椎間板ヘルニアの後遺症としびれが続く理由|改善方法と治療のポイント
椎間板ヘルニアの手術後、つらい痛みから解放されたものの、しびれが残る場合があります。しびれは、ヘルニアによる物理的な圧迫が取り除かれた後も、さまざまな要因によって続くことがあります。足のしびれを伴う腰痛の患者さんにMRI検査を行った研究では、椎間板ヘルニアが高い割合で確認されたと報告されています。
しびれが続く背景には、神経の損傷や、脳が痛みを記憶する神経の過敏状態など、複数の要因があります。この記事では、手術後も続くしびれの理由や症状を改善するための具体的な治療法、日常生活での工夫を詳しく解説します。ご自身の状態と向き合い、しびれの軽減を目指しましょう。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
手術後もしびれが後遺症として残る理由
手術後もしびれが後遺症として残る理由について、以下の3つを解説します。
- 神経そのものに生じた損傷
- 神経の過敏状態
- 血行不良や筋肉のこわばり
神経そのものに生じた損傷
手術後にしびれが残る要因には、ヘルニアによって神経自体が傷ついていることがあります。手術で治療した後も、神経に残った傷はすぐには回復しません。神経は繊細な組織であり、損傷の程度や圧迫されていた期間によっては、回復までに時間がかかることがあります。
神経の損傷が強い場合、しびれや感覚の低下が完全に回復しないことがあります。神経が回復していく過程で、不快な感覚が長く残ることも少なくありません。さらに症状が進行すると、感覚の鈍さや筋力低下に加え、排尿や排便に異常がみられることもあります。
神経の過敏状態
手術によってヘルニアを取り除き、神経への物理的な圧迫が解消された後でも、しびれが続くことがあります。神経が過敏な状態になっている可能性があるためです。長期間にわたって痛みやしびれの刺激を受け続けると、脳や脊髄の神経回路が興奮しやすくなります。これは『中枢性感作』と呼ばれ、痛みやしびれのブレーキがきかなくなり、神経が過剰に反応してしまう状態です。
その結果、衣服が肌に触れたり、少し体を動かしたりするわずかな刺激でも、しびれや痛みとして感じてしまうことがあります。圧迫されていた神経の部位によって、症状が出る場所も異なります。頚椎椎間板ヘルニアでは腕や手に、腰椎椎間板ヘルニアでは、お尻から足にかけて症状が出ることが一般的です。
物理的な原因とは異なるアプローチでの治療が検討されます。
血行不良や筋肉のこわばり
血行と筋肉の状態も、しびれの回復に影響します。しびれや痛みがあると、体をかばうようになり、活動量が減りがちです。その結果、腰やお尻、足の筋肉がだんだんと硬くこわばってきます。硬くなった筋肉は、筋肉中の毛細血管を圧迫し、血行を悪化させる可能性があります。
神経が損傷から回復するためには、血液によって運ばれる酸素や栄養素が必要です。血行不良が続くと、神経に栄養が届きにくくなり、しびれの回復が遅れる要因の一つとなります。
喫煙の習慣がある方は、注意が必要です。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血行を悪化させる作用があることが知られています。血行不良は椎間板の変性を早めるだけでなく、神経の回復も妨げる可能性があるため、禁煙が推奨されます。
改善を目指すための治療の選択肢
改善を目指すための治療の選択肢について、以下の4つを解説します。
- 薬物療法
- 運動療法
- ブロック注射
- 再手術が検討されるケース
薬物療法
薬物療法は、神経の興奮を抑えたり、血流を改善したりすることで、症状の緩和を目指します。以下のお薬が症状に合わせて使われます。
- 神経障害性疼痛治療薬
- ビタミンB12製剤
- 血流改善薬
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬
神経障害性疼痛治療薬は、傷ついた神経の過剰な興奮を抑え、しびれや痛みを和らげるお薬です。ビタミンB12製剤は、末梢神経の機能を正常に保ち、傷ついた神経の修復を助ける働きがあります。血流改善薬は、硬くなった筋肉などの影響で悪くなった神経周囲の血流を改善し、症状の緩和を目指すお薬です。
非ステロイド性消炎鎮痛薬は、神経の周りで起きている炎症を抑え、痛みを和らげるお薬です。気になる症状があれば、主治医に相談しましょう。
なお、薬にはそれぞれ特徴や使い方のポイントがあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの薬物療法で使われる痛み止めの種類や、効果が期待できる使い方について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの薬物療法を解説!痛み止めの種類と効果が期待できる使い方
運動療法
椎間板ヘルニア手術後の後遺症によるしびれに対し、運動療法は大切な治療法です。血行を促し、筋肉のこわばりを和らげることで、症状の改善を目指します。痛みが強い急性期を過ぎたら、医師や理学療法士の指導のもと、無理のない範囲で体を動かし始めましょう。運動療法の目的は以下のとおりです。
- 筋力強化
- 柔軟性の向上
- 正しい体の使い方の習得
体幹のインナーマッスルを鍛えることで、背骨が安定し、腰への日常的な負担を減らします。ストレッチで硬くなった筋肉をほぐすと、関節の動く範囲が広がり、柔軟性が上がります。柔軟性の向上は、血行が改善し、神経への圧迫が和らぐ効果が期待できます。
近年の研究では、中年期の方やBMIが高い方、喫煙習慣がある方は、椎間板ヘルニアのリスクが高まる可能性が示唆されています。運動療法は、体重管理にもつながるため、再発予防の観点からも重要です。
ブロック注射
薬物療法や運動療法を続けても十分な効果が得られない場合や、痛みが強く日常生活に支障がある場合は、ブロック注射が使われることがあります。痛みの原因となっている神経やその周辺に、局所麻酔薬や炎症を抑えるステロイド薬を注射する治療法です。
薬剤によって神経の興奮が抑えられ、痛みの信号が脳へ伝わりにくくなり、症状の軽減が期待されます。また、神経の過剰な興奮が和らぐことで筋肉の緊張がほぐれ、血流の改善につながることもあります。
ブロック注射は、つらい症状を和らげる選択肢の一つです。効果の持続時間には個人差がありますが、痛みが和らいでいる間に運動療法などを行うことで、機能回復につながる可能性があります。
再手術が検討されるケース
保存療法を長期間試みても症状が改善しない場合には、再手術が検討されます。神経の損傷が強く残っている可能性があり、医師の判断が必要です。再手術は、初回の手術で取り切れなかったヘルニアや、新たに生じた問題を解消することを目的とします。
再手術を検討する際は、治療の必要性や期待される効果、想定されるリスクについて、担当医と相談することが重要です。初回の手術の傷が治る過程で、神経や周りの組織に癒着が起きていることがあります。癒着を剥がしながら手術を進める必要があり、神経を傷つけるリスクが初回よりも高まる可能性があります。
癒着自体がしびれの原因となっている場合、ヘルニアを取り除いただけでは症状が改善しないこともあります。
手術後の過ごし方によっては回復のスピードや再発リスクにも影響します。以下の記事では、椎間板ヘルニア手術後の生活で注意すべきポイントや、回復を早めるための過ごし方について解説しています。
>>椎間板ヘルニア手術後の生活で注意すべきポイント|回復を早める過ごし方を解説
しびれが続く場合の日常生活での対処法
しびれが続く場合の日常生活での対処法について、以下の4つを解説します。
- 体の使い方
- しびれを軽減する寝方
- 症状を理解してもらうための他人への伝え方
- 傷病手当金や障害年金などの公的支援の活用法
体の使い方
症状の悪化や再発の予防には、日常の何気ない動作を見直すことが重要です。椎間板に強い圧力がかかる動きを避けることで、しびれを軽減できる場合があります。腰に負担をかける動作は以下のとおりです。
- 中腰や前かがみの姿勢
- 急に腰をひねる動作
- 不適切な物の持ち上げ方
- 長時間の同一姿勢
- 悪い姿勢の習慣化
腰を曲げたまま行う作業は避けることが大切です。後ろを振り向く際は、腰だけをひねらず、体全体の向きを変えるよう意識してください。床の物を拾う場合は、膝を曲げて腰への負担を減らします。デスクワークや車の運転では、少なくとも1時間に一度は立ち上がり、姿勢を変えることが勧められます。
猫背や、反り腰は、腰椎への負担を増やします。腰に負担をかける動作を完全になくすのは難しいですが、意識することが大切です。正しい姿勢を保つことは、神経への不要な圧迫を減らす効果が期待できます。
しびれを軽減する寝方
夜間のしびれや痛みで目が覚めてしまい、熟睡できないことがあります。質の良い睡眠は、傷ついた神経を含め、心と体の回復に大切です。寝るときの姿勢を工夫すると、腰や首への負担が軽くなり、症状の軽減が期待できます。仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションや丸めたバスタオルを入れ、膝を軽く曲げます。腰の反りが緩やかになり、腰椎への圧迫が和らぎます。
横向きで寝る場合は、両膝の間にクッションや枕を挟みましょう。骨盤のねじれが軽減され、腰や股関節への負担を減らす効果が期待できます。うつ伏せ寝は、首が不自然にねじれ、腰も反りやすくなるため、神経を圧迫してしまう可能性があるので避けましょう。
寝具選びも大切です。体が沈み込みすぎる柔らかいマットレスや、硬すぎて寝返りが打ちにくいものは避け、適度な反発力があるものを選びましょう。自分に合った寝方をいくつか試し、リラックスできる姿勢を見つけることが大切です。
症状を理解してもらうための他人への伝え方
椎間板ヘルニアの後遺症によるしびれや痛みは、外見からはわかりにくい症状です。ご家族や職場の方に理解してもらえず、つらさを感じることがあります。症状について的確に伝えることは、必要な配慮を得て、良好な人間関係を保つためにも大切です。
客観的な言葉で症状を説明し、できないことと工夫すれば可能なことを具体的に示すことで、相手も協力しやすくなります。必要な配慮を具体的にお願いすることも大切です。ご自身の体の状態を具体的に伝えることが、周囲の理解とサポートを得やすくなります。
まとめ
椎間板ヘルニアの手術後のしびれは、神経の損傷や血行不良など、複数の要因が複雑に絡み合って生じます。症状の現れ方や回復の経過には個人差があり、時間をかけた対応が必要になることもあります。薬物療法や運動療法、日々の過ごし方の工夫など、症状を和らげるための選択肢はいくつかあります。
ご自身の状態を正しく理解し、無理のない範囲で取り組むことが大切です。しびれや痛みを一人で抱え込まず、不安な点があれば早めに専門の医師に相談しましょう。適切な評価を受けながら、症状に合わせた治療や対策を続けていくことが、回復への一歩につながります。
当院は、脊椎センター・人工関節センターの2つを軸にしたクリニックです。腰や関節の痛み、リハビリなどでお悩みの方へ、専門医が丁寧に相談に応じます。JR姫路駅からは無料送迎バスを利用できますので、お気軽にご来院ください。
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参考文献
- Sun BL, Zhang Y, Zhang N, Xiong X, Zhong YX, Xing K, Wan Z, Liu ZL, Huang SH, Liu JM. Prevalence of lumbar disc herniation in populations with different symptoms based on magnetic resonance imaging study. J Clin Neurosci, 2024, 129, p.110839
- Hincapié CA, Kroismayr D, Hofstetter L, Kurmann A, Cancelliere C, Rampersaud YR, Boyle E, Tomlinson GA, Jadad AR, Hartvigsen J, Côté P, Cassidy JD. Incidence of and risk factors for lumbar disc herniation with radiculopathy in adults: a systematic review. Eur Spine J, 2025, 34(1), p.263-294

