コラム

発熱と腰の痛みが同時に起こる原因は?考えられる病気のサインと対処法

急な高熱とともに、腰にズキズキとした痛みが走ることはありませんか?発熱と腰痛の組み合わせは、体が発しているSOSサインの可能性があります。腎盂腎炎や急性膵炎、骨の感染症など、放置すると重症化する恐れのある病気が隠れている場合があります。

「じっとしていても痛い」などの症状は、単なる筋肉痛とは異なり、緊急性の高いケースがあるため注意が必要です。この記事では、発熱と腰痛から考えられる病気のサインと、受診すべき判断基準を解説します。ご自身の体を守るため、痛みの本当の原因を確認しましょう。

当院では、腰痛をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴: 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野:脊椎・脊髄外科

資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

発熱と腰痛が同時に起こる際にまず疑うべき病気

発熱と腰痛が同時に起こる場合は、以下の原因が考えられます。

  • 内臓の病気(腎盂腎炎・膵炎など)
  • 脊椎・骨の感染症(化膿性脊椎炎・椎間板炎)
  • 全身症状(インフルエンザ・風邪など)

内臓の病気(腎盂腎炎・膵炎など)

腰の痛みで注意が必要なのは「腎盂腎炎(じんうじんえん)」と「急性膵炎(すいえん)」です。腎盂腎炎は腎臓に細菌が入り込み、炎症を起こす病気です。特に女性は男性に比べて尿道が短いため、細菌が侵入しやすいなどの特徴があります。以下の症状が出現する場合は、注意が必要です。

  • 38℃以上の高熱が出て、寒気や震えを伴う
  • 左右どちらかの腰や背中が痛む
  • 排尿に関する異常がある(トイレが近い、排尿時の痛み、尿の濁り、血尿)

急性膵炎は、食べ物の消化を助ける膵臓という臓器に、急に強い炎症が起こりますアルコールの飲みすぎや、胆石が主な原因として知られています。急性膵炎の症状は以下のとおりです。

  • みぞおちから背中、腰にかけて激しい痛みが広がる
  • 体を丸めると痛みが和らぐことがある
  • 強い吐き気や嘔吐、食欲不振を伴う

急性膵炎は急速に悪化し、命に関わる可能性のある重篤な病気です。日常生活に支障をきたすほど痛みが強い場合は、早急に医療機関を受診してください。

脊椎・骨の感染症(化膿性脊椎炎・椎間板炎)

細菌が血液の流れに乗って、背骨や椎間板に入り込み炎症を起こすことで腰痛の原因になることがあります。背骨や椎間板に炎症が起こると「どの姿勢でも楽にならず安静にしていても強く痛む」という特徴があります。糖尿病などの持病がある方や、体の抵抗力が落ちている方は注意が必要です。

骨の感染症と一般的なぎっくり腰の違いを以下の表にまとめています。

骨の感染症(化膿性脊椎炎など) 一般的なぎっくり腰
痛みの特徴 ・安静にしていても激しく痛む
・寝返りさえ打てないほど痛い
・楽な姿勢が見つからない
・動くと痛む
・横になるなど楽な姿勢がある
・安静にすると痛みは和らぐ
発熱 38℃以上の高熱を伴うことが多い 基本的に熱は出ない
その他 悪寒や体のだるさを伴うことがある 腰以外の症状はほとんどない

「安静にしていても痛みが引かない」「高熱が続いている」などの場合は、骨の感染症が疑われます。整形外科を受診し、脊椎を専門とする医師の診察を受けましょう。

全身症状(インフルエンザ・風邪など)

発熱と腰痛の組み合わせで考えられる原因の一つに、インフルエンザや風邪などのウイルス感染症があります。ウイルスが体内に侵入すると、ウイルスと戦うために「サイトカイン」という物質が体内で作られます。サイトカインは、筋肉や関節に痛みを引き起こす作用もあるため、全身が痛くなる場合が多いです。

他にも腰痛が出る原因として「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」の可能性もあります。初期に体の片側の腰や背中にピリピリ、チクチクとした神経の痛みが現れます。初期は発疹が出ていないため気づきにくいですが、数日後に赤い発疹や水ぶくれが現れるのが特徴です。

いつもと違う腰の痛みを感じたら、皮膚の状態も注意深く観察してください。

腰痛の原因は感染症だけでなく、慢性的な疾患や体の使い方が関係している場合もあります。以下の記事では「腰痛が治らない」と感じるときに考えられる原因や、受診の目安について詳しく解説しています。
>>
腰痛が治らないのは何が原因?長引く痛みの対処法を解説

【受診の目安】夜間・休日でも病院へ行くべきサイン

夜間・休日でも病院へ行くべき目安について、以下の3つを解説します。

  • すぐに受診を検討すべき症状
  • 子ども・高齢者・妊婦が特に注意が必要な理由
  • ただの腰痛ではない「危険な随伴症状」

すぐに受診を検討すべき症状

熱が出ていても「様子を見よう」と思われる方も多いですが、早急に受診すべき症状が隠れている場合もあります。医療機関の受診を考えるべき症状は、以下のとおりです。

症状 考えられる病気・状態 説明
38℃以上の高熱が2日以上続く ウイルス感染、細菌感染 一時的に下がっても再度上がるなら注意が必要
じっとしていても、どんな姿勢でも痛い 化膿性脊椎炎 感染による重い疾患の可能性
排尿時の異常(痛み・頻尿・血尿など) 腎盂腎炎 腎臓の炎症の可能性
吐き気・食欲不振・みぞおちの痛み 急性膵炎などの内臓疾患 消化器系の病気の可能性

子ども・高齢者・妊婦が特に注意が必要な理由

子どもは体に占める水分の割合が大人より多く、体の機能も未熟なため、脱水状態に陥ってしまうことが多いです。子どもに以下の症状が見られた場合は、早めに小児科を受診する必要があります。

  • ぐったりしていて元気がない、遊ぼうとしない
  • 顔色が悪く、唇がカサカサに乾いている
  • おしっこの回数や量がいつもより少ない

高齢者や糖尿病などの持病がある方は、体の抵抗力が低下し、細菌などへの感染が重症化しやすく、症状が急に悪化することがあります。一方で、強い炎症があっても典型的な高熱や激しい痛みが現れにくい場合もあります。

妊娠中は、おなかの赤ちゃんへの影響を考えて、使えるお薬が限られます。熱や痛みがあるからといって、自己判断で市販の薬を飲むことは避けてください。腎盂腎炎は妊娠中に起こりやすい病気の一つです。腰の痛みや発熱、排尿時の違和感などがあれば、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。

ただの腰痛ではない「危険な随伴症状」

発熱を伴う腰痛は、単なる筋肉の痛みではなく、体の深刻な異変を知らせる「レッドフラッグ(危険信号)」の可能性があります。足などの麻痺の症状がある場合は、神経が強く圧迫されていたり、脊髄付近で炎症が起きていたりする場合があり注意が必要です。

「尿が出にくい」「便が出た感覚がない」などは、馬尾神経障害の可能性があります。夜も眠れないほどの激痛は、通常の腰痛ではあまりみられず注意が必要な症状です。命に関わる疾患を見逃さないよう、医療機関の受診をおすすめします。

正しい医療機関の選び方

腰痛の場合の正しい医療機関の選び方について、以下の内容を解説します。

  • 整形外科・内科・泌尿器科を見分けるポイント
  • 医療機関で行われる主な検査内容
  • 市販薬や整体、マッサージが「逆効果」になるケース

整形外科・内科・泌尿器科を見分けるポイント

症状の内容によって、受診すべき診療科は異なります。症状ごとにおすすめの診療科をまとめました。

おすすめの診療科 症状 考えられる病気
泌尿器科・内科 ・トイレが近い、排尿時に痛い
・尿が濁る、血が混じる
・片方の腰を叩くと響くように痛い
腎盂腎炎、尿路結石、膀胱炎
整形外科 ・体を動かさなくてもズキズキ痛む
・寝返りさえ打てないほど痛い
・手足にしびれや力の入りにくさがある
化膿性脊椎炎、椎間板炎
内科 ・咳、のどの痛み、鼻水が出る
・腰だけでなく全身の筋肉や関節が痛い
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症
内科・消化器内科 ・みぞおちやお腹が激しく痛む
・強い吐き気や嘔吐がある
急性膵炎、胆のう炎
内科・総合診療科 どこに行けばよいか、全くわからない 全身の状態を診察し、必要なら専門の科を紹介

「じっとしていても痛い」「寝返りも打てない」などの場合は、背骨の感染症が疑われます。整形外科の中でも脊椎(背骨)を専門とする医師の領域です。判断に迷う場合は、近くの内科で相談し、全身の状態を診察してもらいましょう。

医療機関で行われる主な検査内容

症状や原因を特定するために、医療機関ではいくつかの検査が行われます。医療機関で行われる検査は以下のとおりです。

  • 問診・診察:腰や背中を軽く叩いて腎臓に炎症がないかを確認することもある
  • 尿検査:尿に細菌や血液が混じっていないかを調べる
  • 血液検査:CRPや白血球の数から炎症の程度や感染の有無を判断する
  • 画像検査(レントゲン・CT・MRI):骨のズレや骨折の有無など、骨の状態を詳しく見る

検査を通して、腰痛の原因が筋肉・骨の問題なのか、内臓の病気によるものなのかを判断します。

市販薬や整体、マッサージが「逆効果」になるケース

自己判断で市販薬を使ったり、マッサージを受けたりすることが、逆効果な場合があります。38℃以上の高熱が2日以上続いたり、症状が日を追うごとにひどくなったりする場合は、市販薬で様子を見ずに医療機関を受診してください

熱があるときにマッサージや整体を受けるのは危険な場合があるため注意が必要です。痛みの原因が、化膿性脊椎炎など背骨の感染の場合、マッサージの刺激により、炎症を悪化させることがあります。体中で炎症を悪化させる物質(炎症性サイトカイン)が増え、症状を悪化させる可能性もあります。

熱がある、ズキズキと痛みが強くなる、排尿の異常や吐き気などの症状がある場合はマッサージや整体は逆効果な場合があります。原因がはっきりしない場合は、ご自身で判断せず、専門の医師の診察を受けましょう。

腰痛の原因や状態によっては、適切な治療法を選ばないことで回復が遅れたり、症状が悪化したりすることがあります。以下の記事では、腰痛の種類ごとの治療法や、医療機関を受診すべきタイミングについて詳しく解説しています。
>>腰痛の治療法とは?症状の種類や原因、受診の目安を解説

診断後の治療

熱や腰の痛みの原因が判明した後の治療について、以下の内容を解説します。

  • 原因別に行われる治療法
  • 治療期間の目安
  • 再発を防ぐためのリハビリ

原因別に行われる治療法

原因となる病気によって、治療法は大きく異なります。病気別の治療法は、以下のとおりです。

  • 腎盂腎炎:抗菌薬を飲み薬または点滴で治療する
  • 化膿性脊椎炎:入院して、長期間抗菌薬の点滴を続ける
  • 急性膵炎:口から食べたり飲んだりするのをやめて、点滴で水分や栄養を補給する
  • インフルエンザなど:ウイルスが増えるのを抑える抗ウイルス薬を内服す
  • 腎結石・尿路結石:小さな石は、水分を摂取し尿と一緒に体の外へ出し、大きな石は、体の外から衝撃を当てたり内視鏡を使ったりして取り除く
  • 帯状疱疹:ウイルスの活動を抑える抗ウイルス薬を、なるべく早く飲み始める

治療期間の目安

治療期間は、病気の種類や年齢、体力などによって、一人ひとり異なります。以下に、病気別の治療期間を示します。

  • 腎盂腎炎:症状が軽ければ、1〜2週間ほど抗菌薬を飲むことで良くなる場合が多い
  • 化膿性脊椎炎:背骨の深い部分の感染のため、何週間も抗菌薬の点滴を行い、その後も飲み薬を続けるため、治療は数か月単位に及ぶこともある
  • 急性膵炎:軽症であれば1週間ほどの入院で回復することが多いが、重症化すると治療期間が数週間〜数か月に及ぶこともある
  • インフルエンザなど:発症してから1週間ほどで、回復へ向かう場合が多い

再発を防ぐためのリハビリ

つらい症状が改善した後、再発を防ぐために日常生活でできるリハビリがあります。ウォーキングやストレッチなどの適度な運動は、血行を促進し、筋肉のこわばりを防ぐことにつながります。バランスの良い食事を心がけることも大切です。さまざまな栄養素を十分に摂ることで、体の免疫力が高まります。

椅子に座るときや立っているときに背筋を伸ばすだけでも、背骨や腰にかかる負担を大きく減らすことにつながります。十分な休息を取ったり、ストレスをためたりしないことも重要です。疲れやストレスは免疫力の低下につながるため、夜はぐっすり眠り、リラックスできる時間を意識的に取りましょう

最近の研究では、椎間板にかかる「酸化ストレス」を抑えることが、椎間板の老化を遅らせるのに役立つ可能性がわかってきました。日々の運動は、椎間板に栄養を届ける大切な役割も担っており、日常生活での体の動きも重要とされています。

腰痛が強いときや、起き上がるのがつらい状態では、無理な運動や自己流のリハビリが症状を悪化させることもあります。以下の記事では、腰痛で起き上がれないときの具体的な対処法や、注意すべき危険な症状について詳しく解説しています。
>>腰痛で起き上がれないときの対処法|原因と応急処置、受診すべき危険な症状を解説

まとめ

軽く考えがちな腰痛や発熱などには、腎盂腎炎や化膿性脊椎炎など、見過ごすと重症化する恐れのある病気が隠れている可能性があります。「安静にしていても激しく痛む」「38℃以上の高熱が続く」「排尿時に異常がある」などの症状は、体が発するSOSサインです。

自己判断で様子を見たり、発熱時にマッサージを受けたりすることは避けてください。少しでも症状で気になる点があれば、専門の医療機関を受診しましょう。早めに正しい診断を受けることが、体を守るための大切な一歩です。

当院は、脊椎センター・人工関節センターの2つを軸にしたクリニックです。発熱を伴う腰の痛みなど、原因の見極めが重要な症状について、専門医が丁寧に相談に応じます。JR姫路駅からは無料送迎バスを利用できますので、お気軽にご来院ください。
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参考文献

Wang Y, Cheng H, Wang T, Zhang K, Zhang Y, Kang X. Oxidative stress in intervertebral disc degeneration: Molecular mechanisms, pathogenesis and treatment. Cell Proliferation, 2023, 56, 9, p.e13448