椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の違い｜原因や症状、治療法の比較

つらい腰の痛みや足のしびれを「椎間板ヘルニア」と自己判断していませんか？よく似た症状に「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」があります。神経が圧迫される点は同じでも、原因や症状は異なります。違いを知らずに自己流のケアを続けると、症状を悪化させてしまう可能性があります。

この記事では、専門的な視点から2つの病気を見分ける「5つの違い」を徹底比較します。ご自身の症状の本当の原因を突き止め、適切な治療をしましょう。

当院では、椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症をはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症5つの違い

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症について、大きな違いは以下の5つです。

• 発症しやすい年齢
• 発症する原因
• 痛みやしびれが現れる範囲
• 症状に影響を及ぼす姿勢
• 歩行困難につながる間欠性跛行の有無

発症しやすい年齢

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症では、発症しやすい年齢層が異なります。椎間板ヘルニアは、スポーツや仕事などで腰に急な負担がかかったときに起こりやすく、椎間板の中身が外に飛び出して神経を圧迫します。20～40代の若い方は椎間板に水分を多く含んでいるため、ヘルニアが発症しやすい傾向にあります。

脊柱管狭窄症は、50代以降の中高年の方に多く発症します。加齢に伴って背骨や周りの組織が少しずつ変化することが原因です。長年の負担が積み重なることで、神経の通り道である「脊柱管」が狭くなり、症状として現れます。若い方でも脊柱管狭窄症になることや、ご高齢の方が椎間板ヘルニアを発症することもあります。

発症する原因

椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板の一部が外に飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす病気です。背骨の骨と骨の間には、クッションの役割を果たす「椎間板」という軟骨があります。椎間板は、丈夫な膜とゼリー状の髄核でできています。

重い物を持ち上げたり、体を強くひねったりしたときに膜に亀裂が入り、中の髄核が外へ飛び出してしまうことがあります。飛び出した髄核が神経を圧迫し、痛みやしびれの原因となります。脊柱管狭窄症は、脊髄が通る「脊柱管」が狭くなり、神経全体が圧迫されることで症状が出る病気です。

加齢によって骨の変形(骨棘：こつきょく)や椎間板の変性、靭帯の肥厚などが起こると、脊柱管の内側が狭まり、神経の通り道が圧迫されます。神経が圧迫されることが痛みやしびれ、歩きにくさなどの原因になります。

以下の記事では、椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴やリスク要因、予防のポイントを詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアになりやすい人の特徴とは？リスクを高める要因と予防法を解説

痛みやしびれが現れる範囲

椎間板ヘルニアでは、飛び出した髄核が片側の神経だけを圧迫することが多いです。症状はお尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけて、片側の足に現れる傾向があります。脊柱管狭窄症では、脊柱管全体が狭くなることで、両側の神経が圧迫されやすくなります。症状は両足に現れることが多くなります。

痛みよりも、しびれやだるさが強く感じられることも少なくありません。狭窄の程度によっては、片側だけに症状が出る場合もあります。

症状に影響を及ぼす姿勢

椎間板ヘルニアは前かがみになったり、あぐらをかいたりすると、椎間板への圧力が高まり、神経を圧迫し、痛みが強くなります。椅子に座るときは前かがみになる傾向があるため、注意しましょう。

脊柱管狭窄症は、背筋を伸ばして立ったり歩いたりすると、脊柱管が狭まり神経への圧迫が強くなるため、痛みやしびれが悪化します。腰を反らす姿勢も症状に影響を及ぼす可能性があるため、注意しましょう。

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の症状の違いを理解して、正しい姿勢を心がけましょう。

歩行困難につながる間欠性跛行の有無

間欠性跛行(かんけつせいはこう)は、脊柱管狭窄症を疑うサインです。間欠性跛行とは、歩いていると足に痛みやしびれ、だるさが現れる状態です。少し休むと症状が和らぎ、再び歩けるようになります。

歩いているときは姿勢がまっすぐになるため、脊柱管が狭くなって神経への血流が悪くなり、しびれや痛みが出ます。前かがみになって休むと、脊柱管が広がって血流が回復し、症状が和らぐので、再び歩けるようになります。椎間板ヘルニアの場合、痛みによって長く歩けないことはありますが、間欠性跛行はみられません。

ヘルニアによる痛みは姿勢を変えてもすぐには治まらず、休んでも痛みが続くことが多いです。

治療法の選択

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の治療法について、以下の4つを解説します。

• 薬物療法
• ブロック注射
• リハビリテーション
• 手術療法(内視鏡手術・除圧術)

薬物療法

薬物療法は、痛みやしびれなどの症状をコントロールする治療です。痛みやしびれを和らげることで、日常生活の質を高め、リハビリテーションに取り組めるようにする目的もあります。患者さん一人ひとりの症状に合わせて薬を使い分けます。主な薬の種類は、以下のとおりです。

• 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)：炎症を抑えて、痛みや腫れを和らげる
• 神経障害性疼痛治療薬：神経の圧迫や損傷による痛み・しびれを軽減する
• 筋弛緩薬：こわばった筋肉をゆるめて血流を改善し、痛みを和らげる
• ビタミンB12製剤：傷ついた神経の回復を助け、正常な働きを支える

薬は、医師が症状の変化を見ながら、種類や量を細かく調整します。効果の感じ方には個人差があるため、ご自身の判断で中断せず、気になることは医師や薬剤師にご相談ください。

ブロック注射

飲み薬だけでは痛みをコントロールするのが難しい場合や、夜も眠れないほど痛みが強い場合に、ブロック注射を使用する場合があります。痛みの原因となる神経のすぐ近くに、麻酔薬や炎症を抑える薬を直接注射する方法です。痛みの信号が脳に伝わるのを一時的に遮断することで、つらい症状を和らげます。

ブロック注射には、痛みの悪循環を断ち切って症状を和らげる治療としての役割と痛みの原因を調べる診断の役割があります。痛みで日常生活に支障がある場合、ブロック注射は効果が期待できる治療法の一つです。

リハビリテーション

リハビリテーションは、薬や注射と並行して行う治療法で、再発を防ぐ体づくりを目指します。体の専門家である理学療法士が、一人ひとりの状態に合わせてプログラムを作成します。リハビリテーションの内容は、以下のとおりです。

• 運動療法：お腹の奥にある「体幹の筋肉」を鍛えて、背骨を安定させる
• 物理療法：温熱療法や電気治療などで筋肉の緊張をほぐし、血流を促して痛みを和らげる
• 日常生活指導：姿勢や生活習慣を見直して、再発を防ぐ

最近の研究では、手術を受けた後の機能回復においても、リハビリテーションが重要であることが報告されています。

手術療法(内視鏡手術・除圧術)

保存療法を数か月続けても症状が改善しない場合や、以下の症状が見られる場合に、手術を検討します。

• 激しい痛みが続く
• 足の麻痺が進行し、つま先立ちができないなど、筋力が低下している
• 尿が出にくい、便が出にくいなどの症状がある

排尿や排便の障害がある場合は、神経が強く圧迫されている可能性があり、緊急手術が必要になることもあります。気になる症状があれば、すぐに専門医に相談してください。手術の目的は、神経を圧迫している原因を取り除く「除圧」です。内視鏡を使った体への負担が少ない方法が主流で、傷口が小さく、入院期間も短くなっています。

腰部脊柱管狭窄症に対する「除圧術」は、症状を改善する効果が高く、標準的な治療法として確立されています。背骨を金属で固定する「固定術」は、背骨に不安定性があるなど、限られたケースで行われる手術です。手術を検討するときは、医師と十分に話し合い、納得のいく治療法を選択することが大切です。

以下の記事では、腰部脊柱管狭窄症に対する手術の成功率やリスク、回復までの流れについて詳しく解説しています。
>>腰部脊柱管狭窄症の手術成功率は？リスクや回復までの流れを解説

再発を防ぐための日常生活の工夫

再発を防ぐための日常生活の工夫として、以下の3つを解説します。

• 症状を和らげる姿勢を心がける
• コルセットを正しく活用する
• こまめにストレッチを取り入れる

症状を和らげる姿勢を心がける

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症では、症状が楽になる姿勢と、悪化する姿勢が正反対です。椎間板ヘルニアは背筋を少し伸ばすことで圧迫が和らぎます。脊柱管狭窄症は体を前にかがめると、脊柱管が少し広がるため、神経の圧迫が和らぎ、症状が楽になります。

ご自身の症状に合わせて、腰に負担の少ない姿勢を意識することが、痛みの管理と再発予防となります。症状を少しでも和らげるために、日常生活でできる工夫があります。寝るときに膝の下にクッションや丸めたタオルを入れましょう。座るときは椅子には深く腰掛け、背もたれに背中をつけると腰への負担が減ります。

物を拾うときには、膝を曲げて腰を落としてから物を持ち上げるように習慣づけましょう。

コルセットを正しく活用する

コルセットは、痛みが強い時期の動きをサポートし、腰の安定性を高めることが期待できる装具です。使い方を間違えると、回復を妨げる可能性もあります。重い物を持つ、長時間の立ち仕事や運転など、腰に負担がかかる場面で着用しましょう。

着用する際はきつく締めすぎると血行が悪くなる可能性があるため、深呼吸が楽にできる程度の強さで固定してください。コルセットは補助的な役割のため、症状が改善してきたら、医師と相談しながら着用時間を減らしていきましょう。

以下の記事では、椎間板ヘルニアに対するコルセットの効果や、正しい使い方・選び方について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアにコルセットの効果はある？正しい装着法と選び方を徹底解説

こまめにストレッチを取り入れる

腰痛の再発予防には、こまめなストレッチがおすすめです。長時間同じ姿勢を続けていると、筋肉がこわばって血流が悪くなり、腰に負担がかかりやすくなります。ストレッチを定期的に行うことで、筋肉の柔軟性が保たれ、体への負担を減らす効果が期待できます。

ストレッチを行うタイミングは、デスクワークや運転の合間、朝起きたときや就寝前のリラックスタイムが推奨されています。ストレッチは無理なくゆっくり行うのが基本です。痛みを我慢して無理に伸ばすのは逆効果になる場合もあるため注意が必要です。

動かしていて痛みを感じる箇所がある場合は、医師や理学療法士に相談したうえで、自分に合ったストレッチ方法を選びましょう。

まとめ

腰の痛みや足のしびれは、日常生活に影響を与えます。椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症は、原因や楽になる姿勢が異なるため、ご自身の症状を正しく知ることが適切な治療となります。「歳のせいだから」と諦めたり、自己判断で対処したりせず、専門の医療機関を受診することが重要です。

症状の原因を突き止め、ご自身に合った治療法を見つけるために、整形外科の医師にご相談ください。当院の受診をご希望の方は、まずはお電話にてご予約ください。詳しいアクセス方法は、当院の公式サイトをご覧ください。
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参考文献

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