腰痛が治らないのは何が原因?長引く痛みの対処法を解説
腰痛が長引くことに不安を感じていませんか?研究によると、腰痛の85%は原因の特定できない「非特異的腰痛(ひとくいてきようつう)」に分類されると言われています。腰痛の原因は1つだけではありません。骨や筋肉の問題、生活習慣など複合的な要因が関与している場合があります。
厚生労働省の報告では、男女とも自覚症状として腰痛が多く、高齢になるほど腰痛の有訴率が高くなる傾向です。本記事では、症状の危険なサインや腰痛の原因、対処法について解説します。ご自身に合った対処法を見つけ、改善していきましょう。
当院では、腰痛をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
>>診察のご案内について
記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
治らない腰痛の原因
治らない腰痛の原因について、以下の4つを解説します。
- 痛みの種類でわかる危険なサイン
- 年代・性別によって異なる代表的な疾患(ヘルニア・狭窄症など)
- 「レントゲンで異常なし」と言われても痛む理由
- ストレスや心理的要因が関係する腰痛
痛みの種類でわかる危険なサイン
腰痛は、放っておくと危険な病気が隠れている可能性があります。以下の症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。
- 安静時の痛み:安静時も痛みが治まらず、夜中に強くなる
- 足のしびれや麻痺:足に力が入らない、感覚が鈍いなどの症状を伴う
- 排尿・排便の異常:尿が出にくい、または自分の意思とは関係なく漏れる
- 原因不明の体調不良:腰痛に加え、発熱や体重が減る
- 急な発症:転倒後より急に痛みがある
- がんの治療歴:過去にがんと診断されたことがある
- 手術後の痛み:腰の手術後に痛みが続く
腰痛ではなく、神経が圧迫される病気(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症)や背骨の骨折、細菌感染、内臓の病気の可能性があります。手術後に痛みが続く場合は、神経の働きを調整する専門的な治療が検討されることもあります。
年代・性別によって異なる代表的な疾患(ヘルニア・狭窄症など)
腰痛が起こる原因は年齢や性別によって異なり、主な原因の例は以下の表のとおりです。
| 年代 | 主な原因の例 |
| 10〜20代 | ・スポーツによる疲労骨折(腰椎分離症) ・長時間同一姿勢での勉強やスマホ操作 ・若年性の椎間板ヘルニア |
| 30〜50代 | ・デスクワークなどによる慢性的な筋肉の疲れ ・加齢による椎間板の衰え ・運動不足による筋力低下や体重増加 |
| 60代以降 | ・骨粗鬆症による圧迫骨折 ・長年の負担による背骨の変形(変形性腰椎症) ・神経の通り道が狭くなる脊柱管狭窄症 |
腰痛の原因は日常生活や仕事による影響、加齢による組織の変化が関与しています。女性特有の腰痛は、以下も関係します。
- 妊娠・出産期:お腹が大きくなることで骨盤周囲の靭帯の安定性が低下し、腰が反りやすくなる
- 月経(生理)前後:骨盤内の血行が悪くなり、ホルモンの影響を受ける
- 婦人科系の病気:子宮や卵巣の病気が腰痛症状で現れる
ご自身の年代や性別に特有の原因を知ることが、適切な対処法を見つけるために大切です。
「レントゲンで異常なし」と言われても痛む理由
画像検査ではわかりにくい痛みの原因に、以下の3つがあります。
- 筋肉や筋膜の問題:筋肉の緊張や筋膜が硬くなることで起こる痛み
- 関節の動きの悪さ:背骨の関節(椎間関節)の動きが鈍くなることで生じる痛み
- 神経の過敏状態:痛みが長引くことで脳や神経が痛みを記憶し、わずかな刺激にも過敏に反応する痛み
画像に写らない炎症が痛みを引き起こしていることもあります。レントゲンやMRIは、骨の形や神経の圧迫など形の異常を見つけるのが得意です。「レントゲンで異常なし」と言われても、骨以外の筋肉や神経など、広い視点で原因を探ることが大切です。
ストレスや心理的要因が関係する腰痛
痛みと心理状態は相互に影響し合うことが知られています。強いストレスや不安、気分の落ち込みなどが続くと、痛みを悪化させたり長引かせたりする可能性があります。関係しているのは、自律神経の乱れと脳の機能変化の仕組みです。
ストレスは自律神経のバランスを崩し、全身の筋肉を緊張させます。腰回りの筋肉が硬くなると血行が悪くなり、痛みを感じる物質がたまりやすくなるのです。慢性的なストレスになると、痛みを抑える脳の機能を弱めてしまい、痛みを感じやすい脳の状態に変えてしまう場合があります。
腰痛と同時に気分の落ち込みや不眠、何事にも興味が持てないなどの状態が続く場合、心理的要因である可能性があります。
腰痛が長引く背景には、体の構造的な問題だけでなく、生活習慣や心理的要因が複雑に関係している場合があります。以下の記事では、朝に腰痛が起こるケースを例に、考えられる原因や治療の考え方について詳しく解説しています。
>>朝起きると腰が痛いのは病気のサイン?考えられる原因と治療法を解説
長引く腰痛への対処法
ご自身でできるセルフケアから専門的な治療まで、対処法は以下のとおりです。
- 温める・冷やすの正しい判断基準
- 症状を悪化させない姿勢やストレッチ方法
- 治療の選択(薬物療法・ブロック注射・手術)
温める・冷やすの正しい判断基準
急性期の痛みには「冷却療法」、慢性的な痛みには「温熱療法」と覚えておきましょう。目的と方法は、以下の表のとおりです。
| 冷却療法 | 温熱療法 | |
| 場面 | ・急に強く痛くなったとき ・脈を打つように痛いとき ・痛みのある部位に熱感や腫れがあるとき |
・慢性的に続く鈍い痛み ・起床時など筋肉が緊張しているとき |
| 目的 | 血管を収縮させることで炎症を抑え、痛みを鎮める | 血管を拡張させることで血行を改善し、筋肉の緊張をほぐす |
| 方法 | ・氷のうや保冷剤などをタオルに包む ・1回15〜20分を目安に痛みのある部位に当てる |
・蒸しタオルや使い捨てカイロを当てる ・38〜40℃のぬるめのお湯で入浴する |
| 注意点 | ・長時間冷やしすぎると血行不良の原因となる ・循環障害や知覚障害がある場合は注意する |
・炎症時に温めると痛みが悪化する ・感染症や悪性腫瘍が疑われる場合は注意する |
判断に迷う場合や自己判断で症状が悪化した場合は、医療機関を受診しましょう。
症状を悪化させない姿勢やストレッチ方法
長引く腰痛の改善には、日々の生活習慣の見直しが大切です。腰に負担をかけない姿勢のポイントは、以下の3つです。
- 座るとき:背もたれを使いながら椅子に深く腰掛け、足裏全体が床につくよう椅子の高さを調整する
- 立つとき:猫背や反り腰にならないよう、お腹に軽く力を入れ、頭頂部が糸で吊られているイメージで立つ
- 寝るとき:仰向けの場合は膝の下に、横向きの場合は両膝の間にクッションや枕を挟むと腰の緊張が和らぐ
痛みが強くないときは簡単なストレッチを取り入れましょう。筋肉の緊張をほぐし、血行を改善することで痛みの緩和が期待できます。自宅でできる腰のストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、両膝をゆっくりと両手で抱える
- 息を吐きながら、両膝を胸に引き寄せる
- 腰周りの筋肉が心地よく伸びるのを感じながら20秒ほど保つ
大切なのは、ご自身の体調に合わせ無理のない範囲で毎日続けることです。
治療の選択(薬物療法・ブロック注射・手術)
セルフケアだけでは改善が難しい場合や痛みが日常生活の妨げになっている場合は、整形外科での専門的な治療が必要です。
薬物療法は痛みの軽減を図り、リハビリやセルフケアを継続しやすい状態を目指します。主に、痛みや炎症を抑えることを目的とした飲み薬(消炎鎮痛薬)や貼り薬(湿布)です。筋肉の緊張緩和を目的とした薬(筋弛緩薬)も処方されることがあります。
ブロック注射は、痛みの原因となる神経の近くに局所麻酔薬などを注射する治療法です。神経の興奮を鎮めることで痛みの緩和を図る治療で、ステロイドが一般的です。手術療法は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因で、足の麻痺が進行する場合や保存療法で改善が見られない場合に検討します。
腰痛の治療法は、原因や症状の程度によって選択肢が大きく異なります。以下の記事では、腰痛の種類ごとの代表的な治療法や、医療機関を受診する目安について詳しく解説しています。
>>腰痛の治療法とは?症状の種類や原因、受診の目安を解説
再発を防ぐための生活習慣
腰痛は、生活習慣で再発しやすいことが特徴です。再発を防ぐための生活習慣について、以下の3つを解説します。
- 腰に負担をかけるNG習慣チェックリスト
- 認知行動療法を含めたセルフケア
- 「腰を守る筋肉」を鍛えるリハビリのコツ
腰に負担をかけるNG習慣チェックリスト
腰に負担をかけるNG習慣について、以下のチェックリストで確認してみましょう。
- 椅子に座るとき、浅く腰掛けて背中を丸めてしまう
- 床に座るとき、横座りやあぐらをかくことが多い
- 立っているとき、無意識に片方の足に重心をかけている
- スマートフォンを見るとき、長時間うつむいた姿勢になる
- 床の物を拾うとき、膝を曲げずに腰からかがむ
- 重い荷物を持つとき、腕の力だけで持ち上げる
チェックに当てはまる方は、腰に負担がかかりやすい状態です。椎間板に偏った圧力がかかり、腰周りの筋肉を緊張させる原因となります。デスクワークなどで長時間にわたり同じ姿勢が続く場合は注意が必要です。30分〜1時間に一度は立ち上がり、軽く体を動かすことで筋肉の緊張が和らぎ、血行が改善されます。
認知行動療法を含めたセルフケア
「認知行動療法」は痛みに対する考え方のクセに気づき、行動を少しずつ変えていくことで痛みの感じ方を和らげる方法です。セルフケアには、以下の方法があります。
- 記録する:痛みの変化を客観的に捉えることで過度な不安を和らげる
- リラックスする:心の緊張がほぐれ、筋肉も自然とリラックスする
- できたことに目を向ける:小さな成功体験を重ね、自信を取り戻すきっかけをつくる
- 小さな目標を立てる:クリアしていく喜びが前向きな気持ちを育てる
ストレスや不安も腰痛の原因の一つです。長引く腰痛は、体だけでなく心にも影響を与え、痛みに対する不安や恐怖は心のストレスになります。一人で抱え込まず、専門家や信頼できる人に相談することも、心と体を守るための大切なセルフケアです。
「腰を守る筋肉」を鍛えるリハビリのコツ
腰痛の再発予防には、運動によって体幹を鍛えることが大切です。運動やリハビリを楽しく続けるコツは、以下3つのとおりです。
- 専門家と計画を立てる:医師や理学療法士に相談し、運動の種類や強度、頻度を決め、専門的な視点からの助言を受ける
- ハードルを低く設定する:日常生活に組み込める「ながら運動」を始め、簡単なことを長続きさせる
- 長期的な視点を持つ:焦らず長期目線で取り組み、続けられた自分を褒め、意欲の維持につなげる
ご自身に合った運動を無理なく続けましょう。痛みを我慢して行うのではなく、心地よいと感じる範囲で行います。
運動やリハビリの最中に急な痛みが出て、起き上がれないほどつらくなる場合もあります。以下の記事では、腰痛で起き上がれないときの原因や応急処置の方法、早めに受診すべき危険な症状について詳しく解説しています。
>>腰痛で起き上がれないときの対処法|原因と応急処置、受診すべき危険な症状を解説
まとめ
腰痛の原因は、骨や筋肉だけでなく、生活習慣やストレスなどさまざまです。放っておくと危険な病気が隠れている可能性もあります。心理的要因も含め、広い視点で原因を特定することが大切です。
自宅でできるセルフケアや症状を悪化させないストレッチなどは、日々の生活習慣の見直しが必要となります。改善が見られない場合は、薬物療法やブロック注射、手術などの選択肢もあります。自己判断のみで対処すると症状を悪化させる可能性があるため、強い痛みがある場合は医療機関を受診しましょう。
当院は、腰痛の専門医がいるクリニックです。一人ひとりの症状に合わせ、丁寧に相談に応じます。JR姫路駅からは無料送迎バスを利用できますので、お気軽にご来院ください。
>>診察のご案内
参考文献
- Refshauge KM, Maher CG. Low back pain investigations and prognosis: a review. Br J Sports Med, 2006, 40, 6, p.494-498
- 厚生労働省:国民生活基礎調査の概況(令和4年)

