腰の激痛で動けないときの対処法は?すぐに受診すべき症状と治療法を解説
突然、腰の激痛で動けなくなったことはありませんか?多くの場合は「ぎっくり腰」ですが、自己判断での誤った対処は回復を遅らせるだけでなく、症状を悪化させる危険もあります。足のしびれや麻痺、排尿の異常などを伴う場合、後遺症につながる重篤な病気の可能性があります。
腰痛を経験したことがある方は、痛みが長引く可能性があるため、初期対応と原因の見極めが大切です。この記事では安全な応急処置や救急車を呼ぶべき危険な症状、根本的な治療法までを解説します。正しい知識を身につけて、健康的な生活を送りましょう。
当院では、腰痛をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
腰の激痛で動けないときの応急処置
腰の激痛で動けないときの応急処置は、以下のとおりです。
- 一番楽な姿勢で安静にする
- 24~48時間以内に正しいアイシングを行う
- 市販の鎮痛薬を使う
一番楽な姿勢で安静にする
腰に激痛が走ったときに大切なのは安静です。無理に動こうとすると、腰の筋肉や組織を痛めてしまい、症状を悪化させる可能性があります。一番楽な姿勢を探して、安静にしましょう。一方で、痛みが少し和らいだら、無理のない範囲で少しずつ動くことで、回復を早めることが報告されています。
寝たきりの状態でいると、腰周りの筋肉が硬くなり、血行も悪くなりやすくなります。ただし、腰をひねるストレッチをしたり、強く揉んだりすると炎症が悪化して回復が遅れることがあるため避けましょう。
24〜48時間以内に正しいアイシングを行う
腰に激痛が起きた直後は、腰の内部で炎症が起きている状態です。筋肉や靭帯が傷ついている状態であるため、速やかにアイシングをすることが推奨されます。アイシングには、炎症を鎮めて腫れを抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。正しいアイシングの手順は、以下のとおりです。
- 氷嚢(ひょうのう)や保冷剤などをタオルで包む
- 痛みが強い場所に15~20分間当てる
- 氷を直接皮膚に当てないように注意する
- 皮膚の感覚がなくなってきたら、アイシングを中断する
- 皮膚の感覚が戻ってきたら、アイシングを再開する
痛みが強い時期の入浴は、シャワーで軽く済ませる程度にしましょう。長風呂や熱いお湯は体を温めすぎてしまうため、炎症が落ち着くまでは控えるのが賢明です。
市販の鎮痛薬を使う
安静にしたり冷やしたりしても痛みが我慢できない場合は、市販の鎮痛薬を使うことで痛みを和らげられることがあります。市販薬の鎮痛薬には以下の種類があり、ご自身の状況に合わせて選ぶことが大切です。
| 種類 | 主な成分 | 特徴 | 注意点 |
| 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | ・ロキソプロフェン ・イブプロフェン |
炎症を抑える作用と痛みを鎮める効果 | 食後に服用 |
| アセトアミノフェン製剤 | アセトアミノフェン | 痛みを鎮める効果 | NSAIDsが体質的に合わない人や胃が弱い人に推奨 |
市販薬を使用する際は、説明書に記載された用法・用量を守りましょう。持病がある人や他の薬を服用中の人、妊娠中の人は購入前に薬剤師に相談してください。
腰の激痛で早急に受診すべき症状
腰の激痛で早急に受診すべき症状について、以下の内容を解説します。
- 救急車を呼ぶべき危険な症状
- しびれ・麻痺・排尿トラブルがある場合
- 骨粗鬆症と診断されている場合
- 整形外科と救急外来の使い分け
救急車を呼ぶべき危険な症状
腰の痛みだけでなく、以下の症状が同時に現れた場合は、すぐに救急外来を受診しましょう。
- 胸や背中、お腹にも痛みが広がる
- 安静にしていても痛みが全く変わらない
- 冷や汗が出る
- 意識がもうろうとする
- 悪寒がする
- 過去にがんの治療を受けたことがある
命に関わる可能性があるため、判断に迷ったときは我慢せず医療機関に相談してください。
しびれ・麻痺・排尿トラブルがある場合
腰の痛みに加えて、足の感覚や動きに異常が出ている場合は注意が必要です。背骨の中を通る神経が、強く圧迫されている可能性があります。排尿や排便のトラブルも、神経の圧迫が進行しているサインです。治療が遅れると、足の麻痺や排尿障害が後遺症として残ってしまう危険性があります。
症状が出たら、手術が必要になる可能性もあるため、すぐに医療機関を受診してください。
骨粗鬆症と診断されている場合
高齢の人や骨粗鬆症と診断されている人は気づかないうちに圧迫骨折を起こしている可能性があります。以下の症状がある人は、圧迫骨折の疑いがあります。
- くしゃみやベッドでの寝返りで激痛が走る
- 立ち上がったり歩いたりすると痛みが強いが、横になると痛みが和らぐ
- 背中が丸くなった
- 身長が縮んだ
圧迫骨折は、年齢のせいと自己判断されやすく、気づかないまま放置されやすいです。骨が十分に治らない状態が続くと、痛みが長引くだけでなく背骨の変形が進んで日常生活に支障をきたす可能性があります。
整形外科と救急外来の使い分け
症状に応じて、適切に受診先を選ぶ必要があります。整形外科と救急外来の使い分けは、以下のとおりです。
| 受診先 | こんなときに選びましょう |
| 救急車・救急外来 | ・胸やお腹にも激痛がある場合 ・高い熱がある場合 ・足が全く動かない場合 ・尿や便が漏れる場合 |
| 整形外科 | ・痛みが腰や足にしびれや力の入りにくさを伴う場合 ・動くことはできるが、痛みが強い場合 ・圧迫骨折が疑われる場合 |
腰や足の痛み・しびれが主な症状であれば、骨や神経の専門家である整形外科の受診が推奨されます。我慢できないほどの激痛がある場合は、救急外来を受診してください。判断に迷う場合は、救急相談センター(#7119)に電話して、専門家の指示を仰ぐことも大切です。
腰痛が長引く背景には、整形外科での精密検査や専門的な判断が必要な原因が隠れていることもあります。以下の記事では、腰痛が治らないときに考えられる原因や、受診の目安について詳しく解説しています。
>>腰痛が治らないのは何が原因?長引く痛みの対処法を解説
腰痛の治療
腰痛の治療について、以下の内容を解説します。
- 薬物療法・ブロック注射・リハビリテーションの役割
- 手術が必要となるケース
- 急性腰痛が改善するまでの目安期間
薬物療法・ブロック注射・リハビリテーションの役割
腰痛の保存療法には、薬物療法やブロック注射、リハビリテーションがあります。薬物療法は腰痛の保存療法として、最初に対応する療法です。炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。
薬物療法で抑えきれない痛みに対しては、ブロック注射が検討されます。痛みの原因に直接、薬を注射するため、痛みをすばやく和らげる効果が期待できます。ブロック注射で痛みを抑えることで、体の機能を回復させ、腰痛を繰り返さない体を作るリハビリテーションに進むことができます。
手術が必要となるケース
保存療法では改善が見込めず、神経に深刻なダメージが及ぶ危険性がある場合は、手術を検討する可能性があります。以下の症状がある場合は、手術を検討する可能性があります。
- 足に力が入らない
- お尻や足の感覚が鈍くなる
- 意思と関係なく、尿や便が漏れる
- 尿が出にくい
- 便意を感じにくい
- 保存療法を数か月続けても激しい痛みが改善しない
症状が出た場合は背骨の神経が強く押しつぶされている可能性があります。神経が圧迫された状態が長く続くと、足の麻痺や排尿の障害が後遺症として残りやすくなるため、手術を検討することがあります。
急性腰痛が改善するまでの目安期間
急性腰痛が改善するまでの目安の流れは、以下のとおりです。
- 発症〜3日:痛みが強い時期は安静にする
- 3日〜2週間:激しい痛みは和らぎ、少しずつ動ける
- 2週間〜6週間以降:再発を防ぐためのストレッチや軽い運動ができる
急性腰痛の痛みは、発症〜6週間で改善することが報告されています。6週間以上経過しても痛みが軽くならない場合や足のしびれが悪化するような場合は、ぎっくり腰以外の病気の可能性があります。自己判断で様子を見続けず、整形外科を受診してください。
腰痛の経過や症状によっては、治療方法や受診のタイミングが異なります。以下の記事では、腰痛の種類ごとの治療法や、医療機関を受診すべき目安について詳しく解説しています。
>>腰痛の治療法とは?症状の種類や原因、受診の目安を解説
初期対応後のセルフケア
初期対応後のセルフケアについて、以下の内容を解説します。
- 痛みが落ち着いてから始めるストレッチ
- コルセットの正しい使い方
- 腰に負担をかけない生活動作
痛みが落ち着いてから始めるストレッチ
激しい痛みが和らいできたら、硬くなった筋肉をほぐしましょう。無理のない範囲でストレッチをすると、血行が良くなり回復を助けることが期待されます。ストレッチ中に足にしびれが出たり、痛みが強くなったりした場合は、すぐに中止しましょう。腰痛改善を目的としたストレッチの一つに膝抱えストレッチがあります。手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、両方の膝を軽く立てる
- 片方の膝を両手でゆっくりと胸に引き寄せる
- お尻から腰の筋肉を伸ばしながら、20秒ほど姿勢を保つ
- ゆっくりと元に戻し、反対側の足も同じように行う
理学療法士と相談しながら、ご自身の状態に合った運動を見つけることが大切です。症状が出たら、自己判断で無理をせず、専門家のアドバイスを受けましょう。
コルセットの正しい使い方
コルセットは腰の動きを制限し、一時的に痛みを和らげるのに役立つ道具です。頼りすぎると、ご自身の体を支える筋肉が弱りやすくなります。コルセットを使用するときは、痛みが強い時期や腰に負担がかかる作業のみに使用することを心がけましょう。痛みが和らいできたら、少しずつ外す時間を増やしていきます。
最終的にはコルセットがなくても、ご自身の筋肉で体をしっかり支えられる状態を目指しましょう。
腰に負担をかけない生活動作
腰痛の再発を防ぐには、腰に負担をかけないことが大切です。腰に負担をかける場面と推奨される行動は、以下のとおりです。
- 物を拾うとき:股関節と膝を曲げ、腰を落としてから物を拾う
- 座るとき:椅子には深く腰かけ、背もたれに背中を預ける
- くしゃみをするとき:壁や机に手をついて衝撃を逃がす
運動不足や体重の増加、喫煙も腰痛の原因です。腰に負担をかけないように正しい日常動作を心がけましょう。
腰痛が強いときや、動作によって痛みが増す場合は、無理に動かさず適切な対処が必要です。以下の記事では、腰痛で起き上がれないときの対処法や、早めに受診すべき危険な症状について詳しく解説しています。
>>腰痛で起き上がれないときの対処法|原因と応急処置、受診すべき危険な症状を解説
まとめ
突然の激痛に襲われた際は、慌てずに楽な姿勢で安静にし、患部を冷やす応急処置を試みてください。足のしびれや麻痺、排尿の異常の症状が出た場合は、単なる腰痛ではなく、別の重い病気が隠れている可能性があります。
命に関わる病気である可能性もあるため、整形外科や救急外来を受診することが、大切です。腰の痛みが続くと不安に感じることもありますが、多くの腰痛は適切な治療で改善が期待できます。自己判断で我慢せず、早めに専門家に相談しましょう。
当院は、脊椎センター・人工関節センターの2つを軸にしたクリニックです。突然の腰の激痛や動けないほどの痛み、しびれを伴う症状などでお困りの方に対し、専門医が丁寧に相談に応じます。JR姫路駅からは無料送迎バスを利用できますので、お気軽にご来院ください。
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参考文献
- Kristin Thuve Dahm, Kjetil G Brurberg, Gro Jamtvedt, Kåre Birger Hagen. Advice to rest in bed versus advice to stay active for acute low-back pain and sciatica. Cochrane Database Syst Rev, 2010, 2010, 6, p.CD007612
- Luciola da C Menezes Costa, Christopher G Maher, Mark J Hancock, James H McAuley, Robert D Herbert, Leonardo O P Costa. The prognosis of acute and persistent low-back pain: a meta-analysis. CMAJ, 2012, 184, 11, p.E613-E624

