患者さんの健康寿命を 延ばすことが 整形外科としての使命
中野 惠介院長
Keisuke Nakano
PROFILE医師紹介
専門分野
脊椎・脊髄外科
資格
- 日本整形外科学会認定 整形外科専門医
- 日本脊椎脊髄病学会 指導医
- 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
- 日本整形外科学会脊椎内視鏡手術技術認定医
- 日本スポーツ協会スポーツドクター
- 2021年TOKYO 2020 パラリンピック
アーチェリー競技医療スタッフ
経歴
- 昭和53年
- 弘前大学医学部 卒業
弘前大学医学部整形外科 入局
- 昭和57年
- 弘前大学大学院医学研究科
弘前大学医学部附属病院整形外科 助手
- 昭和59年
- 米国オハイオ州Case Western Reserve大学留学
- 昭和60年
- 八戸市立市民病院整形外科 医長
- 平成元年
- 弘前記念病院副院長
- 平成4年
- 青森整形外科クリニック開業
- 平成21年
- 高岡整志会病院 診療部長
- 平成27年
- 高岡整志会病院 副院長
- 平成30年
- 牧整形外科病院
(現おおさかグローバル整形外科病院)脊椎センター長
- 令和6年
- 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 院長就任
恩師の誘いをきっかけに脊椎外科へ
もともとは、整形外科分野のなかでも股関節などに興味がありました。
しかし、私が弘前大学の医局に入局した当時の教授である東野修治先生と、助教授の原田征行先生それぞれから、脊椎について勉強してみないかと声をかけられたのです。残念ながらおふたりともすでに鬼籍に入られていて、今となってはなぜ脊椎の勉強をすすめられたのかは分からないのですが。ふたりの恩師からそのようなお誘いをいただいたので、脊椎の研究をすることに決めました。そしていざ研究を始めてみると、CTやMRIを用いた病態の解明や、手術手技、インプラントの開発など、私にとって非常に面白いものだったのです。そこからは脊椎外科の道へまっしぐらでした。
脊椎の研究は原田先生のもとで行っていたので、原田先生からは脊椎外科医としての心構えや診断学など、研究にあたっての礎となる部分を仕込まれました。東野先生はとにかく人格者でした。教授回診についたとき、どんな患者さんに対しても必ず腰を落とし、目の高さを合わせてお話しされている姿が印象的で、「医師や研究者としての人格・考え方はこうあるべきだ」という根本的なことを教わりました。今でも“上から目線にならないようにする”“患者さんと同じ目線で話をする”ということには、とても気を付けています。
常に実践させることで人を育てる
これまでにさまざまな先生にお世話になり、今では後進を育成する立場になっています。
今後は私が先輩方から学んだ多くのことを後進に伝える“技術の伝承”に、より力を注いでいきたいと考えています。後輩医師を指導するときに一番大切にしていることは“常にやらせてみる”ということ。昔の海軍軍人、山本五十六(やまもといそろく)の言葉で「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」というものがありますが、まさにその通りだと考えています。やってみなくては分からないこともたくさんありますから。
それから常々、“引き出しを増やしたほうがよい”ということも伝えています。たとえば、手術のプランを1つしか持っていない医師が手術をして、途中でうまくいかなくなった場合、パニックになってしまいます。それが結果的に患者さんの不利益につながることもあり得る。ですから、手術をするときにはプランを3つくらいまで考えておく必要があります。これが“引き出しを増やす”ということ。さらに言えば、引き出しを増やすためには感性を磨く必要がある、というのが私の考えです。感性を磨くために、常にあらゆることに対してアンテナを張り巡らせて、いろいろなことをやってみよう、見てみよう、聞いてみよう、といった姿勢でいることが重要なのではないでしょうか。
肩肘張らずに、どんなときでも周りをみる余裕を
若い頃は、早く手術の腕前を磨きたい、ナンバーワンになりたいなどと考えていましたが、今では目の前の患者さん一人ひとりにじっくり向き合ってしっかりと治したいという気持ちが強くなりました。
ですから、患者さんには気になることや分からないこと、不安なことは本当になんでも遠慮なく聞いてもらえればと思いますし、それができる雰囲気を私が作っていかなくてはなりません。そのためにも、私自身があまり肩肘張りすぎずに、どんなときでも周りをみる余裕を持っていられるよう心がけています。
また、目の前にいる患者さんをよくするためにも、常に最新の情報に敏感に、医療を学び続ける姿勢を忘れずにいたい。整形外科分野に限らず、医療の世界は日々進歩していますから。そういった“日々勉強”の部分に整形外科医としてのやりがいも感じています。
健康寿命の延伸という、整形外科医としての使命を果たしたい
高齢になると、手術に耐える体力がないために手術を見送る場合もあります。ですが低侵襲(身体的な負担が少ない)手術であれば、比較的体力の消耗や体への負担を少なくできる。
私は、超高齢化社会といわれる日本において、今後ますます低侵襲手術の需要が高くなってくるのではないかと考えています。現在の日本では年々平均寿命が延びてきていますが、高齢の方は転倒や骨粗しょう症などによって大腿骨(だいたいこつ)や脊椎(背骨)を骨折し、結局寝たきりになってしまっているケースも少なくない。また、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)や変形性脊椎症などの整形外科的疾患があると、痛みを避けるために活動量が減っていきます。そうすると、最終的に体力や認知機能が衰えてしまい、QOL(生活の質)が下がる。
このように、整形外科的疾患と健康寿命には関連性があります。私は、低侵襲手術によって高齢の方でも手術を受けられるようになることが、健康寿命の延伸につながると考えています。そして健康寿命を延ばすことは、整形外科医としての使命のひとつでもあると。そのため、今後も低侵襲の脊椎手術にこだわりを持って、使命を果たすために日々まい進していきたいと思っています。