コラム

腰椎圧迫骨折のときの寝る姿勢は?痛みを和らげる姿勢と自宅療養の注意点を解説

転倒や軽い動作のあと「腰が痛くて起き上がれない」「寝返りを打つのもつらい」と感じた場合、腰椎圧迫骨折の可能性があります。研究では、胸腰椎骨折の患者の多くで、背骨の内部まで骨折線が及ぶことが確認されており、見た目以上に深い損傷が起きていることがあります。

安静が必要とわかっていても、痛みで眠れない夜を過ごすのはつらいものです。この記事では、痛みを和らげる寝姿勢のポイントや避けたい動作、安全な起き上がり方、自宅療養のコツをわかりやすく解説します。正しい対処法を知ることで、痛みの少ない療養生活を送るための手助けになれば幸いです。

当院では、腰椎圧迫骨折をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴: 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野:脊椎・脊髄外科

資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

腰椎圧迫骨折で痛みを和らげる姿勢5つのポイント

腰椎圧迫骨折で痛みを和らげる姿勢のポイントを5つ解説します。

  • 仰向け:膝の下にクッションを入れて腰の負担を軽減する
  • 横向き:膝を曲げ、脚の間にクッションを挟む胎児姿勢
  • 寝具の選び方
  • 痛みを悪化させる姿勢と理由
  • 安全な寝返りと起き上がり方のコツ

仰向け:膝の下にクッションを入れて腰の負担を軽減

仰向けは、体重が背中全体に均等にかかるため、腰椎圧迫骨折の場合は注意が必要です。脚をまっすぐ伸ばして仰向けになると、腰が自然と反ってしまいます。「反り腰」の状態は、つぶれてしまった背骨(椎体)に負担をかけ、骨がくっつくのを(骨癒合)妨げてしまう可能性があります。

楽な仰向け姿勢の取り方の手順は、以下のとおりです。

  1. 膝の下にクッションを入れる
  2. 腰と寝具の隙間をなくす
  3. クッションの高さを調整する

仰向けの状態で、膝の下にクッションや丸めたバスタオルを入れることで、膝が軽く曲がり、腰の反りを緩やかにできます。寝具と身体の隙間をなくすことで、痛みの軽減が期待できます。膝下のクッションが高すぎると、お尻が持ち上がってしまい不快に感じることがあります。心地よい高さに調整してください。

骨折した部分を押し上げ、背骨に負担をかけてしまうことがあるため、腰の下に直接タオルなどを入れるのは避けてください。

横向き:膝を曲げ、脚の間にクッションを挟む胎児姿勢

仰向けの姿勢がつらい方は、横向きで寝る方法が(胎児姿勢)おすすめです。横向きの姿勢の取り方は以下の手順で行います。

  1. 両膝を軽く胸の方へ引き寄せるように曲げる
  2. 背中を少し丸める
  3. 両膝の間にクッションを挟む

横向き時の腰のねじれを防ぐために、両膝の間にクッションや枕を挟み、骨盤を安定させます。抱き枕を使うと、腕と脚で身体を支えられるため、姿勢の安定に役立つ場合があります。身体を預けることでリラックス効果も期待できます。

寝具の選び方

身体に合わない寝具を使っていると、良質な睡眠を妨げるだけでなく、痛みを増強させる可能性があります。硬すぎるマットレスやせんべい布団、身体が沈み込むほどのマットレスや布団には注意が必要です。

硬すぎる寝具は、身体の一部に負担が集中して筋肉が緊張し、痛みや骨折部への負担が増えることがあります。柔らかすぎる寝具は、背骨の配列が崩れ、寝返りがしづらくなることで血行不良を招く可能性があります。理想的な寝具の条件は以下のとおりです。

  • 背骨のS字カーブを保てる
  • 身体の重さを均等に支える
  • 適度な硬さと弾力性がある
  • 寝返りがしやすく、姿勢を変えやすい

痛みを悪化させる姿勢と理由(うつ伏せ・腰のひねり)

骨折を早く治すためには、痛みを悪化させたり、骨に負担をかけたりする姿勢を避けましょう。腰が反る体勢やねじる動きは、背骨に圧力をかけたり、骨折部にせん断力を加えたりする可能性があります。背骨の中を通る神経を圧迫することもあるため、避ける必要があると言われています。

付近のものを取るときも、上半身だけをひねるような動きは避けましょう。痛みの悪化につながる姿勢にならないように意識することが大切です。

安全な寝返り・起き上がり方のコツ(身体を丸めてゆっくり動く)

腰椎圧迫骨折は、動き始めに痛みを強く感じられることがあります。痛みを増強させないためには、起き上がるときに身体をひねらず一本の丸太のように動かすこと(ログロール)が推奨されています。安全な起き上がり方は以下のとおりです。

  1. 両膝を立てる
  2. お腹に少し力を入れる
  3. 身体が1枚の板のように意識する
  4. 腕で身体を支えながら横向きになる
  5. 横向きのままお尻をベッドの端に近づける
  6. 両脚をそろえてゆっくりベッドから脚を下ろす
  7. 下になっている方の肘をベッドにつく
  8. 上になっている腕でベッドを押して上半身を起こす

背中をできるだけまっすぐにすることで、起き上がりの痛みを軽減する効果が期待できます。急いで起き上がると、前かがみになったり腰をひねったりして、骨折部に痛みが出ることがあります。動作をゆっくり慎重に行うことで、痛みを抑えることが期待できます。

腰椎圧迫骨折では、姿勢の工夫が痛みの軽減に役立ちますが、圧迫骨折がどのような病気なのかを理解しておくことも大切です。以下の記事では、圧迫骨折の原因や症状、治療法を詳しく解説しています。
>>圧迫骨折とは?原因や症状、治療法と放置するリスクを解説

自宅療養中の注意点

自宅療養中の注意点について、以下の4つを解説します。

  • コルセットの装着時間・安静期間の目安
  • 痛み止めの使い方
  • 避けるべき動作
  • 転倒を防ぐ生活環境の工夫

コルセットの装着時間・安静期間の目安

骨折した背骨を治すためには安静と固定が大切です。医師は治療のために、状態に合わせた安静期間を指示し、コルセットを処方します。腰椎圧迫骨折から回復までの過程には以下の2つの時期があります。

時期 期間 状態
急性期 約2〜3週間 ・痛みが強い時期

・安静が必要

回復期 約2〜3か月 ・痛みが和らいでいく時期

・無理な動きには注意が必要

コルセットは、骨折した背骨が動かないように背骨をサポートし、体重による負担を軽減することを目的としている医療用装具です。装着期間の目安は、約2〜3か月が一般的で、着脱のタイミングは以下のとおりです。

  • 着けるタイミング:起き上がって活動する間
  • 外すタイミング:横になって休むとき

過度な安静とコルセットの長期依存には注意が必要です。長期間コルセットに頼りすぎると、背中を支える筋肉が弱くなる(廃用性筋萎縮)可能性があります。痛みやコルセット装着は個人差があります。医師の指示に従うことが推奨されます。

痛み止め(内服薬・湿布)の使い方

痛みを無理に我慢すると、身体を動かす恐怖心が生まれて回復を遅らせる可能性があります。医師の指示のもと、適切に痛み止めを使用することが推奨されます。痛み止めは、患者さんの痛みの強さや状態に合わせて、数種類が処方されることがあります。痛み止めには、以下の種類があります。

  • 内服薬
  • 湿布薬
  • 坐薬

全身に作用する内服薬と局所的な炎症や痛みを和らげる湿布薬を併用して、痛みをコントロールしていきます。胃腸の負担が少なく、内服が難しい場合に坐薬を併用することがあります。処方された薬は、医師の指示通りに使用することが大切です。

痛み止めの効果が弱いと感じたり、副作用が出たりする場合は、医師や薬剤師に相談することが推奨されます。

避けるべき動作(前かがみ・重い物を持つ)

回復を早めるためには、つぶれてしまった背骨(椎体)に余計な圧力をかけないことが推奨されます。日常生活の中には、背骨に大きな負担をかけてしまう動作があります。避けるべき動作は以下のとおりです。

  • 前かがみをする
  • 身体をひねる
  • 重いものを持つ
  • 急な動きや衝撃を与える

避けるべき動作は、背骨に強い力がかかってしまい、痛みが強くなったり、治りが遅くなったりする原因になります。前かがみや腰をひねる動き、重いものを持つ動作は、骨折した部分に負担が集中しやすいため注意が必要です。動作を意識することは、骨の変形を防ぎ、将来的な後遺症のリスク軽減にもつながります。

転倒を防ぐ生活環境の工夫

腰椎圧迫骨折の原因の一つが転倒です。療養中に再び転んでしまうと、骨折が悪化したり、別の場所を骨折したりする可能性があります。自宅の環境を整えて、転倒しない仕組みを作ることが大切です。転倒しにくい生活環境として、以下の工夫が考えられます。

  • 床に物を置かない
  • 夜間も足元を明るくする
  • 滑りやすい素材を避ける
  • 手すりをつける
  • 段差を減らす

安全な環境を整え、療養期間を安心して過ごせる工夫が大切です。

転倒によって急に腰が痛くなった場合や、起き上がれないほどの痛みが出てしまうと、不安を感じる方も多いでしょう。以下の記事では、腰痛で動けなくなったときの応急処置や受診の目安について詳しく解説しています。
>>腰痛で起き上がれないときの対処法|原因と応急処置、受診すべき危険な症状を解説

圧迫骨折の痛みを和らげるコツ

圧迫骨折の痛みを和らげるために、以下のポイントを把握しておきましょう。

  • 骨折部分への負担を減らす姿勢で生活する
  • 痛み止めを活用する
  • コルセットを使う

骨折部分への負担を減らす姿勢で生活する

痛みを軽減するための基本は、骨折部分への負担を減らすことです。痛みを予防するには、以下の姿勢を意識しましょう。

  • 仰向けで膝下にクッションを置く
  • 横向きで脚の間にクッションを挟む
  • 腰をひねる動作やうつ伏せを避ける
  • ゆっくりと身体を丸めて起き上がる

圧迫骨折の急性期では安静が必要ですが、トイレや食事などの動作をする際、姿勢に気をつけることで痛みの悪化を防ぎやすくなります。無意識な動作が、痛みを強くする可能性があるため注意が必要です。

痛み止めを活用する

圧迫骨折の痛みは、動き始めや姿勢を変えるときに強く出やすいため、日常生活を支えるためにも痛み止めの適切な使用が重要です。痛み止めは、痛みを完全になくすためではなく、必要な動作を無理なく行える程度に痛みをコントロールすることを目的として使われます。

痛みの強さ・胃腸の状態・他の薬との飲み合わせなどを考慮して処方されます。主にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やアセトアミノフェン、湿布薬、坐薬などが用いられます。種類によって作用時間や副作用が異なるため、処方されたとおりに使用することが重要です。

痛み止めは、痛みが強くなってから飲むよりも、活動の前に服用することで痛みの管理に役立つ場合があります。服用のタイミングは医師の指示に従ってください。痛みを上手にコントロールできると、必要以上の安静を避けられ、日常生活の動作がしやすくなるため、回復に向けた大切なサポートとなります。

コルセットを使う

コルセットは骨折部分を固定し、身体を動かしたときの痛みを予防する目的で使用されます。コルセットは起き上がる前や日中の活動時に装着し、骨折部の安定を図ります。装着するときは以下の点に注意しましょう。

  • 肌着の上に着用する
  • 日中や活動時は装着する
  • 着用時は適切な位置に合わせる
  • 装着時間や期間は医師の指示を守る

コルセットを医師の指示通りに使用することは、適切な療養の一環として推奨されています。

圧迫骨折では安静期間の過ごし方や、いつリハビリを始めるべきかといった点も回復に大きく関わります。以下の記事では、圧迫骨折後のリハビリ開始時期や注意点について詳しく解説しています。
>>圧迫骨折のリハビリはいつから?痛みが取れない原因とやってはいけない注意点も解説

まとめ

突然の骨折と激しい痛みで、今後の生活に不安を抱くことがあります。寝るときの姿勢を少し工夫したり、コルセットや痛み止めを正しく使用したりすることで、痛みの軽減が期待できます。クッションを上手に使って腰への負担を減らすことや、身体をひねらずにゆっくり動くことを意識することが大切です。

圧迫骨折と診断されたときは、自己判断せずに医師の指示を守ることです。正しい知識を持って療養することが、順調な回復への一番の近道です。不安な点は一人で抱え込まず、医師や専門家に相談しながら、ご自身の身体を大切にしてください。

当院(大室整形外科 脊椎・関節クリニック)では、転倒後の腰の痛みや背中の違和感、動くと強く痛む症状など、腰椎圧迫骨折が疑われる方に対して、専門医が丁寧に相談に応じます。気になる症状がある方は、一度ご相談ください。
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参考文献

Guoping Cai, Bingshan Yan. Most AOTL type A and type B thoracolumbar primary fracture line follow the mechanism of an imaging-based injury model. European Spine Journal, 2025, 34(3), p.824-830