脊椎圧迫骨折とは?原因や症状、治療法と日常生活の注意点を解説
重い物を持ち上げた際の背中の痛みや、身長が縮んで背中が丸くなることを腰痛や加齢によるものだと考えていませんか?背中や腰の痛み、身長の縮みは、背骨が圧迫される「脊椎圧迫骨折」の可能性があります。
主な原因は骨がもろくなる骨粗鬆症です。くしゃみや尻もちといった些細なきっかけで、痛みを感じないまま骨折が進む「いつのまにか骨折」を発症する可能性があります。放置すると骨折を繰り返しやすくなり、生活に支障をきたす可能性があります。
この記事では、脊椎圧迫骨折の原因や症状、保存療法や手術などの治療法、再発を防ぐための日常生活の注意点を解説します。ご自身の体を守るための正しい知識を身につけましょう。
当院では、脊椎圧迫骨折をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
脊椎圧迫骨折の主な原因
脊椎圧迫骨折の原因として代表的なのは、骨粗鬆症と交通事故や転落などによる外傷の2つです。
骨粗鬆症
背骨は、椎体(ついたい)という骨が積み重なってできています。椎体が、何らかの力で押しつぶされるように折れてしまうのが脊椎圧迫骨折です。脊椎圧迫骨折を引き起こす原因の一つに「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」があります。骨粗鬆症は、加齢などの影響で骨密度が低下し、骨がもろくなる病気です。
骨粗鬆症による圧迫骨折のきっかけには、以下の動作が挙げられます。
- くしゃみや咳をした
- ベッドから起き上がろうとした
- 重い荷物を持った
- 尻もちをついた
椎体骨折は、自覚症状がほとんどないまま経過することもあります。過去に気づかれなかった椎体骨折があると、将来的に新たな骨折が起こりやすくなる可能性があります。骨折のリスクを適切に評価し治療を行ううえで、これまでの骨折の有無を確認することが重要とされています。
気になる変化があれば、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。骨の状態を確認するために、骨密度を測る検査(DXA法)や、レントゲンで背骨の形を詳しく見る椎体骨折評価(VFA)などの検査が行われることもあります。
骨粗鬆症の治療にはさまざまな薬があり、それぞれ作用の仕組みや効果、使用できる期間が異なります。内服薬との違いや注意点を知っておくことも大切です。以下の記事では、骨粗鬆症の薬の種類や特徴、治療中の注意点について詳しく解説しています。
>>骨粗鬆症の薬の種類一覧|治療中の注意点や効果、選び方を解説
>>骨粗鬆症の注射治療とは?効果や種類、副作用をわかりやすく解説
外傷(交通事故や転落など)
転倒や転落、交通事故などの外傷で脊椎圧迫骨折を起こすこともあります。背骨に強い力が一度にかかることで、骨粗鬆症がない若い方でも発症する可能性があります。外傷による脊椎圧迫骨折は、骨折そのものだけでなく、周囲への影響も調べる必要があります。圧迫骨折を引き起こす主な外傷は、以下のとおりです。
- 転倒や転落
- 交通事故
- スポーツ外傷
強い外力による骨折では、骨だけでなく、神経や靭帯(じんたい)などの周りの組織を傷つけている可能性があります。骨の状態を見るレントゲン検査に加えて、CTやMRIで詳しい画像検査を行うことがあります。画像検査で骨以外の損傷も正確に把握することが、その後の治療方針を決めるために大切です。
脊椎圧迫骨折の症状
脊椎圧迫骨折の症状について、以下の2つを解説します。
- 背中や腰の痛み
- 姿勢の変化(身長が縮む・背中が丸くなる)
背中や腰の痛み
脊椎圧迫骨折で多い症状は、背中や腰の痛みです。体を動かしたときに鋭い痛みを感じることが多く、体動時痛(たいどうじつう)と呼びます。次のような動きをしたときに、痛みを感じやすいです。
- 寝返りをうつとき
- 起き上がるとき
- 立ち上がるとき
- 咳やくしゃみをしたとき
潰れて不安定になった背骨は、体を動かすたびに刺激されて痛みを生じます。痛みを我慢して無理に動くと、骨の変形が進むリスクがあるため、注意が必要です。何年も前の骨折が原因で、長引く鈍い痛みに悩まされる可能性もあります。
姿勢の変化(身長が縮む・背中が丸くなる)
身長が縮んだり、背中が丸くなったりするなどの姿勢の変化も、脊椎圧迫骨折の症状の一つです。自分では気がつかなくても、家族や身近な人から背中が丸くなったことを指摘されることもあります。圧迫骨折により、背骨の一部が潰れてしまい、身長が縮む場合もあります。
背中が丸くなる原因は、椎体は前側が潰れやすいため、背骨全体が前に傾いてしまうことにあります。円背(えんぱい)という状態で、年のせいと思われがちな姿勢の変化です。円背が体に与える影響は、以下のとおりです。
| 内容 | 状態 | 起こり得る影響 |
| 骨折の連鎖 | ・円背による体のバランスが崩れる ・他の背骨に負担が増える |
・新たな圧迫骨折 ・骨の変形の進行 |
| 内臓の圧迫 | 前傾になることで胸やお腹のスペースが狭くなる | ・逆流性食道炎 ・息切れ |
| 神経の症状 | 潰れた骨が神経を圧迫する | ・しびれ ・力が入りにくいなどの麻痺症状 |
腰や背中の痛みだけでなく、足のしびれや力が入りにくいなどの症状がある場合は、注意が必要です。
脊椎圧迫骨折の治療法
脊椎圧迫骨折の治療法について、以下の3つを解説します。
- 医療機関での画像検査(レントゲン・MRI)
- 保存療法(コルセット・投薬治療など)
- 手術が必要となるケース
医療機関での画像検査(レントゲン・MRI)
治療方針を決めるためには、骨の状態を正確に把握することが大切です。診断のために医療機関では、レントゲンやMRIなどの画像検査を行います。画像検査は、骨折の有無だけでなく、骨折の種類や重症度、神経への影響を調べるために行います。それぞれの検査の目的と特徴は、以下のとおりです。
| 検査の種類 | 主な目的 | 特徴 |
| レントゲン | 骨の変形や潰れの程度を確認 | 全体を確認する基本的な検査 |
| CT | 骨の形状を立体的に確認 | ・骨折線の入り方を正確に把握する検査 ・手術計画にも活用 |
| MRI | ・初期、微細な骨折の確認 ・神経や軟部組織への影響の確認 |
・レントゲンでわかりにくい骨折の検査 ・骨折部位周囲の神経や軟部組織の評価 |
医師は画像情報をもとに、客観的な分類(スコア)を用いて重症度を評価します。「OF score」などの評価法は、骨粗鬆症による骨折の状態を点数化し、治療の意思決定を助けるための構造化された基盤となります。
保存療法(コルセット・投薬治療など)
脊椎圧迫骨折の治療は、手術をしない保存療法から始めることがほとんどです。保存療法は、主に以下の3つの方法があります。
- 安静
- コルセットによる固定
- 薬物療法
骨折直後の約1か月間は、骨が不安定な時期です。骨が不安定な時期に無理に動くと、変形が進み、痛みが強くなる可能性があります。寝返りや起き上がりなど、背中に負担がかかる動きはできるだけ減らし、骨が安定するまで安静を保つことが大切です。
骨折後、コルセットを装着して背骨の変形や圧迫の進行を予防します。痛みが強い場合は、鎮痛剤を使用することがあります。骨粗鬆症が原因の場合は、同時に治療を開始する場合もあります。コルセットの装着や鎮痛剤、骨粗鬆症治療は、医師の指示に従うことが大切です。
手術が必要となるケース
保存療法を続けても症状が改善しない場合や、特定の条件に当てはまる場合に、手術を検討することがあります。手術の目的は、痛みの軽減を図り、不安定になった背骨を安定させ、早期の機能回復を目指すことです。次のようなケースでは、手術を検討します。
- 痛みが改善しない
- 骨が固まらない(偽関節)
- 背骨の変形が進行する
- 神経の症状がある
代表的な手術には、椎体形成術(BKP:Balloon Kyphoplasty)と脊椎固定術があります。椎体形成術は、骨セメントを注入して骨折部位を安定させる方法で、固定術は金属器具を用いて背骨を固定します。
日常生活の注意点
日常生活の注意点について、以下の3つを解説します。
- 痛みを和らげる姿勢や動作の工夫
- 生活習慣の見直し(運動・栄養)
- 骨粗鬆症の予防につながる習慣づくり
痛みを和らげる姿勢や動作の工夫
脊椎圧迫骨折の治療では、骨折した背骨への負担を減らすことが大切です。寝たり起きたりする動作は、無意識に行うと背骨に強い力がかかり、痛みの原因になります。以下のような動作はなるべく避けましょう。
- 仰向けのまま起き上がる
- 腰を曲げて物を拾う
- 低いソファや床に座る
- 強いくしゃみや咳をする
- 柔らかすぎる布団に寝る
起き上がる際は、横向きになってから腕の力で上半身を起こし、ゆっくりと動くことが推奨されます。背骨に負担をかけない姿勢や動作を意識することで、痛みの軽減や骨の安定につながります。痛みを我慢せず、痛みを増強しない動作を心がけましょう。
圧迫骨折では安静期間の過ごし方や、いつリハビリを始めるべきかといった点も回復に大きく関わります。以下の記事では、圧迫骨折後のリハビリ開始時期や注意点について詳しく解説しています。
>>圧迫骨折のリハビリはいつから?痛みが取れない原因とやってはいけない注意点も解説
生活習慣の見直し(運動・栄養)
脊椎圧迫骨折後に安静期間が長くなると、筋力が衰えて体を支えにくくなる可能性があります。運動は骨密度を高めるだけでなく、筋力やバランス能力を向上させ、転倒予防が期待できます。推奨される運動は以下のとおりです。
- ウォーキング:1日15分程度景色を楽しめるペースで行う
- 片足立ち:左右1分ずつ片足で立つ
- かかと落とし:つま先立ちでかかとを床に落とす
運動の強度については、医師の指示に従いましょう。痛みが強いときには、無理をせず、受診時に医師に相談することが大切です。日々の食事も健康な骨には大切です。意識して摂取してほしい栄養素を以下の表にまとめています。
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品例 |
| カルシウム | 骨の主成分 | ・牛乳 ・ヨーグルト ・小魚 ・豆腐 ・小松菜 |
| ビタミンD | カルシウム吸収に関与 | ・サケ ・サンマ ・きのこ類 ・卵 |
| ビタミンK | 骨代謝に関与 | ・納豆 ・ほうれん草 ・ブロッコリー |
| タンパク質 | 骨や筋肉の材料 | ・肉 ・魚 ・卵 ・大豆製品 |
骨粗鬆症の予防につながる習慣づくり
脊椎圧迫骨折の原因の一つに骨粗鬆症があります。骨粗鬆症による骨折は、背骨だけでなく、足の付け根や骨盤など、他の部位でも起こりやすいという特徴があります。
骨盤の一部である仙骨(せんこつ)が折れる「仙骨脆弱性骨折」は、高齢者で増加傾向であるという報告もあります。骨折は生活の質を大きく下げ、深刻な状態につながることもあります。骨粗鬆症による骨折を予防するために以下のような生活習慣を心がけましょう。
- 1日15分程度の日光浴を心がける
- 転ばないための環境を整える
- 禁煙と節度ある飲酒を心がける
- 定期的に骨の検査を受ける
骨粗鬆症の予防につながる習慣は、骨折予防だけでなく、全身の健康を守ることにもつながります。気になる症状がある場合は、整形外科や骨粗鬆症専門医にご相談ください。
以下の記事では、圧迫骨折の原因や症状、治療法を詳しく解説しています。
>>圧迫骨折とは?原因や症状、治療法と放置するリスクを解説
まとめ
背中が丸くなった、身長が縮んだなどの変化は、単なる年のせいではなく、脊椎圧迫骨折の可能性があります。骨粗鬆症が原因の場合、放置すれば新たな骨折が起こりやすくなる恐れがあります。
ご自身の骨の状態を正しく知り、根本原因である骨粗鬆症の治療も同時に進めることが大切です。適切な治療と生活習慣の見直しで、痛みを和らげ、将来の骨折リスクを低減する可能性があります。気になる症状があれば、専門医へご相談ください。
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参考文献
Martin Naisan, Yazan Noufal, Felix Schmitz, Yama Afghanyar, Marcus Richter, Philipp Drees, Philipp Hartung, Andreas Kramer. Epidemiology, imaging, and management trends in sacral fragility fractures: A 19‑year nationwide analysis in Germany. Injury, 2025, 56(12), p.112850

