2025.12.03
コラム

骨粗鬆症の薬の種類一覧｜治療中の注意点や効果、選び方を解説

「骨粗鬆症と診断されたけど、薬の種類が多くて、どれが自分に合うかわからない」、そんな戸惑いや不安を感じていませんか？骨粗鬆症治療薬には、骨がもろくなるのを防ぐ骨吸収抑制薬や新しい骨を作る骨形成促進薬など、さまざまな種類が存在します。

この記事では、代表的な骨粗鬆症治療薬の効果や副作用、投与方法の違い、薬の選び方まで詳しく解説します。無理なく治療を継続し、いつまでも自分らしく歩き続けられる生活を目指しましょう。

当院では、骨粗鬆症をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修：川口 慎治

大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師

経歴： 徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務

専門分野：脊椎・脊髄外科

資格：
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医

骨粗鬆症治療の目的

骨粗鬆症治療の目的は、骨密度や骨質の指標を改善することだけではなく、以下のような目的もあります。

  • 骨密度を高め、骨折リスクの低減を目指す
  • くしゃみや転倒などによる骨折のリスクを減らす
  • 骨折による寝たきりを防ぐ
  • 骨折に対する将来への不安を和らげる

特に大腿骨や背骨の骨折は強い痛みを伴うだけでなく、歩行困難や寝たきりの原因にもなります。適切に治療することで骨折リスクの減少が期待され、健康寿命の延伸につながる可能性があります。

骨粗鬆症治療の目的を理解したうえで、原因や症状について知っておくと、予防や早期対策につながります。以下の記事では、骨粗鬆症の原因や放置するリスク、早期発見のポイントについて詳しく解説しています。
>>骨粗鬆症の原因は？症状や放置するリスク、早期発見のポイントを解説

骨粗鬆症治療薬の主な種類

骨粗鬆症治療薬の主な種類について、以下の4つを解説します。

  • 骨が壊れるのを防ぐ「骨吸収抑制薬」
  • 新しい骨を作る「骨形成促進薬」
  • 骨の材料を補うビタミンD・ビタミンK・カルシウム製剤
  • 投与方法の違い(飲み薬・注射・点滴)と選び方のポイント

骨が壊れるのを防ぐ「骨吸収抑制薬」

骨粗鬆症は、古い骨が壊され(骨吸収)、新しい骨が作られる(骨形成)過程のバランスが崩れることで発症します。骨吸収が過剰になり、骨がもろくなる状態を改善するために使用されるのが骨吸収抑制薬で、以下のような種類があります。

  • ビスホスホネート製剤
  • 抗RANKL抗体(デノスマブ)
  • 選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)

骨吸収抑制薬は、骨密度の低下を予防する効果が期待できます。

新しい骨を作る「骨形成促進薬」

骨形成促進薬は、骨芽細胞を活発にして新しい骨を作る作用があります。骨密度が低い方やすでに骨折してしまった方に使われることが多い薬です。骨形成促進薬の主な種類と特徴を以下の表にまとめています。

薬の種類 主な特徴
副甲状腺ホルモン(PTH)製剤(テリパラチド) ・骨芽細胞を活発にし新しい骨を作る
・骨密度を増やす効果が高い薬
・毎日または週に2回、自己注射
・週に1回、病院で皮下注射
抗スクレロスチン抗体製剤(ロモソズマブ) ・骨作りを促す作用と骨が壊れるのを抑える作用両方持つ新しいタイプの薬
・月に1回、病院で皮下注射

テリパラチドは治療期間が2年間まで、ロモスズマブは1年間と決められているなど、専門的な判断が必要です。医師が患者さんの状態を慎重に見極めたうえで処方します。

骨の材料を補うビタミンD・ビタミンK・カルシウム製剤

丈夫な骨を作るために重要な成分が、ビタミンDやビタミンK、カルシウムです。他の治療薬の効果を引き出すために使用されており、以下のような特徴があります。

  • 活性型ビタミンD3製剤：腸でカルシウムが吸収されるのを助ける
  • ビタミンK2製剤：カルシウムが骨に取り込まれるのを助け、骨の質を高める
  • カルシウム製剤：骨の主成分であるカルシウムを補給

食事から摂ることが基本ですが、治療中は十分な量を確保するため、薬として処方されることが多くあります。

投与方法の違い(飲み薬・注射・点滴)と選び方のポイント

骨粗鬆症治療薬は、投与方法もさまざまです。毎日飲む薬から年に1回の点滴まで、幅広い選択肢があります。どの方法が適切かは、ライフスタイルや病状によって異なります。それぞれの投与方法の違いと特徴は、以下のとおりです。

投与方法 頻度の例 特徴
飲み薬 ・毎日
・週に1回
・月に1回		 起床後すぐに服用する必要がある
注射 ・毎日
・週に1回
・月に1回
・半年に1回		 より高い効果を期待する場合に使用
点滴 年に1回 頻繁な通院が難しい場合にも治療を続けやすい

自身に合った治療法を見つけることが、骨折リスクを減らすための重要なポイントとなります。不安な点やわからないことは、医師に相談してください。

骨粗鬆症の治療にはさまざまな薬があり、それぞれ作用の仕組みや効果、使用できる期間が異なります。以下の記事では、骨粗鬆症の注射治療について効果や種類、副作用までわかりやすく解説しています。
>>骨粗鬆症の注射治療とは？効果や種類、副作用をわかりやすく解説

代表的な骨粗鬆症治療薬5系統の特徴

代表的な骨粗鬆症治療薬5系統には、それぞれ以下の特徴があります。

  • ビスホスホネート製剤：飲み薬・点滴・注射など選択肢が豊富
  • SERM(サーム)：女性ホルモンに似た作用で骨を守る
  • PTH製剤(テリパラチド)：骨形成を促す自己注射薬
  • 抗RANKL抗体(デノスマブ)：半年に1回の注射で骨吸収を抑制
  • 抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)：骨形成促進と吸収抑制を両立

ビスホスホネート製剤：飲み薬・点滴・注射など選択肢が豊富

ビスホスホネート製剤は、代表的な骨吸収抑制薬です。骨を壊す破骨細胞の働きを抑え、骨密度の低下を予防します。骨粗鬆症の治療で長く使われており、骨折を予防する効果が報告されています。飲み薬から注射、点滴までさまざまなタイプがあるため、ライフスタイルや希望に合わせて適切な治療薬が選択できます。

飲み薬の場合、効果を引き出すために重要なルールがあります。

  • 朝起きてすぐ、空腹の状態で飲む
  • コップ1杯(約180ml)の水で飲む(お茶やジュースは避ける)
  • 飲んだ後30分〜1時間は横にならず、飲食や他の薬の服用を避ける

副作用として、癌治療中の患者さん以外には稀ではありますが顎骨壊死(がっこつえし)が報告されています。特に、歯科治療後の内服開始が推奨されています。歯科治療を受ける際は、ビスホスホネート製剤を内服していることを歯科医師に伝えてください。

SERM(サーム)：女性ホルモンに似た作用で骨を守る

女性ホルモンのエストロゲンには骨を守る作用がありますが、閉経後はエストロゲンが急激に減少するため、骨がもろくなります。SERMは、エストロゲンと似た作用により骨破壊を穏やかに抑えるため、閉経後の骨粗鬆症に使用されます。

SERMは骨密度の増加ではなく骨の強さを維持することが期待されており、背骨の骨折予防の可能性が報告されています。1日1回食事の時間とは関係なく服用できる特徴があるため、生活に取り入れやすい利点があります。乳がんのリスクを減らす可能性も研究で報告されています。

注意点として血栓症のリスクが上昇する可能性があるため、過去に血栓症になったことがある方や現在治療中の方は使用できません。

テリパラチド(PTH製剤)：骨形成を促す自己注射薬

テリパラチドは骨形成促進薬です。骨芽細胞を活発にし、骨形成を促進する作用によって、骨折しにくい丈夫な骨を作ります。骨密度が低い方やすでに骨折を経験された方など、骨折のリスクが高い方に使われることが多い薬です。注射薬のため、患者さんご自身またはご家族が自宅で自己注射をします。

自己注射に恐怖を感じることもありますが、針は痛みが少ないように工夫されており、注射方法は看護師や薬剤師が指導します。テリパラチドは生涯で合計24か月までしか使えません。テリパラチドでの治療終了後は、別の骨形成促進薬に切り替えたり、骨吸収抑制薬に変更するなど、増やした骨を維持していくことが大切です。

抗RANKL抗体(デノスマブ)：半年に1回の注射で骨吸収を抑制

デノスマブは、骨吸収抑制薬に分類される抗RANKL抗体製剤です。破骨細胞の形成を抑制し、骨破壊を抑えることで骨密度を高める効果が確認されています。背骨だけでなく、腕や足の付け根といった全身の骨折予防の可能性が報告されています。デノスマブは6か月に1回、医療機関にて皮下注射を受けます。

年に2回の通院で済むため、忙しい方でも治療を続けやすい特徴があります。デノスマブ使用中は、血液中のカルシウム濃度が低くなる場合があるため、カルシウム製剤やビタミンD製剤を一緒に服用することが必須です。

抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)：骨形成促進と吸収抑制を両立

ロモソズマブは、骨形成促進作用と骨吸収抑制作用の働きをあわせ持つ、抗スクレロスチン抗体製剤です。骨密度を高める作用が確認されており、骨折リスクが高い患者さんに選択されます。ロモソズマブは1か月に1回、医療機関にて皮下注射をします。治療期間は12か月間です。

治療終了後は、増やした骨密度を維持するため、デノスマブやビスホスホネート製剤などの骨吸収抑制薬に切り替える治療が必要です。注意点として心臓や血管系の病気のリスクがわずかに上昇することが報告されているため、心筋梗塞や脳卒中の経験がある方は使用にあたって慎重な判断が必要です。

年齢・骨折リスク・生活スタイルに応じた薬の選び方

骨粗しょう症の薬は、年齢・骨折リスク・生活スタイルを総合的に考えて選ぶことが重要です。骨密度や過去の骨折歴だけでなく、他の病気の有無や日常生活のリズムも含め、患者さん一人ひとりに合った治療薬を選択します。治療方針を決める際は、次のポイントを確認します。

選択のポイント 確認内容
骨折リスクの評価 骨密度検査(DXA法)で測定し、特に背骨や太ももの付け根の骨折歴を重視する
体の状態・合併症 ・年齢や性別、閉経の有無、歯科治療予定などを考慮する
・閉経後の女性にはSERMが選択肢になることもある
生活スタイルや希望 通院頻度や服薬管理、自己注射への抵抗感を確認し、半年に1回の注射や年1回の点滴など柔軟に対応する

抜歯などの予定がある場合、一部の薬は顎の骨に影響する可能性があるため、事前に歯科医と連携が必要です。毎日の服薬が難しい場合は、週1回や月1回タイプの薬を選ぶことで、無理のない継続が可能になります。

治療時の注意点

骨粗鬆症治療時の注意点について、以下の4つを解説します。

  • 治療を始めるタイミング
  • 顎骨壊死・非定型大腿骨骨折など注意すべき副作用
  • 飲み忘れ・自己中断による骨折リスク
  • 他の薬との飲み合わせや持病がある場合の注意点

治療を始めるタイミング

以下のいずれかに当てはまる場合は、薬での治療開始を検討します。

  • 背骨や足の付け根を骨折した経験がある
  • 背骨や足の付け根以外の骨折経験があり、骨密度が若い人の80%未満
  • 骨折はないが、骨密度が若い人の70%未満

骨密度は若い人の平均値を100%とした「YAM(ヤム)値」で評価します。YAM値が低いほど、骨がスカスカで折れやすい状態と考えられます。

顎骨壊死・非定型大腿骨骨折など注意すべき副作用

骨粗鬆症治療薬には、注意すべき副作用が2つあります。起こる頻度はまれですが、万が一に備えて正しい知識を身につけることが重要です。

1つ目の副作用「顎骨壊死」とは、あごの骨が腐った状態になることです。ビスホスホネート製剤やデノスマブでの治療中に起こる場合があります。薬の作用で骨の代謝が変化しているため、傷の治りが通常より遅くなることが原因です。歯科医院にかかる際は、骨粗鬆症の治療中であることを歯科医師に伝えてください。

骨粗鬆症の治療を始める前に、虫歯や歯周病の治療、抜歯などを済ませておくことが理想的です。治療中に、あごの痛みや腫れ、歯がぐらつくなどの症状が出た場合は、すぐに主治医や歯科医師へ相談してください。

2つ目の非定型大腿骨骨折とは、転んだりぶつけたりしていないのに、太ももの付け根の骨(大腿骨)が骨折することです。ビスホスホネート製剤を数年以上の長期間使用している方に起こる場合があります。骨折が起こる前に、足の付け根や太ももに原因不明の鈍い痛みを感じることがあるため、痛みが続く場合は主治医に相談しましょう。

飲み忘れ・自己中断による骨折リスク

薬を飲み忘れてしまった場合は、薬の種類によって対応が異なるため、医師や薬剤師に相談してください。自己判断で2回分を一度に飲むようなことはしないでください。治療の自己中断により、改善していた骨密度が再び低下して骨折リスクを高める可能性があります。

デノスマブは注意が必要であるため、決められた間隔で治療を継続することが重要です。お薬カレンダーやスマートフォンのアラーム機能などを活用しながら、治療に取り組んでいきましょう。

他の薬との飲み合わせや持病がある場合の注意点

複数の病院から薬を処方されている場合、薬の飲み合わせに注意が必要です。お薬手帳を活用することによって、薬の重複や危険な飲み合わせを未然に防止できます。市販薬やサプリメントを飲んでいる場合も、忘れずに伝えてください。持病がある場合に関しても注意が必要です。

腎機能が低下している場合、薬の成分が体外に排出されにくいため、副作用が出やすくなる可能性があります。過去に血栓症になったことがある場合は、SERMは使用できません。治療を安全に進めるため、持病がある方は医師にお伝えください。

まとめ

骨粗鬆症治療薬には骨吸収抑制薬や骨形成促進薬などさまざまな種類があり、患者さん一人ひとりの状態に合わせて適切な治療法が選択されます。骨密度を改善するだけでなく、将来の骨折を予防し、ADL(日常生活動作)を維持することが骨粗鬆症治療の重要な目的です。

治療は長期間になりますが、薬だけに頼るのではなく、食事や運動などの日々の積み重ねも、丈夫な骨を作るためには欠かせません。不安なことやわからないことは、医師に相談してください。骨折リスクを減らし健康的な生活を続けることを目指していきましょう。

当院(大室整形外科 脊椎・関節クリニック)では、骨粗鬆症が心配な方や骨密度の低下を指摘された方に対して、専門医が丁寧に相談に応じます。「ちょっとした衝撃で骨折しないか不安」など気になる症状がある方は、一度ご相談ください。
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