椎間板ヘルニアを早く治す方法!食事のポイントやストレッチも紹介
椎間板ヘルニアになると、腰や足に痛みやしびれが出て、日常生活にも支障が出てきます。椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッションの役割を果たす椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす疾患です。症状が続くと慢性化することもあり、場合によっては手術が検討されます。
本記事では、椎間板ヘルニアの症状改善に役立つ可能性のある方法を3つのステップで解説します。食事で意識したいポイントや、避けたほうが良い行動、具体的な症状についても詳しくご紹介します。症状の緩和に役立つ情報として、ぜひご参考ください。
当院では、椎間板ヘルニアをはじめとした整形外科疾患に対し、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。不安な症状がある方も安心してご相談いただけるよう、以下の記事で診察の流れや受付方法を詳しくまとめています。
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椎間板ヘルニアを早く治すための3つのステップ
椎間板ヘルニアの症状改善に役立つ可能性のある以下の3つを解説します。
- 安静で神経の炎症を抑える
- 適度な運動とストレッチで痛みを和らげる
- 正しい姿勢を意識して再発を予防する
安静で神経の炎症を抑える
椎間板ヘルニアの初期には、神経の圧迫によって炎症が起きることがあります。炎症を抑えることが、痛みを和らげる一つの方法とされています。痛みが強いときは、無理に動かず安静にすることが勧められています。安静にすることで、炎症の悪化を防ぎ、自然治癒力を助ける可能性があります。
横になるのがつらい場合は、楽な姿勢で座ることも一つの選択肢です。中腰や前かがみの姿勢は避け、腰に負担をかけないことが大切です。背筋を伸ばした姿勢を保つことが推奨されています。
適度な運動とストレッチで痛みを和らげる
痛みが少し落ち着いてきたら、適度な運動とストレッチを始めましょう。運動不足は、筋肉が弱り、血行が悪化するため、痛みが長引く原因になります。ウォーキングや水泳など、腰に負担の少ない有酸素運動がおすすめです。
ウォーキングは、1回20~30分程度を目安に、無理のないペースで行いましょう。正しい姿勢を意識して歩くことで、腹筋や背筋が鍛えられ、腰への負担を軽減できます。水泳は、水の浮力が腰への負担を軽減するため効果的です。水中では、関節への負担が少なく、無理なく全身運動を行えます。
ストレッチも、筋肉の緊張をほぐし、痛みを和らげる効果があります。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行うことが大切です。ストレッチは、毎日継続して行うことで効果を発揮します。入浴後など、体が温まっているときに行うと効果的です。
自己流は症状を悪化させる可能性もあるため、必ず医師や理学療法士の指示に従いましょう。間違ったストレッチのやり方は逆に症状を悪化させる恐れがあります。以下の記事では、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法や、実践時の注意点について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアのストレッチ方法|症状を和らげるポイントも解説
正しい姿勢を意識して再発を予防する
椎間板ヘルニアは、再発しやすい病気です。再発予防のために、正しい姿勢を意識することが大切です。正しい姿勢を維持することで、椎間板への負担を軽減し、再発のリスクを減らすことができます。
立っているときは、背筋を伸ばし、お腹に力を入れるようにしましょう。座っているときは、深く腰掛け、背もたれを使うようにします。猫背にならないように注意し、長時間同じ姿勢を続けないように心がけましょう。1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチを行うなど、こまめに姿勢を変えることが重要です。
重い物を持ち上げる際は、腰を落として持ち上げるようにしましょう。腰に負担がかかる動作は避け、正しい姿勢を保つことで、再発を防ぐことができます。日常の動作一つひとつを意識することで、椎間板ヘルニアの再発リスクを大きく減らすことが可能です。
椎間板ヘルニアに効果が期待できる食事と栄養
椎間板ヘルニアに効果が期待できる食事と栄養について、以下の3点を解説します。
- 積極的に摂りたい栄養素
- 摂取を控えたい食品
- 食事療法の注意点
積極的に摂りたい栄養素
椎間板や骨の健康維持に関わる栄養素はいくつかありますが、特に以下の3つは健康的な体づくりに重要とされています。
- コラーゲン
- ビタミンD
- 抗酸化物質
コラーゲンはタンパク質の一種で、骨や軟骨、椎間板の構成成分です。体内で生成されますが、加齢とともに生成量は減少します。鶏肉や魚、ゼラチン質の多い食品、豚足などに含まれています。バランス良く摂ることは、体の組織の健康維持に役立つ可能性があります。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の形成に関わる栄養素です。主に鮭やマグロ、イワシなどの魚類、きのこ類、卵に含まれています。日光浴によって体内でも生成されます。十分な量を生成するには、1日に15~30分程度、日光に当たることが望ましいです。
抗酸化物質は活性酸素を減らす働きがあり、体の健康維持に役立つ可能性があります。代表的な抗酸化物質には、ビタミンCやビタミンE、β-カロテン、ポリフェノールなどがあり、緑黄色野菜や果物、緑茶などに多く含まれます。活性酸素は加齢のほか、紫外線や喫煙、ストレス、大気汚染によっても増えるため、なるべく避けるように意識しましょう。
栄養面はあくまで椎間板や骨の健康を支える一要素として位置づけられ、椎間板ヘルニアの根本的な予防や治療には医療機関での診断・管理や生活習慣の改善が不可欠です。
摂取を控えたい食品
椎間板ヘルニアを悪化させる可能性のある食品も存在します。完全に断つ必要はありませんが、摂りすぎには注意が必要です。特に摂取を控えたい食品は以下のとおりです。
- 糖質の多い食品
- 脂質の多い食品
- 刺激物
糖質の多い食品とは、砂糖やお菓子、白米など精製された炭水化物などです。糖質の多い食品は、血糖値を急上昇させ、インスリンの過剰分泌を招き、炎症を促進する可能性があります。椎間板への負担が増えると、痛みを悪化させる可能性があります。玄米や全粒粉パンなど、精製度の低い食品を選ぶように心がけましょう。
脂質の多い食品(揚げ物や脂身の多い肉など)は、体重増加につながりやすく、椎間板への負担を増大させます。飽和脂肪酸は炎症を促進する可能性があるため、摂りすぎには注意が必要です。魚に多く含まれる不飽和脂肪酸は、炎症を抑える効果が期待できます。良質な脂質を摂取するように心がけましょう。
アルコールやカフェイン、香辛料などの刺激物は、炎症を悪化させる可能性があります。痛みが強い時期は、控えることをおすすめします。カフェインの利尿作用により、体内の水分が排出され水分不足になる可能性があります。水分不足は椎間板の弾力性を低下させるため、注意が必要です。
食事療法の注意点
椎間板ヘルニアの食事療法は、栄養素の摂取だけでなく、食事全体のバランスや食べ方にも注意する必要があります。食事療法の注意点は、以下のとおりです。
- バランスの良い食事を心がける
- よく噛んで食べる
- 水分を十分に摂る
特定の栄養素だけを過剰に摂取するのではなく、五大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)をバランス良く摂取することが重要です。主食、主菜、副菜をそろえることで、必要な栄養素を満遍なく摂取できます。偏った食事は、栄養不足や過剰摂取につながり、健康を損なう可能性があります。
よく噛むことで消化が促進され、栄養素の吸収率が高まります。満腹感を得やすくなるため、食べすぎを防ぐことにもつながります。一口30回を目安によく噛んで食べましょう。唾液には消化酵素が含まれており、よく噛むことで食物が細かく砕かれ、消化酵素がより効果的に作用します。
水分は、椎間板の弾力性を維持するために不可欠です。椎間板は、水分を多く含むことでクッションとしての機能を維持しています。水分不足は、椎間板の弾力性を低下させ、椎間板ヘルニアのリスクを高める可能性があります。栄養素の運搬や老廃物の排出にも重要な役割を果たしています。1日に1.5~2リットル程度の水分をこまめに摂るようにしましょう。
毎日の食事を改善することで、椎間板ヘルニアの症状改善と、再発予防につながります。食事療法は、薬物療法や手術療法ほどの即効性はありませんが、長期的な視点で健康を維持するために重要です。
セルフケアの注意点(やってはいけないこと)
椎間板ヘルニアのセルフケアでやってはいけないこと、注意すべき点について、以下の3つを解説します。
- 激しい運動や無理なストレッチは避ける
- 長時間の同じ姿勢を続けない
- 痛みを我慢して動き続けない
激しい運動や無理なストレッチは避ける
椎間板ヘルニアで痛みやしびれがあるときは、激しい運動や無理なストレッチは避けてください。ジャンプやランニング、重いものを持ち上げる、腰をひねるといった動作は、椎間板に大きな負担をかける可能性があります。炎症を起こしている神経をさらに刺激し、痛みやしびれを増強させる可能性があります。
痛みがある部分を無理にストレッチすると、炎症を悪化させたり、神経をさらに圧迫したりする危険性も高まります。椎間板ヘルニアの初期、特に痛みが強い時期は、安静にして炎症を抑えることが大切です。
腰部マイクロディスク摘出術(内視鏡下椎間板摘出術)を受けた患者さんの約70~80%は1.5か月以内に職場復帰していることが研究結果から報告されています。1.5か月を過ぎてから職場復帰する可能性は低いことも示されています。症状が重い場合は、早期に適切な治療を開始することが重要であると言えます。
痛みが強い時期に無理に動かすと、治りが遅くなってしまうだけでなく、手術が必要になるケースも出てきます。腰に負担がかかりにくいウォーキングや水泳などの軽い運動は、痛みが落ち着いてきた時期に行うようにしましょう。ストレッチも、痛みのない範囲で、ゆっくりと行うようにしてください。
長時間の同じ姿勢を続けない
デスクワークや車の運転など、長時間同じ姿勢を続けることも、椎間板ヘルニアの悪化につながります。同じ姿勢を続けていると、特定の筋肉や椎間板に負担が集中し、血行不良を招き、痛みやしびれが増強する可能性があります。姿勢を変えることで、筋肉の緊張をほぐし血行が促進され、椎間板への負担を分散できます。
長時間同じ姿勢でいる場合は、30分~1時間ごとに休憩を取り、軽いストレッチや体操、軽い歩行を心がけましょう。デスクワークの場合は、パソコンの画面の高さを目の位置に合わせ、椅子に深く腰掛け、背もたれを使うことで、腰への負担を軽減できます。
足を組む癖がある方は、意識して足を組まないようにしましょう。足を組むと骨盤が歪み、椎間板への負担が偏るためです。
痛みを我慢して動き続けない
椎間板ヘルニアの痛みを我慢して動き続けると、症状が悪化する可能性があります。痛みを感じたら、安静にして痛みが引くまで様子を見ましょう。痛みを我慢し続けると、神経がさらに圧迫され、後遺症が残る可能性があります。炎症が慢性化し、痛みが長引く原因にもなります。
市販の鎮痛剤で一時的に痛みを抑えることはできますが、根本的な解決にはなりません。痛みを我慢せず、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。医療機関では、場合によってはMRI検査などで詳しい状態を調べ、痛みの原因を特定し、適切な治療方針を決定します。
以下の記事では、椎間板ヘルニアの方が「やってはいけないこと」について、具体例を挙げながら詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアでやってはいけないこと7選|悪化させない方法
椎間板ヘルニアの治療法
椎間板ヘルニアの症状と治療法について、以下の内容を解説します。
- 保存療法の種類と効果
- 手術療法の種類とメリット・デメリット
- 姫路市の大室整形外科の特徴と治療方針
保存療法の種類と効果
保存療法とは、手術を行わずに薬やリハビリテーションなどで症状の改善を目指す治療法です。椎間板ヘルニアの初期治療では、保存療法が選択されることが一般的です。保存療法は以下の4つに分類されます。
- 薬物療法
- 神経ブロック
- 理学療法
- 牽引療法
薬物療法では、痛みや炎症を抑える薬を服用します。非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)や、痛みが強い場合にはオピオイド鎮痛薬、神経障害性疼痛にはプレガバリンやデュロキセチンなどが処方されます。薬の種類や服用量は、患者さんの症状や状態に合わせて医師が判断します。
神経ブロックは、痛みの原因となっている神経に直接薬を注射する治療法です。硬膜外ブロックや神経根ブロックなどがあり、炎症を抑え、神経の興奮を抑えることで痛みを軽減します。神経ブロックは、痛みが強い場合や、他の保存療法で効果がない場合に検討されます。
理学療法は、ストレッチや運動療法、マッサージなどを通して体の機能を回復させます。理学療法士による指導のもと、腰や背中の筋肉を強化する運動や、柔軟性を高めるストレッチを行います。理学療法は、痛みの軽減だけでなく、再発予防にも効果的です。
牽引療法は、牽引装置を使って背骨を伸ばし、椎間板にかかる圧力を軽減する治療法です。神経への圧迫を和らげ、痛みやしびれを軽減する効果が期待できます。牽引療法は、他の保存療法と組み合わせて行われることが多いです。
手術療法の種類とメリット・デメリット
保存療法で効果が見られない場合や、麻痺などの神経症状が進行する場合、排尿や排便障害がある場合などは、手術療法が検討されます。椎間板ヘルニアの手術には、大きく分けて従来法(開窓術)と内視鏡手術があります。
従来法(開窓術)は、背中を切開して、飛び出した椎間板を切除する方法です。顕微鏡を用いた手術(MD:Microscopic Discectomy)は、長年行われてきた方法で、詳細な観察が可能です。切開範囲が比較的大きいため、術後の痛みや合併症のリスクが内視鏡手術に比べて高い傾向があります。
内視鏡手術は、内視鏡を用いて、小さな切開部からヘルニアを切除する方法です。経皮的内視鏡的腰椎椎間板摘出術(PELD:Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy)や、片側二ポータル内視鏡手術(UBE:Unilateral Biportal Endoscopy)など、さまざまな方法があります。
傷口が小さいため、術後の回復が早く、痛みが少ないというメリットがあります。2025年に発表された多施設共同前向き評価者盲検無作為化比較試験では、UBEは従来法と同等の効果があり、術後の創傷合併症や術後の痛みが少ないことが示されています。
手術療法は、痛みの原因を直接取り除くことができるため、高い効果が期待できますが、感染や出血、神経損傷などのリスクも伴います。医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解したうえで、手術を受けるかどうかを判断することが重要です。
手術に至らないケースや、手術後の回復をスムーズにするためには、日常生活の過ごし方も重要です。以下の記事では、椎間板ヘルニアの治療法全般と、回復をサポートする生活習慣について詳しく解説しています。
>>椎間板ヘルニアの治療法!回復に役立つ生活習慣も紹介
姫路市の大室整形外科の特徴と治療方針
姫路市にある大室整形外科は、脊椎センターと人工関節センターを持つ専門クリニックです。「もし、患者さまが自分の家族だったら私は何をすべきか。」を常に心に留め、患者さん一人ひとりに寄り添い、個別に最適な治療を提供することを目指しています。
保存療法を重視し、患者さんの症状やライフスタイル、全身状態、年齢などを考慮して、治療法を決定します。薬物療法や神経ブロック、理学療法、牽引療法など、さまざまな治療法を組み合わせたオーダーメイドの治療プランを提供しています。
手術が必要な場合は、患者さんの状態に合わせて、従来法または内視鏡手術を選択します。内視鏡手術は低侵襲な方法であり、患者さんの体への負担を最小限に抑えることができます。再発予防のためのリハビリテーションにも力を入れており、患者さんが健康な生活を取り戻せるようサポートしています。
日常生活での姿勢指導や、自宅でできる運動療法なども指導しています。整形外科専門医が、患者さん一人ひとりと丁寧に向き合い、症状や治療法についてわかりやすく説明します。納得いただいたうえで治療を進めていきますので、安心してご相談ください。
まとめ
椎間板ヘルニアの症状緩和を目指す場合、安静と冷却、適度な運動やストレッチ、正しい姿勢の維持などが勧められています。栄養面ではバランスの良い食事を心がけ、コラーゲンやビタミンD、抗酸化物質を含む食品を取り入れることも一つの選択肢です。
激しい運動や無理なストレッチ、長時間の同じ姿勢、痛みを我慢したままの行動は避けることが望ましいとされています。症状や体調に合わせて、医師など専門家の指導のもとで適切なケアを行うことで、症状の緩和につながる可能性があります。ご自身の体調に合わせて、無理のない範囲で実践してください。
椎間板ヘルニアは、症状の進行度によって適した治療法や注意点は異なります。自分の症状がどのレベルにあるのかを知っておくことは、適切な対応をとるうえで重要です。以下の記事では、腰椎椎間板ヘルニアの症状をレベル別に整理し、それぞれに合った治療法や対処法について詳しく解説しています。
>>腰椎椎間板ヘルニアの症状レベル別の特徴!治療法も解説
参考文献
- Sang-Min Park, Kwang-Sup Song, Dae-Woong Ham, Min-Seok Kang, Ki-Han You, Choon-Keun Park, Jin-Sung Kim, Hyun-Jin Park.Comparing the efficacy and safety of biportal endoscopic discectomy with microscopic discectomy for lumbar herniated intervertebral disc: a multicentre, prospective, assessor-blinded, randomized controlled trial.Bone Joint J,2025,107-B,5,p.529-539
- Mikhail Saltychev, Elias Villikka, Vilma Madekivi, Katri Pernaa, Juhani Juhola.Return to Work After Lumbar Microdiskectomy: A Systematic Review and Meta-analysis.Spine (Phila Pa 1976),2025,50,9,p.E167-E177