、体を休ませ、医師や看護師の指示に従うことが最優先です。以下のポイントに注意してください。
- 安静にする
- 傷口のケアをする
- バランスの良い食事を摂る
- 排尿・排便の問題や痛み、しびれがある場合は医師へ相談する
手術の種類で安静度は異なりますが、手術直後は基本的にベッド上で安静にしてください。安静期間中は、体を動かすことで傷口に負担がかかり、治癒を遅らせる可能性があります。医師の指示に従い、徐々に体を動かすようにし、痛みを感じたらすぐに医師へ相談しましょう。
傷口は清潔に保つことが大切です。感染症は傷の治癒を遅らせ、合併症を引き起こす可能性があります。医師や看護師の指示に従って、適切な消毒やガーゼ交換を行ってください。栄養バランスの良い食事を摂ることは、体力の回復を早めるだけでなく、傷の治癒にもつながります。タンパク質やビタミン、ミネラルは組織の修復に不可欠です。
手術の種類や術後の安静状態で、排尿や排便に一時的な問題が生じる場合があります。痛みやしびれが強い場合は、医師や看護師に相談し、適切な鎮痛剤などの処方を検討してください。
2日後~数日:自宅療養のポイント
2日後~数日は、退院して自宅療養を行う期間です。日常生活を徐々に再開していく時期ですが、体は完全には回復していません。手術の種類や症状の程度、体質で回復のスピードは異なります。自宅療養中は、以下のポイントに注意してください。
- 腰に負担のかかる動作を避ける
- 入浴時間に注意する
- 処方薬は指示通りに服用する
引き続き安静にして、長時間の立ち仕事や座り仕事など、腰に負担のかかる動作は避けることが大切です。傷口の状態によっては、入浴が制限される場合もあります。医師の指示に従い、徐々に湯船に浸かる時間を増やします。熱いお湯は患部を刺激する可能性があるので、ぬるめで短時間の入浴を心がけましょう。
処方された薬は、指示通りに服用し、自己判断で薬の量や服用回数を変更しないことが大切です
理学療法士によるリハビリテーションは、腰回りの筋肉を強化し、再発予防に効果が期待できます。
数日以降:社会復帰に向けたリハビリ
数日以降は、社会復帰に向けてリハビリテーションを本格的に行う時期です。リハビリテーションの目的は、腰回りの筋肉を強化して再発を予防することや、スムーズに日常生活へ復帰することです。リハビリテーションの内容は、個々の症状や回復状況、生活スタイルに合わせて異なります。
一般的には、ストレッチやウォーキング、筋力トレーニングを行います。ストレッチやウォーキングをすると、全身の血行が促進されて筋肉の柔軟性が高まることで、腰への負担が軽減されて痛みが緩和される場合があります。筋力トレーニングをすると、腹筋や背筋などの体幹が鍛えられて姿勢が安定するため、腰への負担軽減が期待できます。
リハビリテーションは、痛みを感じない範囲で行うことが大切です。無理をすると、症状が悪化したり、再発のリスクが高まったりする可能性があります。医師や理学療法士の指示に従い、適切な運動を行いましょう。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説
椎間板ヘルニア手術後の痛みを和らげる日常生活のポイント
椎間板ヘルニアの手術後の日常生活で、痛みを和らげるポイントについて、以下の内容を解説します。
- 姿勢や動作の見直し
- 家事や入浴など日常生活の工夫
- 睡眠環境の改善
- 体重管理と適度な運動
姿勢や動作の見直し
正しい姿勢は、腰への負担を最小限に抑え、手術後の回復を促進するために重要です。以下の表のとおり、正しい方法を意識してください。
姿勢・動作 | 正しい方法 | 間違った方法 | 負担のかかり方 |
立つ | お腹に力を入れて背筋を伸ばし、あごを引く | 猫背、反り腰 | ・猫背:背中が丸まり、腰椎に負担がかかる ・反り腰:腰椎の前弯が強まり、負担がかかる |
座る | 深く腰掛けて背もたれに寄りかかり、足を床につける | 浅く腰掛け、足を組む | ・浅く腰掛け:腰椎への支持が弱くなり、負担がかかる ・足を組む:骨盤が歪み、腰椎に負担がかかる |
物を持ち上げる | 膝を曲げ、中腰姿勢で両手で持ち上げる | 前かがみで持ち上げる | 腰椎に大きな負担がかかり、損傷リスクが高まる |
家事や入浴など日常生活の工夫
家事も、手術後の体には負担になる場合があります。料理をする際は、台の高さを調整したり、椅子に座って作業したりするなどの工夫が必要です。洗濯物を干す際は、洗濯かごを高い位置に置く、洗濯物を小分けにするなどして、腰への負担を軽減してください。ロボット掃除機などを活用するのもおすすめです。
傷口を濡らさないように、手術後しばらくはシャワー浴をしましょう。医師の許可を得て、湯船に浸かります。入浴中は、転倒しないように手すりなどを利用すると安心です。
睡眠環境の改善
質の高い睡眠は、体の回復を促すために大切です。マットレスは、硬すぎず柔らかすぎないものを選び、腰を適切に支えるようにしましょう。腰が沈み込みすぎると、腰椎に負担がかかり、痛みが増す可能性があります。仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションやタオルなどを敷いて軽く膝を曲げると、腰への負担が軽減されます。
横向きで寝る場合は、抱き枕などを抱えると、体が安定し、腰への負担を軽減できます。睡眠時間は、個人差がありますが、7~8時間程度の睡眠を確保してください。十分な睡眠をとることで、体の修復促進が期待できます。
体重管理と適切な運動
体重が増加すると、腰への負担が増大し、再発のリスクが高まる可能性があります。バランスの良い食事を摂り、食べすぎに注意しましょう。適度な運動は、体重管理だけでなく、腰痛の改善にも効果が期待できます。最初はウォーキングなどの軽い運動から始め、徐々に運動強度を高めていくことが大切です。
水中ウォーキングやプールでの軽い運動は、浮力で腰への負担が軽減されるため、おすすめです。2025年に発表された研究では、腰椎椎間板ヘルニア手術後に運動療法を行うと、痛みの軽減や生活の質の改善に効果が期待できることが示唆されています。術後の運動は、必ず医師の指示と許可を得てから行いましょう。
自己判断で運動を開始すると、症状が悪化するリスクがあります。痛みを感じたらすぐに運動を中止し、医師に相談してください。
椎間板ヘルニア手術後によくある質問
患者さんからよく寄せられる以下の質問について、解説します。
- 仕事復帰までどのくらいかかる?
- スポーツはいつから再開できる?
- 運転を再開するタイミングは?
- 性生活への影響はある?
- 痛みやしびれが続く場合の対処法はどうするべき?
仕事復帰までどのくらいかかる?
仕事復帰の時期は、手術の種類や仕事内容、回復状況で異なります。デスクワーク中心の比較的体への負担が少ない仕事であれば、術後1~2週間で復帰できる場合もあります。肉体労働や長時間の運転など、腰に負担がかかる仕事の場合は、1か月以上かかることもあります。
復帰を急ぎすぎると、再発のリスクを高めるだけでなく、慢性的な腰痛につながる可能性もあります。医師と相談のうえ、体の状態に合わせた無理のないペースで復帰プランを立てましょう。復帰直後は、短い時間から始め、徐々に勤務時間を延ばしていくことをおすすめします。
職場の上司や同僚に手術後の状況を説明し、理解と協力を得ることもスムーズな職場復帰につながります。必要に応じて、医師の診断書を提出することも検討しましょう。
スポーツはいつから再開できる?
スポーツの再開時期は、手術やスポーツの種類、回復状況で異なります。ウォーキングや軽いストレッチなどの軽い運動は、術後1か月頃から始められる場合が多いです。ジョギングなどの少し負荷の高い運動は、術後2か月頃から始めるのが目安です。痛みや違和感を感じた場合は、すぐに運動を中止し、医師に相談してください。
テニスやゴルフ、サッカー、バスケットボールなどの激しいスポーツは、一般的には術後3か月以降、医師の許可を得て再開するようにしましょう。スポーツを再開する際は、ウォーミングアップを十分に行い、体を温めてから始めます。運動中はこまめな休憩を挟み、体を冷やさないように注意しましょう。
運転を再開するタイミングは?
運転の再開時期は、手術の種類や回復状況、運転時間の長さで判断が異なります。術後2週間程度で短い距離の運転が可能になる場合が多いですが、長距離の運転や職業ドライバーの場合は、必ず医師と相談のうえ、慎重に判断する必要があります。運転中は正しい姿勢を保ち、こまめに休憩を取るように心がけましょう。
長時間同じ姿勢を続けると、腰へ負担がかかります。適切なシートポジションやハンドル位置に調整したり、腰をサポートするクッションを使用したりするのも効果が期待できます。痛みや違和感がある場合は、すぐに運転を中止し、安静にするか、医療機関を受診してください。
性生活への影響はある?
一般的には、術後2週間程度で性生活を再開しても問題ない場合が多いです。痛みや違和感がある場合は、無理をせず、医師に相談しましょう。性生活を再開する際は、腰に負担がかからない姿勢を選ぶことが大切です。パートナーとよくコミュニケーションを取り、お互いに無理のないように配慮しましょう。
痛みやしびれが続く場合の対処法はどうするべき?
回復には個人差があり、数か月かかる場合もあります。手術後も痛みやしびれが続く場合は、自己判断せずに、医師に相談して痛みの原因を特定し、適切な治療を受けてください。痛みが強い場合は、鎮痛剤の処方や、神経ブロック注射などの治療が選択肢となります。リハビリテーションで、痛みやしびれの軽減を図る場合もあります。
理学療法士による適切な指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングを行い、腰回りの筋肉を強化することが大切です。症状が改善しない場合は、セカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。他の専門家の意見を聞くことで、新たな治療法や視点が見つかる可能性があります。
椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
まとめ
椎間板ヘルニア手術直後~1日は、安静にして医師の指示に従うことが大切です。2日後~数日の自宅療養期間は、無理のない範囲で、日常生活を徐々に再開します。数日以降は、社会復帰に向けてリハビリテーションを本格的に行います。
日常生活では、正しい姿勢と動作を意識し、家事や入浴なども工夫が必要です。質の高い睡眠や適切な体重管理、適度な運動を心がけてください。仕事やスポーツの再開時期は、回復状況や仕事内容、スポーツの種類で異なります。手術後も痛みやしびれが続く場合は、自己判断せず医師に相談し、適切な治療を受けましょう。
当院は「もし、患者さまが自分の家族だったら私は何をすべきか。」という理念のもと、質の高い医療サービスを提供することに尽力しています。椎間板ヘルニアでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
>>当院について
参考文献
- Wen Xian Low, Arjan Sehmbi, Farzad Shabani, Nitin Shetty, Saeed Mohammad, Hasan Raza Mohammad.The effect of symptom duration on the outcomes of lumbar discectomy for radicular pain secondary to lumbar disc herniation: a systematic review and meta-analysis.Eur Spine J,2025
- HyungSub Jin, JangWon Kwon, Jeongmin Lee, Dong-Jun Lee, Dong Hoon Lee, Justin Y Jeon.Effects of Exercise on Pain and Disability After Lumbar Disc Herniation Surgery: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials.Am J Phys Med Rehabil,2025,104,6,p.511-518