腰椎すべり症の手術費用はどのくらい?保険適用の範囲と入院期間、治療法を解説
腰椎すべり症と診断され、「手術が必要」と言われると、多くの方が費用や入院期間の不安を抱きます。
- 「保険は使えるの?」
- 「どのくらい仕事を休まなければいけないの?」
そんな疑問を解消するには、治療法ごとの費用や入院期間の違い、公的制度の仕組みを正しく知ることが大切です。内視鏡手術なら3割負担で約25万円前後、高額療養費制度を使えば実質8万円程度まで軽減できる場合もあります。
この記事では、手術方法別の費用や入院期間の目安、保険適用の範囲、公的支援制度までをわかりやすく解説します。記事を読むことで、治療の選択肢を明確にし、経済的な不安を減らして、前向きに治療へ臨む準備が整います。
当院では、腰椎すべり症をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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記事監修:川口 慎治
大室整形外科 脊椎・関節クリニック 医師
経歴:
徳島大学医学部卒業後、洛和会音羽病院に勤務
京都大学医学部整形外科学教室入局
学研都市病院脊椎脊髄センター勤務
2023年より 大室整形外科 脊椎・関節クリニック勤務
専門分野:脊椎・脊髄外科
資格:
日本専門医機構認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
腰椎すべり症の主な治療法2つ
腰椎すべり症の治療は、まず保存療法から始め、それでも改善が見られない場合に手術を検討します。研究では、手術療法が保存療法よりも痛みの軽減や生活の質の改善に有効であることが報告されています。最近では、体への負担を最小限に抑えた安全性の高い手術方法も増えています。代表的な治療法として、以下の3つを紹介します。
- 保険適用:体への負担が少ない内視鏡下手術
- 保険適用:ぐらつく背骨を安定させる脊椎固定術
保険適用:体への負担が少ない内視鏡下手術
内視鏡下手術は、腰椎すべり症の手術の中でも体への負担が最も少ない治療法の一つです。背中に約1cmの小さな穴を開け、そこから細いカメラ(内視鏡)と器具を挿入して行うため、筋肉や組織を大きく傷つけずに神経の圧迫を取り除くことができます。医師はモニターで拡大映像を確認しながら、精密に手術を進めます。
内視鏡下手術の主なメリットは次のとおりです。
- 傷口が小さい:筋肉へのダメージを最小限に抑えられる
- 術後の痛みが少ない:体への負担が小さいため、回復までの痛みが軽い
- 回復が早い:入院期間が短く、早期に日常生活へ復帰できる
近年の研究では、内視鏡下手術(ED)は痛みや機能回復の面で短期・長期ともに最も良い結果を示したと報告されています。他の方法に比べて合併症の発生率がやや高いという指摘もありますが、再手術のリスクは低く、改善効果は高いことが確認されています。
早期回復を望む方や仕事・家庭の都合で長期入院が難しい方に適した選択肢の一つと言えます。
以下の記事では、腰椎すべり症の主な原因や、年代によって異なるリスク、治療法の選択肢をわかりやすく解説しています。
>>腰椎すべり症の原因と特徴!年代別リスクと治療法を解説
保険適用:ぐらつく背骨を安定させる脊椎固定術
脊椎固定術は、ずれて不安定になった背骨(腰椎)をスクリューやロッドで固定し、安定させることを目的とした手術です。腰椎すべり症では、背骨のぐらつきによって神経が刺激され、動くたびに強い痛みが出る場合があります。
脊椎固定術では、その不安定な部分を支えることで、腰への負担を軽減し、日常生活の動作をしやすくすることを目指します。この手術は、すべりの程度が大きい場合や、薬やリハビリなどの保存療法で症状の改善が見られない場合に検討されます。
手術では、神経の圧迫を取り除く「除圧」と、背骨を金属で支える「固定」を組み合わせて行い、再発を防ぐ工夫がされています。脊椎固定術は、内視鏡手術より体への負担は大きいものの、背骨のぐらつきが痛みの原因となっている方に選ばれることの多い治療法です。
手術方法別の費用目安
腰椎すべり症の手術費用は、保険が適用されるかどうかによって大きく異なります。一般的には健康保険が使える「保険診療」が中心ですが、保険の対象外となる自費診療を選ぶ方も増えています。保険が使える場合と使えない場合の費用の目安を解説します。
保険が使える手術の費用
保険が使える手術では、自己負担(3割負担)の金額は手術内容によって異なります。腰椎すべり症の手術は主に「除圧術」と「除圧固定術」に分かれ、背骨の安定化を行うかどうかで費用が変わります。以下におおまかな費用の目安をまとめました。
| 手術方法の種類 | 費用目安(3割負担) | 主な内容 |
| 除圧術 | 約25〜45万円 | 神経を圧迫している骨や靱帯を取り除き、神経の通り道を広げる |
| 除圧固定術 | 約60〜85万円 | 除圧に加えて、ずれた背骨を金属のスクリューなどで固定し、安定させる |
固定術が高額になるのは、背骨を支えるための金属器具(インプラント)を使用するためです。手術そのものにかかる費用の目安であり、入院中の食事代や個室利用時の差額ベッド代などは別途必要となります。
自己負担を軽減する公的制度
自己負担を抑えるには、公的制度を組み合わせて使うことが鍵です。医療費の上限を抑える仕組み、支払った分が戻る仕組み、休業中の収入を補う仕組みがあり、選択肢の費用対効果を高める助けになります。自己負担を軽減する公的制度について、以下の3つを解説します。
- 高額療養費制度
- 医療費控除
- 傷病手当金
高額療養費制度
高額療養費制度は、医療費の自己負担額に上限を設けることで、経済的な負担を軽減できる仕組みです。1か月(1日〜末日)の医療費が上限額を超えた場合、その超えた分が払い戻されます。事前に「限度額適用認定証」を保険組合や協会けんぽに申請します。
入院時に病院へ提示すれば、最初から上限額までの支払いで済むため、大きな出費を一時的に立て替える必要がありません。以下に、70歳未満の方の自己負担上限額の目安を示します。
| 年間所得の目安 | 1か月の自己負担上限額(目安) |
| 約370万円以下 | 57,600円 |
| 約370〜770万円 | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% |
| 約770〜1,160万円 | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% |
年収500万円の方が手術・入院で医療費総額が100万円かかった場合を考えます。3割負担だと30万円を支払う計算ですが、高額療養費制度を利用すれば約87,000円程度の支払いで済みます。この制度を事前に申請しておくことで、治療費の心配を減らし、安心して医療を受けられる環境を整えることができます。
医療費控除
医療費控除は、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税の一部が戻る制度です。高額療養費制度が「月単位」で負担を軽くするのに対し、医療費控除は「年単位」で家計を支える仕組みです。
翌年の2月16日〜3月15日に行う確定申告で手続きします。手術や入院の領収書は、必ず保管しておきましょう。主な対象となる支出は以下のとおりです。
- 手術費・入院費
- 医師から処方された薬代
- 通院時の交通費(電車・バスなど)
- ドラッグストアで購入した市販の痛み止め
- 治療目的で購入したコルセットやサポーター
ご自身の医療費だけでなく、生計を同じくする家族分も合算可能です。手続きはスマートフォンからでも行えるようになっており、手軽に申請できます。医療費控除を活用することで、実際に支払った手術費や治療費の一部が還付され、年間の負担を軽減する助けになります。
傷病手当金
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休み、収入が減ったときに生活を支えるための制度です。治療中の生活を安定させるための公的サポートとして、腰椎すべり症の手術やリハビリで長期間の休職が必要な場合にも利用可能です。
以下に、主な条件と支給内容をまとめます。
| 項目 | 内容 |
| 対象者 | 会社員や公務員など健康保険に加入している方 |
| 支給条件 | ・仕事以外の原因による病気やケガで療養中
・療養のため勤務できない状態 ・連続3日間休み、4日目以降も休職している ・休職中に給与が十分支払われていない |
| 支給額の目安 | 給与の約3分の2 |
| 支給期間 | 支給開始日から最長1年6か月 |
| 申請先 | 勤務先の人事・総務担当者、または加入している健康保険組合 |
傷病手当金の活用によって、治療に専念しながら生活費の不安を抑えることができます。制度の詳細や申請方法は、勤務先や健康保険組合に早めに確認しておくと安心です。
手術方法で変わる入院期間を比較
腰椎すべり症の手術後に必要な入院期間は、選ぶ手術方法によって大きく異なります。入院は体を休めるだけでなく、リハビリを通じて安全に日常生活へ戻るための重要なステップです。手術法ごとのおおまかな入院期間として、以下の3つを比較して解説します。
- 従来からの除圧術・固定術(約1~3週間)
- 体への負担が少ない内視鏡手術(4~10日)
- 日帰り治療が可能なPRP療法
従来からの除圧術・固定術(約1~3週間)
除圧術・固定術は、腰椎すべり症の治療法として長年行われてきた実績のある手術です。背骨のずれが大きい場合や神経の圧迫が強い場合に選択され、神経の通り道を広げたり、不安定な背骨を安定させたりすることを目的としています。
- 除圧術(じょあつじゅつ):神経を圧迫している骨や靱帯を削り、神経の通り道を広げる
- 固定術(こていじゅつ):医療用のネジ(スクリュー)や金属の棒(ロッド)を使い、ずれた背骨を正しい位置で固定・安定させる
これらの手術は、筋肉をある程度切開して行うため体への負担がやや大きく、入院期間はおよそ3週間が目安です。入院中の一般的な流れは次のとおりです。
- 手術後〜数日間:ベッド上で安静に過ごし、痛み止めの投与で痛みをコントロールする
- 手術後1週間ごろ:理学療法士と一緒に起き上がる練習や歩行訓練を開始する
- 手術後2〜3週間:階段の上り下りなど、退院後に必要な生活動作の練習を進める
入院期間はやや長くなりますが、医師やリハビリ専門スタッフに見守られながら、安心して回復に専念できる点が大きな特徴です。研究では金属で背骨を固定する手術は患者満足度が高い傾向にあることも報告されています。
体への負担が少ない内視鏡手術(3~10日)
内視鏡手術は、腰椎すべり症の手術の中で最も体への負担が少なく、短期間での回復が期待できる方法です。背中に約1cmの小さな穴を開け、カメラと細い手術器具を挿入して行うため、筋肉や骨を大きく傷つけることがありません。低侵襲(ていしんしゅう)手術と呼ばれ、痛みが少なく、入院期間は4~10日程度と短いのが特徴です。
手術翌日から歩行練習を始められる場合もあり、仕事復帰までの期間を短縮しやすい点が大きな利点です。ただし、他の手術と比較すると合併症の発生率がやや高いとの報告もあり、すべての方に適しているわけではありません。
体への負担を抑えながら早期の社会復帰を目指す方は、医師と相談し、自身の状態に合った治療法として検討しましょう。
以下の記事では、腰椎すべり症の悪化を防ぐために、日常生活で避けるべき行動や注意点を詳しく解説しています。知らずにやっている行動が症状を悪化させるリスクもあるため、ぜひご確認ください。
>>腰椎すべり症でやってはいけないこと!悪化を防ぐ対策や生活のポイント
まとめ
手術には、体への負担が少ない内視鏡手術など、さまざまな選択肢があります。入院期間や費用もそれぞれ異なるため、ご自身の症状や生活スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。
高額な医療費が心配な方も、高額療養費制度などの公的制度を活用すれば、経済的な負担を大きく軽減できます。大切なのは、一人で悩まず専門の医師に相談することです。この記事で得た知識を元に、ご自身の希望や不安をしっかりと伝え、納得のいく治療法を一緒に見つけていきましょう。
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参考文献
Jia H, Zhang Z, Qin J, Bao L, Ao J, Qian H. Management for degenerative lumbar spondylolisthesis: a network meta-analysis and systematic review basing on randomized controlled trials. Int J Surg, 2024, 110(5), 3050‑3059
