コラム

椎間板ヘルニアの足の痛みを和らげる方法!症状軽減のコツと自宅でできる応急処置

足の痛みやしびれでお困りではありませんか?椎間板ヘルニアが原因かもしれません。現代人の多くが悩まされる椎間板ヘルニアは、放っておくと日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。

この記事では、椎間板ヘルニアによる足の痛みのメカニズムや症状を和らげる方法、自宅でできる応急処置を解説します。つらい痛みから解放され、快適な毎日を取り戻すためのヒントが満載です。ぜひ、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてください。

当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアで足が痛むメカニズム

椎間板ヘルニアで足が痛むメカニズムについて、以下の内容を解説します。

  • 椎間板ヘルニアで足が痛む理由
  • 症状の現れ方と注意点

椎間板ヘルニアで足が痛む理由

椎間板ヘルニアで足が痛むのは、背骨の椎骨の間にある椎間板が破れ、中の髄核が飛び出して神経を圧迫するためです。神経が圧迫されると痛みやしびれといった症状が現れます。腰の神経が圧迫されると、神経がつながっているお尻や太もも、ふくらはぎ、足へと痛みやしびれが放散します。

お尻から足にかけて伸びている坐骨神経が圧迫されると、坐骨神経痛と呼ばれる症状が現れます。坐骨神経痛の症状は、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先まで広範囲に痛みやしびれが生じます。背骨は、多くの椎骨が積み重なりできていて、それぞれの椎骨の間には、クッションの役割を果たす椎間板があります。

椎間板は、外側を覆う丈夫な線維輪と、内側にあるゼリー状の髄核で構成されています。椎間板のおかげで、身体を滑らかに曲げたり、ねじったりできます。

症状の現れ方と注意点

椎間板ヘルニアの足の痛みは、鈍い痛みから鋭い痛み、ジンジンとしたしびれまでさまざまです。痛みの程度は、飛び出した髄核の大きさや、神経の圧迫具合により異なります。症状が現れる場所も、ヘルニアが発生した場所によって異なります。第4腰椎と第5腰椎の間でヘルニアが起こると、以下の場所に症状が現れやすいです。

  • お尻から太ももの外側
  • すねの外側
  • 足の甲
  • 足の親指

第4腰椎と第5腰椎の間でヘルニアが起こると、足首や足の親指を上に反らしにくくなります。第5腰椎と第1仙椎の間でヘルニアが起こると、以下の場所に症状が現れやすいです。

  • お尻から太ももの裏側
  • ふくらはぎ
  • 足の裏
  • かかと
  • 足の小指側

第5腰椎と第1仙椎の間でヘルニアが起こると、つま先立ちがしにくくなったり、アキレス腱反射が弱くなったりします。痛みやしびれの他に、足に力が入りにくく、感覚が鈍くなることもあります。重症化すると、排尿や排便に問題が生じる可能性もあります。

症状が現れた場合は、放置せずに速やかに医療機関を受診することが重要です。適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響を軽減できる可能性があります。

椎間板ヘルニアにおいて、避けるべき動作や習慣を正しく知っておくことも予防・再発防止に役立ちます。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法

椎間板ヘルニアの症状を軽減するコツ

椎間板ヘルニアによる症状を軽減するコツとして、以下の3つを解説します。

  • 軽いストレッチ
  • 椅子や寝具の見直し
  • 腰に負担をかけない動作

軽いストレッチ

軽いストレッチは、血行を促進し、筋肉の緊張をほぐす効果が期待できます。硬くなった筋肉をストレッチで伸ばすことで、神経への圧迫を軽減し、痛みやしびれを和らげることに役立つ可能性があります。軽いストレッチについて、以下の3つをご紹介します。

  • ハムストリングスのストレッチ
  • 股関節のストレッチ
  • 梨状筋のストレッチ

ハムストリングスのストレッチ

ハムストリングスのストレッチの手順は以下のとおりです。

  1. 床に仰向けになり、片方の足をまっすぐ天井に向けて持ち上げる
  2. 持ち上げた足の太もも裏側を両手で支え、息を吐きながらゆっくりと膝を伸ばしていく
  3. 痛みを感じない程度に伸ばし、20~30秒ほどキープする
  4. 反対側の足も同様に行う

筋肉を傷めないよう、勢いをつけずに行うことがポイントです。ハムストリングスは大腿裏側の筋肉群で、骨盤と膝関節をつないでいます。ハムストリングスの筋肉が硬くなると、骨盤が後傾し、腰椎への負担が増加して、椎間板ヘルニアの症状悪化の可能性があります。

股関節のストレッチ

股関節のストレッチの手順は以下のとおりです。

  1. 床に仰向けになり、両膝を立てる
  2. 片方の足を反対側の太ももに乗せ、両手で太もも裏側を抱える
  3. 腰が反らないように注意し、息を吐きながら、ゆっくりと胸のほうへ引き寄せる
  4. 20~30秒ほどキープする
  5. 反対側の足も同様に行う

股関節は、骨盤と大腿骨をつなぐ関節で、体幹と下肢の動きをつなぐ重要な役割を担っています。股関節の柔軟性を高めることで、腰椎への負担を軽減し、椎間板ヘルニアの症状を改善する可能性があります。股関節のストレッチは、腰痛予防にも効果を期待できます。

梨状筋のストレッチ

梨状筋のストレッチの手順は以下のとおりです。

  1. 床に仰向けになり、両膝を立てる
  2. 片方の足首を反対側の膝の上に乗せる
  3. 両手で下の足の太もも裏側を抱え、息を吐きながら胸のほうへ引き寄せる
  4. 腰が反らないように注意し、20~30秒ほどキープする
  5. 反対側の足も同様に行う

梨状筋はお尻の深部に位置する筋肉で、坐骨神経の近くを通っています。梨状筋が硬くなると坐骨神経を圧迫し、坐骨神経痛を引き起こす可能性があります。梨状筋のストレッチを行うことで、坐骨神経痛の予防・改善につながります。

以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説

椅子や寝具の見直し

長時間座る場合は、椅子選びが重要です。身体に合わない椅子に座り続けると、腰への負担が増大し、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。背もたれのある椅子を選び、深く腰掛けて背筋を伸ばすようにします。理想的な姿勢は、座面に深く腰掛け、背もたれに背中を預け、足の裏全体が床につく状態です。

低反発クッションなどを活用して、腰への負担を軽減することも目指せます。低反発クッションは、腰の形状に合わせて変形するため、体圧を分散し、腰への負担を軽減する効果が期待できます。マットレスは、適度な硬さを選び、仰向けで寝る場合は膝の下にクッションを置くなどして、腰の自然なカーブを保ちましょう。

腰の自然なカーブを保つことで、椎間板への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐことが期待できます。柔らかすぎるマットレスは腰を沈み込ませてしまい、椎間板への負担を増大させる可能性があります。

腰に負担をかけない動作

以下の動作を意識的に行うことで、腰への負担を軽減し、より快適に過ごすことができます。

  • 荷物の持ち上げ方
  • 靴の履き方
  • 立ち姿勢

重い物を持ち上げる際は、腰を曲げずに、膝を曲げて腰を落とし、背筋を伸ばしたまま持ち上げましょう。荷物の重さを分散するために、リュックサックの使用や、両手でバランス良く持つことも心がけてください。靴を履くときも、立ったままではなく、椅子に座るかしゃがんで履くようにしましょう。

しゃがむ際は、できるだけ腰を落とさずに、膝を曲げるように意識してください。たまに姿勢を変えたり、片足を少し前に出して腰を休ませたりするなどの工夫も大切です。動作を意識することで、腰への負担を軽減し、椎間板ヘルニアの症状悪化を防ぐことにつながります。

自宅でできる応急処置

ご自宅でできる応急処置については以下のとおりです。

  • 安静にする
  • 痛み止めを服用する

安静にする

椎間板ヘルニアによる足の痛みが強いときは、まずは安静にすることが重要です。安静にすることで、炎症の悪化を防ぎ、自然治癒力を高めることができます。横になる場合は、仰向けよりも横向きに寝るのがおすすめです。横向きに寝ると、腰椎にかかる負担を軽減し、痛みを和らげることができます。

膝を軽く曲げ、抱き枕やクッションなどを抱えることで、より腰への負担軽減を目指せます。抱き枕やクッションがない場合は、タオルケットやバスタオルを丸めて代用しても構いません。しかし、長期間の寝たきりは、筋肉が衰え、関節の柔軟性が低下するため、安静にしすぎるのも逆効果です。

痛みが少し落ち着いてきたら、軽いストレッチや散歩など、無理のない範囲で身体を動かしましょう。日常生活で痛みを感じない程度の活動を行うことで、筋力や柔軟性を維持し、再発予防にもつながります。

具体的には、最初のうちは10分程度の軽い散歩から始め、徐々に時間を延ばしていくと良いです。痛みが増す場合は、活動を中止し、安静にする時間を増やしてください。

痛み止めを服用する

市販の痛み止めを服用することで、一時的に痛みを和らげることができます。薬局で購入できる一般的な鎮痛剤には、以下の種類があります。

  • アセトアミノフェン
  • イブプロフェン
  • ロキソプロフェン

鎮痛剤は、痛みや炎症を引き起こす物質の生成を抑えることで効果を発揮する可能性があります。ご自身の症状や体質、他の持病や服用中のお薬との飲み合わせなどを考慮し、薬剤師に相談して適切な薬を選びましょう。痛み止めの種類によって、効果や副作用、注意点が異なります。

痛み止めは痛みを抑えるためのもので、ヘルニアの状態が改善するわけではありません。市販薬で痛みが治まらない場合や、長引く場合は、医療機関を受診しましょう。医療機関を受診すると、医師の診察のもと、より効果の高い処方薬の処方を期待できます。

神経障害性疼痛に効果の期待できるプレガバリンや、炎症を抑える作用の強いステロイドなどが処方されることもあります。

椎間板ヘルニアの4つの治療法

椎間板ヘルニアの治療は、大きく分けて保存療法と手術療法の2つに分類されます。保存療法は手術をせずに痛みを和らげ、日常生活を取り戻すための治療法です。椎間板ヘルニアの4つの治療法は以下のとおりです。

  • 薬物療法
  • 理学療法
  • 手術療法
  • 装具療法

薬物療法

薬物療法は、痛みや炎症、筋肉の緊張、神経の損傷による症状を和らげることを目的としています。薬物療法について、以下の表にまとめました。

薬の種類 代表的な薬剤例 作用・効果 注意点・副作用
鎮痛薬 アセトアミノフェン 比較的副作用が少なく、痛みを緩和 比較的副作用が少ない
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) ・ロキソプロフェンナトリウム
・イブプロフェン
痛みと炎症を抑える ・胃腸障害などの副作用に注意
・服用時に胃を保護する薬を一緒に処方する場合がある
筋弛緩薬 ・ミオナール
・テルネリン
筋肉の緊張を和らげることで、痛みを軽減 眠気やめまいなど中枢神経系の副作用の可能性がある
神経障害性疼痛治療薬 ・プレガバリン
・デュロキセチン
神経の損傷による痛みやしびれを緩和 めまいや眠気などの副作用に注意

薬物療法の薬剤は、患者さんの症状や体質、他の疾患や服用中の薬との相互作用などを考慮して、医師が慎重に選択します。効果や副作用には個人差があるため、自己判断で服用を中断したり、量を変更したりすることは危険です。必ず医師の指示に従って服用してください。

理学療法

理学療法は、運動や物理療法を用いて、痛みを軽減し、身体の機能を回復させることを目的としています。理学療法士による指導のもと、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、以下の内容のプログラムを作成して実施します。

  • ストレッチ
  • 筋力トレーニング
  • 温熱療法
  • 牽引療法

ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、関節の動きをスムーズにすることで、痛みを和らげ、再発を予防します。ハムストリングスや股関節周囲の筋肉、梨状筋などのストレッチは、椎間板ヘルニアによる足の痛みに効果を期待できます。

筋力トレーニングは、弱くなった筋肉を鍛えることで、身体を支える力を強化し、姿勢を改善します。腹筋や背筋などの体幹を鍛えることで、腰への負担を軽減し、再発予防につながります。温熱療法は、温熱により血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。温熱療法は、ホットパックや温罨法などが用いられます。

牽引療法は、椎間板にかかる圧力を軽減し、痛みを和らげます。理学療法は、日常生活での姿勢や動作の改善指導も行います。正しい姿勢や動作を身につけることで、腰への負担を軽減し、再発を予防できます。

手術療法

保存療法で効果が得られない場合や、神経の麻痺が進行している場合などは、手術療法が検討されます。手術療法には、従来の開腹手術だけでなく、内視鏡を用いた低侵襲手術など、さまざまな方法があります。近年、腰椎全内視鏡的椎間板切除術が注目されています。

腰椎全内視鏡的椎間板切除術は、小さな切開部から内視鏡を挿入し、ヘルニアを摘出する方法です。手術後は身体に負担が少ないため、早期の社会復帰が期待できます。椎間孔内または超椎間孔内LDH(腰椎椎間板ヘルニア)の場合、TELD(椎間孔内内視鏡的椎間板切除術)が推奨されます。

医師とよく相談し、症状やリスク、メリットなどを理解したうえで、手術を受けるかどうかを判断することが重要です。手術後はリハビリテーションが必要になります。

装具療法

装具療法は、コルセットなどの装具を装着して腰を支え、負担を軽減する治療法です。痛みが強い時期や、安静が必要な時期に有効です。装具は、腰椎の動きを制限して患部を安定させ、痛みを和らげる効果が期待できます。装具の種類や装着時間は、症状に合わせて医師が判断します。

長期間の装具装着は、筋力の低下につながる可能性もあるため、医師の指示に従うことが大切です。装具の使用目的は、あくまで安静時や動作時の痛みを軽減することであり、装具に頼りきりにならないように注意が必要です。

病院を受診する目安

病院を受診する目安は、安静にしていても痛みが治まらない、あるいは痛みが数日以上続く場合です。夜間や早朝に痛みが増強する場合は、炎症が進行している可能性があるので要注意です。痛みやしびれの程度が徐々に強くなっている場合も、受診をおすすめします。

初期は軽い症状でも、放置すると神経への圧迫が強まり、症状が悪化していく可能性があります。痛みやしびれだけでなく、以下の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  • 足の筋力低下:つま先立ちや、かかと歩きが困難になる
  • 感覚の異常:足の皮膚の感覚が鈍くなる、あるいは過敏になる
  • 排尿・排便障害:尿が出にくい、あるいは尿漏れや便秘、便失禁などが見られる

排尿・排便障害が現れた場合は、緊急性が高いため、救急車を呼ぶかすぐに医療機関を受診しましょう。日常動作で痛みが強くなる場合は、椎間板ヘルニアの可能性を疑い、整形外科の受診をおすすめします。早期に適切な診断と治療によって、症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。

まとめ

椎間板ヘルニアとは、線維輪が破れて髄核が飛び出し、周囲の神経を圧迫する状態です。神経の圧迫が、痛みやしびれの原因になります。椎間板ヘルニアの痛みは、鈍い痛みから鋭い痛み、ジンジンとしたしびれまであります。

椎間板ヘルニアは、軽いストレッチや、椅子や寝具の見直し、日常生活での動作を意識するだけでも、痛みが和らぐ可能性があります。自宅でできる応急処置は、安静にする、痛み止めを服用するなどがおすすめです。

一時的な対処法なので、痛みが長引いたり、強くなったりする場合は、自己判断せずに、医療機関を受診しましょう。専門家の適切な診断と治療を受けることで、痛みの改善が期待でき、日常生活の質向上につながる可能性があります。

治療法の選び方や生活習慣の整え方をしっかり把握しておくことが、回復への近道となります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの具体的な治療法や、回復を助ける日常生活の工夫について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介

参考文献

Vit Kotheeranurak, Wongthawat Liawrungrueang, Javier Quillo-Olvera, Christoph J Siepe, Zhen Zhou Li, Pramod V Lokhande, Gun Choi, Yong Ahn, Chien-Min Chen, Kyung-Chul Choi, Facundo Van Isseldyk, Vincent Hagel, Sairyo Koichi, Christoph P Hofstetter, David Del Curto, Yue Zhou, Chen Bolai, Jun Seok Bae, Muhammed Assous, Guang-Xun Lin, Khanathip Jitpakdee, Yanting Liu, Jin-Sung Kim.Full-Endoscopic Lumbar Discectomy Approach Selection: A Systematic Review and Proposed Algorithm.Spine (Phila Pa 1976),2023,48,8,p.534-544