圧迫骨折の治療方法とは?保存療法から手術まで段階別の対処法を解説
急な背中や腰の痛みを「ただの腰痛だろう」と軽く考えていませんか。その痛みは、圧迫骨折のサインの可能性もあります。圧迫骨折は、その後の経過や再発に注意が必要な病気です。海外の研究では、治療を受けた方の約18%が2年以内に再び骨折するというデータもあります。
再発を防ぐためには、治療の段階に応じた適切な知識が重要です。この記事では、診断から保存療法・手術、再発予防のための具体的な対策までをご紹介します。治療に関する情報を提供し、不安軽減をサポートします。
当院では、圧迫骨折をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
>>診察のご案内について
記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
圧迫骨折の診断
圧迫骨折の診断について、以下の3つを解説します。
- 画像検査(レントゲン・MRI・CT)
- 痛みの程度や骨粗鬆症の評価
- 保存療法か手術療法かを判断するポイント
画像検査(レントゲン・MRI・CT)
圧迫骨折の診断には、骨の状態を詳しく見るための画像検査が欠かせません。画像検査は、骨の状態を詳しく調べるための検査方法です。以下の表のように、目的に応じて適切な検査を選択します。
| 検査の種類 | 主な目的 | この検査でわかること |
| レントゲン | 骨の形状の確認 | ・椎体のつぶれ ・背骨の変形 |
| MRI | ・骨折の時期の判断 ・神経の状態評価 |
・新しい骨折か古い骨折かの区別 ・脊髄や神経への影響 |
| CT | 骨折の詳しい形状の把握 | ・骨の詳細な構造 ・手術計画のための情報収集 |
これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。
以下の記事では、圧迫骨折の原因や症状、治療法を詳しく解説しています。
>>圧迫骨折とは?原因や症状、治療法と放置するリスクを解説
痛みの程度や骨粗鬆症の評価
患者さんが感じている「痛み」の強さや、骨折の根本的な原因である「骨のもろさ(骨粗鬆症)」の評価も行います。痛みの評価では、0(全く痛くない)~10(想像できる最も強い痛み)までの数字を用います。
NRS(Numerical Rating Scale)という痛みの強さを数値で表す評価尺度です。患者さんには「数字で表すと、今の痛みはどれくらいですか?」と質問します。
圧迫骨折は、骨粗鬆症が原因で起こることが多いです。骨粗鬆症は、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる病気です。骨密度測定装置(DEXA法)を使い、骨折しやすい腰や足の付け根の骨密度を測定します。ご自身の骨の状態を正確に知ることが、今後の治療や再発予防において重要な要素の一つとなります。
保存療法か手術療法かを判断するポイント
治療には「保存療法」と「手術療法」があり、すべての検査結果や評価をもとに、患者さん一人ひとりに合った治療法を決定します。当院では保存療法を重視していますが、以下の点を総合的に考慮し、患者さんと十分に話し合いながら判断します。
- 痛みの強さと日常生活への影響
- 骨折の安定性
- 神経症状の有無
- 骨粗鬆症の程度
- 患者さんの全体的な状態と希望
保存療法を続けても痛みが改善せず、日常生活に支障が出ている場合は、手術を検討します。CT検査などで骨の不安定性が強く、さらに背骨が曲がってしまう可能性が高いと判断された場合も、手術が選択肢となります。
治療方針は、年齢や体力などの医学的条件に加え、ご本人の生活に対する希望も踏まえて決定します。
圧迫骨折の治療方法
主な圧迫骨折の治療方法は、以下の3つです。
- 保存療法(安静・コルセット・鎮痛薬)
- リハビリテーションの進め方
- 手術療法(BKP・固定術の適応)
保存療法(安静・コルセット・鎮痛薬)
圧迫骨折の治療の基本は保存療法です。保存療法は、主に以下の3つの方法を組み合わせて行うことが一般的です。
| 治療内容 | 期間 | 目的 | ポイント |
| 安静 | 初期1〜2週間 | 骨折部への負担を減らし、骨の修復を促す | 寝たきりは避け、痛みに応じて足首を動かすなど軽い運動を行う |
| コルセット | 約2〜3か月 | 背骨を固定・保護し、変形を防ぐ | 正しく装着し、医師・理学療法士の指示を守る |
| 鎮痛薬 | 痛みが強い時期 | 痛みと炎症を抑え、日常動作を楽にする | 我慢せず使用し、骨粗鬆症治療も同時に行う |
以上の治療を組み合わせながら、痛みや生活状況に応じて無理のないペースで回復を目指します。
リハビリテーションの進め方
保存療法と並行して行うリハビリテーションは、治療のもう一つの大切な柱です。痛みの状態に合わせて、専門家の指導のもとで段階的に進めていきます。リハビリテーションの主な目的は、以下のとおりです。
- 筋力の維持・向上:長期間の安静による足腰や体幹(体の中心部)の筋力低下を防ぐ
- 体の機能回復:起き上がる・立つ・歩くなどの基本的な動作を安全に行えるようする
- 再骨折の予防:バランス能力を高め、転倒しにくい体作りを目指す
リハビリテーションは、痛みが強い「急性期」と、和らいできた「回復期」で内容が異なります。急性期は、ベッドで寝たまま足首を動かすなど、ごく軽い運動から始めます。回復期に入り医師の許可が出たら、コルセットを着けて起き上がる練習や歩行訓練を少しずつ開始します。
ご自宅でも安全に続けられる運動はたくさんあります。理学療法士と相談しながら、根気強く取り組むことが、回復への着実な一歩となります。
手術療法(BKP・固定術の適応)
多くの場合、圧迫骨折は保存療法で改善に向かいますが、以下のケースでは手術を検討することがあります。
- 保存療法を続けても、日常生活に支障が出るほどのつらい痛みが取れない
- 骨のつぶれ方がひどく、さらに背骨が曲がってしまう可能性が高い
- 骨のかけらが神経を圧迫し、足のしびれや麻痺などが出ている
- 骨がうまくくっつかず、不安定な状態(偽関節)になってしまった
代表的な手術には「椎体形成術(BKP)」と「固定術」があります。
| 手術名 | 手術の概要 | 目的・効果 | 特徴 |
| 椎体形成術(BKP:バルーン椎体形成術) | つぶれた椎体に細い針を刺し、バルーンで空間を作った後、医療用骨セメントを注入して内側から補強する | ・痛みの軽減 ・骨の安定化 |
低侵襲で、近年は生体適合性の向上を目的とした新素材の開発も進んでいる |
| 固定術 | 金属製のスクリューやロッドを用いて背骨を固定する | ・背骨の安定化 ・神経への影響の改善 |
神経症状が強い場合などに選択される |
どの治療方法が適切かは、患者さんの骨の状態や生活のご希望によって大きく異なります。医師と十分に話し合い、納得したうえで治療方法を選択することが大切です。
BKP(バルーン椎体形成術)を受けたあとは、術後の過ごし方にも注意が必要です。以下のページでは、手術後に避けるべき行動や回復を促すポイントについて詳しく解説しています。
>>BKP術後の禁忌はある?やってはいけない行動と回復のポイント
段階別の対処法
圧迫骨折の対処法について、以下3つの段階別に解説します。
- 急性期:痛みが強い時期の過ごし方
- 亜急性期:コルセット生活と動作の工夫
- 回復期:リハビリテーションと日常動作の回復
急性期:痛みが強い時期の過ごし方
骨折した直後の急性期(約1〜2週間)は、痛みが強い時期です。骨折した背骨を「安静」にすることが重要です。骨が回復し始めるための、体に負担の少ない状態を保ちましょう。急性期を乗り切るためのポイントは、以下のとおりです。
- 安静を保つ
- 痛みを上手にコントロールする
- 冷やす・温めるを使い分ける
- ベッドの上で体を動かす
痛みを悪化させる動きは避け、できるだけ体を休めることが大切です。寝たきりが続くと筋力が低下するため、痛みのない範囲で寝返りや足首の運動を行いましょう。痛みは我慢せず、医師から処方された薬を適切に使用することで、心身の負担を軽くできます。
受傷直後(約3日間)は炎症を抑えるために冷やし、その後は温めて血行を促すことで痛みの緩和が期待できます。安静中でも深い呼吸や足首・膝の軽い運動を行うことで、筋力低下や血栓の予防、肺機能の維持につながります。
亜急性期:コルセット生活と動作の工夫
強い痛みのピークが過ぎ、少しずつ動けるようになってくるのが亜急性期です。亜急性期からは、骨がつぶれるのを防ぐために「コルセット」を装着します。コルセットは骨が固まるまでの約2〜3か月間、装着します。コルセット生活の注意点は、以下のとおりです。
| 注意点 | 具体的な工夫 |
| 正しい装着 | ・医師や理学療法士の指導通り、適切な強さで装着 ・緩すぎてもきつすぎても効果が薄れる |
| 皮膚のトラブル予防 | ・コルセットの下には、汗を吸う綿素材の肌着を着る ・毎日、肌に赤みやかぶれがないか確認する |
亜急性期は、無理をせずコルセットを正しく使いながら、背骨に負担をかけない動作を心がけることが、回復を順調に進めるポイントです。
回復期:リハビリテーションと日常動作の回復
回復期では、低下した筋力や体の機能を取り戻し、日常生活に必要な動作を安全に行えるようになることが目標です。痛みが和らぎ、コルセットが外れる時期からは、筋力トレーニングやバランス訓練などのリハビリテーションを開始します。
椅子に座っての足踏みや軽い体幹運動など、無理のない範囲で継続することが大切です。転倒予防のためにバランス感覚を高め、背骨に負担をかけない正しい起き上がり方や歩き方を習得します。正しい体の使い方を身につけることで、再発防止と生活の質の向上が期待できます。
以下の記事では、圧迫骨折後のリハビリ開始時期や注意点について詳しく解説しています。
>>圧迫骨折のリハビリはいつから?痛みが取れない原因とやってはいけない注意点も解説
圧迫骨折の治療後の再発予防法
圧迫骨折の治療後の再発予防法について、以下の3つを解説します。
- 骨粗鬆症治療
- 姿勢・生活習慣の見直し
- 食事療法・運動療法
骨粗鬆症治療
圧迫骨折が起こる主な原因として「骨粗鬆症」が挙げられます。再発を防ぐための治療の中心は、骨粗鬆症の治療となります。骨は、古くなった部分を壊し(骨吸収)、新しい骨を作る(骨形成)という働きを毎日繰り返しています。骨粗鬆症は、古い骨が壊される量に対して、新しい骨が作られる量が追いつかなくなる病気です。
このバランスを整えるために、主に以下の薬を使います。
- 骨吸収抑制剤:骨の破壊を抑える薬(ビスホスホネート製剤、デノスマブ)
- 骨形成促進剤:新しい骨作りを助ける薬(テリパラチド)
薬の効果が出ているかを確認するため、定期的に骨密度検査を受けることも大切です。ご自身の判断で薬をやめると、再び骨がもろくなるため、医師の指示を守りましょう。
姿勢・生活習慣の見直し
薬での治療だけでなく、日常生活での工夫も大切です。日々のちょっとした心がけが、背骨への負担を大きく減らし、再発予防につながります。「正しい姿勢」と「転ばないための工夫」が大切です。日常生活で気をつけたい姿勢を、以下のチェックリストで確認しましょう。
- 前かがみの姿勢:床の物を拾うときは背筋を伸ばしたまま膝を曲げてしゃがむ
- 重い物を持つ動作:やむを得ず持つ場合は荷物を体に引き寄せて腹部に力を入れる
- 体をひねる動作:後ろを向くときは体ごとゆっくり向きを変える
転倒は新たな骨折の最大の引き金となります。ご自宅に危険な場所がないか、以下のリストで確認してみましょう。
- 床に物が散らかっていないか
- カーペットや電気コードに足を引っかける心配はないか
- 部屋や廊下、階段は十分に明るいか
- 階段や浴室、トイレに手すりはついているか
- 履物は滑りにくく、足に合っているか
日常の姿勢や住環境を見直す小さな工夫の積み重ねが、背骨への負担を減らし、再骨折の予防につながります。
食事療法・運動療法
丈夫な骨を作るためには、毎日の食事と適度な運動が欠かせません。骨を強くする栄養素を積極的に摂り、骨に良い刺激を与える運動を毎日の習慣にしましょう。骨の健康を維持するためには、複数の栄養素をバランス良く摂取することが重要です。日々の食事内容を見直し、骨の維持・強化につなげましょう。
骨の健康に必要な栄養素は、以下のとおりです。
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品 |
| カルシウム | 骨の主成分となる | 牛乳、チーズ、小魚、豆腐、小松菜 |
| ビタミンD | カルシウムの吸収を助ける | さけ、さんま、きのこ類、卵 |
| ビタミンK | 骨の質を良くする | 納豆、ほうれん草、ブロッコリー |
| タンパク質 | 骨のしなやかさを作る | 肉、魚、卵、大豆製品 |
運動は、骨自体を強くする効果と、筋肉をつけて転倒しにくい体を作る効果が期待できます。無理のない範囲で、以下のような運動を毎日少しずつ続けることが大切です。
- ウォーキング
- 軽いスクワット
- 壁や椅子に手をついて行う片足立ち
最近では、手術後の高齢者の方が座ったまま行える「八段錦(はちだんきん)」という中国の緩やかな体操を続けたところ、骨の健康状態が改善したという研究報告もあります。激しい運動が難しい方でも、自分に合った方法で体を動かすことが、再発予防への大きな一歩となります。
まとめ
圧迫骨折の治療は、安静やコルセットによる保存療法が基本となります。痛みが強い場合や、神経に影響がある場合には手術も検討されますが、まずは焦らずご自身の体の状態に合わせて治療を進めることが大切です。
治療後の「再発予防」も重要です。骨粗鬆症の治療や生活習慣の見直しを続けることが、再骨折を防ぐ重要な要素の一つとなります。背中や腰の痛みに不安を感じたら、一人で悩まず専門医に相談してください。ご自身に合った治療方法を見つけ、安心して日常生活を送るための一歩を踏み出しましょう。
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参考文献
- Lidan Yang, Fang Lu, Jing Chen, Jiali Wu, Jia Li, Jiangtao OuYang, Can Zheng, Jingbei Zhang, Xujuan Zheng. The effects of Sitting Baduanjin intervention based on the COM-B model for elderly patients with osteoporosis after vertebroplasty: A randomized controlled trial. Complement Ther Med, 2025, 95, 103275
- Maher Ghandour, Ümit Mert, Miguel Pishnamaz, Frank Hildebrand, Rolf Sobottke, Koroush Kabir, Mohamad Agha Mahmoud. Refracture and Mortality Following Surgical Management of Osteoporotic Vertebral Fractures: A Systematic Review and Meta-Analysis with Patient-Level Survival Modeling. J Clin Med, 2025, 14, 22, p.8230

