コラム

腰部脊柱管狭窄症を引き起こす主な原因!加齢や生活習慣との関係性を解説

少し歩くと足がしびれて休憩が必要になったり、長時間立っているとつらく感じたりすることはありませんか。50歳を過ぎて現れ始めた症状を、単なる「加齢のせい」と思い込んで放置してしまうのは注意が必要です。神経の通り道が狭くなる「腰部脊柱管狭窄症」のサインの可能性があります。

腰部脊柱管狭窄症の主な原因は、加齢による背骨の変化です。気づかないうちに腰の老化を早めている「意外な生活習慣」が隠れている可能性があります。運動不足や姿勢の癖、過去のけがなど、さまざまな要因により症状を引き起こしています。この記事では、つらい症状の根本にある原因を詳しく解説します。

腰部脊柱管狭窄症について正しく理解し、痛みの軽減や日常生活の改善につなげましょう。

当院では、腰部脊柱管狭窄症をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
>>診察のご案内について

脊椎センター案内ボタン

記事監修:川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴: 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野:脊椎・脊髄外科

資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

腰部脊柱管狭窄症の主な原因

腰部脊柱管狭窄症を引き起こす主な原因について、以下の5つを解説します。

  • 加齢に伴う背骨の変形
  • 生活習慣が引き起こす腰への負担(運動不足・長時間同姿勢など)
  • 姿勢の乱れ(反り腰・猫背)
  • 過去の腰のけがやぎっくり腰
  • 遺伝や先天的な骨格の影響

加齢に伴う背骨の変形

腰部脊柱管狭窄症の主な原因は、年齢を重ねることによる背骨の変化です。背骨の中には、脳から続く大切な神経(脊髄)が通る「脊柱管」というトンネルがあります。若い頃はしなやかだった背骨の組織も、長年体を支えることで徐々に劣化し変形していきます。この変化がトンネルを狭くし、中の神経を圧迫します。

背骨の各部分に以下の変化が起こります。

  • 椎間板(骨と骨の間のクッションの役割):加齢で水分が失われ、薄くなったり亀裂が入ったりして、脊柱管側にはみ出し神経を圧迫する
  • 椎間関節(背骨の後方にある関節):長年の負担で軟骨がすり減り、体を修復しようとする反応で骨のトゲ(骨棘:こつきょく)ができ、脊柱管を狭くする
  • 黄色靭帯(脊柱管の後ろ側にある靭帯):加齢とともに分厚く硬くなり、神経が通るスペースを狭めて圧迫の原因となる

誰にでも起こりうる自然な老化現象ですが、特に50歳を過ぎると背骨の変化が進みやすくなるため、適切な予防とケアが重要です。

生活習慣が引き起こす腰への負担(運動不足・長時間同姿勢など)

加齢に加えて、日々の生活習慣も腰への負担を蓄積させる大きな要因です。腰に負担をかける生活は、背骨の老化を早めるため注意が必要です。以下の生活習慣は、腰に負担がかかりやすくなります。

  • 運動不足
  • 長時間の同じ姿勢
  • 腰に負担のかかる作業

お腹周りや背中の筋肉(体幹筋)は、背骨を支える重要な役割を担っています。運動不足で筋力が低下すると、背骨は不安定になりがちです。一つひとつの骨や椎間板にかかる負担が増えて、変形が進みやすくなります。

デスクワークや立ち仕事、長距離運転などは、腰の筋肉を緊張させます。筋肉が硬くなると血行が悪くなり、椎間板にも十分な栄養が行き渡りません。同じ姿勢は椎間板に持続的な圧力をかけ、老化を早める原因になります。

重いものを頻繁に持ち上げる仕事や、中腰での作業も腰に大きな負担をかけます。椎間板や椎間関節への日々の小さなダメージの蓄積が、将来的な背骨の変形につながる可能性があります。

姿勢の乱れ(反り腰・猫背)

姿勢の乱れは、腰部脊柱管狭窄症の大きな原因の一つです。特に「反り腰」と「猫背」は、知らないうちに腰に負担をかけ、背骨の変形や神経の圧迫を引き起こすことがあります。以下に特徴をまとめます。

姿勢のタイプ 主な特徴 腰への影響
反り腰 腰が強く反り、お腹が前に出る 椎間関節に圧力が集中し、軟骨のすり減りや骨棘の発生を招く
猫背 背中が丸まり、肩が前に出る バランスを取るために腰が反り、結果的に腰へ強い負担がかかる

反り腰は見た目が良く見えても、腰椎後方に過剰な圧力がかかり、関節の変形を進めます。猫背も体の重心が前に傾くため、無意識に腰を反らせてしまい、同様に負担が増します。

近年の研究では、症状のない若年成人でも腰椎の姿勢異常が椎間板変性と関連しており、特にL4-L5椎間板に負担が集中することで、将来的な脊柱管狭窄症のリスクを高めることが示されています。

過去の腰のけがやぎっくり腰

過去の腰のけがやぎっくり腰は、将来の腰部脊柱管狭窄症を引き起こす大きな原因になります。けがをすると筋肉や靭帯、椎間板が傷つき、治っても以前より弱くなっていることがあります。そのため、ぎっくり腰を何度も繰り返すと、背骨に少しずつ負担がたまり、形が歪んでしまうことがあります。

交通事故や転倒などで腰の骨を折ったり、ずれたりした経験がある場合も注意が必要です。背骨のすき間が狭くなり、神経を圧迫することがあるからです。これらの変化は時間が経ってから痛みやしびれとして現れることが多く、過去のけがを軽く考えず、早めのケアをすることが大切です。

遺伝や先天的な骨格の影響

腰部脊柱管狭窄症は、加齢や生活習慣によって発症することがほとんどです。しかし、まれに生まれつきの骨格や体質が影響している以下のようなケースもあります。

  • 先天性脊柱管狭窄症
  • 遺伝的な要因
  • 骨の病気など

先天性脊柱管狭窄症の方は、加齢による背骨の変化がわずかでも神経が圧迫されやすいです。30〜40代といった若い年齢で症状が現れることがあります。脊柱管狭窄症そのものが、親から子へ直接遺伝するわけではありません。

骨の形や太さ、軟骨や靭帯の強さなどの「体質」は似ることがあります。ご家族に腰の病気を持つ方が多い場合は、注意しましょう。軟骨の形成に異常がある病気や、骨が変形する特定の病気が原因となることもあります。

症状が脊柱管狭窄症か見極める4つのポイント

症状が腰部脊柱管狭窄症にあてはまるかを見極めるポイントは以下の4つです。

  • 間欠性跛行の特徴
  • 椎間板ヘルニアとの違い
  • 自宅でできるセルフチェック
  • 医療機関での画像検査(MRI・レントゲン)

間欠性跛行の特徴

間欠性跛行(かんけつせいはこう)は、腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状です。歩くと足に痛みやしびれが出て歩けなくなり、少し休むと再び歩けるようになる状態です。これは歩行中に腰が反って神経が圧迫されるために起こります。

前かがみになると脊柱管が広がり、神経への圧迫が和らぐため、一時的に症状が軽くなります。同じ「間欠性跛行」でも、原因が神経なのか血管なのかで特徴が異なります。次の表でその違いを比較します。

種類 根本的な原因 症状が楽になる姿勢 症状が出やすい坂道 自転車
神経性(脊柱管狭窄症) 神経の圧迫 前かがみ・座る 下り坂 長くこげる
血管性(動脈硬化など) 足への血流不足 立ち止まるだけで楽 上り坂 長くこげない

神経性の間欠性跛行は、姿勢や動作によって症状が変化するのが特徴です。血管性の場合は、足への血流が不足しているため、立ち止まるだけで症状が改善します。ご自身の症状がどちらに近いか、歩くときや休むときの状態を思い出して確認してみましょう。

椎間板ヘルニアとの違い

腰部脊柱管狭窄症と同じように、足の痛みやしびれを引き起こす病気に椎間板ヘルニアがあります。症状の出方に違いがあり、特に姿勢との関係が大きな見極めのポイントになります。椎間板ヘルニアとの違いは、以下のとおりです。

腰部脊柱管狭窄症 椎間板ヘルニア
主な原因 加齢による脊柱管全体の狭窄 椎間板の一部の突出
好発年齢 50歳以降の中高年 20〜40代の若年層
悪化しやすい姿勢 立っている、歩いている、腰を反らす 前かがみ、座っている、中腰
楽になりやすい姿勢 前かがみ、座る、しゃがみこむ 腰を伸ばす、横になる

体を反らすと神経の通り道が狭くなり症状が悪化するのが、腰部脊柱管狭窄症の特徴です。逆に、前にかがむと椎間板への圧が高まり症状が悪化するのが、椎間板ヘルニアの特徴です。

自宅でできるセルフチェック

腰部脊柱管狭窄症の可能性があるか、簡単なセルフチェックで確認してみましょう。セルフチェックは、あくまで目安であり、正確な診断には医師の診察が不可欠です。以下の腰部脊柱管狭窄症セルフチェックリストで確認しましょう。

  • 続けて5〜10分歩くと、足が痛んだりしびれたりして歩き続けられない
  • 少し休む(特に前かがみや座る)と症状が軽くなり、また歩けるようになる
  • 長時間立っているだけで、お尻から足にかけてしびれや痛みが出てくる
  • 体を後ろに反らすと、腰や足の症状が強くなるように感じる
  • 自転車であれば、足の痛みを気にせず長い時間漕ぎ続けられる
  • 何かに寄りかかって前かがみになると楽に歩ける
  • 足だけでなく、お尻の周りや股間にしびれや火照るような違和感がある
  • 若い頃と比べて、歩くのが遅くなった・長い距離を歩けなくなった

これらの項目に多くあてはまるほど、腰部脊柱管狭窄症の可能性が考えられます。1つでも気になる項目があれば、自己判断せずに整形外科を受診することをおすすめします。

腰部脊柱管狭窄症の症状や歩行時の違和感を正しく理解することは、早期発見や適切な治療につながります。以下の記事では、腰部脊柱管狭窄症の症状、痛みやしびれの特徴、治療法まで詳しく解説しています。
>>腰部脊柱管狭窄症の症状とは?痛くなる原因やしびれの特徴、治療法まで解説

医療機関での画像検査(MRI・レントゲン)

セルフチェックで腰部脊柱管狭窄症が疑われる場合、医療機関では画像検査を行います。主に「レントゲン(X線)検査」と「MRI検査」を用いて、症状の原因を正確に特定します。画像検査により、適切な治療方針を立てることができます。レントゲン(X線)検査は、基本となる検査です。以下のような骨の状態を確認します。

  • 背骨の全体的な並びやバランスの乱れ
  • 骨の変形(骨棘)の有無
  • 背骨が前後にずれる「すべり症」の有無
  • クッションの役割をする椎間板の高さの低下

MRI検査は、腰部脊柱管狭窄症の診断において重要な検査です。磁気を使って体の断面を撮影するため、レントゲンでは見えない軟部組織を詳しく観察できます。検査で確認する内容は、以下のとおりです。

  • 神経の通り道(脊柱管)の狭窄の程度
  • 神経が圧迫されている位置と程度
  • 椎間板や、神経を圧迫する黄色靭帯の状態

MRI検査によって、神経圧迫の場所と重症度を正確に確認し、診断を確定します。

腰部脊柱管狭窄症の再発予防方法

腰部脊柱管狭窄症の再発予防方法について、以下の4つを解説します。

  • 加齢による変化に対応する日常生活の工夫
  • 生活習慣の見直し
  • 手術を避けるための保存療法
  • ストレッチ・筋力トレーニングの継続

加齢による変化に対応する日常生活の工夫

加齢による体の変化に合わせて日常生活を工夫することは、腰部脊柱管狭窄症の再発を防ぐためにとても大切です。ちょっとした姿勢や動作の工夫で、腰への負担を大きく減らすことができます。以下の表で、再発予防のための4つのポイントをまとめます。

生活シーン 工夫のポイント 効果
座るとき ・背もたれに深く腰かけ、背筋を伸ばす
・腰にクッションを当てる
腰の自然なカーブを保ち、筋肉への負担を軽減
運転時 シートを深くし、膝と股関節を同じ高さにする 腰の反りを防ぎ、長時間の運転でも疲れにくい
物を持つとき 腰を曲げず、膝を曲げて持ち上げる 腰への急な圧力を防ぎ、筋肉や椎間板を保護
寝るとき 硬めのマットレスと高さの合った枕を使う 背骨のゆがみを防ぎ、体を正しく休める

これらの工夫を続けることで、腰へのストレスを日常的に減らし、再発のリスクを下げることができます。無理のない範囲で意識的に取り入れることが、長く健康な腰を保つ秘訣です。

生活習慣の見直し

腰部脊柱管狭窄症の再発予防には、日常生活の動作だけでなく、生活習慣全体の見直しが重要です。体重が増えると、その分だけ背骨や椎間板にかかる圧力が増加します。健康的な体重を維持することは、腰への負担を減らし、痛みの再発リスクを下げることが期待できます。

体重管理の基本は、バランスの良い食事と適度な運動です。特定の食品だけを食べるのではなく、さまざまな食材をバランス良く摂ることが大切です。骨や筋肉の材料となるタンパク質やカルシウム、ビタミンDを意識しましょう。栄養バランスの整った食事は、腰だけでなく体全体の健康を支える土台となります。

運動は、ウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動がおすすめです。有酸素運動による全身の血行促進で、筋肉の緊張が和らぎ、痛みの軽減にもつながります。まずは今より少し歩く時間を増やすなど、できることから始めてみましょう。

手術を避けるための保存療法

腰部脊柱管狭窄症の治療は、多くの場合、手術以外の方法で症状をコントロールする「保存療法」を行います。再発予防でも以下のような保存療法を続けることが重要です。

  • 薬物療法
  • 神経ブロック注射
  • 物理療法
  • 装具療法

薬物療法では、痛みを和らげる消炎鎮痛薬や、神経の血流を改善する薬などが使われます。神経ブロック注射は、痛みの原因となる神経の周りに、局所麻酔薬などを直接注射する方法です。痛みが強い場合に使われ、リハビリテーションを進めやすくなる効果も期待できます。

物理療法には、温熱療法や電気治療、牽引療法などがあります。筋肉の緊張をほぐし、血行を促進することで痛みを和らげる効果が期待できます。装具療法は、コルセットなどの装具を一時的に使用し、腰を安定させます。

保存療法は、患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせて、医師が適切なものを組み合わせて行います。

腰部脊柱管狭窄症の症状が強くなった場合や保存療法で十分な改善が得られない場合には、手術が検討されることもあります。以下の記事では、腰部脊柱管狭窄症の手術方法や成功率、費用、術後の回復期間について詳しく解説しています。
>>腰部脊柱管狭窄症の手術方法|成功率や費用、術後の回復期間を解説

ストレッチ・筋力トレーニングの継続

再発予防において、積極的に取り組んでいただきたいのが運動療法です。ストレッチと筋力トレーニングを継続することは、痛みの軽減や予防に役立つ可能性があります。運動によって背骨を支える筋肉を鍛え、関節の柔軟性を保つことが目的です。腰への負担を軽減し、安定した状態を維持します。

ストレッチは、硬くなった筋肉をほぐし、関節の動く範囲を広げることで、体の柔軟性を高めます。お尻や太ももの裏側の筋肉は腰と密接に関係しています。痛みを感じない、気持ち良いと感じる範囲で、ゆっくりと伸ばしましょう。運動の前後に行うと、けがの予防にもつながります。

腹筋や背筋などの体幹の筋肉を鍛えることは「天然のコルセット」を作ることです。筋肉が背骨をしっかりと支えることで、腰椎への負担が減り、安定性が増します。最初はごく軽い負荷から始め、徐々に回数や強度を上げていくことが大切です。運動は、一度に長時間行うよりも、毎日少しずつでも続けることが重要です。

腰部脊柱管狭窄症の運動療法をより効果的に行うためには、リハビリの具体的な方法や自宅での工夫を理解することが大切です。以下の記事では、腰部脊柱管狭窄症のリハビリ方法や運動療法のポイントについて詳しく解説しています。
>>腰部脊柱管狭窄症のリハビリ方法は?運動療法と自宅でできる工夫を解説

まとめ

腰部脊柱管狭窄症の原因は、加齢による背骨の変化が主ですが、それだけではありません。運動不足や姿勢の乱れなど、日々の何気ない生活習慣の積み重ねが、症状の進行に大きく関わっています。これからの生活を見直すことで、症状の悪化や再発を防ぐことが十分に可能です。

少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに専門の医療機関を受診してください。ご自身の体の状態を正しく把握し、適切な対策を始めることが何よりも大切です。

当院(大室整形外科 脊椎・関節クリニック)では、腰部脊柱管狭窄症が心配な方や腰の痛み・しびれなどの症状を指摘された方に対して、専門医が丁寧に相談に応じます。「歩くと脚がしびれる」「腰を曲げると痛みが強くなる」など気になる症状がある方は、一度ご相談ください。
>>診察のご案内について

診察予約ボタン

参考文献

Menezes-Reis R, Bonugli GP, Dalto VF, Herrero CFPS, Defino HLA, Nogueira-Barbosa MH. Association Between Lumbar Spine Sagittal Alignment and L4-L5 Disc Degeneration Among Asymptomatic Young Adults. Spine (Phila Pa 1976), 2016, 41, 18, p.E1081-E1087